連日お届けしているQuantic Dream特集の番外編として、『Detroit: Become Human』から、主人公となるアンドロイドの捜査官コナーを演じた声優の花輪英司さんと、そのコナーとバディを組む警部補ハンク役を演じた、声優の岩崎ひろしさんの対談をお届けする。

 世界中のゲームファンの心を揺さぶるインタラクティブなアドベンチャー作品を生み出してきたフランスのスタジオQuantic Dream。ファミ通ではQuantic Dreamへ訪問し、独占取材を決行。ファミ通.comで連日インタビュー記事を公開してきた。今回は、その番外編として、Quantic Dreamの最新作『Detroit: Become Human』(以下、『デトロイト』)から、主人公となるアンドロイドの捜査官コナーを演じた声優の花輪英司さんと、そのコナーとバディを組む警部補ハンク役を演じた、声優の岩崎ひろしさんの対談をお届けする。

花輪英司(はなわ えいじ)

山梨県出身。吹き替えを中心に活動。代表作は映画『シュガー・ラッシュ』フェリックス役、アニメ『マーベル フューチャー・アベンジャーズ』アイアンマン役など。

岩崎ひろし(いわさき ひろし)

埼玉県出身。映画『スター・ウォーズ』シリーズのC-3PO役で有名。ローワン・アトキンソンやロビン・ウィリアムズなどの吹き替えも手掛ける。

演技を制御する花輪さんと、自身を制御するコナーは似ている?

コナーは、アンドロイドの事件を専門に捜査するために作られたアンドロイドだ。

――コナーというキャラクターを最初に演じたとき、花輪さんはどのように感じましたか?

花輪 最初はトレーラーの収録をしたのですが、コナーは交渉人ということで、刑事モノというか、わりと演じやすい世界観ができていたので、すんなり入っていくことができました。僕は吹き替え畑の人間ですが、ふだんからああいったキャラクターの役が多いので、その延長線上と言いますか。ですのでコナーは、それほど難しく考えなくてもできるキャラクターというところです。

――岩崎さんは、ハンクを演じるのは難しかったですか?

岩崎 (花輪さんと)いっしょですね、ほとんど……あ、違います(笑)。

――一同 (笑)。

花輪 僕が知る限りでは違うような……(笑)。

岩崎 私の場合は、ふだんは変なキャラクターが多いので、オーディションを受けるとき、どんな人物なのか、いろいろと想像してきたんですけど……とても渋いキャラクターでしたね。年に数回しか演じないような、私にとってはとても渋いキャラクター。この年代にきて「演じてみたい」と思う役というか、男として、やってて気持ちいいですね。ボソボソ、ボソボソとしゃべる感じで。コナーとともに行動するにつれ、さまざまな形で変化していくところは、やり甲斐があります。

――花輪さんは、演じる際、コナーがアンドロイドであることは意識しましたか?

花輪 いかにもロボットという役ではないので、“ちょっと堅い人”くらいのイメージです。息づかいもありますし、感情がないわけではない。それが彼のプログラムの演出だとしても、“感情がないわけではない”ように見えるので。感情の機微は、人間よりも狭い振り幅で演じてはいます。

――ではほかに、演じるうえで意識したことは何でしょうか。

岩崎 音声と台本で半分以上は設定が決まっているので、あとは自分のどの辺を使っていこうかな、と考えますね。私自身はとってもおしゃべりな人間で、ハンクのような、ひとりで酒を飲む寡黙な男性は憧れだったんですよ。日常ではそういうことができないので、芝居でやらせてもらってます。酒も飲めないので、(酒が飲めるハンクに)憧れつつ、酔った芝居はどんな芝居なのかなと考えたり。

――コナーとハンクが出会うシーンでも、ハンクはお酒を飲んでいますよね。

岩崎 ちょうど酔ってるときに来るんです。

花輪 ハンクがぐでんぐでんのときにコナーが現れて、そしてまたぐでんぐでんのときに現れて、みたいな(笑)。

――(笑)。演じたキャラクターについて、「自分と似ている」と感じるところはありましたか?

花輪 僕は演じる際、向こう(英語版)の演者さんと同じトーンで演じると、日本語だとキツくなっちゃうかな、感情過多になるかな……と思うシーンは、わざとトーンを抑えたりするのですが、そうやってコントロールしながら仕事をしているので、そういうところが似ていると言えるかもしれません。僕自身がロボット的といいますか、制御しながらお仕事をするという点で、ある種いっしょなのかもしれないですね。

――岩崎さんはいかがですか?

岩崎 ハンクは自分とぜんぜん違います。私は甘いものが好きだし、声が高いですし。ハンクは自分にないものを持つキャラクターなので、本当に演技でやらせてもらってます。でも役者って、役を振られることで気づくこともあるんですよね。「こんな役もできるのか」って。

アンドロイドを嫌う警部補、ハンク。ある理由から、酒びたりの日々を送る。

自分に対しても頑固なコナー、本当は正直で弱いハンク

シナリオは、プレイヤーの行動や選択の結果によって、さまざまに変化する。

――『Detroit』では、プレイヤーの選択次第で、コナーとハンクの関係がよくなることもあれば、悪くなることもあります。演じる際、意識を切り替えるのは難しかったのでは?

花輪 ふだんから切り替えることが習慣になっているので、そんなにやりづらいことはないです。それより、僕はハンクの感情に飲まれないようにしなければいけなくて。飲まれて返しちゃうと、意図とは別のものになってしまうので、横にいながらもハンクのセリフを聞かないようにしたり。それがたいへんと言えばたいへんでしたね。

――選択によって変わるシーンは、どのように演じていったのですか?

花輪 今回、台本をうまく作っていただいていまして。ゲームの収録ですと1枚の紙を渡されることが多いんですが、今回は製本されていて、「ここで分岐があって、こう答えた場合は、こうなる」というのが、すぐにわかる内容になっているんです。

岩崎 たしかに、台本になっていることはあまりないです。(台本だと)全体を読めるので、とてもやりやすい。

花輪 自分のところ以外も読めるので、やりやすいですね。

――台本を読んで、『デトロイト』というゲームに対して、どのような印象を抱きましたか?

花輪 ふだんの吹き替えドラマをやる感覚のまま臨めたのが、とても大きかったです。「ゲームだから、こういう風にしなきゃ」というのがなく、力を入れずに、ふだんの延長でできるなと。そのことはオーディションの段階から感じていたので、わりとスッと入れました。

岩崎 もっとおっかないドラマになるのかなと思ったら、そうではなくて安心しました。いまの時代、何をするにしても自分で考えず、スマホに任せたりしますよね。日常生活の中で、機械やロボットに頼っちゃって、考えることをしなくなってしまった。そのことに対する危機感を、ゲームをやることで感じてもらえるのは、とてもいいんじゃないかなと思いました。

――物語の中で、とくに印象に残っているシーン、考えさせられたシーンはありますか?

岩崎 詳しくは言えませんが、自暴自棄になっていたハンクが、コナーと会って人間や人生について色々な思いや感情と向き合っていくところに、人間のドラマを感じます。

花輪 コナーは大きい変化がありそうで、ないようにも感じます。内面は変わっていくんですけど、それを表にしないことが多いので。表面的には、最初から一貫している演技をしてみています。

――カーラはアリスを守るため、マーカスはアンドロイドの自由のためという、人間のような目的のもとに行動しているのとは対照的に、コナーは職務に忠実という印象を受けます。

花輪 ほかの主人公のシーンを見たときは、「コナーとこんなに違うんだ」と思いましたね。別のゲームみたいだなって。コナーは断固として「私は機械です」と言い張るんです、自分に対しても。自分に言い聞かせているような一面もありますね。分岐次第で変わることもありますが、基本の性格は頑固なのかなと思っています。

――コナーは頑固とのことですが、ハンクはどのような人間性を持っているのでしょうか?

岩崎 ちょっとやさぐれた感じで登場しますが、根っから悪い人ではなくて、本当はとても正直で弱い人間なのかなと。だんだん過去のことをコナーに話すようになったり。そこに人間らしさを感じますね。

――『Detroit』にはシリアスな雰囲気が漂っていますが、ユーモアのあるシーンはあるのでしょうか?

花輪 「コナーがこんな顔をするんだ」と驚くシーンはありました。コナーの意外な一面を見た、唯一のシーンですね。そこで初めて人っぽい演技をして、おもしろかったです。ハンクに関しては……ハンクはいつ見てもおもしろいからなあ。なんかカッコいいんですよ、ハードボイルドな、男がみんなやりたがるようなキャラクターで。

岩崎 本当に、「なんでハンク役が私なんですかね?」って聞きたいですね。でも、自分にないものを演じることができるのが役者だと思います。