2018年3月18日(日)、福岡県福岡市のエルガーラ大ホールにて、第11回福岡ゲームコンテスト“GFF AWARD 2018”が開催された。全国から集まった応募作から4本に絞られたノミネート作品の、最終公開審査会と授賞式の模様をお伝えする。

過去最多の応募作品がしのぎを削る!

 2018年3月18日(日)に、福岡県福岡市天神にあるエルガーラ大ホールにて、第11回福岡ゲームコンテスト“GFF AWARD 2018”が開催された。2007年から開催されている同コンテストは、全国の学生や若きクリエイターたちによる応募作品(ゲームソフト部門、ゲームグラフィック・アート部門、ゲーム企画部門)の中から、優秀な作品を選考・表彰するというものだ。

 またことしは、会場となったエルガーラ1階パサージュ広場にて入場自由のゲーム体験イベントと作品展示も行われた。コンテストの最終審査にノミネートされた優秀作品の展示や、福岡ゲーム産業振興機構、GFF(GAME FACTORY’S FRIENDSHIP)のPRコーナーも併設された。

 ちなみにGFFは九州・福岡のゲーム制作関連会社の団体のこと。レベルファイブ代表取締役社長/CEOの日野晃博氏が会長を、サイバーコネクトツー代表取締役の松山洋氏、ガンバリオン代表取締役社長の山倉千賀子氏が副会長を務める。

アーケードには、GFF AWARD 2018の審査員が関わった最新作品がズラリ。自由に試遊が可能で、行列が出来るほどのにぎわいに。

 昨年で10周年を迎えたGFF AWARDは、年々応募総数も増え続けており、今年の応募はゲームソフト部門292作品、ゲームグラフィック・アート部門が968作品、そして今年から新設されたゲーム企画部門には232作品と、合計1492作品の応募があり、過去最大規模となった。

 会場には、ゲームソフト部門の最終審査を行う審査員として、日野晃博氏(レベルファイブ)、宮崎太一郎氏(サイバーコネクトツー)、山倉千賀子氏(ガンバリオン)、松隈浩之氏(九州大学 大学院芸術工学研究員 コンテンツ・クリエーティブデザイン部門 准教授)が登場。それに続いて、ゲスト審査員としてシブサワ・コウこと襟川陽一氏(コーエーテクモゲームス)が登壇した。

 審査では、GFFメンバーを務める日野氏、宮崎氏、山倉氏、松隈氏に加え、歴史シミュレーションなど、世界初の遊びを生み出してきた伝説のゲームクリエイターであるシブサワ・コウ氏による講評が行われる。ゲームソフト部門では、公開プレゼンテーションを経て、会場にて大賞受賞作品が決定。表彰が行われることとなった。

左より、日野晃博氏(レベルファイブ)、シブサワ・コウ氏(コーエーテクモゲームス)、山倉千賀子氏(ガンバリオン)、宮崎太一郎氏(サイバーコネクトツー)、松隈浩之氏(九州大学 大学院 芸術工学研究院 准教授)。

アイデア勝負! 新設された“企画部門”優秀作品は!?

 ゲームソフト部門の最終公開プレゼンテーションに先立って、まずは新設の“ゲーム企画部門”の表彰が行われた。“企画”のみということで、紙とペンがあれば誰でも応募が可能となっているこの部門には、初公募にも関わらず、数多くの斬新なアイデアを持ったゲーム企画がノミネートされることになった。そんな中で、審査員の満場一致で企画賞に輝いたのが、『ダンメン』というアクションパズル作品の企画だった。

企画部門 優秀賞
タイトル:『ダンメン』
制作チーム名:伊神央人さん

 3Dで表現される立体のステージと、ステージの各部を“切断”することで、その“断面”から生成される2Dのステージを行き来しながらクリアーを目指すアクションパズル。船や地下基地など、見えている3Dのステージをどこかを“斬”ってステージ自体を動かし(ずらし)、新たな道を作り出す、というシステム。ステージクリアーの解法はひとつだけではなく、プレイする人によっても変化するのがポイント。ちなみに、この企画書はすべて手描きで書かれたものだ。

 伊神氏のプレゼンテーションを受けて、山倉氏は「断面のマップはアリの巣のようで、子どもの頃に見た懐かしさがある。企画のタネの見つけ方が上手」と講評。「いったいどのように断面を遊びにする着想を得たのか」と質問した。伊神氏は、工業デザインの仕事に携わる中でアイデアが生まれたことを明かした。立体のデータを描画するCADというツールがあるが、それを使わずに企画書もすべてが手描きで書かれたことについても尋ねられると、「手描きの方が、すばやく絵が描けるから」と回答。CADについても仕事で使っているが、そちらは見る専門なのだそうだ。

ステージクリアーの解法はひとつだけではなく、プレイする人によっても変化するのがポイント。
マルチプレイについても質問が。伊神氏は、立体のマップを切る場所によって、断面の2Dマップがガラリと違った様子になるという点から、多人数プレイについても、複数の視点の違いが遊びを生むのではないかと考えたという。

 企画部門の優秀賞発表に続き、各部門中で968作品という最多の応募があったゲームグラフィック・アート部門の表彰へ。多数の作品の中から、見事優秀賞に輝いたのは、HAL名古屋の伊藤ひかる氏の『FAKE』。

ゲームグラフィック・アート部門 優秀賞
タイトル:『FAKE』
制作チーム名:伊藤ひかるさん

 “アンドロイドに支配された世界を取り返す”という、近未来が舞台のRPGをテーマに据えたサイバーパンク的世界観で、昆虫を擬人化したキャラクターが描き込まれた作品だ。伊藤氏は、「ビジュアルはスタイリッシュなイメージで統一していますが、キャラクターの個性が目立つように、質感や種族の存在感などで個性を表現しています」と解説。ちなみにヒロインは、アオズミアゲハという蝶をモチーフに描かれている。

 九州大学の松隈氏が「まずは上手いな、と」と筆致の見事さについて称賛。画を初めて見たときには、昆虫がモチーフになっているので、男性の作品だと思っていたという松隈氏は、作者が女性だと知ってちょっと意外だったという。「昆虫は大丈夫なのですか?」との質問に伊藤氏は、少し苦手だけれど描くのは平気なのだと語った。機械の無機質な世界観に、昆虫という生物のモチーフを加えることで、独特な世界観を表現できるのではと考えたという。

ヒロインのデザインとして蝶を擬人化しようと考えた理由には、近年の“擬人化ブーム”への意識もあったのだという。

公開プレゼンテーション そして最終審査へ……

 ゲーム企画部門とゲームグラフィック・アート部門の表彰を終え、いよいよ、ゲームソフト部門に応募された292作品のうち、最終審査に残った4作品の公開審査へ。壇上の審査員を前に、各チームが持ち時間3分で自分たちの作品をプレゼンテーションした。最終審査は、作品の総合的なクオリティーの高さに加え、プレゼンテーションの印象も加味して、審査員が「クリエイターとしてもっとも期待が高い」と思ったチームに投票するというルールのもとで行われた。

 以下、最終候補に残った4作品を紹介しよう。

■最終候補作品その1
タイトル:『INVERSE
制作チーム名:クレヨン

 トップバッターは大阪アミューズメントメディア専門学校の桑原進之介氏、西平魁登氏によるチーム、クレヨンの作品『INVERSE』。重力を反転する能力を持った少女を操作して、ステージの天井と床を行き来しつつゴールを目指す、横スクロールの2Dパズル・アクションだ。プレゼンテーションでは、世界観や雰囲気を大切に制作し、細やかなセーブポイントを設置することでリトライをしやすくして、ゲームへの没入感を損なわないように気を配ったとアピール。また、思考する楽しさ以外にも、ステージ奥から追ってくる巨大な口を持った怪物から逃げながら進むという緊迫感も盛り込むことで、飽きさせないアクション的な展開も取り入れられている。

インディーゲームとして世界中で高い評価を受けた、PlayDeadのアクション『LIMBO』や『INSIDE』にも影響を受けたという。

 まずはシブサワ氏より、重力反転というギミックと、UIが一体になったゲームデザインがすばらしいと講評。伸びしろが大きい気がしたと語った。日野氏からも、まとまりがあり、ちゃんとアクションパズルとして完成しており「ダウンロードソフトとして売られていてもおかしくないほど」と評価された。

パズルとしてだけでなく、アクション要素なども取り入れ、ゲームとして刺激的なプレイ体験になるように考えたという。

■最終候補作品その2
タイトル:『SACRED FOUR
制作チーム名:Team.SC

 アミューズメントメディア総合学院の学生5人によるTeam.SCは、アンリアルエンジンとOculus Riftを活用したVRアクション『SACRED FOUR』。プレゼンテーションは小泉翔太郎氏と金山善春氏、藤崎薫氏が担当した。ファンタジーテイストのVR空間で、鎖を武器とした戦士になり、WAVE制で襲い来る魔物を倒していく。両手のハンドコントローラーで鎖を敵に投げつけるアクションが爽快で、投げるフォームによって鎖の軌道を制御できる。また、各ステージの最後に待ち受ける巨大なボスたちとのバトルでは、攻撃パターンや弱点などを見極めつつ戦うといった、攻略要素の強いステージも用意されている。

 シブサワ氏は、「まずVRでアクションゲームを作ろう、という試みがチャレンジングですばらしい」と、その姿勢を絶賛。さらに、アンリアルエンジンを使っている点についても、かつて『無双』シリーズでアンリアルエンジンを初導入したときに苦労したことがあり、それだけに今回の作品には感心してしまうと語った。

 山倉氏も、実際にプレイしてみて、汗をかくくらいにリアルな体験として、没入できたと話す。また、ガンバリオンが開発を担当したWii『パンドラの塔 君のもとへ帰るまで』でも、鎖を駆使して戦う主人公を描いていたからか、今回どうして“鎖”を武器にしたのかと質問。その答えは、「武器についての画像を大量に検索して絞り込んでいった結果で、最終的にはマンガに登場する鎖を使うキャラクターのイメージが残りました」とのことだった。

VR空間では、物を投げる表現が難しく、すぐに足元に落ちてしまうように感じるのだそうだ。目線とロックオンの操作には、かなり気を遣って調整されている。

■最終候補作品その3
タイトル:『Quantum
制作チーム名:Mr.SuperSaiyan

 
 HAL大阪の亀田力矢氏がひとりだけで作り上げた『Quantum』は、ブロック崩しとステルスアクションが融合したかのような作品。見下し型のステージで、プレイヤーが撃つ弾を壁に跳弾させて、敵やトラップに見つからないように進んでいくステルス・アクションだ。世界ーの日本人になりたいと語る亀田氏は、以前とあるゲームで世界1位になった経験があるという、手練れのゲームプレイヤーでもある。そんな亀田氏はアクションゲームが好きだが、パズルゲームやブロック崩しなどが大嫌いで、だからこそ本作を作ろうと思い立った、と変わった発想術を披露した。

インディーゲームが好きだと話す亀田氏は、個人制作の魅力を「自分の頭の中をすぐに見せられるのがいい」と話していた。

 松隈氏は、ひとりで作っていくからこそ際立つ、シンプルなゲームの構成を評価。また、跳弾して通路に弾が何度も跳ね返る様子は、「ブロック崩しの玉がブロックの奥に入り込んだときの気持ちよさに近い」とアクションの快感について語った。

 宮崎氏も、「よくブロック崩しから発想したと思います」と評価しつつ、「跳弾回数に制約を与えるなど、さらにゲームを研ぎ澄ましていけそうで魅力的だ」と話した。ちなみに、本作の制作期間は約1ヵ月半だったというのだから驚きだ。

■最終候補作品その4
タイトル:『Buzz Hammer
制作チーム名:KYMI.COME

 日本工学院専門学校のチームKYMI.COMEの剱持孝太氏と森田健太氏、山村陸氏、伊藤駿一氏が4ヵ月で開発したというスマートフォン用のアクションゲーム『Buzz Hammer』。剱持氏と森田氏が担当した最後のプレゼンテーションでは、本作独自の“ハンマーを振り回して敵を蹴散らす”という操作とシステムについて紹介された。フリック操作で自機を移動させると、自機につながったハンマーが振り子のように追従する。自機を下に移動すると、ハンマーは反動で反対側の上方向に動き、軌道上の敵を粉砕する。フリックで細かく移動しつつ、ハンマーを振り回してステージの敵を殲滅しつつハイスコアを目指す。なかなか思い通りに動かせないハンマーの操作が、スコアアタックとゲーム攻略に結び付いたモチベーションを生んでいる。

インスピレーションの元になったのは、鉄球を振り回して建物を壊すイメージだという。

 日野氏は「スマホ用のゲームとしてまとまっている。スマートフォンのヒット作品は、必ず触って気持ちいい作りになっているが、その気持ちよさがしっかりある」と評価。実際にプレイをしてみた際に、始めは上手く狙ったところにハンマーが投げられないが、馴れてくるとハンマーを振り回して敵を一掃できる“上達するおもしろさ”があると語りつつ、ビジュアルを“街中でビルを壊す”といったわかりやすい内容ではなく、現状の線画のようなものにした理由について質問。その理由は、軽くてレスポンスのいい操作感を実現するためだと聞いて、納得の様子だった。

本作がリリースを想定していて、アップデートも予定しているという発言を受けて、「感心した」と宮崎氏。

 宮崎氏から「歯ごたえのある難度について、現状のもので行こうと決断したのはどうしてか」との質問が。剱持氏はしばし悩みつつも、「自分たちは難しいと感じた点にこそ、おもしろさを感じた」と答えた。