エントリー12作品が予選会を実施
日本ゲーム大賞2018“U18部門”は、18歳以下の次世代クリエイター発掘を目的として、新たに設立された部門だ。初のコンテスト開催となる今大会では、100作品を超えるタイトルがエントリー。2018年6月3日に、東京・渋谷で予選大会が開催され、一次審査をクリアーした12タイトルの若きクリエイターが登壇し、決勝大会進出へ向け凌ぎを削った。その予選大会の模様をお届けする。
なおノミネート作品、および開発チームは以下のとおり。
・『伊邪那岐 ~黄泉がえしの旅~』(雲雀丘学園高校)
・『Iridescent』(ヒューマンキャンパス高等学校)
・『THE REALITY』(沖縄工業高等専門学校)
・『すすめ!! ほこりくん!!』(バンタンゲームアカデミー高等部東京校)
・『なんで僕だけ こんな目に』(横浜私立美しが丘小学校)
・『PREVERSE』(渋谷教育学園渋谷高等学校)
・『パペットキャットと不思議な塔』(神戸市立科学技術高等学校)
・『FooDefense 【食べ物を守れ!】』(宮城県工業高等学校)
・『回一首(まわりっしゅ)』(早稲田実業学校)
・『モチ上ガール』(徳島市立高校)
・『MONKEY MILLOR(モンキーミラー)』(神奈川県立川崎工科高等学校)
・『RunGirl』(神戸市立科学技術高校)
会場には試遊マシンが設置され、来場者が自由にノミネート作品を楽しむことができた。
実機プレイとプレゼンで最終審査
予選大会は、まず事前に審査員が試遊プレイで実機審査し、その後にステージで行われるプレゼンテーションと合わせて最終的に審査されたのち、決勝大会に進む作品が選出される運びだ。実機審査のポイントは作品点(ゲーム、娯楽作品、娯楽としてのおもしろさ)、独創性(独創性、新規性、目新しさ、驚き)、構成力(実装上のさまざまな工夫や発明の、無理のない実装)、技術点(プログラム、アート、サウンドなど技術的な完成度)。またプレゼンテーションでは、構成(ストーリー構成)、資料(資料の完成度と工夫)、話しかた・動作(プレゼンテーションスキル)が評価の対象となった。
審査員は、グリーの下田翔大氏、スマイルブームの徳留和人氏、ディー・エヌ・エーの山口誠氏、サイゲームスの南野真太郎氏の4名。プレゼンテーションステージの司会進行は、スクウェア・エニックスの時田貴司氏が務めた。
ステージではまず、時田氏の紹介により、主催団体のコンピュータエンターテインメント協会(CESA)人材育成部会 部会長である、セガゲームス代表取締役社長 COOの松原健二氏が登壇。以下のように、開会のあいさつを語った。
「U18部門は今年初めての開催ですが、日本ゲーム大賞自体は、もう20年以上の歴史があります。昨年の大賞は、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』でした。このU18も、そんな作品部門とも並ぶいち部門となり、皆さんはその栄えある第一回応募者というわけです。決勝大会は、9月に行われる東京ゲームショウ。ぜひはりきってプレゼンテーションをやっていただければと思います。今回の作品に関わった人たちが、5年後、10年後、20年後に、実際にプロとなって作品部門で大賞を取る。そんなことが本当にあればいいなと思います」(松原氏)。
続いては審査員4人が紹介され、それぞれがコメントを述べたのち、いよいよ開発チームによるプレゼンテーションがスタートとなった。
司会としてMCを務めたのは、ゲームファンにはおなじみの時田氏。
松原氏が若きクリエイターたちにエールを送った。
予選大会の審査員4名。左上から、グリーの下田氏、スマイルブームの徳留氏、左下からディー・エヌ・エーの山口氏、Cygamesの南野氏。
各チームが熱を込めゲーム紹介
資料や動画などによる、ゲーム紹介の持ち時間は5分。その後に審査員から質疑応答が行われる形で、各チームのプレゼンテーションが進行した。以下はそのステージ風景やゲーム概要を、チームごとにフォトリポートのスタイルで紹介する。
『MONKEY MILLOR(モンキーミラー)』(神奈川県立川崎工科高等学校)
神奈川県立川崎工科高等学校 中村海渡さん、小坂涼さん、須藤秀康。
人間にとらえられたサルを研究所から逃がすアクションゲーム。2Dと3Dの切り替えでギミックを解いていくシステムが特徴的。鏡に入ることで、つぎのステージに進める。
『回一首(まわりっしゅ)』(早稲田実業学校)
テーマは百人一首。句の文字が順番に、ステージの下から上に回転しながら移動してくる。プレイヤーのボールが、それに引っかかって上に持っていかれたらアウトだ。
『FooDefense 【食べ物を守れ!】』(宮城県工業高等学校)
フードロスという社会現象をテーマとした、横スクロールアクション。主人公はトマトで、生産から無事に消費されるまでをゲーム化した、ユニークなコンセプトの作品。
『RunGirl』(神戸市立科学技術高校)
神戸市立科学技術高校 原先亮介さん、薄井大輔さん、大本義貴さん
2度のボツ企画を経て作り上げた難産タイトル。360度どんな壁でも走れるキャラクターがステージを疾走する。ステージごとにテーマを決めて変化を付けている。
『Iridescent』(ヒューマンキャンパス高等学校)
ブロック崩しに、キャラクター育成要素をプラスして、現代風にアレンジした作品。多彩な攻撃スキルや派手なビジュアル演出など、システムへのこだわりも充実。
『モチ上ガール』(徳島市立高校)
スパイダーマンのクモの糸のように、手からモチを伸ばして進んでいくアクションゲームだ。開発者はUnityインターハイ2017で準優勝したこともある実力者。
『PREVERSE』(渋谷教育学園渋谷高等学校)
競技プログラミングが専門というふたりのタッグがゲーム制作にチャレンジ。グラフィックなどの見た目は味気ないものの、ゲーム性やアルゴリズムは高い完成度を誇る。
『なんで僕だけ こんな目に』(横浜私立美しが丘小学校)
作者はノミネート作品の開発者最年少、なんと小学4年生。ゲーム内容は、手前の坂から転がってくる敵を倒すというシンプルなもので、間口の広さを感じさせる。
『伊邪那岐 ~黄泉がえしの旅~』(雲雀丘学園高校)
雲雀丘学園高校 大川隆明さん、川上滉己さん、鬼木凜さん
古事記のイザナギ&イザナミの物語をモチーフとした3Dアクション。開発の3人は、音楽・キャラクター・プログラミングと、きっちり役割を分担して制作に当たったとのこと。
『THE REALITY』(沖縄工業高等専門学校)
ゲームシステムやアクションもさることながら、とにかく徹底した世界観の構築が秀逸。キャラクター設定、舞台など、独自の世界をとことん作り上げている印象だ。
『パペットキャットと不思議な塔』(神戸市立科学技術高等学校)
神戸市立科学技術高等学校
西尾太佑さん、野村大貴さん、名倉倖太さん
アニメチックなキャラクターデザインが特徴的なアクションで、テイストは日本一ソフトウェア風? プレゼンでは開発メンバーのメモ帳なども公開された。
『すすめ!! ほこりくん!!』(バンタンゲームアカデミー高等部東京校)
バンタンゲームアカデミー高等部東京校 野口龍啓さん、鬼頭紀碧さん、西村優杜さん
主人公はホコリとなり、掃除されないように戦っていくというゲーム。子供向けを意識したとのことで、システムはシンプルで、グラフィックも温かみあるタッチ。
決勝にはなんと小学生も2組進出
全チームのプレゼンテーションが終わったあとは、審査タイムとして休憩が取られたのち、結果発表に。審査の結果、6タイトルが選出され、9月の東京ゲームショウでの決戦大会に挑むことととなった。各タイトルと、受賞者代表のコメントは以下のとおりだ。
『回一首(まわりっしゅ)』(早稲田実業学校)
「選ばれるとは思っていなかったのですごくうれしいです。決勝大会までにもっとブラッシュアップしていきたいです」(菅野晄さん)
『RunGirl』(神戸市立科学技術高校)
「難産で苦労して作ったゲームだったので、本当に選ばれてうれしいです。決勝大会にふさわしいよう、ブラッシュアップをがんばっていきたいと思います」(原先亮介さん)
『モチ上ガール』(徳島市立高校)
「単純に選ばれてうれしいので、帰りは寿司とか食べます(笑)。友だちや家族にも自慢しまくりたいし、モチベーションは上がってます。“モチ”だけに(笑)」(渡邉大誠さん)
『PREVERSE』(渋谷教育学園渋谷高等学校)
「UIのわかりにくさとかもあったし、ゲームのゴールもわかりづらかったと思うので、もう少し見た目を改善していきたいと思います」(浅野啓さん)
『なんで僕だけ こんな目に』(横浜私立美しが丘小学校)
「みんなすごい作品ばかりの中で、まさか選ばれるとは思ってなかったです。選ばれたからには、もっとすごいゲームにしていきたいです」(池上颯人さん)
『THE REALITY』(沖縄工業高等専門学校)
「短い製作期間で荒削りなものを、評価していただいたので、そのコンセプトをもとにしっかり作りたいと思っています」(古堅武琉さん)
タイトル発表のあとは閉会式に移り、CESA人材育成部会 副部会長の、バンダイナムコスタジオ・斎藤直宏氏が登壇が登壇。締めくくりのあいさつがあったのち、フォトセッションが行われてイベントは幕となった。
「100を超えるエントリーから今日まで残ったのは、それだけですごいことです。自信を持ってください。これからも、友だちもどんどん巻き込んで、ものづくりの楽しさを教えていってください。今日はお疲れさまでした!」(斎藤氏)。