2018年6月9日、10日にかけて千葉県・幕張メッセにて“ポケモンジャパンチャンピオンシップス(以下、PJCS2018)”が開催された。本大会は、『ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン』を使用したゲーム部門、カードゲーム部門、そして『ポッ拳 POKKEN TOURNAMENT DX』を使用した『ポッ拳』部門の3部門からなる。
各部門とも年齢によってジュニア・シニア・マスターのカテゴリに分けられ、日本一のポケモンプレイヤーの座をかけて真剣勝負が行われた。上位入賞者は、8月にアメリカのテネシー州ナッシュビルで行われる“ポケモンワールドチャンピオンシップス2018(以下、ポケモンWCS2018)”の出場権を獲得。とくに優秀な成績を収めたプレイヤーには招待出場権が与えられる。
PJCS2018に参加できるのは、厳しい予選を潜り抜けた歴戦の猛者たちばかり。会場には選手のほかにも、たくさんのポケモンファンが観戦に集まり、選手たちが魅せてくれる大熱戦を前に手に汗を握った。
本稿ではゲーム部門、とくにマスターカテゴリのバトルにフィーチャーして、その模様をお届けする。
自慢の隠し玉が炸裂か!? “ダークホース”ニドクインが決勝に登場
1日目に行われた予選、そして本選を勝ち進み、マスターカテゴリの決勝戦まで駒を進めたのは、キムラ ヒロフミ選手とコスゲ リョウスケ選手の2名。
キムラ選手は、1月に行われたインターネット大会“2018 International Challenge January”でランキング1位に輝き、PJCS2018の出場権を獲得した優勝候補のひとり。コスゲ選手は、2013年のPJCS2013で優勝、さらに同年のポケモンWCS2013では準優勝を果たしているベテランの強豪。本大会で優勝すれば、2度目のPJCS優勝となる。
両選手は、前日の決勝トーナメントでもそれぞれ配信卓に登場。お互いに圧倒的な力量を見せつけており、決勝のバトルには期待が高まる。キムラ選手、コスゲ選手の選んだポケモンたちはそれぞれ以下のとおり。
【キムラ ヒロフミ選手】
【コスゲ リョウスケ選手】
ベスト8まで勝ち上がった選手のポケモンたちは、持ち物や技構成などがバトル前に公開されている。そのため、両名とも相手の情報を得たうえで対策を立てて決勝に臨んでいることだろう。
それぞれのポケモンたちを見てみると、やはり際立つのがキムラ選手のニドクイン。覚える技のバリエーションが多いことや、ニドクインが持つ特性“ちからずく”が、持ち物“いのちのたま”と相性がいいという強みがあり、シングルバトルではたまに見かけるポケモンだ。
しかし、WCSルールではめったに見ないポケモン……というより、マッチングしたことがない人がほとんどではないのだろうか。少なくとも筆者はレーティングバトルでもPJCS2018のオンライン予選でも見たことがなかった。
そんなキムラ選手のニドクインは、ダブルバトルではどのポケモンにおいてもよく使われる“まもる”のほか、タイプ一致技の“ヘドロばくだん”と“だいちのちから”、そして対戦でよく見かけるランドロス(れいじゅうフォルム)やボーマンダなどの弱点をつける“れいとうビーム”を覚えている。
これらは、WCSルールではとくに採用率の高い“カプ”たちを始めとするフェアリータイプに強いどく技、そしてどく技を無効にするはがねタイプに強いじめん技。さらにじめん技を無効にするひこうタイプに強いこおり技というように、かなり多くのポケモンに対して有効な攻撃ができるように意識されている。
実際、コスゲ選手のポケモン6匹中、なんと6匹すべてに対して効果抜群の攻撃ができる。コスゲ選手がいかにこのニドクインを攻略するか、あるいはニドクインが期待通りに活躍するのか。いずれにせよ、ニドクインに注目が集まるバトルになりそうだ。
その姿はまさに女王! ニドクインが獅子奮迅の大活躍!
まずお伝えしたいのが、両選手ともに選出や技の選択に“迷いがなかった”ということ。おそらく事前情報をもとにたっぷりとシミュレーションを重ね、相手の行動を読み、それに対する自分の行動を用意してきていたのだろう。
さて、さっそく1ゲーム目の内容をかいつまんでお伝えしていこう。まず勝負が動いたのは序盤、キムラ選手がクレセリア&ニドクイン、コスゲ選手がメガボーマンダ&ギルガルドという盤面。クレセリアが“てだすけ”によってニドクインの技の威力を高め、ニドクインの“だいちのちから”でギルガルドがダウン。いきなりキムラ選手が数の有利を作った。
このターンにメガボーマンダは“おいかぜ”を使用して味方の素早さを上昇させるが、“おいかぜ”の効果ターンをキムラ選手にうまくしのぎ切られてしまう。その後コスゲ選手は後続のカプ・レヒレも倒されてしまい、降参を選んだ。
というわけで、1ゲーム目はキムラ選手が勝利。このゲームのカギとなったのは、クレセリアの“てだすけ”だろう。ニドクインは優秀な技範囲によって多くのポケモンに対して弱点となる技で攻撃できるが、特攻のステータス自体はそこまで高くない。特防がかなり高いギルガルドに対しては、タイプ一致技の“だいちのちから”で弱点を突いたとしても倒しきれない。それを補うのが、クレセリアの“てだすけ”だったのだ。
また、ニドクインは素早さもそこまで高くない(低くもないのだが)。しかしそれも、クレセリアの“こごえるかぜ”によって相手の素早さを下げることでカバーされている。ニドクインの個性は、クレセリアのサポートによって最大限引き出されていたのだ。
キムラ選手が優勝に王手をかけた状態で迎える2ゲーム目。両者の初手は変わらず、キムラ選手がクレセリア&ニドクイン、コスゲ選手がメガボーマンダ&ギルガルドだ。そして、2ゲーム目も勝負は序盤から動いた。
1ゲーム目でギルガルドを狙われたことを受け、コスゲ選手はギルガルドに発動したターンに受けた攻撃技を無効化できる“キングシールド”を指示。その隙にメガボーマンダが“おいかぜ”を使用して有利な状況を作ろうとした。しかし、それをキムラ選手は完ぺきに読み切っていたのだ。クレセリアをガオガエンに交代し、ニドクインはメガボーマンダに“れいとうビーム”を放った。メガボーマンダは弱点を突かれ、戦闘不能に。ここで、この日いちばんの大歓声があがった。
またしても、ニドクインがゲーム開始早々に大活躍を見せた。なんとかメガボーマンダが残した“おいかぜ”状態を活かしたいコスゲ選手だったが、キムラ選手は冷静に“まもる”やガオガエンの高くない素早さを逆に利用した後攻“とんぼがえり”を活かして4ターンをしのぎ切る。
コスゲ選手のカプ・レヒレは、性格はひかえめ(特攻が上がりやすい)。対してキムラ選手のニドクインの性格はおくびょう(素早さが上がりやすい)。
カプ・レヒレは“めいそう”を使用して特攻と特防を上げていたので、もし、カプ・レヒレがニドクインより先に“だくりゅう”で攻撃できれば、ニドクインを倒せて、戦況が変わっていたかもしれない。しかし、先述した性格の違いによる微妙な差によってか、先に攻撃できたのはニドクイン。“ヘドロばくだん”でカプ・レヒレを突破し、つぎに出てきたギルガルドもクレセリアの“てだすけ”を受けつつ“だいちのちから”で倒してしまった。
この時点でコスゲ選手のポケモンはガオガエン1匹だけとなり、コスゲ選手は降参を選択。この瞬間、マスターカテゴリの日本一はキムラ選手に決定した。