2018年4月19日に実施された、株式会社Gzブレイン 浜村弘一会長(ファミ通グループ代表)による講演“ゲーム産業の現状と展望<2018年春季>”の模様をリポート。

 2018年4月19日、株式会社Gzブレイン浜村弘一会長(ファミ通グループ代表。以下、浜村代表)による講演“ゲーム産業の現状と展望<2018年春季>”が開催された。

 本講演は、毎年春・秋の2回にわたって、アナリストおよびマスコミ関係者を対象に実施されているもの。今回は、“受け継がれる遊びの遺伝子“というテーマで、2017年度のゲーム市場の概況のほか、一般社団法人日本eスポーツ連合(Japan esports Union。以下、JeSU)設立や各種賞金制大会の開催で盛り上がりを見せる日本のesportsの動向などが語られた。

JeSUの設立で本格的に動き出した日本のesports

 講演の冒頭に解説されたのは、esportsの動きについて。世界的なムーブメントとなっているesportsだが、2018年の収支が約16億ドルの見込みなのに対し、2022年には約23億円と、現状の1.5倍まで成長することが予想される(出典:SuperData)。また、オーディエンスも2021年には5億5700万人まで拡大(出典:Newzoo)。浜村代表は、各国のデータを比較しながら、現在、大きな成長を見せているのはアジア地域であり、市場規模としても、アジア地域がムーブメントの中心となっていることを紹介した。

 合わせて、ひとくちにesportsといっても、現在世界中で開催されているesportsイベントには、IPホルダーが主催するものや、esports団体主導のもの、ユーザーコミュニティによるものなど、さまざまな運営手法が出てきていることを解説。Twitchが『Overwatch』リーグの2年間の独占配信権を9000万ドルで購入した例を挙げ、esportsの収益比率の中でも放送権にまつわる項目が大きいことを示した。

※以下、掲載資料は会場のモニターを撮影したものです。

 つぎに浜村代表が語ったのは、出遅れが指摘される日本のesportsについて。こちらは、2018年2月1日にesports に関係する既存の3団体(日本eスポーツ協会、e-sports促進機構、日本eスポーツ連盟)が統合されてJeSUが誕生。2018 年2月10・11日に開催された“JAEPO×闘会議2018”では、JeSUによるプロライセンス発行を受けた選手たちによる公式大会が開催されるなど、新たな局面を迎えていることが紹介された。JeSUの設立について浜村氏は、IPホルダーを交えたesportsの統一団体は世界的に見ても珍しいということを挙げ(JeSUは、CESAやJOGAの協力も得ている)、JeSU設立の理由のひとつは、景品表示法など各種法律のある日本において、法律的に完全にホワイトな状態でesports大会を開催したいというIPホルダー側の要請に応えたものと説明した。

 浜村代表によると、JeSUによるプロライセンス制度を使わずともesportsの賞金制大会は開催できるが、日本のメーカーはコンプライアンスを重んじる意識が強く、また賞金制大会に関する法律も複雑。メーカー側では、自社が開催するesportsの賞金制大会が適法か否かの判断が難しいという。JeSUが発行するプロライセンス制度は、そのあたりの適法性を明確に線引きするものというわけだ。

 なお、プロライセンス制度について、「賞金付大会開催のためだけでなく、観客を魅了できるスキルを持っている証明でもある」とする浜村代表。JeSUの今後の展望として、2018年にインドネシアで開催されるアジア競技大会に代表選手を派遣することや、オリンピックでのesports種目採用を見据えたJOC(日本オリンピック委員会)加盟を目標としていることに触れ、加盟条件が整いつつあることを紹介。JOCの理事会でどのように判断されるのかに注目していると語った。

 ちなみに2018年に入って、esports市場には、吉本興業が“よしもとゲーミング”を始動させてesports事業に参入したり、Jリーグが“明治安田生命eJ.LEAGUE”の開催を表明するなど、本格的な新規参入が相次いでいる。世間的なesportsの認知度も2017年9月で14.4%だったものが、2018年3月には34.6%に向上(eb-i調査)しているほか、esports視聴者、参加者ともに増加。後発となった日本だが、今後の大きな成長が期待できそうだ。

2017年度のゲーム市場の概況

 続いて解説されたのは、2017年度のゲーム市場の概況について。2017年3月3日の発売から約13ヵ月で400万台を突破したNintendo Switchは、発売当初は供給が追い付かない状況が続いたが、2018年1月以降は品薄が解消され、安定したセールスが見込める体制となっている。Nintendo Switchソフトの累計販売数に占める任天堂タイトルの割合が8割と非常に高くなっているが、これはNintendo Switchのここまでのヒットをサードパーティはもちろん、任天堂自身も予想していなかったことが要因だろうと浜村代表は語る。

 とくにハードの普及を牽引しているのは、『スプラトゥーン2』。ハードに対する装着率が5割を超えているのが特徴だが、浜村代表は、ハードの販売台数に対するソフトの装着率の上限が一般的には3割程度と言われていることを考えると、『スプラトゥーン2』発売時に十分な在庫があれば、もっとハードが売れていたはず、と分析した。

 なお、直近の注目作として挙げられたのは、2018年4月20日発売の『Nintendo Labo』。プレイヤーが独自に遊びを発明できる、任天堂らしい遊びの原点ともいえる内容だが、高い認知度がある一方で、発明に近い発想のタイトルだけに、様子見するユーザーも少なくない、とする浜村代表。ただし、購入意向者の分布を見ると10代と30~40代が多く、『スプラトゥーン2』の影響で10代が多かった市場が、『Nintendo Labo』がうまく普及することによって“ふたこぶラクダ型”になる可能性があり、そうなると任天堂にとっては理想的な市場になるだろうと語った。

 ニンテンドー3DSの2016年度と2017年度の比較では、発売タイトル数が大幅に減少。ハード、ソフトともにセールス状況はピークアウトが鮮明になった。ただし、この減ったぶんのシェアを取るのは、おもにNintendo Switchであると分析する浜村代表。とくに動向が注目されるのは2018年以降に発売が予定されている『ポケットモンスター』シリーズの新作や『大乱闘スマッシュブラザーズ』だ。

 これについて浜村代表は、据え置き機として展開されているNintendo Switchだが、テレビに繋がずに遊ぶユーザーも多く、任天堂の宮本茂氏が「私たちの究極の野望はNintendo Switchを(一家に1台ではなく)「一人1台」持っていただくことです」と語っていること(任天堂 経営方針説明会/2018年3月期 第3四半期決算説明会 質疑応答より)に触れ、どこかのタイミングでNintendo Switchを携帯ゲーム機としてアピールする瞬間があるかもしれないと予想。一方で、例えそうなった場合もNintendo Switchが据え置きゲーム機として遊べるのは変わらないとし、“まるで、打ってよし投げてよしの大谷翔平選手のようだ”と表現。もしも“二刀流”が成功し、両方の市場を取ることができれば、国内3000万台を超える数字が見えてくるが、果たしてどうなるのか、今後が楽しみだと語った。

 PS4も前年度から引き続き売れている。2017年度は『モンスターハンター:ワールド』や『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』など、大型タイトルのリリースが続いたが、浜村代表は、ハードのセールス面でプラスαとして存在感を示しているPS4 Proについて言及。PS4 Pro の販売台数はPS4プラットフォーム全体の10.1%を占めるが、とくにPS4 Proが発売された2016年11月以降に限るとその割合は20.6%に達し、ハイエンドユーザー向けの施策としては一定の成果を得ている、とした。

 なお、PS4のソフト累計販売本数は2913.2万本で、パッケージソフトだけを見ても、PS3・PS Vita・PSPを上回っている。ダウンロード購入された数を加味するとその差はさらに広がるが、浜村代表は、PS4ソフトの2016年度と2017年度の年間累計販売本数TOP20を比較しても数字が伸びており、セールスのステージが全体的に上がっていることを解説。

 ちなみに、前年度との比較では、ハードのセールスが104%、ソフトが115%でいずれも好調だが、なかでも大きかったのは『モンスターハンター:ワールド』だ。2018年3月25日時点で累計販売本数は274.7万本(パッケージ版とダウンロード版を合算)となっているが、浜村代表は、ソフト発売の影響でPS4本体が品薄となってしまい、『スプラトゥーン2』と同じく機会損失してしまった可能性があることを指摘。ただし、全世界でのソフト出荷本数が750万本(PS4とXbox One版のパッケージ版およびダウンロード版の合算)に達している(公式発表)『モンスターハンター:ワールド』だが、PC版は未発売であり、Steamでの販売が始まれば、1000万本を越えてくるのは確実、と予想した。

 Xbox Oneもワールドワイドでは好調に推移。初代Xbox、Xbox360のタイトルがXbox Oneでプレイできる後方互換でプラットフォームの充実度を高めているほか、バトルロイヤルゲーム『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』(以下、『PUBG』)が同梱された本体セットが好評を博していることもあり、Xboxプラットフォームでの『PUBG』プレイヤーは500万人を突破(公式発表)。バトルロイヤルゲームのムーブメントにうまく適応している。

 さて、PS4、Xbox Oneともに今後の有力タイトルは多いが、ちらほら聞こえてくる次世代機の展開はどうなるのか。この件について浜村代表は、NPDのアナリストが「PS5は個人的な予測として2020年」とコメントしたことや、UBIのCEO・Yves Guillemot氏が「何らかの新機種が登場するまでにあと2年くらい掛かるのではないか」とコメント(2017年11月時点)したことに言及。また、PS4が好調でXbox新型機発表後も世界中でピークアウトの兆しが見えないだけに、次世代ゲーム機については「E3 2018で動きがあるのかはわからないが、いま発表するメリットは薄いのではないか」と所感を語った。

 スマホゲームアプリ市場に目を移すと、2016年と2017年の接触時間ランキングの上位20タイトルは、同じ顔触れに(出典:eb-i)。浜村代表は、ランキング内で多少の動きはあるものの新規タイトルはなく、レッドオーシャン化していると分析。ちなみに、20位以降を見ると『ファイアーエムブレム ヒーローズ』や『どうぶつの森 ポケットキャンプ』といった任天堂タイトルが顔を見せてくるが、これについて浜村代表は、『ファイアーエムブレム ヒーローズ』は、ほぼ家庭用ゲームのユーザー層が遊んでいると思われるが、『どうぶつの森 ポケットキャンプ』は、ニンテンドー3DS『どうぶつの森 ハッピーホームデザイナー』と比べて年齢層が高く、かつて家庭用ゲーム版を遊んでいた層をうまくスマホ版に取り込んでいることがわかる、と解説した。

 なお、スマホゲームアプリの分野では、アジア地域での急成長が非常に目立っている。『荒野行動』や『アズールレーン』といった中国産ゲームも日本市場で受け入れられるようになり、反対に『旅かえる』のように日本産ゲームが中国でも大ヒットするケースも出てきた。浜村代表は前述のesportsの盛り上がりのほか、スマホゲーム市場の部分でも、ゲームの中心がアジア地域に移りつつあると語った。

多角的な広がりを見せる遊びの遺伝子

 最後に語られたのは、今回の講演のテーマである“受け継がれる遊びの遺伝子”について。かつてはゲームの進化といえば映像の進化の歴史だったと語る浜村代表。その映像進化のニーズは次世代ゲーム機の登場や、PCのグラフィックボードの進化として残り続けるが、一方で、同時多発的にパーソナルなゲーム環境としてのスマホゲームアプリや各種携帯ゲーム機が登場し、イノベーションとしてAI、VR、ARなどの技術がゲームの中に取り入れられてきた流れを説明。さらに、Nintendo SwitchやNintendo Laboのように、遊びの根源としてゲームを玩具的なアプローチで見直す動きも見逃せないと語った。下の写真にある図のように、ファミコンから本格的に広まりだした“ゲームの遺伝子”は多種多様な広がりを見せている。昨今巻き起こっているesportsのムーブメントは、多岐に広がったジャンルをすべて取り込む形で発生。浜村代表は、ゲームの遺伝子はゲームの作り手とプレイヤーに留まらず、それを見て楽しむ観衆にも広がりつつあると語り、今回の講演を締めくくった。