ついに詳細な情報が公開された、『モンスターハンター:ワールド』の超大型拡張コンテンツ『モンスターハンターワールド:アイスボーン』。開発のキーマン3人にインタビュー!

辻本良三氏

プロデューサー(文中は辻本)

藤岡 要氏

エグゼクティブディレクター/アートディレクター(文中は藤岡)

市原大輔氏

ディレクター(文中は市原)

 2018年末のタイトルコールより、長らく詳報が待たれていた、『モンスターハンター:ワールド』(以下、『MH:W』)の超大型拡張コンテンツである『モンスターハンターワールド:アイスボーン』(以下、『MHW:I』)。それがこのたび、ついに新情報が公開されたのに加え、プレイステーション4版の狩猟解禁日が2019年9月6日に決定!(PC版は今冬発売予定) 本稿では、開発の中枢を担っている3人のクリエイターへのインタビューを掲載。本作のデザインコンセプトや追加要素の数々など、気になることを聞いた。

左から、市原氏、辻本氏、藤岡氏。

『MH:W』をより深く楽しむための超大型拡張コンテンツ『MHW:I』

――2018年末のタイトル発表より、待望の第1報がついに公開されました。まずは、『MHW:I』のコンセプトについてお聞かせいただけますでしょうか。

辻本 これまでにも、『モンハン』シリーズでは“G”、“ダブルクロス”といったタイトルを出させていただいてきていますが、『MHW:I』のコンセプトも、それに近しいものではあります。各シリーズタイトルの、いわゆる“無印”があって、ユーザーにそれをより深く、より楽しんでもらうためのものですね。ただ、今回はダウンロードコンテンツとして提供する形とマスターエディションがあるので、これまでのシリーズラインアップとは少々異なる位置付けにはなるのですが、全体的な制作コンセプトとしては“G”とほぼ同じであると思っていただいて問題ありません。

――なるほど。では、タイトルに“G”の文字を付けなかったのは、どういった理由からなのでしょうか。

辻本 じつはいままでに海外では“G”というタイトル名を付けたことがないんですよ。“G”ではなく“アルティメット”などをつけていました。ご周知の通り、『MH:W』はグローバルでマッチングできるので、規格などさまざまなものの統一を図りたいという考えがありまして。今回、タイトル名も全世界共通のものにしたかったんです。そこで“アイスボーン”と付けたのは、率直に、ストレートに――内容がそのままイメージできるようにという考えからです。

藤岡 今回は『MH:W』にはなかった寒冷地である“渡りの凍て地”がメインフィールドであり、ストーリーでのテーマにもなっています。全体的なカラーリングやコーディネートなどもそういったもので固めようという意見が挙がったので、タイトルもイメージの湧きやすい“アイスボーン”がしっくりくるんじゃないかなと考えました。

――“G”という名称にあまりなじみがないであろう、海外のユーザーにもわかりやすく統一を図ったわけですね。そういった意味で、今回は“G級”ではなく、“マスターランク”に名称が変更されていると。

藤岡 そうですね。日本では、“G級”と言えば大体想像がつくであろうユーザーがほとんどなのでいいのですが、海外を含めたトータルで考えると、言葉の使いかたや名称での統一が重要になるなと。『MH:W』はシリーズ作品ではありますが、ひとつのタイトルとして独立できている作品でもあるので、このタイミングで、世界中の人々がわかりやすい、使いやすい言葉を考えたほうが後々のためにもいいだろうと判断しました。

――確かに、“マスター”の文字は、海外のユーザーにも伝わりやすそうですね。ちなみに、マスターランクのクエストは、どういったタイミングで受注できるようになるのでしょうか?

辻本 『MH:W』のストーリーをすべて終えていれば、すぐに遊べるようになります。

藤岡 ゼノ・ジーヴァが登場するクエストをクリアーしていれば、そこから『MHW:I』のストーリーにつながる、新たな展開を楽しめます。

辻本 新ストーリーでは渡りの凍て地での調査がメインにはなりますが、従来のフィールドを舞台にしたマスターランクのクエストもきちんと用意してありますので、そこはご心配なさらずに。

――まずは『MH:W』のクリアーが先決と。話は変わりますが、『MHW:I』では市原さんがディレクターを担当されています。『MHW:I』の開発はいつ頃から始まっていたのでしょうか。

市原 私は『モンスターハンターダブルクロス Nintendo Switch Ver.』のディレクターも担当していたのですが、それの開発と並行して進めていた形ですね。

――だとすると、相当忙しかったのでは?

市原 確かに忙しかったですね(苦笑)。とはいえ、移植作ですので、ほぼ『MHW:I』に集中して取り組めていました。

辻本 それに関して補足させていただくと、『MH:W』ではアップデートを長期にわたって配信させていただいていましたが、あれは作り溜めていたわけではなくて、その都度作っていたものなんです。その辺は徳田(※徳田優也氏。『MH:W』のディレクターを担当)が指揮を執っていたのですが、それと『MHW:I』を(徳田氏の担当で)同時に走らせるのはさすがにきびしいということで、『MHW:I』は市原にディレクターを任せて2ライン体制で制作していました。

市原 会社では『MHW:I』を制作し、自宅に帰ってからは『MH:W』のアップデート配信で遊んでいました。アップデートの内容を把握しないといけないので。昼夜ともに完全に『モンハン』漬けの毎日でしたよ(笑)。

一同 (笑)

さまざまな演出や仕掛けが施された“渡りの凍て地”

――『MHW:I』では新たなストーリーが展開するようですが、新ストーリーがどのように始まるのかも気になります。

藤岡 基本的にはゼノ・ジーヴァを討伐した後の話になります。ゼノ・ジーヴァ討伐後、引き続き新大陸の調査をしていく中で、また新たな発見があり、それを調査してみよう……といった流れで『MHW:I』のストーリーにつながっていく形ですね。

――プロモーション映像(PV)を拝見した限りでは、新大陸から少し離れた場所へ行くのかな、とも見受けられました。これはどういう……?

『モンスターハンターワールド:アイスボーン』プロモーション映像①

藤岡 どうしてそこへ行くことになったのかに関しては、今後きちんとしたストーリーラインとともに詳細な情報を出していく予定ですので、お待ちいただければと。そもそも、『MH:W』で調査した地域と地続きで急に寒冷地が出てこられると、作っている側の人間としても違和感があって。『MH:W』では最奥に位置する龍結晶の地などは、火山帯のエリアですよね。さらにその奥に進んだとして、いきなり寒冷地が広がっていましたと言われても、さすがに変というか、説得力に欠けるというか。ですから、単独で寒冷地として完結できる場所を設計しやすいように考えたほうがいいだろうと思ったんです。そのため、今回は『MH:W』の調査地域から少し離れた場所になっていますね。渡りの凍て地の“渡り”という言葉は、まさにそこから来ているんですよ。

――新大陸のどこか、という認識でいいのですか?

藤岡 広義では、新大陸と言える位置にある場所です。ただ地続きかどうかはまだわからない、という感じですね。

――その渡りの凍て地ですが、どんな舞台になるのでしょうか。これまででもっとも広いフィールドになるとのことですが……?

藤岡 マスターランククエストの遊び心地やレベルデザインの構築をするにあたって、渡りの凍て地を調査して活動範囲を広げつつストーリーを進めていく形がいいんじゃないか、という話になりました。ですから、渡りの凍て地は段階的――マスターランクの序盤、中盤、終盤みたいな感じで、行ける範囲が少しずつ広がっていく仕様になっています。そうなると、最終的な“広さ”をそれなりのものにしないと、どうしてもバランスが取れなくなってしまうんですよ。そこは、開発とも何度か相談しながら折り合いをつけた部分ですね。

市原 『MH:W』が、ある程度開拓された状態からのスタートだったのに対して、『MHW:I』は調査団が初めて訪れる地になります。そのため、ゲームの展開も徐々に開拓して行動範囲が広がって……という流れにしなければならない。

藤岡 開発初期はそれほど気にならなかったのですが、開発が進むにつれて、これではさすがに狭いなと(笑)。無理にでもバランスを取ろうとすると、ゲーム序盤で行ける範囲が極端に狭くなってしまうため、渡りの凍て地自体を広げて、バランスを取る方向へシフトしました。結果的に、『MH:W』を含めたフィールドの中では、もっとも広いものになっています。寄り道なども含めて、プレイヤーが楽しく探索できるように、という点を考慮すると、広げざるを得なかったですね。

――『MH:W』でも、ストーリー進行とともに活動範囲が広がっていく流れだったので、そこはあまり違和感なくプレイができそうですね。

藤岡 キャンプを設営しつつファストトラベル地点を増加するといった、『MH:W』ならではの遊び心地は変えないように気を付けています。広くしたぶんだけ環境利用による利便性なども高める処置を取っていますので、やたら移動がしんどい、みたいなことにはなりません。

――移動と言えば、歩くときにかなり雪に沈み込んでいる場面もありました。あれは通常移動とは異なる感じに?

藤岡 場所が変わっても、極力操作レスポンスは変えたくない、という考えがまずあります。雪深い地点ではハンターのモーション演出などで雰囲気を出していますが、『MH:W』の操作感と大きく変わることはありません。大蟻塚の荒地にある、沼地エリアでの移動に近い感覚ですね。雪原地帯をどう表現するかは『MH:W』の開発当初から気にかけていましたし、今回力を入れている部分でもあります。

――寒冷地ならではの演出が楽しみであると同時に、ゲーム部分への影響も気になります。龍結晶の地では、火山帯エリアの入り口にヒンヤリダケ(クーラードリンクの素材)が生えていたりしましたが、渡りの凍て地でもトウガラシ(ホットドリンクの素材)の採集ポイントなどには気を遣われましたか?

市原 そうですね。フィールドで採取できるトウガラシでホットドリンクを作り、寒さを凌ぐことができるのはもちろんなのですが、それ以外にも寒さを凌ぐ方法はいくつか用意してあるんですよ。ホットドリンクを忘れたから取りに帰らなくちゃ、なんてことがあまりないようにしています。例を挙げると、フィールドにある温泉に浸かると、一定時間ホットドリンクと同じ効果が得られるとか。探索時に温泉の場所を覚えておいてもらえれば、それ以降のクエストでも役に立つかと思います。

藤岡 ゲームの根底にあるものは『MH:W』と同じなので、特定のアイテムを忘れたから、「さぁたいへんだ」とはならないようにしています。キャンプに帰って、アイテムBOXからアイテムを持ち出してもいいわけですしね。

市原 ガッツリ探索する意気込みでしっかり準備していってもいいですし、軽く散策気分で出かけていっても、現地調達でどうにかなるのが『MH:W』の、そして『MHW:I』のいいところだと思います。

――なるほど、PVで見られた温泉は、そんな効果があったんですね。猿のような環境生物も確認できましたが、あれもやはり……?

藤岡 はい。温泉に浸かりながら、捕獲用ネットを放って捕まえられます(笑)。環境生物であれば、すべてアクセスできますから。愛嬌もあるので、マイハウスに放ってもらえれば和むかなと。念願の猿だなぁ。

辻本 念願の猿ですね(笑)。『モンスターハンター3(トライ)』のときに、村に猿を配置するというネタがあったんですよ。ギリギリで没になりましたけど。

藤岡 当初はプーギーをリストラして、猿にしようという話だったんです。でも、なかなか制作が追い付かず、プーギーでいいかなと(笑)。

辻本 マスターアップの1ヵ月くらい前だったかな? 藤岡から電話がかかってきて、「猿、いなくなってもいい?」と。だから、今回10年越しの猿登場になりますね(笑)。

立ち回りの幅を大きく広げる、ハンターの新アクション

――アクション面での新要素として、スリンガーの“クラッチクロー”が公開されました。こちらについてお聞かせください。

藤岡 もともと、“モンスターをいかにコントロールしていくか”が、『MH:W』におけるアクション面でのコンセプトでした。地形や環境、モンスターの性質を利用しながら、自分が有利になるようにコントロールして狩猟を行う流れを、『MHW:I』ではもう一歩踏み込んだ形にできないかなと思いまして。そこで、直接モンスターにしがみついてコントロールができる、クラッチクローを導入するに至りました。ただ、いつでもどこでもしがみつけばいいというわけではなくて、最終的にはプレイヤーの判断で仕掛けるタイミングを計ってもらう形になると思います。これまで、狩猟中はどうしても膠着状態になる状況が存在しましたが、そこをクラッチクローで埋めつつ、よりハンターの立ち回りがスピーディになるように調整しています。

市原 モンスターにしがみついた状態で、スリンガーに装填されている弾を全弾撃ち込むことで、モンスターが向いている方向へぶっ飛ばせるのですが、それを利用してモンスターを罠にかけたり、壁にぶつけてダウンさせたりといった、モンスターのコントロールができます。クラッチクローのアクションをプラスすることで、これまでよりも自由度の高い立ち回りが可能になるかと思います。

藤岡 モンスターの向きの調整もできるので、ぶっ飛ばしたい方向へ向かせてからぶっ飛ばすことも可能です。モンスターをコントロールしつつ、大きな隙を生み出せる強力な連携ですね。

辻本 注意していただきたいのが、“乗り”とは別物である点です。乗りの要素は変わらずに存在しますので、そちらも楽しんでもらえればと。

市原 乗りは仕掛ける位置の限定など、戦略的な部分が強かったのですが、クラッチクローは状況判断がより問われるようになっています。一応、いつでもしがみつけるようにはなっているのですが、適当に狙ってもモンスターの攻撃で叩き落とされたりしますので。

――使いこなせればかなり強力そうですね! 武器ごとの違いなどはないのでしょうか。

藤岡 連携が異なる武器も存在します。双剣など、通常攻撃からクラッチクロー関連のアクションへ移行できるものもありますね。通常攻撃の連携の流れでそのまましがみつきに行ったりとか。攻撃面での自由度も高くなっていると思いますよ。

――全武器種が抜刀中にスリンガーを使用可能になるというのも自由度に拍車をかけそうですね。片手剣メインのユーザーはヤキモキしそうですが、そこは新要素などでバランスを取っているのでしょうか。

市原 まさにその通りですね。我々としては、もっとスリンガーを使って欲しくて全武器種で抜刀中でのスリンガー使用を可能にしたのですが、それだけだと片手剣の特徴をひとつ奪ってしまうことになりますから。片手剣には一歩進めた新要素を追加してバランスを取っています。

――おお、片手剣使いとしてはとてもうれしい情報です。そのほかの武器の追加アクションについてもお聞きしたいです。

市原 PVでお見せしているのは、大剣、双剣、ライトボウガンの3つですね。まず一部の武器種で、攻撃連携の中にスリンガーの“強化撃ち”というアクションを入れ込めるようになっています。強化撃ちは通常のスリンガー弾に比べ、射程が短い代わりに威力が高く、モンスターをひるませやすい特性を持っています。大剣であれば、連携から強化撃ちでモンスターひるませることができて、そこから溜め斬りを当てやすくなるのが便利。双剣は、二段斬り系連携後に回避しながらの強化撃ちが可能になっているほか、鬼人化中の回転斬り(2回目)の後に、直接クラッチクローでモンスターにしがみつくことが可能です。

――とても強そう、というか気持ちよさそうな流れの連携ですね。

市原 クラッチクロー絡みの連携は、アクションの幅が広がるものになるよう心掛けて作っていますので、アクションゲームが得意な人なら、連携を考えるだけでも楽しめるんじゃないかなと。そしてライトボウガンは、カスタマイズ用の強化パーツが追加されています。滑り込み回避しながら弾を1発リロード可能になるのですが、同じパーツを複数セットすることで一度の回避で弾を複数装填できるようになるなど、こちらもアクションの幅がかなり広がると思います。

――うーん、パーツの組み合わせで迷ってしまいそうですね……。

市原 ボウガンを使っている方は、これが自分の最適の組み合わせだというものを『MH:W』の時点で構築されていると思うのですが、『MHW:I』では一度そこを見直してもらいたいですね(笑)。