荒野と口笛と光と音のシンフォニー! GSJプレミアムコンサート『ワイルドアームズ』&『アーク ザ ラッド』リポート

ゲーム音楽に特化した、プロフェッショナルなコンサートシリーズ“GAME SYMPHONY JAPAN”の最新公演より、『ワイルドアームズ』および『アーク ザ ラッドI&II』の模様をお届けする。

SIEの伝説のRPGがオーケストラで復活!

 2018年3月4日、東京・三越劇場にてアイムビレッジが主催する“GAME SYMPHONY JAPAN PREMIUM CONCERT”3公演が行われた。

 “GAME SYMPHONY JAPAN(以下、GSJ)”は、ゲーム音楽に特化した、プロフェッショナルなコンサートシリーズ。これまでにも、さまざまなタイトルやゲームメーカーとコラボレーションしたコンサートが催されてきた。毎回、各分野からスペシャルゲストを招き、幕間にトークをくり広げることでもおなじみで、音楽はもちろん当時の裏話などもファンにとっては楽しみのひとつとなっている。

 今回は、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)を代表する作品である『ワイルドアームズ』、『アーク ザ ラッド』、『勇者のくせになまいきだ』の3タイトルをそれぞれフィーチャーしたコンサートが、独立した公演として開催された。また、会場である三越日本橋本店ともコラボレーションを実施。同デパート内の“はじまりのカフェ”では期間限定でSIEとのコラボメニューの提供や、展示、物販、プレイステーション VRの体験会などが行われていた。

 本記事では、今回の公演の中から『ワイルドアームズ』および『アーク ザ ラッドI&II』の2公演と、はじまりのカフェの模様をお届けしよう。

53曲を90分でまとめ上げた渾身のステージ

 この日、最初の公演となった『ワイルドアームズ』。1996年12月20日に第1作が登場し、以降リメイク版も含め7タイトルがリリースされてきた、SIEが誇るRPGシリーズのひとつである。荒れ果てた大地が広がる終末の世界を舞台に、西部劇とファンタジー、そして巨大なロボットたちが激突する特撮作品の要素を盛り込んだ独特の世界観と、王道で胸アツすぎるストーリー、そして口笛の音が鳴り響くロマン溢れるBGMなどで、いまなお多くのファンに支持される作品だ。

 会場の三越劇場がある、三越日本橋本店の開店時刻にはすでにファンが集結。全席指定であるにも関わらず、開演30分前に設定された開場時間には入口の前に行列が形成されていた。

こちらは、来場者への“お土産”であるミニ色紙。イラストは、20周年時に『ワイルドアームズ ザ フィフスヴァンガード』および『ワイルドアームズ クロスファイア』のキャラクターデザインを手掛けた佐々木知美氏が描き下ろしたもの。

 というのも、GSJでは開演前に“プレトーク”と題して、GSJ代表でありコンサートの指揮を務める志村健一氏とゲストによるトークコーナーが行われるのが恒例となっているから。

 この日も、総合司会であるタレントの結さん、SIE JAPANスタジオ所属で“Jスタ音楽祭”プロデューサーの伴 哲氏、そして志村氏が開演15分前にステージに登壇。コンサート開催のきっかけなどが語られたが、会場がとくに沸いたのは、今回の選曲および編曲は作曲を担当したなるけみちこ氏みずからが情熱を持って行ったこと。そして、この日リハーサルの段階になっても「その音はイメージと違うので、楽器を変えてください」と使用する楽器の変更を要請するといった、なるけ氏が強いこだわりを見せていたと聞いたとき。

 さらに、90分のコンサートなのにスコア(楽譜)の厚さがなんと2センチほどにもなったそうで……。とてつもない労力が注がれていたと知って、自然と拍手が起こっていた。

 そしていよいよ開演。全53曲はすべて初代『ワイルドアームズ』のものである。

 口笛ミュージシャンの早川章弘氏による、美しい口笛の音が鳴り響くオープニングテーマ『荒野の果てへ』(『ワイルドアームズ アドヴァンスドサード』のエンディングテーマや『ワイルドアームズ ザ フォースデトネイター』のバトル曲などにも使われている)から始まり、ストーリーに沿ってタウン、フィールド、会話イベント、バトルの各曲が三章構成で演奏されていく。

日本でも数少ない“口笛師”の早川章弘氏による、口笛演奏。心震えるほど美しい音色を響かせていた。

 西部劇の世界観だけあって、全体的に通常編成よりもギターやパーカッションの音色が目立つ曲調になっており、オーケストラでありながらビッグバンドのような賑やかさも味わえる、おもしろい内容になっていた。

 とくに、第二章で名物ライバルのゼットのテーマ『あれれ?』のような昭和の特撮、アニメ、時代劇を思わせる曲や、カラミティ・ジェーンのテーマ『子供だなんて思ったらお嬢様?!』といった魔女ッ子アニメ風の曲など、ユニークな曲が詰め込まれているのは、まさにゲームならでは。

 さらに、曲の内容によって照明の色も変えられ、緊迫感溢れるシーンの曲なら真っ赤な光になったり、穏やかな街の曲では白や緑の光に変わったりしていた。

曲に合わせて照明の色も変わり、聴覚だけでなく視覚的にも会場を盛り上げる演出は、“ゲーム”のコンサートならではといったところ。

 トークコーナーを挟んでの第三章は第二章から一転、ゲーム終盤のバトル曲などの壮大な曲が続く。エンディングテーマの『青空に誓って』では、歌手の渡辺真知子氏が登場し、堂々の歌声を披露。序盤、中盤、終盤まったく隙のない怒濤の展開で、90分の公演は幕を閉じた。

 もともと、『ワイルドアームズ』は内蔵音源だけでなく、イベントなどの重要なシーンではオーケストラ録音のBGMを使っていたせいもあって、まるで印象が変わる……といったこともなく、ファンには自然と楽しめたのではないだろうか。

最後に登場し、圧巻の歌唱を披露してくれた渡辺真知子氏。パワフルな歌声は20年以上経ってさらに円熟味を増していた。

初代『ワイルドアームズ』を作った伝説のスタッフたちがゲストに

 二章終了後に設けられたトークコーナーでは、ゲストとして『ワイルドアームズ』シリーズでプロデューサーを務めたSIEの本村健太郎氏、なるけみちこ氏、そして開発プロデューサーのメディア・ビジョン福島孝氏が登壇。制作当時の思い出を語ってくれた。

左から司会の結さん、メディア・ビジョン福島孝氏、作曲家なるけみちこ氏、SIE本村健太郎氏、指揮者の志村健一氏。

 当時はデバッグのアルバイトをしていたという本村氏。『ワイルドアームズ』には開発終盤にヘルプでチーム入りしたものの、“マスターアップまで残り5分”というところで致命的なバグを出してしまい、発売延期の立役者(?)となってしまった苦い思い出があったようで……。

 メインテーマのエピソードを聞かれたなるけ氏は、口笛を入れた曲作りをした経験がなく、当時かなり行き詰まっていたのだとか。しかし、自宅近くの高速道路のパーキングエリアでの休憩時、階段を4段くらい上ったところでふと頭の中に4小節のフレーズが降りてきて、そこから書き上げることができたそうだ。

 今回のコンサートについては、当時の仲間たちや思い出の場所が時代とともになくなっていき、いろいろな重圧を感じながらも「オリジナルをきちんと伝えたい」という思いで作り上げたのだという。感極まって涙を流すひと幕もあり、20年という歴史の重さを感じるコメントだった。

 福島氏も、ユーザーインターフェース関連で大幅な作り直しを経験するなど、開発中の苦労話を披露。ただ、第1作でしっかりとしたベースを作ったことが、シリーズとして続く要因になったのではないかと語っていた。

 スマートフォン向け新作アプリのリリースが発表されている『ワイルドアームズ』。なるけ氏や、シリーズの産みの親でもある金子彰史氏もスタッフとして参加し、鋭意開発が進んでいるようだ。2018年中に何らかの動きがあるとのことなので、そちらも楽しみにして待ちたいところだ。

終演後「終わった……」と思わずつぶやき、この公演に懸けた力のすさまじさを伺わせたなるけ氏。この公演は“初演”であり、また何度も再演できるように応援してほしい、と観客に語っていた。

【プログラム】
第一章
 荒野の果てへ
 WILD ARMS
 希望
 荒野の渡り鳥
 冷たい闇(ダンジョン)
 クリティカル・ヒット!
 Win!
 Battle M-BOSS
 世界にひとりぼっち
 勇気(ダンジョン)
 一攫千金!
 驚愕
 修道院
 迷いの路
 街
 アーデルハイド城
 宿屋
 古代文明博覧会
 悲鳴を上げる世界
 破壊と喧噪のあとに
 Power fighter
 哀しみ断ち切って
 葬列

第二章
 渡り鳥が集う水辺
 世界を支える力
 エルゥの村
 キシュムの炎
 緊張の一瞬 (レディハーケンのテーマ)
 海上の偽装結婚式
 あれれ? (ゼットのテーマ)
 探し物は長閑な海辺に
 荒波を越えて (バーソロミューのテーマ)
 子供だなんて思ったらお嬢様?! (ジェーンのテーマ)
 ナイトクォーターズ
 滅びの讃歌
 暗黒の聖母
 孤高の世界
 あいのきせき
 ロディの仲間たち
 空を駆る鳥 (エマのテーマ)
 走れ亜精霊

第三章
 天を突く魔塔
 星の海へ
 Battle MOTHER
 Battle ZEIK
 アースガルズは頑張ったもんね
 灰燼に帰す
 ここからはじまるプロローグ
 旅立ちの朝
 姫巫女の想い
 荒野の果てへ 〜新たなる旅路へ〜
 青空に誓って
 戦鬼

23年振りに蘇った“アークサウンド”

 この日、三越劇場でのふたつ目の公演が行われたのは『アーク ザ ラッドI&II』。

 プレトークでは、今回のコンサートのスコア(楽譜)がじつはスゴいものだった、ということが明らかに。

アーク ザ ラッド』では、音楽担当の安藤正容氏がリーダーを務めるフュージョンバンド“T-SQUARE”のメンバーのほか、ロンドンにある“ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ”もBGMの演奏を担当していた。そこで使われたスコア(楽譜)を借りてきて、一部アレンジを加え今回のコンサートに使っているのだそうだ。

 当時発売されたサウンドトラックを聴いたことがある人はご存じかもしれないが、同CDに収録されている楽曲は、いずれもキャラクターのテーマや戦闘などがまとめて入っていて、曲数が非常に少ない(10曲程度)。一方、今回のコンサートでは2作品ながら50もの曲目が用意されている。今回のアレンジでは、そのあたりを分割するといった作業がされているのだろう。

 奥慶一氏から借り受けたというスコアを使い、当時のサウンドが蘇ることになった本公演。ロックとオーケストラサウンドが融合した“アークサウンド”は、23年の時を経てもまったく色あせぬものだった。

 『アーク ザ ラッド』のBGMの特徴は、バトル曲がシチュエーションに応じて多数用意されていることと、訪れる国によってまったく異なる様式の音楽が味わえるというものである。とくに国ごとに変わる楽曲は、冒頭の数秒聴いただけでそれがどんな国なのかわかるくらい。アララトスならアラビア、グレイシーヌならチベット、アリバーシャならアフリカ風……といった具合である。

 それもそのはず、もともと“世界旅行”をテーマに楽曲作りがなされており、その国に着いたときに“異国感”を味わえるようにしていたとのこと。

 とうぜん、オーソドックスな管弦楽器をベースとしながらも、その地域を象徴するような楽器の音色が入るため、非常にバラエティー豊かなサウンドが楽しめた。とくに、第一幕「アークザラッドI」第二章では、シルバーノアでのエリア移動のBGMに始まり6ヵ国のBGMを順番に演奏するという構成になっており、本当に世界旅行をしているかのような気分になった。

各国のBGMは、じつは……

 第一幕終了後は、トークコーナーに。ここでゲストとして壇上に現れたのは、『アーク ザ ラッド』シリーズの作曲担当・安藤正容氏と、シリーズの企画・原案・ゲームデザインを担当してきた“産みの親”土田俊郎氏。

 40年以上に渡り、おもに演奏者として活躍してきただけあって、最初は「恥ずかしい気持ちがありました」とはにかんでいた安藤氏だったが、「次第に惹き込まれていきました」とオーケストラをほめたたえていた。土田氏も「当時を思い出しながら聴いていました。構成がすばらしかった」と絶賛。

『アーク ザ ラッド』の産みの親、土田俊郎氏(中央左)と作曲を担当した安藤正容氏(中央右)。

 続いて安藤氏に作曲時のエピソードを尋ねると「当時こういう仕事はしたことがなかったので、まずはハリウッドの冒険映画などをイメージしながら作っていきました。テーマソングはすぐに作れましたが、キャラクターのテーマとか街の音楽はすごく悩みましたね」と、率直な気持ちを語り、さらに「じつは街の音楽は当時T-SQUAREのメンバーだった和泉(宏隆)くんに全部振って作ってもらったんです(笑)」という裏話も。なお、オリジナルサウンドトラックを見ると作曲者のところにはちゃんと和泉氏の名前が入っており、“事案”ではないのでご安心を。

 トークコーナーの後は、第二幕の「アークザラッドII」へ。ロマリアの謀略と相対する構図の物語が中心だったこともあり、陰謀めいた雰囲気を漂わせる曲や、バトルでも何かに追い立てられているかのような緊迫感溢れる曲が多く、聴覚だけでゲーム内容を思い出させてくれる構成になっていた。

 ゲーム中ではおなじみとなっていた、元スメリア大臣アンデルを始めとする四将軍の悪者感満点のテーマや、第五章の『Music Man』といったヴォーカル付きの(ゲーム中ではシャンテが歌っていた)美しい楽曲も盛り込まれているなど、第一幕とは違った意味でバラエティー豊かな内容という印象。

『Music Man』も、原作通りヴォーカルとともに演奏された。

 ラストにかけての盛り上がりと、壮大さはオーケストラ演奏の魅力が最大限に活かされたもので、終演後は期せずして山のような拍手が鳴り響いていた。

ワイルドアームズ』同様、スマートフォン向けのリブートプロジェクトが進行している『アーク ザ ラッド』。土田氏は壇上で、安藤氏が再び音楽を手掛けていると明かし、観客席も大いに沸きあがっていた。2018年中には何らかのお知らせができそうだということなので、本公演の再演も含め、首を長くして待ちたい。

【プログラム】
第一幕「アークザラッドI」
第一章「アークの旅立ち」
 アークザラッドのテーマ
 全ての始まり
 父、ヨシュア
 アーク
 戦闘1
 アークデーモン
 精霊
 戦闘2
 勝利のファンファーレ

第二章「精霊の宿る国々」
 エリア移動
 スメリア
 ミルマーナ
 アララトス
 グレイシーヌ
 アリバーシャ
 ニーデル

第三章「暗黒の支配者復活」
 危機一髪
 謁見の間
 戦闘9
 Finale 〜Vox Dei
 別れ
 Departure
 Ending

第二幕「アークザラッドII」
第四章「エルクとリーザ」
 オープニング
 四将軍
 地下牢
 西アルディア
 空港
 戦闘1
 リーザとの出会い
 戦闘2
 エルク

第五章「ロマリア王国と英雄たちの戦い」
 ヤゴス島
 浜辺
 Music Man
 思い出
 戦闘5
 ミリル
 リーザ
 戦闘3
 父、ヨシュア
 ロマリア城
 四将軍戦闘

最終章「崩壊〜明日へ」
 戦闘9
 怒り
 Opening
 ラストバトル
 エンディング
 アーク
 明日へ

三越日本橋本店とのコラボレーションカフェも

 今回の公演では、SIEのみならず老舗デパートの“三越”ともコラボレーションするという、これまでになかった試みも実施。

 2018年2月28日〜3月6日には、三越劇場のある三越日本橋本店“はじまりのカフェ”で、SIE JAPANスタジオの作品資料展示や、物販、コラボメニューの提供などが行われていた。

 はじまりのカフェは、三越日本橋本店・本館7階にある複合型ショップで、カフェを軸に5つのゾーンが設けられており、毎月テーマに沿った“コト”を提案、提供している。同施設では、これまでもコーエーテクモゲームス・シブサワ・コウ氏の活動35周年を記念した特別展示や物販、同社の『ときめきレストラン☆☆☆』とのコラボカフェなど、ゲーム関連のコラボレーションが多数実施されていた実績がある。

カフェスペース内には、SIE歴代作品のポスターや、巨大サイズのDUALSHOCK4の展示なども。

コンサートが行われた3タイトルのポスターやイメージビジュアルのパネルも飾られていた。

コンサート当日は階下まで連なる行列ができていた、コラボカフェ。オリジナルメニューのクオリティーも非常に高かった!

 また、物販コーナーではGSJ×SIEのコラボレーショングッズが先行販売されていたほか、墨絵師“御歌頭”氏による3タイトルの墨絵アートも販売されるなど、ここでしか手に入らない貴重なグッズにも注目が集まっていた。

 さらにプレイステーションVRの体験コーナーも用意。こちらのコーナーでは、2017年にミューザ川崎で開催されたGSJのコンサート映像を収録した『JAPAN Studio VR音楽祭』を、ソファーに座って優雅に体験することができた。

ゆったりとした体験スペースに加え、過去作品やグッズの展示なども。

 三越ならではの空間作りでSIEの世界が楽しめた今回のコラボイベント。またの再演をぜひとも期待したいところだ。



photograph by Yutaka Nakamura
(C)Sony Interactive Entertainment Inc.