三味線業界が抱えている危機をご存知だろうか。
日本が誇る和楽器のひとつである三味線だが、技術者・演奏者の高齢化によって市場は減退しているという。原材料である本皮にはワシントン条約や動物愛護の理由で規制がかかり、グローバル展開も一筋縄ではいかない。
さて、「なぜファミ通.comで三味線の話?」という疑問にお答えするには、こちらの写真をご覧いただくのが手っ取り早いだろう。
超かっこいい……!
こちらの三味線は、世界的に有名な画家の天野喜孝氏がデザインを監修している。天野氏といえば、もちろんゲームファンにとっては『ファイナルファンタジー』シリーズのデザインでおなじみ。国外でも絶大な人気を誇る巨匠である。
加えて、ボディに使用されているのは最新の人工皮“リプル”。三味線卸業者・小松屋が和楽器文化の生き残りをかけて開発してきた商品で、動物素材を使わないから規制にかからず、なおかつ丈夫で破れにくい。
天野氏のデザインと“リプル”のコラボによって生まれた本製品は、小松屋の理念「日本の美しい音色を 新しい文化の夜明けを 子供と孫の世代へ 世界へ広く伝えたい」を体現した“次世代三味線”なのだという。
2018年10月24日、そんなコラボ製品の発表会が東京・渋谷にて開催。天野氏のビデオレターも交えてコラボのコンセプトが語られた。
三味線に描かれた女性の名前はシャウラ。今回のコラボのために描き下ろされたオリジナルキャラクターで、ジョブ的には女忍者だという。
三味線の要素をイラストに落とし込むにあたり、天野氏が注目したのは女性的なフォルムと激しい演奏。そこに日本的な赤色を取り入れ、戦いながら音楽を奏でるような情景をイメージして作成された。
発起人は小松屋側。もともと国内向けにイラストがプリントされた三味線を販売していた小松屋だったが、日本が誇る文化の魅力を世界に発信するために、同じく日本が誇る一流アーティストである天野氏にコラボを提案した。このときは、単純にデザインとして依頼するつもりだったそうだ。
ところが、そんな理念と情熱に感銘を受けた天野氏は、デザインの粋を超えた一大プロジェクトを提案。三味線に描かれたシャウラも、メディアミックス的な展開を意識してデザインされているという。
そんなAMANO SHAMISEN PROJECTの幕開けを飾る“シャウラ三味線”は、2018年11月10日より発売開始。価格は40万円[税抜]を想定しており、熱烈なファンに向けた豪華タイプ(300万円[税抜])も登場する予定だ。
※小松屋オンラインストア https://komatsuya-store.com
なお、こちらは今回のコラボ商品の価格であり、リプル張り三味線そのものは本皮と比較して安価に展開されている。
発表会では津軽三味線演奏者・高崎将充氏による演奏も実演された。高崎氏によれば、音の輪郭がはっきりしており、高音に秀でているのがリプルの特徴とのこと。
すでに第2弾の製作が決定。さらに、天野氏を含む日本の有名クリエイターにたちよる“和”のアートプロジェクト『GIBIATE』とのコラボも予定されている。