『Detroit』インタビュー マーカスとノースが語らう。マーカス役・内田夕夜さん&ノース役・恒松あゆみさん対談【Quantic Dream特集その9】

連日お届けしているQuantic Dream特集の番外編として、『Detroit: Become Human』から、主人公となるアンドロイドを率いる存在となるマーカスを演じた声優の内田夕夜さんと、マーカスと深く関わるアンドロイドのノースを演じた、声優の恒松あゆみさんの対談をお届けする。

 世界中のゲームファンの心を揺さぶるインタラクティブなアドベンチャー作品を生み出してきたフランスのスタジオQuantic Dream。ファミ通ではQuantic Dreamへ訪問し、独占取材を決行。ファミ通.comで連日インタビュー記事を公開してきた。その番外編として、Quantic Dreamの最新作『Detroit: Become Human』(以下、『デトロイト』)から、アンドロイドを率いる存在となる主人公・マーカスを演じた声優の内田夕夜さんと、マーカスと深く関わるアンドロイドのノースを演じた、声優の恒松あゆみさんの対談をお届けする。

プロフィール

内田夕夜(うちだ ゆうや)

埼玉県出身。吹き替えではレオナルド・ディカプリオやライアン・ゴズリングを担当。アニメ『七つの大罪』ヘンドリクセン役など出演作多数。

恒松あゆみ(つねまつ あゆみ)

兵庫県出身。アニメや映画の吹き替え、ナレーションで活躍。代表作はアニメ『機動戦士ガンダム00』マリナ・イスマイール役など。

マーカスのアンデンティティの確立が何よりも重要

――まず、おふたりが演じたマーカス、ノースがどのようなキャラクターなのかを教えてください。

内田 (資料を読みながら)「サイバーライフ社によって特別な目的のために製造されたアンドロイドです。デトロイト市内の高名な老人のもとでライフサポートを行っていましたが、とある理由で、そこから失踪……」という感じです(笑)。

――資料そのままじゃないですか(笑)。

内田 まあ、どんなキャラクターかと言われると、まさにいま資料で読み上げたようなキャラクターです。性格はとても穏やか、かつ謙虚で、優等生という印象です。

――穏やか……とのことですが、ストーリーを進めていくと、激昂している姿も見られるようですね。

内田 見られます。

――基本的には、穏やかな性格のアンドロイドなんですか?

内田 そこがまさに難しいところで……。性格といっても“人”ではないんですよ。それに彼はアンドロイドなので、激昂したとしても、人間に危害を加えない範囲でしか行動できないんです。なので、基本的にはすごく穏やかなアンドロイドなんですけども、その内側には正義感や人間を守りたいという、強い意志のようなものを持っています。ただ、人間を守りたいという想いも、アンドロイドとして人間を守るようにプログラムされているからなのかもしれないので、彼自身から生まれた想いなのかは微妙なところです。そんな彼が自身のアイデンティティを確立していこうとするんですが、そうするゆえにいろいろと感情が激しく変わっていって、そんな自分に彼自身も驚いたりします。

――そういう感情の変化から、マーカスの新たな面が出てくるんですね。性格に振り幅があると、演じるときの気持ちの切り替えが大変なのではないのかと思うのですが。

内田 今回はすごくありがたいことに、自分のセリフだけを抜粋した台本ではなく、すべてのセリフが書かれていた台本をいただいたんですよ。なので、僕はすごく楽でした。完全に1本の映画のようにシーンの順番や流れが書いてありましたし、「選択肢によってはこういう流れになります」と補足もされていたので、その状況に合わせたマーカスになることができました。

意志のようなものを持ち始めた“変異体”と呼ばれるアンドロイドを率いることになる、特別なアンドロイドのマーカス。

内に人間への怒りを秘めた、変異体のアンドロイド、ノース。

――では、恒松さんが演じたノースはどのようなキャラクターでしょうか?

恒松 私が担当させていただいたノースは、マーカスとは正反対のアンドロイドです。けっこう乱暴というか、雑というか……。ディレクターさんからも「語気をもうちょっと強く」みたいな演出をいただいたりもしましたし。彼女の場合、自分は道具だという意識はなく、アンドロイドの解放を望んでいるんですね。目的のためには手段を選ばないくらいの強さも持っていますし、すごく感情的で攻撃的な印象を受けました。ただ、彼女の過去とも関係しているのかもしれないのですが、マーカスといるシーンでは繊細な部分も見せたりするキャラクターでもあって……難しいキャラクターなんですよね。

――複雑なキャラクターのようですね。では、そんなアンドロイドの役を演じるにあたって、役作りなどでは人間ではないところなどを意識しましたか?

恒松 私は最初、役作りについてディレクターさんにお聞きしたんですけど、「(アンドロイドであることは)気にしなくてもいいよ」という演出をいただきました。そこからはアンドロイドか人間かではなく、ただ“生きている”ノースを演じるようにしました。夕夜さんはどうでしたか?

内田 最初のシーンだけちょこっと意識しました。「ん?」って人間とはちがう違和感を初めに一度感じてもらえれば、あとは大丈夫だと思ったので、そのシーンだけはアンドロイドらしさを意識したんです。会話の中に情報が出てきたときは、ニュースのように明確に伝える。たとえば天気の話などが出てきたときには、天気の情報の部分だけやたら滑舌をよくしたり、みたいな。ふつう、人間どうしの会話ではありえないですよね。でも、その後からは全然意識していなかったです。

――アンドロイドを演じるうえで、参考にしたものはありますか?

内田 以前、石黒浩さんという工学博士のドキュメンタリーで声をあてたことがあるんですけど、その方がまさにヒューマノイドを研究していたので、石黒さんのインタビューや論文を読みましたね。自分の立ち位置を、はっきりしない状態にしておきたかったので。

――はっきりしない状態……というのは、人間でもアンドロイドでもない立ち位置ということですか?

内田 僕はマーカスを演じるにあたって、彼が自分のアイデンティティを確立していくのがいちばん重要だと思っていたので、彼の側にならなければというか……。石黒さんの言葉の中に「人間とは究極的に何かというと、道具を使うサルだ」というものがあるんですが、マーカスを演じるためには道具側の思考にならなくてはいけないと思ったんです。「道具を使うサルが人間だとしたら、サルに使われる道具の心境ってどんなものなんだろう?」という心境に入り込んでいかなければならないと思ったので。石黒さんの言葉はアンドロイドを演じる参考になりました。

恒松 私はとにかく考えすぎるとドツボに入るタイプなので、参考にした作品などは特になく、まずは考えすぎないようにしようとしました(笑)。ノースは自分が道具だという意識を持っていませんでしたし。ただ、いまはSiriのような技術が日常にある世界になってきているので、当たり前に自分の周りにあるそういったものは見ましたね。