伝統と革新が調和したゲームシステム

 2017年9月14日に配信された“Nintendo Direct”で続報が公開され、それと同時に体験版が配信されるという驚きの展開を見せた、スクウェア・エニックスのNintendo Switch用ソフト『project OCTOPATH TRAVELER(プロジェクト オクトパス トラベラー)』。スクウェア・エニックスが誇る王道RPGを受け継ぎつつも、“ロールプレイ”や“HD-2D”、“フィールドコマンド”、“コマンドブースト”といった、独自の要素を多数追加した、新たなRPGとなっている。今回は、これらの要素をまとめつつ、体験版に触れたふたりの担当編集者によるプレイインプレッションをお届けしよう。

『プロジェクト オクトパストラベラー』王道かつ革新的なSQEXの完全新作を、RPGファンの編集者がプレイ&徹底解説!_01
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 なお、2017年9月23日(土)午前9時55分から、東京ゲームショウ2017のスクウェア・エニックスブース内のスタジオで“『project OCTOPATH TRAVELER』 ~First Impression~”が配信される。『ブレイブリーデフォルト』シリーズを手掛けた、浅野智也氏、高橋真志氏に加え、『ロード・トゥ・ドラゴン』のディレクターを務めた宮内継介氏が登場。大のゲーム好きで知られる、声優の安元洋貴さんによるMCで本作の魅力が語られるという。本記事を読んで気になった人はこちらもチェックするといいだろう。

・You Tube“SQUARE ENIX PRESENTS スタジオ(9/23)【TGS2017】”

・ニコニコ生放送“SQUARE ENIX PRESENTS スタジオ(9/23)【TGS2017】”

どこに行き、何をするかは自分次第”ロールプレイ”

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 物語の舞台となるのは、山岳地帯や砂漠地帯を有する広大な“オルステラ大陸”。この地を、8人の旅人たちが冒険する。生まれた場所や旅の目的、特技など、それぞれ異なる8人のキャラクター。プレイヤーは、彼らの中からひとりを主人公に選び、オルステラ大陸を自由に冒険できる。また、旅の中で出会った別の主人公を仲間にすれば、その主人公の物語も体験可能だ。最初に誰を選ぶのか、どのように物語を進めるのかはプレイヤーの自由。プレイヤーの数だけ、ストーリーが誕生していく。なお、今回の体験版でプレイできるのは、下記のふたりの主人公だ。

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剣士 オルベリク・アイゼンバーグ

声:小西克幸(こにし かつゆき)
35歳 男性

「俺は、なんのために剣を振るえば……」

 かつて王国で、“剛剣の騎士”と呼び称えられた凄腕の剣士。ある戦乱で敗北し、敬愛する王と国を失った後、山々に囲まれたハイランド地方にある小さな村に身を寄せていた。何のために剣を振るうべきか、悩んでいたある日、彼は“ある男”の名を耳にする……。

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踊子 プリムロゼ・エゼルアート

声:桑島法子(くわしま ほうこ)
23歳 女性

「カラスの入れ墨……お父様を殺した男……!」

 有力貴族エゼルアート家の令嬢であったが、父親がカラスの入れ墨の男たちに暗殺されて生活が一変。砂漠が広がるサンランド地方の歓楽街で踊子として生計を立てながら、父親の仇を追っていた。そんなある日、酒場にカラスの入れ墨をした男が現れる……。

幻想的な世界を生み出す”HD-2D”

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 3Dで作られた世界を冒険するゲームが多い中、本作は“HD-2D”と呼ぶ技術でオルステラ大陸を描き出す。HD-2Dは、3DCGとドット絵、そして独創的なエフェクトによって表現した世界のこと。複数の技術を駆使して織り成す世界は、幻想的で美しく、見る者を魅了する。さらに、画面の端を暗くぼかして表示しているのも特徴だ。キャラクターの移動に合わせて、フィールドの端々が鮮明になるため、この先にどんな世界が広がっているのか、プレイヤーの冒険心を掻き立ててくれる。

8人の主人公がそれぞれ持つ特別なコマンド”フィールドコマンド”

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 オルベリクは“試合”、プリムロゼは“誘惑”といった、主人公たち専用の“フィールドコマンド”が使える。これらを活用すると、道をふさぐ町人を排除するなど、状況を打開できるのだ。もちろん、フィールドコマンドを使わずに物語を進める方法も用意されており、問題をどのように解決するかはプレイヤー次第になる。

オルベリクのフィールドコマンド“試合”

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▲町人たちにバトルを挑めるほか、人を困らせる悪党を成敗したり、邪魔者を排除したりも。

プリムロゼのフィールドコマンド“誘惑”

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▲町人たちを連れて歩けるほか、バトルに加勢させて、一定時間戦わせることも可能だ。

戦術性に富んだバトルを可能にする”コマンドブースト”

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 戦闘システムには、RPGでおなじみのターン制のコマンドバトルを採用。そこに独自のシステムとして、“コマンドブースト”が実装された。これは、ターンの経過で溜まる“ブーストポイント(BP)”を使い、通常攻撃やアビリティの威力を上げたり、連続使用を可能にしたりするシステムで、敵に大ダメージを与えられる。

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▲ターンが経過すると、画面右側のキャラクター名の下にBPが溜まっていく。このBPを消費して行動を強化できるのだ。敵を一気にせん滅したいときだけではなく、味方のピンチを立て直したいときにも重宝する。
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▲敵には弱点が設定されており、弱点を突くと“シールドポイント”が減る。このポイントがゼロになると“ブレイク状態”になり、相手が行動不能になるうえ、与えられるダメージが増加。

オルベリク編インプレッション”王道を超えた先にある、新世代の王道”

Text by 世界三大三代川

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 コマンドを選んで戦うターン制のバトルにせよ、コマンドで行動を決定するフィールドにせよ、いくつものゲームがくり返してきたものであり、よく言えば王道、悪く言えば使い古されたシステムだ。しかし、この4Kだ、VRだ、と言われる時代に、ターン制コマンドバトルやフィールドのコマンドで、純粋に「これはおもしろい!」と驚くような新たな仕組みが味わえるとは思わなかったし、体験版をプレイしたことで、本作への期待度が、ものすごく上がった。

 僕が選んだのは、騎士から一介の剣士へ身を落としたオルベリク。とても強く、巧みな剣技を持ちながら、村の用心棒になって、過去を憂いている人物だ。彼の因縁にまつわるストーリーも興味深いが、まずは本作のバトルシステムから触れたい。すでに説明している通り、本作のバトルには大きくふたつの特徴がある。ひとつは、弱点を突いて敵のシールドポイントをゼロにして敵を行動不能にさせる“ブレイク”。初めて遭遇した敵は、まだ弱点がわからないため、プレイヤーはいろいろな武器種や属性魔法を使って、まず弱点を洗い出していくことになる。ある程度弱点を見つけたら、大事になるのが行動順だ。どの敵から順々にブレイクさせていくか。敵の行動順に合わせてシールドポイントを削っていくのがセオリーだが、なかにはやけに高いシールドポイントを持っている敵もいるため、一筋縄ではいかない。そこで必要になるのが、もうひとつの特徴“コマンドブースト”だ。

 溜まったブーストポイントを使えば、敵のシールドポイントを一気に削れるため、うまく使うことで、敵の集団に一度も攻撃させることなく、こちらが一方的に攻撃する、というバトルも実現できる。また、ブレイク状態の敵は、防御力が下がっているため、そこにブーストポイントをすべて使った、LvMAXの“十文字斬り”を加えれば、一撃で数千のダメージが!(製品版では、万単位まで行けるのだろうか)。敵をチマチマとブレイクし続けるか、ブレイクのタイミングを調整しつつ、一気に大ダメージを与えるか。最大パーティ人数がふたりの体験版の時点でもかなりの戦略が考えられるのだから、製品版はもっと多彩な作戦が編み出せるのだろう。ちなみに、ブーストポイントは防御にも使える点が興味深い。もしかしたら、製品版では定期的にLvMAXの防御を使わないといけないような強敵も出るのかもしれない。

 と、バトルだけでもまだまだ語れるのだが、フィールドコマンドのことも触れずにはいられない。オルベリクが使えるフィールドコマンドは“試合”。誰彼構わず試合を申し込み、武力でねじ伏せる、騎士のオルベリクらしいコマンドだ(なかには、試合を受けてくれない人もいる)。村の青年から村長まで、誰にでも試合を申し込めるのだが、申し込む際に相手の強さが星の数で表示されるのがおもしろい。見た目通りの強さの人もいれば、見た目とは裏腹に星の数が多い強敵もいたりして、製品版では、世界最強の誰かを探しに行くといったやり込み要素もありそうだ。そして、重要なのが試合に勝つと、相手が気絶して倒れること。これを利用すれば、道をふさいでいる人物を排除するといったことができるというわけ。ただし、試合以外にも、体験版ではプリムロゼのフィールドコマンドを駆使するといった解法もあったため、誰のフィールドコマンドで突破したかで、過程や結果が変わるイベントなどもあり得るのかもしれない。とくに試合コマンドならば、誰かを倒したか、倒していないかで得られる物や展開などが変わる仕組みがあったらおもしろそうだなあと、すでに妄想が止まらなくなる。

 誰にでもわかりやすい王道RPGの作法を使っていながら、まったく新しい、現代らしいRPGを作り出す。『ブレイブリーデフォルト』と言い、盲点を突くようなシステム作りには舌を巻くばかりだ。今回の体験版でプレイできたのは、序盤も序盤だが、それでも本作のおもしろさは十分に体験できた。おそらく、残りの主人公はもちろん、未発表のシステムなども数多くあるだろう。『ブレイブリーデフォルト』とは異なる王道RPGの新たな進化系。体験版をプレイして、その完成形が待ちきれないくらい楽しみだ。

プリムロゼ編インプレッション”ボタンを押したときから選択が始まる”

Text by ロマンシング★嵯峨

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 “主人公を選ぶ”という行為は、それだけでワクワクする。“プレイヤーの選択によって何かが変わる”というゲームならではの醍醐味を、プレイを始めてすぐに味わわせてくれるから。

 『プロジェクト オクトパストラベラー』体験版も、そんなワクワクを与えてくれる。最初に表示されるのは、古めかしい地図の上に立つ8人のキャラクター。プレイヤーはカーソルを自分の意志で動かして、そのうちの誰を主人公に選ぶかを決める。異なる地域にいるキャラクターの中からひとりを選択すると、そのキャラクターのプロローグが始まる……という形式は、『ロマンシング サ・ガ』を少し彷彿とさせる。残念ながら、今回は体験版なので、選べるのはオルベリクとプリムロゼだけだが、他キャラクターについて「この帽子をかぶった女の子は、どんな性格の子かな。どんな武器を使うのかな」と画面を見ながら想像するのも一興だ。

 さて、今回私が選んだのはプリムロゼ。妖艶な踊り子だが、じつは元貴族の令嬢。幼いころに眼前で殺された父の仇の捜すため、雇い主からの非道な扱いに耐えながら機会を待つ……という、かなりヘビーな環境で生きている。どうやら、オルベリクのほうもなかなかに辛い過去を持っているようなので、本作のキャラクターと物語は、全般的にシリアスなのかもしれない。

 で、このプリムロゼ嬢、短剣と闇の術を使いこなして華麗に戦うのだが、筋骨隆々の戦士というわけではないので、やや打たれ弱い。……と書くと、「上級者向けキャラクターなのでは」と思う人もいるかもしれないが、倒されまいと工夫しているうちにゲームシステムの理解が進んでいくので、むしろ初心者にオススメとも言える。というか、今回、プロローグ後ほどなくしてオルベリクを仲間にできたことを考えると、ほかの仲間とは容易に会えそうなので、ゲームの難易度がどうなるかはあまり気にせずに、自分の好みで主人公を選ぶといいと思う。

 話をゲームシステムに戻そう。プリムロゼが打たれ弱いゆえに気づいたこと、そのひとつは、相手をブレイクさせるタイミングが肝心だということだ。せっかく敵の誰かをブレイクさせて行動不能にしても、自分のHPが減っていたら、つぎのターンは自分を回復しなければいけないため、攻撃のチャンスを逃してしまう。思う存分攻撃できるターンを見極めてブレイクすることが重要だ。しかしこれは裏を返すと、味方が大ピンチのときに敵を皆ブレイクさせれば、つぎのターンを気兼ねなく回復に使えるということでもあるので、製品版では、そういった立ち回りも増えてくるかもしれない。

 もうひとつ気づいたことは、プリムロゼのフィールドコマンド“誘惑”の有用性。フィールドにいるキャラクターを誘惑すると、そのキャラクターが同行してくれるというもので、たとえば道をふさいでいる人をどかすとき、ある人物を特定の場所まで連れていくときなどに有効だが、何より役立つのは、同行者が戦闘で加勢してくれる点。敵を攻撃してくれるだけでなく、プリムロゼをかばってくれることもあり、ありがたい。誘惑した同行者をうまく使いこなせば、強敵にもあっさり勝てたりするかも? また、やり込み派の人は、プリムロゼと誘惑による同行者だけでクリアーを目指す、というのもおもしろいかもしれない(仲間を増やさずにクリアー可能かどうかは現時点ではわからないが……)。

 と、ゲームシステムを理解していくにつれ、“説明されすぎない”塩梅の心地よさに気づく。バトルに関して、多少のチュートリアルはあれど、ブレイクのタイミングや、誘惑したキャラクターの使いどころなどは、プレイヤーが試行錯誤しながら考えていくことになる。システム自体は新しいものながら、この“攻略していく楽しさ”は、往年のRPGのようで懐かしくもあり、RPGファンにはたまらないはず。

 最後に……このゲーム、めっちゃ曲がいい。音楽を手掛けているのは、作曲家の西木康智氏。スクウェア・エニックスとがっつりタッグを組むのは今回が初のようだが、スクエニファンの心をつかむような、王道RPGらしい曲が満載で、早くもサントラが楽しみになるデキ。気になる人は、まずは体験版をダウンロードして、タイトル画面の曲だけでも聴いてみて!