プロチームから『フォートナイト』のコツやマナーを学ぼう! 小中学生が対象の“DETONATOR塾 FORTNITE編”リポート_23

 幼少時の習いごとといえば、水泳、ピアノ、そろばんあたりが定番。最近はプログラミングやダンス、英会話など、時代を反映した塾も増えている。

 その並びに“オンラインゲーム”を加えてはどうか。ゲームを通してネットマナーや成功体験を学ぶのだ。そんな思いがプロゲーミングチーム・DeToNatorを動かした。

 DETONATOR塾、開講である。

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「ほら、お願いしますは?」と、受付を子ども自身がするように促すお父さん。学びには子どもたちの自主性が大切だ。

小学生も参加するのにアクセルベタ踏み

 2018年10月7日、DeToNatorはゲームプレイのコツをレクチャーする“DETONATOR塾”を開催した。初開催となる今回の教材はPC版『フォートナイト』。プロを目指すというより、『フォートナイト』に親しみを持ってもらうことが目的だ。

 対戦ゲームで楽しいのは勝つこと。そして、勝ちを目指して考え、努力し、成長すること。昨日できなかったことが今日できるようになれば、それこそが“成功体験”である。

 対象は小~中学生の親子3組で、参加費(月謝)もいただく。有料にすることで、塾としての本気度を高めたかったのだと思う。生徒にとっても、講師にとっても。

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DeToNatorで『フォートナイト』を中心に活動するふたりが講師を務める。左から、YamatoN氏、Killme氏、DeToNator代表の江尻氏。

 授業で使う資料はYamatoN氏が中心となって制作。彼はふだんから『フォートナイト』のプレイを配信しており、うまいだけでなく戦いかたの理論が明確だ。さらに、競技シーンへの造詣も深い。

 生徒が集まる前にPowerPointの資料をチェックしていた彼は、少し困った顔をしていた。

YamatoN氏「重すぎたかな。2GBくらいあるんですよ」

 言葉だけだと伝わりにくい項目は動画も交えて説明したいのだそうだ。資料は基礎編のほかにノウハウをみっちり詰め込んだ“FORTNITEの教科書”の2種類を用意していて、それぞれが2GBオーバー。

 準備中に“FORTNITEの教科書”を見せてもらったら、

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いきなり、これ。

 ひと言目が“上達するうえで必要なのは理論に基づいたイメージ”。小学生も参加するのに、アクセルベタ踏みである。本気で実戦向けの内容を教えに来ている。

 低年齢向けだからと言って、内容のレベルを下げることはない。大切なのは“プレイ理論をわかりやすく説明すること”なのだと思う。子どもだましではいけない。

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会場は都内のDeToNatorオフィス。PCが並んで設置されていた。

 ほどなくして生徒たちが到着した。

 生徒は15歳、10歳、9歳の男子。本人もしくは親御さんがDeToNatorファンなのかと思ったら、必ずしもそういうわけでもなかった。3人ともタイプがバラバラ。

・15歳
3人の中ではいちばんの熟練プレイヤー。DeToNatorのファンで、PC版の操作も手馴れていた。

・10歳
Nintendo Switch版プレイヤー。お母さんがこの塾のことをたまたま見つけたらしい。

・9歳
もともとはNintendo Switch版プレイヤー。塾に参加するにあたり、お父さんのPCで練習してきた。

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なお、Nintendo Switch版『フォートナイト』はCEROレーティング上では15歳以上を対象としている。“15歳未満は禁止”というわけではないので、親御さんにはどういうゲームか理解したうえでプレイを容認するか否かを判断してほしい。

 10歳の子のお母さんはDeToNatorを知らないようだった。

 話を訊いたら「私はゲームのことは詳しくないんですけど、この子が(『フォートナイト』を)好きなのは知っていました。ネットでこの塾のことを見つけて、話したら興味がありそうだったので」とのこと。

 僕はゲームがいま以上に浸透するには親御さんの理解が大切だと思っている。このひと言は何よりうれしかった。

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資料を見たり、ときにはプレイ用に席替えしたりしながら進行。

 冒頭で、YamatoN氏は「思ったより(参加者の)レベルが高いので、物足りないかもしれないけど、そのときは質問してください」とあいさつした。あれほどの資料を用意しておきながら「物足りないかも」。若い子への期待が感じられる。

 塾はYamatoN氏が基礎編の資料をもとに説明しつつ、Killme氏が実演を交えて補足する流れで進行した。ダイジェストでどうぞ。

戦いかたのポイント

勝つためには敵がいないところに降りてアイテムや資材を集める
 安全に物資を集めるには、最初に名前がついていない場所を選ぶのもおすすめ。移動しやすいという意味で裂け目(ワープポイント)の近くもいい。

資材は家に入って安全に集める
 壁がある場所なら撃たれにくい。『フォートナイト』は照準が体の右側にあるので、左側に壁がある立ち位置を意識するといい。

建築合戦で相手に上を取られたら、壊して下に降ろしてから上を取り返す
 上を取ったほうが全体的に有利。相手に上を取られたら、屋根を作って銃撃を防ぐ。

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2段目以上の位置にある建築物は、編集機能で斜めに切ると一気に崩せる。
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Killme氏が実演すると「すげー」、「(建築するのが)早い!」と感嘆の声がもれる。

 スピーディーに編集機能を使うには、敵がいない“プレイグラウンド”モードで反復練習するのがいちばん。操作の流れを手で覚えれば、とっさの状況でもつまらずに建築できるようになる。

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練習用として、Killme氏はまっすぐ進みながら階段、屋根、床、床、壁と作っていくパターンを提案。

 YamatoN氏によると、建築は先に大ダメージを先に与えるための要素だという。優位に立ったうえで、最後はサブマシンガンなどでとどめをさす。まさに土台を整えるためのもの。

 狙って射撃する能力を鍛える際に大切なのは、反復練習と感度の設定だ。感度は好みにもよるが、低めのほうが当てやすくなるだろうとのこと。

「多いのは、マウス感度が400dpiで、ゲーム内の感度設定は0.10~0.16のあたり。振り向き(※)は15~20センチですかね。最初は20センチくらいから始めてもらって」とは、YamatoN氏の弁。

(※振り向き:キャラを180度回転させるとき、マウスを横に動かす長さのこと)

 あらかじめ気にしておきたいのはマウス操作時の支点。手首が支点ならハイセンシ(高感度)、肘を支点にして腕全体で操作する人はローセンシ(低感度)。この辺はFPS/TPSの基本でもある。

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 9歳の子はマウスもゲーム内設定もデフォルトでプレイしていた。「習ってから変えたほうがいいかなと思いまして」と、お父さん。

 Killme氏は「身体の成長に合わせて変えていったほうがいいかもしれないですね」と提案した。最初に極端なローセンシに慣れると、手首への負荷が大きくなりがち。適度にストレッチしないと手首を痛めることもあるそうだ。成長期に癖をつけることはない。

環境設定のポイント

スコープ使用時のマウス感度を下げる
 『フォートナイト』では、通常時とスコープ(ズーム)使用時の感度を別で設定できる。スコープを使うのは細かく狙いたいとき。振り向きを倍くらいに設定してもいいそうだ。

Y軸の感度を下げる
 これも遠くの敵を狙うときに役立つ設定。Y軸、つまり縦方向の感度を下げると照準が安定する。操作中にマウスが波打つような人はY軸だけ落とすのはあり。

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Killme氏は手首がかたく、可動域が狭いそうだ。たまにストレッチを挟んでいるとのこと。
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ちくいち操作しやすさを確認しながら、キー設定を見直していく。
建築の基礎をマンツーマンで教わる。
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足を凍らせるトラップ“冷却装置”を使った遊びで少し息抜き。
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こちらのお母さんもにこにこして見守っていた。

技術とマナーを楽しく学ぶ

 講義の後は実践編だ。プレイを横から確認しながら気づいた点をアドバイスしていく。50 VS 50の期間限定モードに参戦し、せっかくなのでボイスチャットも使用することになった。

 9歳の子のお父さんは、家ではまだボイスチャットを使わせていないと言っていた。いきなり知らない人と話すのは親としては心配だろう。その点、顔を合わせた生徒同士なら安心だ。

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我が子がプレイに励む様子をスマホで撮るお父さん。

 取材をしていて、若者の成長速度に驚かされた。9歳の子はキー設定の変更を難なく受け入れ、10歳の子はPC版には慣れていないはずなのに1対3で撃ち勝つ場面もあった。YamatoN氏は思わず「おおおお、すげえ!」と声を上げる。

 10歳の子は引っ込み思案なのか緊張していたのか、最初は表情がかたく口数も少なかった。それでも、プレイを続けるうちに徐々に笑顔が増えていく。やがて、たどたどしいながらも仲間に状況を報告するようになった。

 15歳の子はこの塾をずっと前から楽しみにしていたらしい(お父さん談)。ひと通りのカリキュラムが終了した後も補習を願い出るなど、やる気は十分だった。『フォートナイト』に前向きに取り組む姿勢を見ていると、胸が熱くなる。

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 およそ2時間の講義が終わると、参加者には復習用の教材が手渡された。記事の冒頭で前ふり部分をちら見せした“FORTNITEの教科書”だ。中にはプレイ理論がまとめられている。

 『フォートナイト』のことを詳しく知らなくても“YamatoN氏が伝えたいこと”は読み解けると思うので、親御さんといっしょに考えるのもいい。ゲームを軸にした親子のコミュニケーションだ。

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“FORTNITEの教科書”を少しだけ抜粋。動画付きなので、行き詰ったときの参考資料としても活用しやすい。
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親子で話し合って役立ててほしい。理論的な部分はとくに。

 この塾を主宰したDeToNator代表の江尻氏は「オンラインゲームでは、挨拶をしたり、仲間に声をかけることが大切。そこに年齢は関係ありません。まずは(ゲームは)コミュニケーションツールのひとつであると理解していただきたい」と語る。

 また、ゲームを楽しく遊ぶにはある程度の教育も必要だと感じているという。オンラインゲームは人とも接するもの。マナーをきちんと教え、礼儀に反したときには厳しさも必要だ。

 どういう形でネットのマナーを教えるべきか、悩める親御さんも多いだろう。そこで、子どもが興味を持ちやすいゲームを教材にするのはありなんじゃないかと思う。

 子どもたちは素直だ。すごい人の言葉には真剣に耳を傾ける。9歳の子のお父さんは「先生が優しく教えてくれてわかりやすいみたいで、素直にゲームに取り組んでいますね」と感心していた。これならボイスチャットのマナーなども自然に吸収してくれるだろう。

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生徒の理解に合わせて物事を考える必要があるので、教える側のYamatoN氏やKillme氏にとっても勉強になるだろう。

 2017年の秋頃にDeToNator代表・江尻氏やRascal Jester代表・大川氏と雑談をしていたときのこと。ふたりは“次世代のプレイヤーが出てくるかどうか”を心配していた。

 ゲームの実力は当然として、プロゲーマーには人間的な魅力も備わっていてほしい。そのためには、子どものうちからゲームとマナーの両面を教える“アカデミー”みたいな組織があってもいいのではないか。そんなことを話した記憶がある。

 理想の実現に向けて、DeToNatorは第一歩を踏み出した。今回はゲームの技術面に特化していたが、伝えたいことはまだまだあるはず。

 DeToNatorがその名の通り起爆装置となり、子どもたちにゲームとの正しい接しかたを伝える活動が広まることに期待したい。

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おつかれさまでした。