日本のeスポーツ団体が統合することで、どんな未来がやってくるのか? 浜村弘一ファミ通グループ代表に聞く

ゲーム業界とeスポーツに関わる5団体が、eスポーツ団体の統合・新設に向けた取り組みを開始。この取り組みの意図を、ゲームとeスポーツの現状をよく知る、浜村弘一ファミ通グループ代表に聞いた。

 2017年9月19日、日本のeスポーツの今後に大きく関わるニュースが報じられた。下記の5団体が、eスポーツ団体の統合・新設に向けた取り組みを開始するというものだ。

・一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)
・一般社団法人日本オンラインゲーム協会(JOGA)
・一般社団法人日本eスポーツ協会(JeSPA)
・一般社団法人e-sports促進機構
・一般社団法人日本eスポーツ連盟(JeSF)

eスポーツに関わる5団体が統合に向けた取り組みを開始、2017年内に新団体を設立へ JOCへの加盟を視野に

一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会及び一般社団法人日本オンラインゲーム協会(JOGA)、並びにeスポーツ業界団体である、一般社団法人日本eスポーツ協会(JeSPA)、一般社団法人e‐sports促進機構、一般社団法人日本eスポーツ連盟(JeSF)の5団体は、日本におけるeスポーツの普及、発展とeスポーツ産業の振興を目標に掲げ、eスポーツ団体の統合・新設に向けた取り組みを開始することを発表した。

 今回の動きをざっくりと噛み砕いて述べると、“ゲーム業界の団体(CESA、JOGA)の協力を得て、日本のeスポーツ業界の団体(JOGA、JeSPA、JeSF)がひとつに統合される”ということになる。

 この取り組みにはどのような意図があるのか、また、日本のeスポーツにどのようなメリットがもたらされるのか。ゲームとeスポーツの現状をよく知る、浜村弘一ファミ通グループ代表に聞いた。

浜村弘一ファミ通グループ代表

――今回発表された施策により、日本のeスポーツ業界の3団体が統合に向けて動き出すとのことですが、これによって、日本のeスポーツにどのような影響があるのでしょうか。

浜村 今回のニュースについて、ポイントは3つあると考えています。順番に説明していきますね。ひとつ目は、この統合によって、JOC(日本オリンピック委員会)に加盟する道が拓けるということです。

――JOCですか!

浜村 JOCに加盟するには、“国内にある唯一のスポーツ団体である”という規定を満たさなければいけないんです。これまでは、3つの団体が存在していたので、2018年アジア競技大会(インドネシア・ジャカルタ、パレンバンで開催予定)には選手を派遣できなかった。でも、eスポーツ団体がひとつになれば、2022年アジア競技大会(中国・杭州で開催予定)に派遣できるようになります。2024年開催のオリンピック(パリで開催予定)でも、eスポーツが競技種目として真剣に検討されているところですし、そういった国際大会に選手を派遣できるというのは、すごいことです。

――それが、ひとつ目のポイントですね。では、ふたつ目は?

浜村 ふたつ目は、ゲーム業界の団体(CESA、JOGA)が協力していること。これは、世界に類を見ないことなんですよ。

――ゲームメーカーが協力することが、珍しいことなのですか?

浜村 海外では、eスポーツ団体がゲームメーカーとトラブルを起こすことがしばしばあります。だからこそ、今回の“IPホルダーとeスポーツ団体が歩み寄った”という形は大きなポイントなんです。

――では、最後の3つ目を教えていただけますでしょうか。

浜村 3つ目は、新設される団体が、正式な“プロライセンス”を発行すること。これには、プロの存在がわかりやすくなるので、協賛金が増えたり、ファンが応援しやすくなったりするという利点がありますが、じつは、それ以上の意味があります。プロライセンスの存在によって、日本でも賞金制の大規模大会を開催できる可能性がでてくるんですね。

――プロライセンスの存在が、どのように賞金制大会につながるのですか?

浜村 これまで、日本のeスポーツ大会においては、ゲームメーカーが大きなお金を用意して大会を開催しようとしても、景品表示法によって、最大で10万円までしか賞金を出せませんでした。

――そういった大会は、“ゲームソフトを買ってもらうためのイベント”という扱いになり、景品表示法によって賞金額が制限されてしまう、というお話でしたね。

浜村 そうです。でも、ライセンスを持ったプロにとって、ゲームは生計を立てるための商売道具ですから、大会があろうとなかろうとゲームは購入して当然のものなんですよね。そうした前提があるから、プロを対象にした大会は“購買促進を目的とした懸賞”には当てはまらないんです。

――なるほど、プロのみの大会であれば、より高額な賞金を用意できると。

浜村 国内で大会を開催できる、というのは重要です。頻繁に海外大会へ遠征する必要がなくなって、渡航費をかけずに賞金を得られる。そうすれば、ゲーマーがゲームを生業にできる時代がやってくるというわけなんです。

――すでにプロを名乗って活動している人も、改めてプロライセンスを得ることで、より活動の幅が広がるという未来もあり得ますよね。日本でeスポーツがより盛り上がるためには、今回の新団体設立は不可避だったと思えます。

浜村 ゲーム業界の団体が協力することで、eスポーツの大会の著作権交渉がしやすくなります。おかげで、選手はそういったことを考えずに、パフォーマンスに集中できるようになりますよね。これは、メーカー側にもメリットがあります。ゲームを観戦する人、ゲームプレイの模様を放送する人たちが支払うお金が、メーカーの収入になるんですから。今後はファミ通でも、ゲームの売上ランキングと並行して、eスポーツの興行収益ランキングも発表していくことになるかもしれない。

――わかりやすい枠組みができることで、eスポーツを支援するメーカーや、プロゲーマーを目指す人が増えていきそうです。

浜村 そうですね。そうやってeスポーツが盛り上がって、たくさんのプロゲーマーが食べていける環境ができて、世界大会に進出することで認知度も上がり、スタープレイヤーが生まれる。その選手が、パリオリンピックで格闘ゲームをプレイして、金メダルを獲得する……という未来が、本当にやってくるかもしれません。今回の施策は、その未来への第一歩だと思います。