SunSister Suicider's。
それが『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)における日本最強チーム(2018年4月1日時点)の名だ。
DMMGAMES公式大会“PUBG JAPAN SERIES”αリーグのPhase1を1位、Phase2を2位で終えた彼らは、2018年4月1日に名古屋でのイベントに出演した。
僕、ミス・ユースケはSunSister自体との付き合いはそこそこ長いが、きちんと取材したことはない。せっかくなので見学に行った。
※前日はこのイベントを取材してた。
『PUBG』大会を映画館のふかふかイスで観戦。ライブビューイングはいいものだった
気を付けろ! ギャップ萌えがいるぞ!
SunSisterが出演したのは、ビックカメラ名古屋駅西店で開催されたエムエスアイコンピュータージャパン(以下、MSI)主催の店舗イベントだ。
内容は『PUBG』のプレイを通して、ゲーミングノートPCの販促を行うというもの。以前のノートPCはデスクトップPCに比べて性能がかなり落ちるイメージがあったが、いまではその差は微小だ。高負荷なゲームもばりばりプレイできる。
イベント開始前に代表の太田桂氏(通称、もるちゃん)と合流。セッティングの様子を見ながら雑談していると、どうもそわそわしている。
というのも、客入りが心配だったようなのだ。「うちはそんなに人気があるわけじゃないので、たぶん(お客さんは)集まらないですよ」と、不安を口にする。
強さと人気は別の話だ。もちろん強ければ注目されるが、それだけでファンが増えるとは限らない。それに、よほど深いファンじゃないと、オフラインのイベント会場まで足を運んでもらえない。
そもそも、SunSisterはファンを集めるような活動に注力しているチームではない。チームとしてこういったイベントに出るのも初めてだ。
プロチームとして企業の名前を背負う以上、ある種のタレント性も求められる。個人の人気やチームの雰囲気まで含めてブランディングできているチームはまだ少ない。これはあらゆるスポーツに共通する話だと思う。
開始前に不安に襲われても、プレイが始まったらこっちのものである。お客さんも交えてプレイするようになると、『PUBG』の人気にも助けられて、用意された席はほぼ埋まった。もるちゃんの顔に笑顔が戻る。
本イベントのメインコンテンツは来場者も交えてのSQUAD戦だ。じゃんけんで選ばれた来場者が、SunSisterの選手ふたりとともにドン勝(勝利)を目指す。
マイクやスピーカーの不調が影響してか、最初は成績が振るわなかった。3人でのデモプレイでは18位、1戦目は14位である。
環境がふだんと違ったために心配はあったが、gabha・Sabrac_ペアは来場者をドン勝に導くことに成功。関係者一同はホッと胸をなでおろしたことだろう。
もちろん、上位に残れなかったときでも、すばらしい射撃能力と判断でお客さんを沸かせるシーンは多々あった。さすがである。
腕前のほかに気になるのはイベントの盛り上げかただ。実況・解説はプレイ席についていない選手が担当。もるちゃんはトークが達者だが、あまり出しゃばりすぎないようにしていた印象を受けた。選手のトークテクニックやいかに。
CrazySam選手とMolis選手の掛け合いはわりと安心して聞いていられた。gabha選手はやや大人しめ。キャラ分けできていて、いい感じである。
異彩を放っていたのがSabrac_選手だ。話す内容がどこかふわふわしている。
【Sabrac_語録(1)】
イベント序盤、前述のヘッドセットを使えなかった席でCrazySam選手がプレイ。自然と隣りの席のMolis選手が音を聴き、CrazySam選手に伝えるようになる。
Sabrac_ Molisさんはいちばん音を聴けない人なんですけどね。
もるちゃん うちの弱点を言うのはやめてくれ。
【Sabrac_語録(2)】
CrazySam選手は4倍スコープをつけた状態での狙撃が得意なので、見つけたらキルを期待して渡すことも多いそうだ。
Sabrac_ (うまくいかなかったとき)「4スコ(4倍スコープ)があればいけたのに」って愚痴るんですよ。
こんなキャラなのに、試合になると鋭い指示を飛ばす司令塔に変貌するのだからたまらない。ギャップ萌えというやつだろうか。気を付けろ! ギャップ萌えがいるぞ!
SunSister成長の瞬間を見た
少し昔話をしよう。
いまでこそ『PUBG』のイメージが強いSunSisterではあるが、もともとはPC用オンラインFPS『Alliance of Valiant Arms』から誕生した強豪チームだ。
『Alliance of Valiant Arms』で世界を経験しているあたりは、人気・実力ともにトップクラスのDeToNatorと共通している。僕の中では、SunSisterはDeToNatorと双璧を為すチームというイメージがあった。
当時から、DeToNatorとSunSisterはチーム作りの方向性が異なっていた。DeToNatorはいち早く世界に照準を合わせ、地道なチーム作りと選手育成に努めた。結果、海外にも拠点を構えるようなチームに成長し、ストリーマーを中心としたブランディングにも成功しているのは周知の事実である。
世界に目を向けているのはSunSisterも同じだ。実力が評価され、韓国、ポーランド、ルーマニアで開催された国際大会にも出場している。
違うのは考えかたのベクトルだろうか。以前、もるちゃんから「自分たちはゲームを最高の環境で遊ぶためにプロ体制を取っている」みたいな話を聞いたことがある。
組織としてきちんと運営していたほうが企業の信頼を得やすいのだろう。企業としては、ただ強いだけのチームには声をかけにくい。スポンサーの名を背負えば注目されやすくなり、選手たちの気が引き締まるというメリットもある。
プロとして実力をアピールできれば、特別な体験のチャンスが舞い込んでくるかもしれない。海外での試合もそうだし、今回のイベント出演だってふつうは体験できないことだ。これらも“最高の環境”のひとつである。
冒頭で書いたように、もるちゃんは客入りを懸念していた。MSIの担当者にも、自分たちがゲストでいいのかと念入りに確認したという。
MSIの返答は、「大丈夫です」。
MSIは2018年1月までDeToNatorをサポートしていた。いまでこそ大人気チームに成長したDeToNatorではあるが、数年前までは出演イベントの来場者が数人ということも珍しくはなかった。
MSIはゲーマーを辛抱強く支える大切さを知っているのだ。いまはまだ地道な活動が必要な時期である、と。ゲーマーたちの人気が高まれば顧客層も拡大。支援はいつか自分たちの利益にもつながる。
彼らはSunSisterのスタイルに好感を持ち、将来性も見込んでゲストとしてオファーした。ふたを開けたらお客さんの入りはまずまずで、ビックカメラ名古屋駅西店側の印象も悪くなかったみたいだ。
何だかんだで最後まで残る熱心なファンの姿も見られた。SunSisterのメンバーも丁寧に対応しており、プロとしてレベルがひとつ上がったのは間違いない。
終了後に時間をもらい、イベントの感想を訊いた。4人とも不安はあったようだが、概ね楽しめたようだ。店舗スタッフやメーカーさん、来場者のありがたさを肌で感じた模様。
ついでに、2018年3月にルーマニアで開催された“PGL-PUBG Spring Invitational 2018”のことも質問した。移動含めて9日間も拘束され、さぞかしたいへんだっただろう。
「毎日大会でもいいかなと思うくらい貴重な体験でした。日本にこもってたら、ああいう経験はできないですから」とは、CrazySam選手の弁。体力的に楽ではなかったものの、彼らが得たものは大きい。
チームフラッグとチームタペストリーをもらってくるの忘れた。。。
と思ってたら優勝したGhost(@GhostGaming_GG)が
『サンシスー!持って帰ってきたぞー!』
とホテルまでわざわざ持ってきてくれた!
さすが優勝者の余… https://t.co/d0PQttu2FE
— SunSister (@SunSister_net)
2018-03-26 01:55:12
また、彼らの周囲には理解者が多く、仕事のシフトなどでも配慮してもらえたとのこと。ちなみに、Molis選手にはお子さんもいる。9日間も家を空けて家族から怒られません? と聞いたら、いい回答が返ってきた。「家族なんで」。家族から応援されているのはすばらしいことだ。
ゲームに集中できるのは、職場や家族の理解があればこそ。加えて、メーカー各社やファンに支えられていることを強く自覚すれば、SunSisterはまだまだ伸びる。