2017年10月14日、15日の2日間に渡って、“PUBG JAPAN CHALLENGE 2017 by DMM GAMES”というオンライン大会の予選が開催された。PC用バトルロイヤルシューター『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)の大会である。
SQUAD(4人ひと組のチーム)単位で出場登録し、14日に個人戦、15日にチーム戦を実施。各日3戦ずつの順位やキル数でポイントを競い、上位20チームが10月22日実施の決勝本戦に進出できる。
本戦の上位4チームには、11月に韓国で開催される大会“PUBG ASIA INVITATIONAL at G-STAR 2017”への出場権が授与されるという立てつけだ。
予選には159チーム・636人が参戦。8つのサーバーに分かれ、つぎからつぎへと試合が進行していく。
僕、ミス・ユースケは14日にニコニコ生放送の配信現場を見学し、15日は自宅で配信番組を観戦。『PUBG』は一般的なFPSの試合よりも起きていることがわかりやすく、専門知識はあまりいらない。独特の見どころもあって楽しかった。肩に力を入れ過ぎない程度に感想を書く。
(※写真とキャプチャー画像が混在しています。見にくかったら申し訳ない)
14日は個人戦。静かに立ち上がって急転直下
この大会はある種の大きなお祭りだ。実況・解説を行うキャスターは各配信プラットフォームごとにばらばら。自分のチャンネルで配信しながらプレイする選手もいた。
ニコニコ生放送のMCは、FPSなどに造詣の深いライターのBRZRK氏と、プロゲーミングチーム・DeToNator代表の江尻勝氏。BRZRK氏は「(求められているのは)プロ野球中継の副音声みたいな感じですかね」と、自分たちを評していた。だらだら見られる番組もいいものである。
『PUBG』は広いマップ内で武器やアイテムを調達し、最後まで生き残るのが目的だ。時間経過とともに競技エリアが狭まっていき、エリア外にいるとダメージを受ける。
アイテムの配置や安全なエリアはランダムで決まるため、運に依る部分も大きい。DeToNator代表の江尻氏いわく「野良と大会の戦いかたは全然違います。野良でいくら練習しても、その動きが大会で通じるとは限らないようですね」とのこと。
『PUBG』の目的は敵を倒すことでも拠点を制圧することでもなく、“生き残ること”だ。極論を言えば、回復アイテムを大量に持って競技エリア外に退避し、ひたすら回復し続けていても上位入賞はあり得る。
事実、gamescom 2017で開催された国際大会“GAMESCOM PUBG INVITATIONAL”でも、そのようなスタイルで上位に食い込んだ有名選手がいた。操作テクニックは間違いなく全世界でもトップクラスのプレイヤーが、勝つために安全策を選んだのだ。
賛否は分かれるだろうが、これも駆け引きのひとつ。野球で言えば、一発逆転のピンチで強打者を敬遠するのと似ている。それは逃げだと非難する人もいるが、勝利に執着しているからこそ安全策を選ぶとも考えられるだろう。
2日間合わせてけっこうな試合数を観戦した。やはり、一般的な対戦ゲームと違って“戦わない”という選択肢があるため、全体的に静かな立ち上がりを見せることが多い。
かなり競技エリアが収縮しているのに、50人以上が生き残っていることもザラ。そこから転がり落ちるように生存者が減っていく。サビに入ると一気に盛り上がるJ-POPみたいだ。
こういう展開を見ていると、江尻氏は悩ましいだろうなあと思った。本大会にはDeToNatorのストリーマー(配信者)4人が出場。配信を通してゲームの魅力を伝える活動をしているだけに、誰よりもおもしろいプレイを見せたい意地もあるだろう。
ゲームがうまいのは当然として、彼らは配信がおもしろいから人気があるのだ。順位と魅せプレイを両立させるのがベスト。がっちがちに守りに入ると、“スポーツ経験者の芸人がバラエティーのスポーツ企画で本気を出してしまった”みたいになる。それは少し恥ずかしい。
サーバー等のトラブルで試合開始は遅れたものの、いざ始まってみると、いろいろな戦いかたが見られておもしろかった。生き残るために数十人が知恵を絞る。それを神の視点で眺めるのだから気分がいい。
建物が密集している場所(中心付近の街、PochinkiやRozhokなど)は物資が潤沢なため、ふだんならスタート直後から混戦になることも多いのだが、大会では違った。いきなりの戦闘不能を警戒してか、マップ全域にプレイヤーが散らばる。
ある程度エリアが狭くなってきたら、建物内で待つのが基本戦略だ。だが、いい建物を見つけたと思ったのもつかの間、すでに先住民が2階で待ち構えている場合もある。
2階の先住民に気付かずに建物に入る瞬間を見ると、息が詰まってしまう。こうなると上の階の住人が有利。物音に聞き耳を立てながら待てるからだ。ようやく逃げ込んだ建物の中から向けられる銃口。そういうサスペンスドラマ見たことあるぞ。
優位ポジションをめぐる椅子取り合戦は後半になるほど激化。早いうちに安全地帯の建物を占拠できると心理的にも楽になる。気持ちを落ち着け、おもてなしの心(と銃)で来客を出迎える。
試合中はどこから狙われているかわからない。しかも、大会ではなかなか人数が減らないため、緊張状態が長く続く。焦るとクリアリング(敵がいそうな場所を見て安全を確認すること)が雑になるため、後手に回ったほうが撃ち負ける印象を受けた。
ニコニコ生放送の番組では、MsFenghuang選手、ns50選手、CresentRose選手、Gabha選手、Wesker選手、XhanZ1119選手のドン勝(勝利)シーンを確認できた。見落としてる人がいたら申し訳ない。
出場選手の中にはほかのFPSで鳴らしたプレイヤーの名前もあった。もちろん『PUBG』でも強いのだろうが、それだけでは勝てないのが本作の恐ろしいところであり、おもしろいところである。
チームワークと運で勝利をかっさらう
10月15日に実施されたチーム戦は、個人戦とは異なるゲーム性を帯びている。大切なのは何よりもチームワーク。アイテムを交換しあえば効率的に装備を整えられるほか、体力がゼロになった仲間を助け起こすこともできる(※)。
(※仲間と組んでいるときは体力がゼロになると気絶する。追加で一定ダメージを受けるか時間経過で死亡してしまうが、仲間の手を借りると復活可能)
あえて単独行動をして広範囲の物資を集める手もあるが、生存率を上げる基本は集団行動だ。ポイントは序盤で乗りものをキープできるかどうか。4人が乗れる足があれば、安全圏から離れた場所でもアイテム収集に時間をかけられる。
やはり注目は、国際大会“GAMESCOM PUBG INVITATIONAL”にも出場したDeToNatorだろう。BRZRK氏から話を振られると、江尻勝氏は渋い顔。気が気じゃないそうだ。
江尻氏 (昨日の)個人戦は気持ちを入れないようにしてました。チーム戦となると全然違うんです。
BRZRK氏 自分の作ったチームのメンバーがひとりひとり欠けていくんですよ。命のともしびが。それを見届けなきゃいけない。
江尻氏 まともに見れないんですよ。
BRZRK氏 僕、部外者だから(その気持ちは)全然わかんないですね。
こんな楽しい掛け合いで送り出されたDeToNatorは、2番サーバーの1試合目でいかにも『PUBG』らしい試合運びを見せてくれた。
序盤はそれほど危険に見舞われることなく物資収集に励むDeToNator。だが、エリア運に見放され、安全な位置取りに出遅れてしまった。ほかのチームに遅れを取りつつもバイクで移動するStylish_Noob選手だが、狙撃に遭って体力を大きく削られる。逃げるように海へダイブ。
Stylish_Noob選手を追うようにほかのメンバーも海へ。何とか回復し、ボートなどを活用して態勢を立て直すが、海岸線にはすでに数チームが展開。安全圏の建物を確保し、お互いを牽制しあっていた。
敵が密集しているときは人数が減るのを待てばいい。無理に動くよりは、ダメージを受けながら海で耐えて、少しでも順位を上げることを選んだプレイヤーも多かった。ダメージゾーンが収縮し、海中にいたプレイヤー(YamatoN_JP選手を含む)がつぎつぎに死亡。
ここで、Stylish_Noob選手とSPYGEA選手の判断が功を奏した。先行して上陸し、ダメージを受けながらも回復し、我慢、我慢、我慢。そうこうしているうちに生存者は7人まで減少。二世帯住宅状態の建物がダメージゾーンにかかり、追い出されるように5人が飛び出した。同時に激しい銃撃戦が発生!
それはちょうどStylish_Noob選手とSPYGEA選手の視界内での出来事だった。遠距離から落ち着いて狙撃し、残った2チームを殲滅。いわゆる“漁夫”で見事にドン勝をかっさらったのである。
不運もあって出遅れたものの、諦めることなく外堀から慎重に索敵。敵同士のつぶし合いを冷静に観察していたら、残った敵全員が目の前に飛び出してきてくれた。実力が幸運を引き寄せた瞬間、Stylish_Noob選手とSPYGEA選手はPCの前で叫んだんじゃないかと思う。
このほかにも見どころは多かった。shirokumakun(白熊くん)選手がSyake(鮭)というチームにやられたときは笑った。鮭が熊に逆襲する瞬間を見られるなんて。
予選を勝ち抜け、22日開催の決勝に駒を進めたのは以下の20チーム。プロゲーミングチームの名前もちらほら。
【予選通過チーム】
MadamDelMonte
TeamGG
TeamDestroy
SunSisterSuicider's
OKINOERABUDAIHYOU
SCARZ
HSPUBGBranch
BuhidouGaming
ikanokaori
aroundthirtyJusticeSquad
DETONATOR
AI.NEXT
7144watchers
SunSisterUnknown
StrayDogs
DTSBELLION
norarengou
LethalEliminators
TEAMHENTAI
WenableGaming
仮に一般的な競技制タイトルの勝敗が実力9:運1の割合で決まるとして、『PUBG』はもっと運の比重が大きい。だからこそ、大会に参加しやすいゲームなのだと思う。運がよければトッププレイヤーに勝てるからだ。
運に左右されやすいということは、『PUBG』の大会は“ガッチガチにストイックなeスポーツ”とは少し違うかもしれない。だが、“みんなで参加してわいわい遊ぶ大会”として考えると、これほど相性のいいゲームはない。
大会が大規模になればなるほど、トップ層以外は「自分はどうせ勝てない」と感じ、腰が重くなる。その点、『PUBG』は大規模でも心理的なハードルが低い。弱くても勝てるかもしれないから。ここにeスポーツ盛り上げのカギがひとつ隠れている気がする。
空き時間の雑談中、江尻氏は「eスポーツには3タイプの考えかたというか、層がほしいですよね」と言っていた。ひとつ目はプロプレイヤーがしのぎを削る本気の場。ふたつ目はゲーム好きが楽しく遊ぶ場。そして、3つ目はプロとアマが対等の条件で戦える場である。
気になるのは3つ目。サッカーで言えば天皇杯だろうか。プロとアマが激突し、ときに番狂わせも起こる。『PUBG』大会はこの天皇杯に位置するのかもしれない。実際、隠れた強豪がプロを翻弄する場面もちらほら見られた。
今後開催されるであろうオフライン大会などで、ノーマークの新鋭がジャイアントキリングを果たしてくれたら。想像するだけで胸が熱くなる。
『PUBG』大会の歴史はまだ始まったばかり。今回は初の大型オンライン大会ということで、運営面のバタバタはあった。運営サイドにはトラブルを次回以降の開催に活かしてもらうとして、『PUBG』がeスポーツ界においてどういう位置に収まるのか、今後の展開に注目したい。
最後に宣伝。10月22日14:30からスタートする“PUBG JAPAN CHAMPIONSHIP 2017 by DMM GAMES 本戦”鑑賞はニコニコ生放送でどうぞ。