識者が集結してVR元年を統括!

 2016年12月21日、2016年のVR業界を総括的に検証するトークイベントが、虎ノ門ヒルズにて開催された。同イベントは、“VR元年に何が起こったのか?”をテーマにした講演会と、VRコンテンツ体験会による二部構成。本稿では、講演会の内容を中心に、その模様をリポートしよう。

 講演会では最初に、国内最大級のVRメディア“Mogura VR”の編集長である久保田瞬氏が登壇し、2016年のVR業界を簡単に振り返った。まずスクリーンに表示されたのは、2016年のおもなVR業界の出来事。ハイエンドのVRデバイスが一般販売されたこと、それにより消費者のVRに対する関心が高まったことから、2016年がVR元年と呼ばれるようになったとの説明がなされた。

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▲進行役との久保田氏、まずは2016年のVR業界を振り返った。
▲スクリーンで、2016年のおもなVR関連の出来事を表示。
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 続いて久保田氏が語ったのは、“VR元年のトレンド”だ。久保田氏によると、それは“出荷台数vsコンテンツ待ち”、“増える投資”、“体験施設の開設”、“次世代機の登場”、“中国の盛り上がり”の5つ。それぞれの要素を簡単に説明すると、以下のようになる。

 “出荷台数vsコンテンツ待ち”は、コンテンツメーカーは出荷台数を気にして、プラットフォーマーはコンテンツを集めたいと思う状況にあること。“増える投資”はそのものズバリ、VRに対する投資が増え続けていることを指す。国内にVRを体験できる施設が続々登場していることを示すのが“体験施設の開設”で、ケーブル不要・モニター不要など新デバイスの台頭を示すのが“次世代機の登場”。また“中国の盛り上がり”に関しては、これも言葉どおりで、いま中国のVR業界はとても盛り上がっているようだ。

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▲VR業界が注目するのは、やはりハードの出荷台数だ。
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▲各社がVR事業に投資する金額もどんどん大きくなってきている。
▲VR ZONEを筆頭に、VR体験施設も各地に登場。
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▲インサイドアウト方式のデバイスは、今後注目を集めそうだ。
▲ハード、コンテンツ、施設もろもろ、VRがかなり盛り上がっている状況の中国。

テーマにそってVRの現状を議論!

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▲VRの未来を検証する熱いトークセッションが展開された。

 講演会の後半は、テーマに沿ったトークセッションとなった。ここでは、キーパーソンが加わり、VR業界の現在と今後の可能性を検証した。登壇者は、よむネコ代表の新清士氏、バンダイナムコエンターテインメントの田宮幸春氏、ハコスコ代表取締役の藤井直敬氏、ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏の4名だ。

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▲新氏が代表を務めるよむネコは、VR脱出ゲーム『エニグマスフィア~透明球の謎』を開発。
▲VRプロジェクト「Project i Can」にて各VRアクティビティのディレクションを担当する田宮氏。“タミヤ室長”として活躍中。
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▲ハコスコ代表の藤井氏は、2008年より理化学研究所脳科学総合研究センター適応知性研究チームのチームリーダーでもある。
▲PS VRに注力した吉田氏。『ゴッド・オブ・ウォー』や『アンチャーテッド』など、多くのシリーズ作品も担当。

 トークセッションはスクリーンにいろいろなお題が出て、それについて各人が意見を交わすというスタイルで進行。イエス・ノーがはっきり回答できるお題については、〇×パネルを掲げてもらうといった演出もあり、ときには会場に、どよめきや笑いが巻き起こっていた。

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▲登壇者たちが、〇×パネルで質問に回答。白黒はっきりした答えに、ときに会場からはどよめきも。

 最初のお題は、“自社の取り組みは予想に対して期待どおりだった?”というもの。まずは吉田氏が、「予想をはるかに超えた結果となっております」と、PS VRが品薄で入手できない現状を踏まえてコメント。
 藤井氏は「初年度から2年度で倍になって、今年の半期で昨年の倍以上の業績になっています。来た仕事のみを粛々とこなしていたら、仕事になっていて、ありがたいことです」と、事業が順調なことをアピール。また田宮氏は10月に閉設したお台場の施設・VR ZONEについて触れ、「最終的に、37000人くらいの方にご来場いただきました。不安だらけのスタートでしたが、最後まで突っ走ることができました」とコメント。長久手に新設した施設も、現在好調とのことだ。
 「脱出ゲームを作っていろいろ展開したなかで、VR体験を求めているユーザーさんが多いことが認識できました」と語ったのは新氏。さらに、「施設やロケーションで楽しんでいる人と、実際にソフトを買って家で遊んでいる人は、ちょっと層が違う印象です。それもVRに携わって初めてわかった部分だし、学びながらつぎのステップに進みたいと考えています」(新氏)とのことだ。

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▲各登壇者ともに、2016年の手ごたえは十分だったようだ。

 以降、“日本と海外のVRの盛り上がりに差を感じる?”、“今のVRコンテンツに満足している?”、“個人的に注目しているコンテンツは?”、“VRって儲かりますかね?”、“モバイルVRは流行る?”、“VRは「あたりまえ」になる?”などなど、VR業界が注目のクエスチョンが続出。詳細は割愛するが、ときには回答が大きく分かれるといった興味深い結果となり、来場者が各登壇者のコメントに真剣に聞き入っていた。

 トークセッションのラストを飾るテーマは、“最後に今後の展望を!”。各人が今後に向けた展開を語り、講演会は終了となった。イベントを締めくくった各人のコメントを、以下に紹介する。

 「2017年は、今年同様にチャレンジしていきたいと思っています。VRの開発環境をもっとサポートすることはもちろん、自社のコンテンツについても、学んだノウハウを活かしてがんばっていければと。来年はもっと儲かればいいですね(笑)」(新氏)。

 「つぎのVR ZONEは、多くの方が特別な1日を過ごせる場所にすべく、来年に展開を予定しています。またあいつら、やりやがったな! と思っていただけるはずですので、ご期待ください!」(田宮氏)。

 「ハコスコの事業とも関わる話ですが、いままでVRを使用したプロモーションは、費用対効果がすごく悪かったんですよ。使いたい効果をひとつのアプリで提供できるものをいま作っているので、うまくいけば明るい未来になりますね(笑)」(藤井氏)。

 「来年は、PS VRの生産数を増やす!(笑)。いいコンテンツを作れる方潤って、つぎのステップに行ける。まずはその土壌を作ることが目標ですね。ソフトでいえば、他社さんですが『バイオハザード7』や『エースコンバット7』は、本当にスゴイです。このあたりが2017年に出てくるのは、楽しみですね」(吉田氏)。

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▲2017年も、VR業界はますます飛躍するはず!

VR体験エリアももちろん大盛況!

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▲多くのファンで賑わったVR体験コーナー。

 同イベントでは、講演会の前後にVR体験タイムが用意され、会場内の体験ゾーンでVRコンテンツや最新デバイスが体験できた。最後にその様子を写真で紹介しよう。
 体験ゾーンはメーカーごとにブースが作られ、体験希望者が列を作ってプレイ。ゲームコンテンツのほか、デバイスも展示され、どのブースもイベント終了まで長い行列ができていた。終わってみると、講演会も体験会も多くの来場者が詰めかけ大盛況で、VRに関する注目度の高さが再認識できたイベントだった。

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▲多彩なコンテンツが出展されていた。
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▲ユニークなコンセプトのブースも多数。左は重りを抱いての“お姫様抱っこ”ができた『ソード&プリンセス』。右の「VR One」は、ラーメン店主となって“湯切り”を体験!

※出展一覧
◇『VRリズムアクション SEIYA』(ワンドブイ)
◇一体型ヘッドマウントディスプレイ“IDEALENS K2”(クリーク・アンド・リバー社)
◇『Littlestar Japan』(ソニー・ミュージックエンタテインメント)
◇MSI製バックパックPC“VR One”(ツクモ)
◇Oculus Touch向け『Dead Hungry』(Q Games)
◇Google Daydream、ニンジャマスク(Mogura VR)
◇『ポストVR時代のための感触型VR』(H2L)
◇『ソード&プリンセス』(ウダサンコウボウ)
◇VRヘッドマウントディスプレイ PICO(PICO社)
◇『ガンナーオブドラグーン』(サークルハイドレンジャー)
◇『VR Idol stars project “Hop Step Sing!”』(講談社)