2017年10月28日、福岡県の九州産業大学にて、コンピューターエンターテインメント開発者向けのカンファレンス“CEDEC+KYUSHU 2017”が開催。本記事では、同カンファレンスの基調講演“老若男女を魅了する世界観別アートワーク描き分け技法”のリポートをお届けする。
この講演で登壇したのは、レベルファイブのアートチームから、マップアートを主に担当してきた梁井信之氏と、荒川政子氏。ふたりとも『妖怪ウォッチ』シリーズや『レイトン』シリーズなどで、マップ制作を担当している。
(右)梁井信之(やないのぶゆき)氏は、2002年入社。主な担当作品は『二ノ国』シリーズ、『タイムトラベラーズ』、『妖怪ウォッチ』シリーズなど。心掛けていることは、カテゴリや常識にとらわれない、幅広いデザイン作り。
セッションの前に、梁井氏は会場の九州産業大学は母校でもあり、「ここで講義をすることは、非常に感慨深いものがある」と語った。そんな梁井氏が15年間に渡って所属しているレベルファイブのアートチームは、主に2Dを主体としたアートワーク業務を行っている部署だ。アートチームでは、キャラクターデザイン、マップデザイン、UIデザインを担当しており、梁井氏と荒川氏は背景美術などのマップアート制作に携わっている。
荒川氏から、アートワークの制作プロセスが解説された。レベルファイブのアートチームでは、まず資料を大量に収集することから始まるという。いきなり描き始めるのではなく、集めた資料をもとにアイデアを展開してから、ラフイメージの制作に入る。最終的には、そのラフを清書していく中で、詳細な設定を施していき、完成形に持って行くという流れだ。
『レイトン』シリーズの場合
ここからは、それぞれが担当してきた作品について、より具体的なタイトル別の描き分け方のコツを解説。門外不出のテクニックが明かされることとなった。
荒川氏は、『レイトン』シリーズが架空の英国を中心とした古い西洋を舞台としていることから、“アンティーク”というキーワードを設けている。
一見すると落ち着いた雰囲気を感じさせる背景だが、主役のカトリーエイル・レイトンが活躍する“レイトン探偵社”前の風景では、あえて探偵社の配色のみを緑、オレンジという補色を用いることで、探偵社の存在感が鮮やかに表現されている。
荒川氏の作画工程では、レイヤー分けをした線画を描いたのちに、カラーパレットを作成して色づけをしていく。その際には、きっちりとしたカラーマネジメントが重要になるという。
『レイトン』シリーズの背景を描く際のポイントとしては、コントラストを意識した配色が重要だと説明。全体が落ち着いた配色になるからこそ、そこに鮮やかさを際立たせる陰影や挿し色で、コントラストを描き出すのだ。