2018年3月9日、JFAハウス(日本サッカー協会ビル)にて、Jリーグ主催による『FIFA 18』のesports大会、“明治安田生命eJ.LEAGUE”の開催が発表された。ここではその模様をお届けする。

世界へと続く『FIFA 18』のesports大会をJリーグが開催! “明治安田生命eJ.LEAGUE”開催発表リポート_01

Jリーグのトップ&プロプレイヤーが登壇、eJLEAGUEのビジョンを語る

 今回の発表ではまず公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグの正式名称) チェアマンの村井満氏と、株式会社Jリーグマーケティング 代表取締役社長の窪田慎二氏が登壇。村井氏は「ゲームのサッカーは、年齢、国籍、身体的ハンデを越えて(サッカー)を楽しめるコンテンツ」という理念としての魅力と、「esportsの市場が拡大し、サッカー界だけを見てもドイツやオランダ、アメリカなどのクラブが公式リーグ戦を行っています。我々Jリーグも新たなお客様に興味を持ってもらうため、チャレンジしていきたい」と事業面での狙いを挙げ、明治安田生命eJ.LEAGUEを開催するにいたった経緯を説明。また、今大会が国際サッカー連盟、FIFAが開催する“FIFA eWorld Cup 2018”の出場権を得られる大会であることも発表した。

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村井満チェアマン。
“FIFA eWorld Cup 2018”は、2004年から2017年まで行われていた『FIFA』シリーズの大会、“FIFA Interactive World Cup”をリニューアルしたもの。

 本記事に目を通しているような(サッカー)ゲーマーがもっとも気になるであろう明治安田生命eJ.LEAGUEの開催時期、ルールといったような概要は、窪田氏から説明がなされた。まず、明治安田生命eJ.LEAGUEはPS4版の『FIFA 18』のFUTモードを使用し、オンラインでの予選ラウンドを計6回、3月最終週と4月1週目の金~日曜に実施。予選ラウンドに勝利したプレイヤーは、2018年にJ1リーグに在籍、かつ『FIFA 18』に収録されているJ1の15クラブから選ばれた“推薦選手”とともに決勝ラウンドに進出。決勝ラウンドはJFAハウス1Fのサッカーミュージアム、“ヴァーチャルスタジアム”にて行われ、現地での一般観覧や配信も行うとのことだ。

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大会の概要を説明する窪田社長。ちなみに手にしているのは明治安田生命eJ.LEAGUEの大会タイトルマーク。Jリーグでおなじみの“J”型のロゴに、電子的(electronic)と地球(earth)の意味を込めた“e”が加えられている。

 そして大会の概要とともに、Jリーグの大会ならでは、と印象に残るルールも同時に発表された。それは本大会に出場するプレイヤーは必ずJリーグのチームを選択、決勝ラウンドでは使用チームと同じユニフォームを着用し、戦いに臨むという点だ。ただ、チームに制限はあるものの、FUTモード最大の魅力である好きな選手を集めてドリームチームを作れるという要素も両立。そのため「川崎フロンターレのユニフォームを着たメッシやクリスティアーノロナウドを使うのはもちろん可能です」(窪田氏)とのこと。よって決勝ラウンドでは一般的なサッカーゲームでは見られない、Jのユニフォームを着た海外のスター選手たちが躍動するという、試合のクオリティーはもちろん、見た目的なエンタメ性も高い大会になりそうだ。

 なお、大会のエントリー方法や詳しいルールなどはJリーグ公式ホームページ内の明治安田生命eJ.LEAGUE特設サイト(https://jleague.jp/ejleague/)に記されているので、興味のある『FIFA』プレイヤーはそちらを確認してもらいたい。

 大会に関する発表がひと通り終わると、『FIFA』シリーズを中心にプレイするプロesportsプレイヤー、マイキー選手も登壇。すでに明治安田生命eJ.LEAGUEとは別の手段(対戦環境のいいアメリカに渡って集中的にプレイ)で、“FIFA eWorld Cup 2018”の第一関門、オンライン予選は突破しているマイキー選手は、「日本でも(FIFA eWorld Cupに関わる)大会が開かれるのは、いい意味でびっくりしています」と率直に感想を語り、また「日本を含めてアジアではまだまだ『FIFA』シリーズの認知度が低いので、Jリーグさんの取り組みでプレイ人口が増えてくれると、いちプレイヤーとしてもいいなと思っています」とコメントした。また、esportsの魅力に関しては「気軽に参加できるところがほかのスポーツと違ういちばんの魅力だと感じています」と語った。

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ゲストとして登場したマイキー選手。本人いわく「世界大会より緊張しています(笑)」。

 マイキー選手のトークが終わると、会見は質疑応答に移行。ここではゲームメディア、サッカーメディア、TV局といったさまざまな媒体から、下記の質問が投げかけられた。

1.賞金は支給されるのか
2.Jリーグ推薦選手の選考基準
3.将来的に『FIFA 18』以外のゲームタイトルを使った大会を行う予定はあるのか?
4.既存の『FIFA』のコミュニティに寄与する施策を打つことはあるのか?
5.今回のJリーグの取り組みは昨今話題に挙がっている“子供のスポーツばなれ”に効果はあるのか?
6.日本esports連合(JeSU)と何らかの連携を取る予定は?
7.リアルスポーツ(Jリーグ)とesportsの競技人口、客層はリンクするのか?

 といった質問が投げかけられた。まず、1の賞金については村井氏いわく、「現在のところは検討中」で、「賞金が出るとしたらJリーグから」になるとのこと。2については「基本的にJ1のクラブの方にお任せ」しており、J1のクラブがプロゲーミングチーム起ち上げに向かって動いているという話は「可能性としてはありますが、まだ具体的な話は聞いていない」状態だという。

 3、4に関しては「検討することはもちろんあるが、まずは今回初めて取り組む『FIFA 18』での大会をしっかり成功させたい。その上で本大会を運営する中で出会うであろうコミュニティの方々と、しっかり議論を重ねて協力していきたい」と村井氏が解答した。

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質疑応答に答える窪田氏、村井氏、マイキー選手。

 5の質問に対しては、昨年からJリーグと放映権の契約を結んだDAZNを村井氏が例に出し、「日本では全身を動かす“運動”や学校の“体育”のことをスポーツと指すことが多いですが、海外発のDAZNではダーツやビリヤードもスポーツコンテンツとして扱われています」と答え、続けて「(手元にデータがないので)確かなことは申し上げられませんが、汗を流す全身運動だけではない、本来の意味でのスポーツ(競技)人口は、必ずしも減っているとはいえないのではないか」という考えを示した。

 6には窪田氏が解答。この件に関してはJeSUが『FIFA』シリーズを取り扱っていないため、「現時点でとくに連携を取っていることはありません」とのこと。今後については「状況を踏まえながら、どのように関わり合いを持つのか決めていきたい」と答えた。

 7の質問には村井氏が「近年は試合のスタッツや選手のパフォーマンスをデータとして提供し、またゲームの『FIFA』の方も、現実に近いデータ等が採用されています」という返答に加え、マイキー選手も「ぼくは子どものころはリアルのサッカーもやっていましたが、サッカー選手の名前はほとんどゲームで覚えました。そこからJリーグをスタジアムに足を運んだこともありました」と自身の経験(そして、多くの“サッカーゲームユーザーあるある”でもある)を交えつつ、「そういう意味ではゲームからJリーグもあるのかなと思います」と締めくくった。

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会見終了後は登壇者のフォトセッション&マイキー選手の囲み取材も行われた。写真は設営の合間に行われたマイキー選手と村井チェアマンの対戦。試合は前半17分(現実の時間だと3~5分ぐらい?)の間に、マイキー選手が2点を取ったところで中断。

マイキー選手インタビュー

――マイキー選手は基本的には日本を拠点に活動されていると思うのですが、今回アメリカからオンライン予選に参加しましたよね? その理由は?

マイキー そうですね、基本は国内で活動しています。今回のオンライン予選は欧米から参加したほうがネット環境もよく、強いプレイヤーも多かったので、1ヶ月間ほどアメリカに行きました。

――オンライン予選がどのようなものだったか、またどう勝ち進んだかを教えてください。

マイキー まだ行われていない大会がいっぱいあるんですけど、最初に行われたオンライン予選は、世界のオンラインランキングのTOP64――海外はXbox OneとPS4の2ハードで予選を行うので128人ですね――その中に入るためにアメリカに行って、64位以内に入れたのでオフライン予選へ進む権利を獲得したという感じです。それが今年の2月から3月の間の話です。

――オフライン予選はいつごろ開催されるのですか?

マイキー 今日発表されたんですけど、4月中旬にマンチェスターにTOP64の選手が集まってやるようです。そこでベスト8に入らないと、つぎへは進めません。

――ふだん国内にいるときの練習時間はどれぐらいでしょうか? また、レベルアップするために心がけていることはありますか?

マイキー 自分はあまり練習しない部類だと思います。ふだんは3~4時間ぐらいで、やらない日もあります。ただ、大会前は6~10時間ぐらいはやりますね。練習時間は本当にプレイヤーによって違うので、(誰に聞いても)マチマチだと思います。レベルアップするには、やっぱり自分より強いプレイヤーと対戦することですね。高い環境でプレイすることが、いちばんの上達への近道かなと思います。

――マイキーさんのFUTのチームで軸になっている選手、またプレイスタイルを教えてください。

マイキー プレイスタイル、どう戦うかは相手によって変えないとダメなのですが、やはりボールを持ったほうが有利なので、守備的か攻撃かといわれれば攻撃寄り、ポゼッションですね。FUTで使っている選手は、メッシとかロナウドとか、皆さんが思い浮かべる選手になっちゃうんですけど。ただこのモードでは、引退した選手、FWだとアンリやブラジルのロナウド、DFでもファーディナンドだったりが使えるので、そういったレジェンド選手も織り交ぜながらチームを作っています。

――もっとも信頼している、期待をかけている選手は?

マイキー そうですね……レジェンド選手になってしまいますが、中盤のビエラ(アーセナルのセントラルMF)です。ビエラは替えがきかないですね。

――ちなみにJリーグの選手を使ったりとかは……。

マイキー FUTだとゲーム内で設定されている能力が(トップレベルの選手と)違いすぎて、ちょっと使うのは難しいですね(笑)。もし使うのであれば、Jリーグの中でいちばん能力が高い、柏レイソルのクリスティアーノ選手ですかね。スーパーサブでなら使うかもしれないです。

――現在esportsと呼ばれるタイトルは『FIFA』シリーズのように現実のスポーツに近いものもあれば、まったく関連性がないタイトルもあります。それぞれの魅力をどう感じていらっしゃるか、また「別にスポーツと関連づけなくてもいいんじゃないか?」という意見に対してはどう思いますか?

マイキー なかなか難しい質問ですけど……esportsとスポーツって、もともと関連性があったわけではないじゃないですか。リアルのスポーツを題材にしたゲームが、esportsのメインになっていくかどうかもわかりませんが、でもオリンピックでesportsが採用されるとしたら、そういうゲーム(リアルスポーツが題材のゲーム)が採用される可能性が高いのではないか、ぼくはそう聞いているので……そうなったほうがesportsプレイヤー全体に脚光が当たるようになるのかな、と個人的には思います。

――オリンピックに『FIFA』が採用されたら出たいですか?

マイキー 出たい、出たくないかでいえば出たいですね。

――強烈にどうしても出たいというわけではない?

マイキー 実感がないですからね。想像ができないです。でも、この前の冬季オリンピックの盛り上がりを見ていると、ああいう舞台で戦いたいという憧れはあります。

――現在の『FIFA 18』ではどこの国、地域が強いとされているのでしょうか? また日本はどれぐらいの位置にいると言えますか?

マイキー リアルのサッカーに近くて、ヨーロッパがいちばん強いですね。ドイツやフランス。それと北欧です。スウェーデンやデンマークが『FIFA』では強い。つぎに強いのはアメリカ、ブラジルなど南米を含めたアメリカ大陸ですかね。アジアは残念ながら、下のほうです。日本の位置もリアルのサッカーと同じで、アジアの中ではトップに近いけど、世界的に見ると……という感じです。日本は競技人口がまだまだ少ないので、まずはそこの分母を増やすことからではないでしょうか。この大会を機に、日本でも『FIFA』が注目されていくでしょうし、そういった先に日本から強いプレイヤーが輩出されて、そこから世界の強豪を狩れるようなプレイヤーが出てくるのを期待しています。