『ドウクツジマ』懐かしくてやさしいアクションゲームだぜ!! インタビュー完全版も掲載【とっておきインディーVol.121】

古今東西のキラリと光るインデ ィーゲームを紹介。今週は、『プ チコン3号 SmileBASIC 』で 制作された注目作をお届け。

●それは、かつて体験した冒険の記憶をくすぐる旅路 ――

 テレビゲームをおもしろいと思うポイントはタイトルによってまちまちで、始めた瞬間に「最高!!」と感じるものもあれば、ブツブツ文句を言いながらもやり続け、ふとした瞬間に「ああ、おもしろいんだな」と気付く作品もあったりします。今回紹介する探索型2Dアクションゲーム『ドウクツジマ』の場合は……作られた理由が“小学生の息子に遊ばせるため”と知ったと
き、おもしろさに気付きました。

▲イベントリ画面をタッチスクリーン側に常時表示する、オードソックスな画面構成。

 もともとはニンテンドー3DS用プログラミングソフト『プチコン3号 SmileBASIC』(以下、
プチコン3号』)で制作されたフリーゲームです。『プチコン』を開発したスマイルブームが主催するプログラムコンテストに応募されたことを機に、ダウンロード専用ソフト化された、珍しい経緯をもつタイトルです。使用しているグラフィック、サウンドの大部分は『プチコン3号
のプリセット素材。操作感覚は“メトロイドヴァニア”の通称で、ソフィスティケイトされる以前のスタイルである2Dジャンプアクション風……となると、少し触れたくらいでは、ほかのプチコン製ゲームとの違いがわからないかもしれません。

▲洞窟内外で出会う人物とのちょっとしたセリフにも稚気が溢れ、楽しげな気分になれる。

 しかし、行けるところまで行き、取れるアイテムを片っ端から取っているうちに、本作がただの“アマチュアのクオリティーで焼き直された、古きよきゲーム”ではないことがわかってきます。攻略法が画一的にならないゆとりあるゲームバランス、「このためにわざわざ用意したのか!」と毎回驚かされるギミックや演出の数々は、個人開発者の一方通行なゲーム愛だけではなかなか行き届かない“優しさ”に満ちているのです。それはおそらく、前述の制作動機があってこそ。父親の“自分が好きな世界を自分の子どもと分かち合いたい”という想いが、素直に反映されているゲームデザインだから、その真摯さがプレイを通じて伝わってくるのだと思います。


ひとまずはこれだけ押さえておけば大丈夫!
ゲーム序盤ガイド

 本作の物語は、若き勇者マサポンが大海の孤島にたどり着き、島のオーナーの依頼で、秘宝が眠る洞窟に挑む……というところから始まる。独特のゆるいムードを楽しみつつ、こまめにセーブしながら進めよう。

■主はセーブ地点がある館の中に
館の主は、データセーブ担当だけでなく、
攻略ヒントも教えてくれる好漢(?)だ。

■BONES-骨は語りまくる
ガイコツは序盤から中盤にかけての貴重な情報源。見つけたら必ず調べるのだ。

■アイテムはとにかく拾え
能力アップ系アイテムの入手は新たな道が開けた合図。マップを総ざらいしよう。


●『ドウクツジマ』が世に出ることになったいきさつを開発者に聞く 

 過去のゲームのテイストを持ちつつ、当世風の遊びやすさを備えている『ドウクツジマ』。『プチコン』製ゲーム初の単独ソフトとして、ニンテンドーeショップで配信開始されたことを記念して、開発元である“ぷわっとX”の代表・PUSH氏とスマイルブームの杉内賢次氏に、お話を伺いました。

▲PUSH氏(右)とスマイルブームの杉内賢次氏(左)。

■総合的な完成度の高さが、単独リリースの決め手に

──まずは、『プチコン3号』で作られた『ドウクツジマ』が、いかにして単体商品化されたかについてお聞かせください。

杉内 もともとは“プチコン大喜利(スマイルブーム主催の『プチコン3号』製ゲームコンテスト)”の応募作品でした。「これはピン(単体商品)でいけるんじゃないか」となって社内での支持も得て、去年のゴールデンウイーク前に作者のPUSHさんに連絡しました。

──まず杉内さんが、惚れ込んだんですね。

杉内 昔のゲームっぽいけど、いまどきのゲームのような親切さがあって、演出面がほかの応募作品と比べてレベルが違うなと思いました。プログラム技術が飛びぬけている作品もあったんですけど、そこにフォーカスし過ぎて、ゲーム全体のバランスを欠いている印象でした。……あとは、自分が探索アドベンチャーゲームが好きだったというのもあります(笑)。

──自分が好きなゲームジャンルの作品だと、かえって評価基準が厳しくなる面もあると思いますが、その上で軽々クリアーしている出来だったということですね。

杉内 絶対、ゲーム開発のプロが“お忍び”で作った作品と思っていました。

──PUSHさんのお仕事は?

PUSH 会社勤務で、ビジネス系のアプリケーションを開発しています。ゲーム制作に関しては、趣味でいろんなものをコツコツと作って、自分(ぷわっとX)のサイトで公開する程度でした。

──プチコン大喜利は、過去の開催時にも応募されていたのでしょうか。

PUSH 今回(※第4回。作品募集期間は2015年10月17日~2016年1月4日)が初めてです。それ以前は応募作品にテーマが設けられていたのですが、第4回から“自由部門”ができたので、たまたまその期間に完成した『ドウクツジマ』を出してみました。

──もともとプログラミングの下地があるとはいえ、ゲームデザインのセンスに関する部分は一朝一夕で身につくものではないですよね。

杉内 ひとえに、PUSHさんのセンスだと思います。セリフのひとつひとつてってもおもしろいし。

PUSH ファミコンが出る前からゲームをやっていた蓄積で判断している部分が大きいです。『ドウクツジマ』にも、見る人が見れば「これはあのゲームのあのシーンだな」という場面がいっぱいあります。こう言っては何ですが、あまりオリジナルの部分はないのかなと思います(笑)。

──単独商品化自体は、とんとん拍子で進んだのでしょうか?

PUSH 最初、小林(貴樹)社長から直接連絡があって「本気か!?」と思いました。でもこんなことは滅多にないし、せっかくだからやってみようと。

杉内 PUSHさんにオーケーをもらってからは、商品化の際にどうしても必要になるプログラマの確保がなかなかうまくいかなくて……。そこがクリアーになっていればもっと早く出せたと思います。

──商品化にあたって、ゲーム内容はどの程度手を加えたのでしょうか?

杉内 基本的にはほぼ変わっていないですね。隠しアイテムとキャラクターの増加と、隠しマップの追加をPUSHさんにお願いしまた。あとは、タイトルロゴやキャラクターイラストの描きおこしやUIデザイン調整、CEROの審査や任天堂の品質チェックといった、周辺のお手伝いをこちらでしました。このあたりは、ふつうの商品を出すのと同じ手順を踏んでいます。

■名作に名プロデューサーあり!? 『ドウクツジマ』開発エピソード

──ではオリジナルの『ドウクツジマ』がどのように作られていったのかを伺います。やはり最初は、自分が好きなタイプのレトロゲームを作ってやろうじゃないか、というところから始まったのでしょうか。

▲PUSH氏。

PUSH そういう計画性があったわけじゃないんです。まずは『プチコン3号』に最初から収録されているグラフィック素材を組み合わせて何かできないか……というところから始まりました。ありもののチップを並べているうちに、何となく方向性が決まっていったという感じです。

──王道のファンタジーRPG向きのグラフィック素材が充実していることから、自然にそちらに引き寄せられたという面もありそうですね。

PUSH それもありますが、そもそもの制作理由として、自分の子どもにファミコン時代のゲームをやらせることが、大前提としてありました。

──PUSHさんのお子さん! 開発メンバーの“マッサ”さんですね。マッサさんはおいくつなんでしょうか。

PUSH 制作時は小学1年生でした。家にいっぱいある(PUSH氏所有の)昔のゲームをやってみたいけれど、怖がってなかなかできなかったんです。「じゃあ、お前もやれるようなゲームを作ってやるよ」と。

──なるほど……親心ありきのゲーム開発だったと。

PUSH 自分だけで作ろうとすると大抵、探索ものかシューティングのどちらかになるんですけど、今回は自分で考えて進んでいくゲームを遊ばせようと思いました。探索アクションでいこうとなってからは、子どもと相談しながら作っていきました。

──『ドウクツジマ』が“親子で作ったゲーム”と言われる所以ですね。

PUSH プレイしてちょっとでも理不尽を感じると怒り出すんです。「なんなんだ」と(笑)。積極的に攻撃してくる敵は難しくて怖いから、じゃあただ歩くだけにするよ……といった具合に、とにかくご機嫌をとりながら作っていきました。

──それが、本作ならではの“親切さ”につながっているということは、マッサさんは事実上のプロデューサーですね。

PUSH 立場的には上司です(笑)。ひとりで作ると、より難しくする方向でバランスを調整しがちですが、ゲームの基本的な操作やセオリーが身についていないプレイヤーの意見をじかに聞きながらのゲーム制作は、新しい発見が多く、楽しかったですね。

──ゲームが完成したとき、マッサさんは「自分にょうどいいゲームができた」と、さぞかし喜んだのではないでしょうか。

PUSH どういうゲームかすでに知っているので、「終わったねー」くらいの反応でした。子供だからもう冷めちゃっていて、「見飽きたからつぎを作って」って言われました(笑)。

──(笑)せつない反面、それはそれで、今後のゲーム開発の動機づけにもなりますね。

▲立体視モードを活用した謎解きも含めていたりと、ゲーム世界の奥行きは半端ない。

■気軽な環境で作ったゲームが商品化されていく道筋としての『プチコン』

──PUSHさんは、『プチコン』ユーザー歴はどのくらいでしょうか。

PUSH 初めて触ったのは3年前で、その時は(『プチコン3号』のひとつ前のシリーズ作の)『プチコンmk2』でした。

──その後『プチコン3号』に順当に移行されて。

PUSH 気がついたらこうやって、ズルズルとやめられなくなりました(笑)。昔のPCとBASICとわけが違って、性能がよすぎたんです。その上、ゲーム作りに必要な要素が命令としてあらかじめ用意されている。こんな楽なものはないなと。

──昔のPCでのBASICプログラミング経験があるんですね。

PUSH “ベーマガ”(『マイコンBASICマガジン』の略。電波新聞社発行)や『MSXマガジン』(MSX規格パソコン用専門誌。アスキー発行)を毎月買っていた世代です。MSXのBASICでゲームを作っていると(処理速度面で)すぐに限界がきて、アセンブラに移行するしかなかったんですけど、『プチコン』ならBASICオンリーでゲームを作れるなと。あとは、ニンテンドー3DSソフトだからよかったですね。

──といいますと?

PUSH PCでアプリを開発していたときは、プログラミング言語そのものに日々アップデートが入るんです。1週間ぶりに時間がとれて、さあやろうと立ち上げると更新が始まっちゃって、それが終わったときには時間がなくって、「じゃあ寝よう」と。その続きの作業をまた1週間後にやろうとしても、それまで何をやっていたか覚えていない……ということをくり返して、疲れ果てましたね(笑)。その点『プチコン3号』はニンテンドー3DS本体さえあればどこでも手軽にできるので、完成までこぎつけられました。

──『プチコン3号』は、誰でも気軽にゲームを作れるソフトであるとともに、“ニンテンドーeショップで単独商品として販売可能なゲームの開発ツール”でもあることが、『ドウクツジマ』によって証明されました。スマイルブームさんとしては、今後も、『プチコン3号』製ゲームの商品化を継続していくと思ってよいのでしょうか?

▲杉内賢次氏。

杉内 商品化する価値があると社内で判断した作品は、もちろん行います。そのためにも、まずは2015年に創刊号がリリースされたきりになっている『プチコンマガジン』(プチコン大喜利の応募作品などをまとめた『プチコン』製ゲーム集)を2号3号と続けてリリースしていきたいですね。現在、プログラマーやデザイナーが極力介在しない形で『プチコンマガジン』の中身を私だけの操作である程度構築できるシステムを開発中です。

──それが本格的に運用されれば、『プチコンマガジン』もポンポン出せると。

杉内 ポンポンかどうかはさておき(笑)、定期的にリリースすることでコミュニティーの活性化をうながして、投稿作品の中にいいものがあれば商品化していく……という流れを作れればいいですね。


すべては息子のサービスのため?
充実のオマケ要素

 ふつうにクリアーするだけでも、2~3時間かかるボリュームの本作だが、コレクション系のやり込み要素やミニゲームも豊富!

▲難度が高い。シャッフル当てのミニゲーム。日々の運試しにも最適。

▲攻撃力、耐久力にすぐれた戦士との一騎打ち。勝つとスゴいご褒美が!?


★アマチュアゲーム開発者注目 『プチコン』製ゲームは今後も続々製品化!

 『ドウクツジマ』リリースのキーパーソンとなったスマイルブームのプロデューサー・杉内賢次氏によれば、『プチコン3号』製ゲームの商品化の際は“スマイルブームのパブリッシング”という形をとることで、任天堂やCEROの審査諸手続きや、その費用を肩代わりしてくれるとのこと。まずはスマイルブーム内の審査をパスする必要があるが、自作品に自信がある人は、臆せず門を叩いてみよう。

 最後におまけとして、『ドウクツジマ』に登場するキャラクターたちをご紹介!


ドウクツジマ
メーカー スマイルブーム
対応機種 3DSニンテンドー3DS
発売日 5月17日配信
価格 278円[税抜](300円[税込])
ジャンル アクション
備考 ダウンロード専売 開発:ぷわっとX

(C)2015-2017SmileBoom Co.Ltd./ぷわっとX