テクノアーティスト“Remute”が、メガドライブ互換のカートリッジ形式の音楽アルバム“Technoptimistic”を2019年3月末にリリースする。

 ドイツを拠点に活動するセルビア出身のテクノアーティスト“Remute”は、16曲入りのニューアルバム“Technoptimistic”を2019年3月末にメガドライブカートリッジとして発売する。

 同アルバムは現在音楽配信サイトのBandcampで予約が行われており、カートリッジは33.33ユーロ(国際発送料別)で入手可能。なお同サイトからストリーミング/ダウンロードできるデジタル音源なども付属する予定だ。

初代メガドライブでの“プレイ”推奨!

 “Technoptimistic”はアルバム全体がメガドライブ上で動作するプログラムとして組まれており、アーティスト本人いわく初代メガドライブ/Genesis(海外版メガドライブ)での動作を推奨。メガドライブ2および、海外で出たGenesis3や携帯機のNomadでも動作するだろうとしているものの、現行のサードパーティ製互換機などでの動作は保証できないとのこと。

過去にはフロッピーでのリリースも

 実は筆者は個人的にRemuteのファンとしてデビュー当時から追ってきた。最初は彼の妙な歪みのある実験的かつ踊れる曲が好きだっただけなのだが、次第にそのユニークな活動もウォッチするようになったのだ。

 一時期はその時々の世界的なニュース映像からサンプリングした曲を毎週のようにデジタル配信していたり、今回のアルバム以前にもフロッピーディスクでのリリースをしていたり、アーティスト活動の合間に変わったインディーゲームのバンドルを販売していたりと、彼の活動はなんというか……アングラでフリーダムだ。

ショートインタビュー「メガドライブが自分とエレクトロニック・ミュージックとの最初の接点だった」

 その彼が今度はメガドライブでリリース? しかもサンプル曲は変にゲームに寄せることもなく普通にいつものRemute節? と驚いた筆者は、たまたまRemuteとお互いにTwitterで繋がっているのをこれ幸いと、いろいろ事情を聞いてみた次第。というわけでショートインタビューをお届けしよう。

Remute

2000年代初頭よりテクノアーティストとしてのリリース活動をはじめ、ドイツの名門TresorやAreal Records、Trapez、Ladomat 2000などのレーベルから実験性とダンスフロアーでの機能性を両立したトラックを提供してきた。同名の自主レーベルも運営中。

――なぜメガドライブを新たなプラットフォームに選んだのでしょう? ゲームカートリッジで音楽アルバムをリリースする例はこれまでにもいくつかありましたが、その多くはチップチューンなどのシーンの文脈から出てきたもので、ゲームっぽい音が基本でした。でもあなたはベテランのテクノアーティストで、今回のサンプル曲を聴く限り曲もかなりピュアなテクノ寄りです。
Remute コモドールのC64コンピューターを除くと、僕とエレクトロニック・ミュージックと最初の接点はメガドライブだったと思う。1992年、9歳の頃のことだった。

 メガドライブのメタリックでユニークな、それでいて不思議なほどにハーモニーの効いたそのサウンドが深く印象に残って、僕のその後のサウンドの好みを形作るのに大きな影響をもたらしたんだ。それからというもの、ああいった(メガドライブゲームのBGMのように)洗練されたデジタルメロディーに魅了されてきたし、実際、自分の曲のほとんどでFM音源を好んで入れてきた。

 だからこのアルバムは、自分のキャリアの最初からやりたかったことなんだ。15年のテクノシーンでの経験を経てようやく実現することができたよ。僕にとって”テクノ”とは、いつも人間とテクノロジーの関係についての音楽だった。その意味で“Technoptimistic”はYM2612(※)のテクノロジーをマスターする僕の物語でもあるんだ。(※メガドライブの音源チップ)

――ローファイなテクノからは、ヨーロッパのトラッカー(※)シーンやそこから出てきたテクノアーティストなどを連想するのですが、影響はありますか? またあなたにとって、制限のあるフォーマットでピュアなテクノを作る意義は?
(※一種のシーケンサーソフト)
Remute トラッカーシーンからはとても影響を受けてるよ! ティーンエイジャーだった90年代“デモシーン”を追っかけてたんだ。グラフィック、音楽、プログラミングやその他の技術的努力を組み合わせて“デモ”という1本のプログラム作品に仕上げる、すごくクリエイティブなシーンだった。

 それで、デモシーンで鳴ってた音楽やそこから生まれてきた音楽(実際、トラッカープログラムの多くがデモシーンに源流を持ってるんだ!)は、制約はクリエイティブプロセスにとってすごく有用になりうるということを僕に早い時期から教えてくれた。

 ある音楽的アイデアと制約が目の前にある時、制約は君にそのアイデアをどうやって実現するか集中させ、その本質を磨かせる。低ビットの音でもいい感じに聞こえるアイデアはきっといいアイデアだ。アイデアが物事を突き動かすんだ。

――あなたの過去作には、ゲームをテーマにしたアルバム“Play The Game”があります。今回のアルバムとのコンセプト的な違いを教えてください。
Remute “Play The Game”は自分の過去のゲーム体験からのインスピレーションによるアルバムだったけど、“伝統的な”テクノ向けの楽器でレコーディングされたものだ。日本のLil’Fangなどのゲストボーカルやプロデューサーも参加していて、彼女が参加したタイトル曲ではゲーム風のプロモビデオも作ったよ。

 それに対して“Technoptimistic”はメガドライブのために作曲し作られたアルバムで、事実として“レコーディングアルバム”ですらないんだ! 音がレコーディングされているわけではなくて、音楽はカートリッジをゲーム機に挿すたびにそこで生成されるんだから、自分としては“プログラムド・アルバム”と呼びたいね。この上なくエレクトロニックな音楽だよ ;-)

――好きなゲーム音楽を教えてください。ゲーマーとしてでも、アーティストとしてでも。
Remute 『ベア・ナックル2』の音楽はもう好きすぎる。古代祐三は90年代のテクノとハウスの恍惚としたエナジーを完璧に捉えて、それをYM2612のサウンドへと変換してみせたんだ。

 ゲームとしてもオールタイム・ベスト級に好きだね。優れたゲームプレイと息を呑むような色褪せないドット絵、そしてベルトスクロールアクションでもっとも脳に焼き付く音楽が見事に協調してひとつの作品となっている。

 それ以外では、アミーガやコモドール64周辺のゲームやデモシーンの音楽も愛している。あれらのシステムはすごくユニークなサウンドを持っていたね……。

――テクノ系のアーティストがコラボしたゲームで好きなものはありますか? ボム・ザ・ベースが参加した『Xenon 2: Megablast』とか、石野卓球やハードフロアやマイク・ヴァン・ダイクが曲を提供したPS1の『攻殻機動隊』などいろいろありますが。
Remute 確かにテクノアーティストがコラボしたゲームにはいくつか記憶に残るものがある。ボム・ザ・ベースが関わってた『Xenon 2: Megablast』なんかそうだけど、(開発の)The Bitmap Brothersはテクノミュージシャンとコラボするのを好んでたよね。

 自分は『Rez』のサウンドも好きだな。ケン・イシイやオヴァルが曲をやっててさ。最近だと『Brigador』っていうインディーゲームにMakeup and Vanity Set(※)が提供した音楽を楽しんだよ。テクノアーティストはもっとゲームのサントラやった方がいいと思うね。ライセンス提供じゃなくてオリジナル曲のやつで!(※Matthew Pustiによるシンセウェーブ/チップチューン系の音楽ユニット)