筋肉=交渉力! 原始時代で学ぶビジネスマナー【ARK: Survival Evolved】

 はじめまして、戸部マミヤです。ファミ通編集部のバーチャル新入社員をやっています。

 バーチャル新入社員とは、動画や記事などのコンテンツを制作する架空の新入社員です。「フレッシュマンかくあるべき」という集合的無意識からうまれた存在なので、アイコンとしてスーツを着ています。スーツの編集者なんているはずがないのに……。

バーチャル新入社員の戸部マミヤ、ゲーム実況はじめました。/『ARK: Survival Evolved』で学ぶビジネスマナー_03

 そしてこのたび、バーチャル新入社員のバーチャル業務のバーチャル一環として、ゲーム実況動画を始めることになりました! 報酬もバーチャル通貨で支払われるそうです。ビットコインかな? わくわく!

バーチャル新入社員の戸部マミヤ、ゲーム実況はじめました。/『ARK: Survival Evolved』で学ぶビジネスマナー_01
バーチャル新入社員の戸部マミヤ、ゲーム実況はじめました。/『ARK: Survival Evolved』で学ぶビジネスマナー_02

 ガバスは仮想通貨じゃないからな。

 動画はまだ一本だけですが、これから頑張っていきますので、応援よろしくお願いします。

おまけ

「マナーを守らない奴はカスだ!」

 そう叫んだのは、田崎だった。

 田崎とぼく、そして数人の男たちは“大切な物”をめぐる話し合いの席にあった。もしかしたら、女性もひとりくらいは居たかもしれない。ただ性別など関係なく、皆が一様に“それ”を狙っていたのは紛れもない事実で、田崎の怒号は「誰であろうと抜け駆けは許さない」という確固たる意志の表明に違いなかった。

「マナーを守らない奴は、すべてを失う。わかってるんだろうな」

 続く言葉を、今度は低いトーンで付け加える田崎。他の者たちをまっすぐに見据える田崎の眼差しは、身分も位も関係ないはずのその場にあって、唯一「自分こそが正しい」という自信に満ち溢れていた。ぼくが彼の名前を覚えていられたのは、きっとそのせいだろう。

 田崎の言う“マナー”とは、ぼくらの間でだけ通用する、暗黙のルールのようなものだ。

“揉め事があったらコインで決める。ただしそれは1対1の場合だけ”

 ごめん間違えた。これは幻影旅団のルールだ。『ハンター×ハンター』連載再開おめでとうございます。

 正しいルールは、こうだ。

“あまった給食のデザートがほしい子は、みんなでなかよく“じゃんけん”しましょうね”

 ぼくら5年3組のみんなは、給食のゼリーが大好きだった。ただのゼリーじゃない。桃のゼリーだ。半年に一回しかメニューに登場しない、果肉がゴロゴロ入っている桃のゼリー。めちゃめちゃうまい。王様とかが食べるやつ。純金の風呂の中で、毛の長い猫を撫でながら。

 そりゃあ田崎も必死になる。彼は、王族ではなかったから。

だったら、四の五の言わずにじゃんけんすりゃいいじゃん。

 残念ながら、それは無理な話だ。田崎は両腕を骨折していた。左右の腕がギブスの人間を見たことがあるか。ちょっとだけ、おもしろいぞ。

「俺は腕ぇ折れてんだぞ! じゃんけんできねえんだぞ! “みんなで”“なかよく”だろうが! みんなの中に俺は入ってないのかよ!」

 田崎、吠える。ハウリング、田崎。

 だが待ってくれ。お前の腕がミイラ男の親玉みたいになってるのは、お前が信号無視してトラックに突っ込んだからだろうが。

「マナーを守れよ!!!」

 お前が交通マナーを守れ。

 結局、“なかよくできなかった罰”としてゼリーは教師に没収された。余ったゼリーだけじゃない。本来なら食べられたはずの、自分たちのゼリーまで奪われてしまった。

 あのゼリーは教師の腹に収まったのだろうか? それとも捨てられてしまったのだろうか? もう知る由もないが、ひとつだけ確かなことがある。

――マナーを守らない奴は、すべてを失う。

 あれから十年以上経つ。新入社員の研修を受けながら、ぼくは田崎の言葉を思い出していた。

 きっとビジネスマナーも例外ではないのだろう。ネクタイをきゅっと締め直し、コントローラーを握った。

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