『ポケモン Let’s Go! ピカチュウ・Let’s Go! イーブイ』、『ポケモンGO』、そして2019年の最新作。石原社長に訊く、ポケモンの成長戦略

2018年5月30日に行われたポケモン新作発表会では、ニンテンドースイッチ向けのタイトルが2本同時に発表された。『ポケモン』ゲームの本格的なプラットフォーム移行が鮮明になったわけだが、そこにはどんな意図と戦略があるのか。ポケモンの代表取締役社長であり、ポケモンブランドの全体を統括している石原恒和氏に話を聞いた。

 2018年5月30日に行われたポケモン新作発表会で、ニンテンドースイッチ向けのタイトルが2本同時に発表された。『ポケモン』ゲームの本格的なプラットフォーム移行が鮮明になったわけだが、そこにはどんな意図と戦略があるのか。今回、ポケモンの代表取締役社長であり、ポケモンブランドの全体を統括している石原恒和氏に話を聞いた。『ポケットモンスター』シリーズの展開を始め、ポケモンコンテンツの未来について語られたファン必読の内容だ!

※本記事は、2018年6月7日発売号の週刊ファミ通に掲載している内容です。
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ニンテンドースイッチのマーケット環境について

――『ポケモン』のゲームがニンテンドースイッチで本格的に展開されることには大きなインパクトがありますが、ニンテンドースイッチというプラットフォームの現状について、石原社長の見立てを教えていただけますか。

石原 1年前「ニンテンドースイッチは売れないのではないか?」と考えていた人間の言葉に説得力があるのかわかりませんが(笑)、ニンテンドースイッチという、ハンドヘルド(携帯機)とホームコンソール(据え置き機)の統合機は、得体の知れないものとして、当時どんな売れかたをするかよくわからなかったというのが正直なところです。売れ筋が見えなかった。ところが、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の圧倒的なおもしろさによっていい流れができて。あれが大きかったように思います。

――ローンチタイトルとしては、傑出したおもしろさでしたよね。いいゲームがプラットフォームの立ち上げを後押ししたと。

石原 そうですね。その後も『マリオカート8デラックス』や『スーパーマリオ オデッセイ』などがいいタイミングで発売されていて、ハードの普及が進んでいます。『Nintendo Labo』のような、ふだんゲームを遊ばない層までを巻き込む遊びも出てきましたし、プラットフォームとしては理想的な環境になりつつありますね。これは我々が新たなゲームを投入するうえでは絶好の機会で、ここでまた新しい体験を提供し、より多くのファンを獲得していこうと考えています。

――これまでの『ポケモン』のゲームも、ハードがある程度普及したタイミングで、それをさらに加速させるように新作を投入されることが多かった印象があります。いままさに、機が熟したということでしょうか。

石原 その通りです。ただ、このタイミングで『ポケモン』の新作を投入できるのは、ニンテンドースイッチの立ち上げ期から、すでに開発を始めていたからなのです。それこそ、私が「このハードは売れないのでは?」と考えていたころから、我々のゲームがプラットフォームをけん引するぞ、という気概を持っていました。その意味では、今回の2作品はニンテンドースイッチというハードに対して、我々が出せるひとつの答えでもあるのです。

――長年、携帯ゲーム機向けに展開してきた『ポケットモンスター』シリーズがニンテンドースイッチではどうなるのか、興味深いところです。遊びかたは変わるのでしょうか。

石原 おっしゃる通り、『ポケットモンスター Let’s Go! ピカチュウ・Let’s Go! イーブイ』(以下、『ポケモン Let’s Go! ピカチュウ・Let’s Go! イーブイ』)は『ポケットモンスター』シリーズとしては初の据え置き機でのタイトルとなります。ニンテンドースイッチというハードは携帯ゲーム機的な側面もあるのですが、これまでとは異なる発想で開発に取り組む必要がありました。そこは、増田さん(増田順一氏)を始め、ゲームフリークの中でも試行錯誤があって。『ポケットモンスター』シリーズをニンテンドースイッチで展開するうえで挑戦すべき課題とは何なのか?そしてグラフィックやサウンドなどの面でゲーム体験をリッチにすることのほか、今回我々が挑戦したのが、スマートフォン向けゲームアプリ『ポケモンGO』との連携だったのです。

――驚きの発想ですが、それによって『ポケモン Let’s Go! ピカチュウ・Let’s Go! イーブイ』の遊びの幅が大きく広がった、というわけですね。

石原 結果として今回ゲームフリークがもっとも苦労した要素となったのですが、ニンテンドースイッチとスマートフォンをつなげるということで、任天堂やNiantic,Incにもいろいろと技術的な挑戦をお願いし、無茶な要望もたくさん聞いていただきました。

『ポケモンGO』プレイヤーがつぎにプレイするタイトルへ

――非常に革新的で、発売後の動向が楽しみなタイトルです。ちなみに、どんなターゲット層を想定されているのでしょうか。

石原 もちろんすべてのゲームファンに遊んでいただきたいのですが、とくに考えているのは、『ポケモンGO』で初めて『ポケモン』ゲームに触れた方が、つぎに遊ぶ『ポケットモンスター』シリーズのタイトルになってほしい、ということです。

――なるほど。家庭用ゲームへの入り口というわけですね。それでポケモンの捕まえかたなどが、『ポケモンGO』プレイヤーに親しみやすい作りになっていると。

石原 そうですね。『ポケモンGO』では、ゲームの設計部分に増田さんが深く関わっていることもあって、「『ポケットモンスター』シリーズに『ポケモンGO』の遊びかたを取り入れたらどうなるの?」と考えました。ポケモンをゲットするときにバトルをして弱らせるわけではなく、収縮するリングに合わせ、直接モンスターボールを投げて捕まえる。それが『ポケモンGO』を遊んできた人にとって、もっとも自然なポケモンの捕まえかたですよね。しかし、当初は、「それはもう『ポケットモンスター』シリーズではない」と、各所から違和感が噴出していたようです(笑)。でも実際に、シンボルエンカウントでポケモンに出会い、モンスターボールを投げ、“Excellent!!!”という文字が出る様子を見ながら遊んでいると、「これはこれでアリだよね」となって。その後も、ポケモンを捕まえる難易度のバランスについての議論があったりしましたが、最終的には『ポケモンGO』のようなシステムを採用することに決まりました。

――『ポケットモンスター』シリーズとしては、劇的な変化を遂げているわけですが、挑戦的なタイトルをこの時期に作られることにはどのような意図があるのでしょうか。

石原 『ポケモンGO』によって、これまで『ポケモン』を遊んだことがない人々にまで、ポケモンの認知が広がりました。いまはそういった人々が世界中で、親と子、あるいは孫と子で『ポケモンGO』をプレイしてくれています。そのような人々にとっての『ポケモン』は、まだ入門的な段階にあると思っており、それをもう1段階踏み込んだステージに押し進めたいのです。ですが、いきなり『ポケモンGO』とはゲーム性が異なる『ポケットモンスター』シリーズで遊んでいただくことは、プレイヤーによってはハードルが高く感じられることもあるかもしれません。前述の話と重複しますが、まずは『ポケモンGO』の操作感に近い部分がある『ポケモン Let’s Go! ピカチュウ・Let’s Go! イーブイ』に触れていただいて、さらにその先にある、本作とは別にニンテンドースイッチ向けに開発中の新作をプレイしていただきたいなと。我々としては、そうした想いがあります。

――そのための大胆な変革であると。

石原 そうですね。結果的には、いままでの『ポケットモンスター』シリーズとはまた違った感触のゲームになっています。