世界中のゲームファンの心を揺さぶるインタラクティブなアドベンチャー作品を生み出してきたフランスのスタジオQuantic Dream。ファミ通ではQuantic Dreamを訪問し、独占取材を行った。独占取材記事第7弾となる今回は、最新作『Detroit: Become Human』(以下、『デトロイト』)で、プレイヤーの心に肉薄する臨場感を描き出すイベントシーンを仕立て上げた、演出チームとサウンドスタッフへのインタビューをお届けする。

 世界中のゲームファンの心を揺さぶるインタラクティブなアドベンチャー作品を生み出してきたフランスのスタジオQuantic Dream。ファミ通ではQuantic Dreamを訪問し、独占取材を行った。独占取材記事第7弾となる今回は、最新作『Detroit: Become Human』(以下、『デトロイト』)で、プレイヤーの心に肉薄する臨場感を描き出すイベントシーンを仕立て上げた、演出チームとサウンドスタッフへのインタビューをお届けする。

 ストーリーの起伏を際立たせ、ゲームの世界をより深くプレイヤーに印象付けさせる演出チーム。最新作となる『デトロイト』では、どのような苦労があったのだろうか。そして、場面に応じて変化し、プレイヤーにさまざまな感情を湧き起こさせるサウンドは、プレイヤーが抱く感情を重視するQuantic Dreamの作品には欠かせない。『デトロイト』では、どんな音で我々の心を揺さぶるのだろうか。

エメリック・モントゥシェ氏

『BEYOND: Two Souls』(以下、『ビヨンド』)からQuantic Dream作品に携わる。『デトロイト』では、撮影監督としてカメラワークなどを担当。

マキシム・ブロシャン氏

映画などに携わった後、『デトロイト』の演出に参加。ライティング(光の当てかた)や、演出全体に関わる。

ジャン=フランソワ・オット氏

『ビヨンド』と『デトロイト』でおもにエフェクトに関する演出を担当してきた。Quantic Dream入社前は別のゲーム会社で演出に携わる。

オーレリアン・バゲール氏

ゲームのサウンド制作に関して、豊富な経験を持つ。『デトロイト』ではサウンドチームを総括する。

キャラクターの性格をカメラワークでも表現

――非常にリアリティーのある場面が印象的なQuantic Dream作品ですが、皆さんがどのように演出をされているのかを教えてください。

マキシム 私は『デトロイト』で初めてQuantic Dreamのゲーム制作に参加して、各シーンのライティングや演出全体について担当しました。まずはデヴィッド(・ケイジ氏。Quantic DreamのCEOにして、ディレクションとシナリオライティングも担当)から場面のイメージをもらって、どうやってそのイメージを演出として落とし込み、映像を撮っていくべきかを演出チームで検討したんですが、そもそも各場面の演出を決める前にそういった作業から始まったことが印象深かったですね。

――演出イメージについて、デヴィッドさんとは具体的にどのようなお話をされたのでしょうか?

マキシム デヴィッドとの話の中で、「コナー、マーカス、カーラという3体のメインキャラクターの個性を演出でも描き分けたい」という案が出たんです。それで、3体の個性を差別化する演出として、まずはカメラワークでキャラクターの性格を表現するという方針を立てました。

――カメラワークで性格を表現するとは、いったいどのように……?

エメリック 私はカメラワークを担当していて、ゲーム内での撮影監督やカメラマンのような作業をしたのですが、今回、3体のメインキャラクターについては、撮影方法自体を変えているのです。モーションキャプチャー(Quantic Dream作品の多くは、イベントシーンやキャラクターモデリングを、俳優の演技をモーションキャプチャーし、そのデータをもとに制作されている)の監督とも相談しながら、各キャラクターをどのように撮影するか相談して、演出上の変化をつけています。

――モーションキャプチャーの撮影の時点から、個性を描き分ける演出を行っていたと。

エメリック ええ。もちろんメリハリをつけるためにも、すべてのシーンをそうした意図で撮影したわけではありませんが、イベントシーンでは、おおまかに3種類の方法を使い分けてキャラクター別に撮影していきました。具体的には、アンドロイドを革命に導くマーカスの撮影はパノラマ的に、広角のカメラを使用して、彼が広い世界を見ているような雰囲気を演出しています。その一方で、アンドロイド側に立って行動するマーカスと対極に位置し、人間サイドで行動するコナーについては、固定カメラによるシンプルな撮影をすることで、正確でエラーのない、いかにもアンドロイドらしいイメージを効果的に表現しています。そして、もうひとりの主人公であり、少女アリスを守るために行動するカーラのチャプターでは、あえて手持ちカメラ風の撮影を行いました。

アンドロイドを率いる存在になる、マーカス。
アンドロイドの捜査官、コナー。
少女アリスを守って逃避行を続けることになる、カーラ。

――手持ちカメラですか。

エメリック カーラの場合は、マーカスやコナーのように、いろいろな人と関わるものではなく、アリスとの行動、いわば個人にフォーカスされることが多いので、彼女自身の視点や感情を表すように、手持ちカメラにしているのです。また、被写界深度もわざと浅くして、ピントが合っていない周囲の風景はボヤけるようにして、よりカーラ個人に注目してもらえるようにしました。

――撮影方法でのメインキャラクターの心情を描き分けるというのは、思いもよらない演出ですね……。

エメリック 確かに、あまりない手法かもしれませんね。それだけに、マーカスのイベントシーンの撮影は苦労しました。彼はアンドロイドを革命に導くキャラクターではありますが、アンドロイドなのでコナーたちと同様に動作は的確です。それでいて人間のように強い意志を持つ“人間性”の部分も表現しないといけませんから。そのちょうどいい落としどころを、カメラワークで演出するのが難しかったですね。カメラの被写界深度もキャラクターごとに大きく変化させているんですが、被写界深度は各場面でのライティングと密接な関係があるので、ライティング担当のマキシムとはかなり密なやりとりを重ねました。