サイバーエージェントがアニメレーベル“CAAnimation”を設立。目指すはアニメとゲームの同時立ち上げによる市場参入、“平成後アニメ”のロードマップ

サイバーエージェントが新たなアニメレーベル“CAAnimation”を設立。ゼネラルプロデューサー・田中宏幸氏に設立の経緯や今後の展開をうかがった。

 2018年10月17日、サイバーエージェントは新たなアニメレーベル“CAAnimation(以下、シーエーアニメーション)”を設立し、アニメ制作事業に本格参入することを発表した。

 シーエーアニメーションでは、オリジナルアニメ作品の制作およびゲーム化など、メディアミックスを前提とした企画開発、プロデュースが行われる。また、インターネットテレビ局“AbemaTV”と連動した、オリジナルのアニメIPの創出も予定しているとのこと。詳しくは下記のプレスリリースを掲載した記事を見てほしい。

サイバーエージェントがアニメレーベル“CAAnimation(シーエーアニメーション)”を設立、メディアミックスを前提とした企画開発・プロデュースを行う

サイバーエージェントは、アニメレーベル“CAAnimation(シーエーアニメーション)”を設立し、アニメ制作事業に本格参入することを発表した。

 なお、同社では2017年6月にもアニメIP(知的財産のこと)への投資を目的としたファンド“CA-Cygamesアニメファンド”を、子会社のサイゲームスと共同で立ち上げており、現在は同ファンドを通じてアニメ製作委員会への出資を通したアニメ作品のネット配信権、ゲーム化権の取得を進めている。

 本記事では、シーエーアニメーションを代表して、同レーベルのゼネラルプロデューサーである田中宏幸氏に、シーエーアニメーション設立の経緯や今後の展開、そして先行して展開しているCA-Cygamesアニメファンドでの事業について話をうかがった。

【CAAnimation(シーエーアニメーション)】
設立日:2018年10月17日
スタッフ:エグゼクティブプロデューサー 落合雅也氏
     ゼネラルプロデューサー 田中宏幸氏

プロフィール

田中宏幸(たなか ひろゆき)

シーエーアニメーションゼネラルプロデューサー。代表作は『Wake Up, Girls!』、『ユーリ!!! on ICE』など多数。(文中は田中)

自社メディアと連動したメディアミックスプロジェクト制作

――まずはアニメ制作事業に参入された経緯を教えてください。

田中 プロジェクトそのものは私が入社する以前から動き出していたものなんです。もともとサイバーエージェントグループでは、広くゲーム事業を展開してきました。ただ、いまやゲーム業界はレッドオーシャン(競争過多状態)になっていて、キャラクタービジネスという観点で捉えたときにも、もっと差別化できる要素、ユーザーの心に刺さる要素が必要です。その部分を担えるよう、アニメ制作事業に力を入れていこう、という声が社内で挙がっていたと聞いています。もうひとつ、サイバーエージェントグループの事業のひとつである“AbemaTV”では月間のアクティブユーザーが1100万人ほどいるのですが、アニメ系のチャンネルは人気コンテンツのひとつです。ゲームと“AbemaTV”、このふたつの事業の活性化を考えたとき、アニメは欠かせないということで、グループ全体でアニメ事業へ力を入れることになりました。これがきっかけですね。

――グループ全体での注力になると。

田中 そうですね。自社レーベルでの制作に先駆け、2017年6月にはサイバーエージェントとサイゲームスでファンド総額30億円の“CA-Cygames アニメファンド”というアニメファンドを立ち上げ、アニメ事業への投資を開始しています。

――今回のシーエーアニメーションの立ち上げは、投資だけに留まらないものですよね。

田中 私は今年(2018年)の2月から参画していて、シーエーアニメーションにもCA-Cygames アニメファンドにも所属しているのですが、グループ全体にとって前者はオリジナルコンテンツの企画部で、後者は自社企画はもちろん、外部のパートナーさんの企画に投資していく投資部……というイメージですね。シーエーアニメーションとしてのコンテンツは、いま5本ほど作ってはいるのですが、それらが世に出るまでにはあと2年くらいかかりそうです。一方、ファンドで投資した作品はちょうど10月から3本(※)放送を開始しています。

※『火ノ丸相撲』、『ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。』、『ゾンビランドサガ』の3本。サイバーエージェントグループは、ゲーム化権や配信権などを得る形で委員会に属している。

――ファンドではどのようなことが行われているのでしょうか。

田中 持ち込まれた企画を審査し、ゴーサインを出したものに対して出資を行うことになります。審査は、サイバーエージェントやサイゲームス、“AbemaTV”などグループ内のメンバー10名弱で行っています。その中には私も含まれているので、もし今後自分で企画を立ち上げた場合は、それを自分で審査する形にもなってしまうわけですが、きちんと厳正な視点で審査いたします(笑)。また、シーエーアニメーションではもうひとり、サイゲームスの相談役でもある落合(雅也氏)という人物が、エグゼクティブプロデューサーとしてグループを横断しながら会社の内外の調整役を務めています。

誰よりも早く新たなビジネスモデルを作るために

――先ほど、ファンドで投資した作品が10月から放送を開始したとうかがいましたが、言うなれば現状はまだこれからという段階で、より踏み込んだ企画である自社レーベルの立ち上げを発表されたのには、どんな意図があるのでしょうか?

田中 まず、既存のキャラクターコンテンツのビジネスモデルに対し、新しい試みが必要だなと感じたことです。現行のアニメの9割くらいは同じような形だと思うのですが、製作委員会が結成され、Blu-rayやDVDといったパッケージ(映像ソフト)などでおもに利益を回収していくようなシステムです。こういった、既存のビジネスモデルに捉われない形でチャレンジしてみたいと感じていました。

――テレビアニメの収益の課題として挙げられる部分でもありますね。

田中 はい。ですが、サイバーエージェントには、ゲーム化やネット配信など、現代のアニメファンの生活に寄り添った接点を自社内で用意できる環境がありました。そのうえで感じたのは、「このような環境を活かし、自社で企画、制作までを行う新たなスキーム(枠組み)を作り上げるべきだ」ということです。誰よりも先んじてそれを行うために、サイバーエージェントという企業が持つ極めて特徴的な風土、スピード感を重視して立ち上げていければと思っています。

パッケージ販売には頼らない

――では、シーエーアニメーションで制作するアニメに関しては、製作委員会のような体制はとらないということなのでしょうか?

田中 オリジナルタイトルに関しては、製作委員会のような多数の企業が参画するものではなく、なるべく自社のみ、もしくは数社の少ないパートナーさんとでやっていきたいと考えています。イニシアチブを執れる人数が多くなるほど、判断のスピードが遅くなってしまいますから。なるべく少数精鋭で、爆発力のある企画を作っていくことが理想ですね。おそらくは少数の企業でやっていくことになると思います。

――実際、サイバーエージェントグループではいろいろな事業を行っていますから、自社だけでかなりのことがやれてしまう土壌がありますよね?

田中 それもプロジェクトによりけりだと思っています。“その道のプロ”と言うように、どんな種類の企画にも、それに特化、精通した人材がそこかしこにいて、そういったスタッフとパートナーを組むことができれば、よりいいものを作れる可能性や効率も大きく上がりますから。そこは柔軟に対応していきたいですね。

――“新しいもの”を目指す一方で、アニメというコンテンツそのものが現在かなりの飽和状態にあるとも言われていますが、供給過多になっている市場に対し、シーエーアニメーションはどう挑んでいくつもりですか?

田中 基本的には、パッケージ販売のみには頼らない形でやっていきたいこうと思っています。“AbemaTV”での配信だとかゲーム化など、さまざまなマネタイズ手法を採用したマルチメディア展開を前提に進めるつもりです。そのやりかただと、自然と新たな形のビジネスモデルができ上がっていくはずなんですよ。

――アニメが売れたからパッケージやCDを売る、ゲーム化する……というのではなく、最初からすべて行うことを前提にやるということですね。

田中 最初からアニメ、ゲームなどさまざまな入口を用意することで、ユーザーさんにとってもその作品に親しむ機会が増えるはずですし、さらに各メディアの相互作用によってそれぞれの認知が高まるという効果も生まれます。また、アニメ単体、ゲーム単体ではできないような大規模な施策も打てるようになりますから、我々作り手にとっても選択の幅が広がることにもなるんです。より多くの人が触れやすいアニメで作品そのものの周知を補完し、ゲームではアニメで描き切れなかった物語などをコンテンツ化するなど、さまざまなメリットが生まれることになります。とにかくこれまでになかった手法をどんどん取り入れていくつもりです。

――その中には、たとえばテレビ放送のフォーマットであった“1週間に一度、30分の帯番組”といった形式などにも囚われないようになるということもあるのでしょうか?

田中 視聴習慣みたいな、お客さんがなじんでいるものもあるので、そういったところはユーザー属性を見ながら判断していくことにはなると思います。ただ、共感できるポイントは残しつつ、独創性を追求していくつもりです。あくまでお客さんファーストで、“望まれているもの”が何かを探っていきたいですね。

――媒体としては“AbemaTV”をメインに想定されているんですか?

田中 やはりメインは“AbemaTV”でやっていきたいと思っています。そのうえで、コンテンツに応じてベストなメディアを選んで展開していければ、より多くのお客さんに楽しんでもらえるのではないでしょうか。

約20年振りに結成された同期タッグ

――現在、5本の作品が動いていらっしゃるということですが、どんなタイプのものなのでしょうか? 世に知られているタイトルの派生ものなども含まれていたりするのですか?

田中 すべてオリジナル作品です。

――設定や物語などをイチから全部作るとなると、かなりの手間暇が掛かると思うのですが……。

田中 好きなんですよ、イチから作るのが。前の職場でもオリジナル企画をやりたくてプロデューサーを続けてきたところがあったんですよね。ここではさらに、ゲームの要素も加えなければならないということで、私にとってもスキルアップにつながるかなと。それから、今回目立つ形で発表させていただきましたが、シーエーアニメーションというのはあくまでレーベルでしかなく、分社化した会社でも組織でもなく、サイバーエージェントグループの共有物のような立場なんです。CA-Cygames アニメファンドも似たようなもので、こちらも部門ではなく任意組合の形を取っています。

――ちなみにゲーム化に際して、開発するグループ企業やスタッフの選定などはどのように行われているのでしょうか?

田中 やはりアニメ同様、適性を考慮して決めています。グループ内に10社以上あるゲーム会社はもちろんグループ外の会社さんとも組んだほうがいいジャンルもありますし、その他、スケジュールや人的リソースの問題もあるので、ケースバイケースにはなってくると思います。

――選定後、原作などコンテンツのベースになる部分は田中さんが先導されて作るのでしょうか?

田中 私がゼロから作るものもありますが、多くの作品は共同原作者のような形で別途著名なクリエイターを招いて制作することになるはずなので、その場合は共同で作ると思います。

――そうなると、アニメかゲームのどちらかをクリエイターさんによって考えてもらって、それからもう一方を考えるといったこともあるのでしょうか。

田中 シーエーアニメーションで作るものについては、最初からアニメとゲーム両方やることを前提にするつもりです。ですから、企画段階でその要素が盛り込まれることになります。なかなか特殊なスキルだとは思うのですが、現段階ではゲーム畑の経験が豊富な落合から意見をもらいつつ進めています。じつは落合とは前々職のときに同期だったので、もう20年くらいの付き合いになるんですよ。だから気心も知れていてやりやすいんです。

――アニメ畑を進まれてきた田中さんと、ゲームの落合さん、しかも元同期でコミュニケーションも取りやすいという、理想的な関係のツートップが組まれているんですね。

田中 今回私がサイバーエージェントに転職したのも、彼から「もう1回いっしょにやらないか」と誘われたのがきっかけだったので。

既存の枠組みにはないチャレンジ

――アニメ制作は、サイゲームスのアニメ制作スタジオである“サイゲームスピクチャーズ”に依頼するということもあるのでしょうか?

田中 将来的にはあるかもしれませんが、現段階では未定です。

――今後、シーエーアニメーションが軌道に乗ってきたら、外部からどんどん持ち込み企画なども来るかもしれませんね。

田中 軌道に乗るのを待たずに、どんどん送ってきていただきたいですね! この記事の下の方に“企画はつねに募集しております!”と一文入れておいてください(笑)。

――(笑)。現状の5本に止まらせることなく、チャンスさえあればどんどん企画も増やしていくということですね。ここでまたゲームの話に戻るのですが、ゲームメディアとしては、シーエーアニメーションさんのゲームがどんな媒体で出るのかも気になるところなのですが、家庭用ゲーム機で出す予定などはあるのでしょうか?

田中 現状ではスマートフォン向けを中心に考えていますが、タイトルによっては家庭用ゲーム機で出すこともあるかもしれません。

――楽しみにしております! なお、シーエーアニメーションというレーベルが打ち出された作品を実際に目にするのはいつごろになるのでしょうか……?

田中 恐らく2020年ごろになると思います。もちろん、情報を解禁してプロモーション活動を行うようになるのはもう少し前になると思いますが、それまでお待ちいただければと。