グラフィック、ストーリー、サウンド、あらゆる面で贅沢で豊か
D-Pad Studioの『Owlboy』を紹介する。本作はSteamほかでPC版が配信中。なおSteamでの販売価格は2480円で、11月8日まで10%オフの2232円となっている。
本作の開発がスタートしたのは2007年のこと。(途中、他のゲームの開発を挟みつつ)9年の歳月をかけて作り上げてきたという、まさに執念の一作だ。ジャンルとしてはアクションゲームで、フクロウ族と人間がともに暮らす空の世界を舞台に、落ちこぼれで、かつ話すこともできないフクロウ族の少年“Otus”と仲間たちの冒険を描く。
Otusは空を飛ぶことができ、羽根で叩く近接攻撃も繰り出せるのだが、さまざまな武器を持った仲間を掴んで飛ぶことで、シューティングなどのさらなるアクションが可能になる。
基本的にはストーリーに沿ってほぼ一本道で進んでいくアクションゲームだが、道中で行く手を阻む仕掛けなどもあって、Otusや仲間が力を合わせ、お互いの能力を組み合わせることで先に進めるようになるという寸法。ちょっとした脇道の隠し要素などもあって、オーソドックスながら飽きさせない。
また、特に素晴らしいのがアート面。90年代(特にスーパーファミコン時代)を思い起こす、どこか感傷的で美麗なドット絵がHDサイズに広がっているのが圧倒的で、Otusが村に見回りに出るオープニングシーンは、サウンドと相まって、思わず息を呑む美しさ。カットシーンなども有無を言わせない迫力がある。これだけ時間がかかったというのも納得で、いまこの時代にこのクオリティのドット絵で埋め尽くされたゲームを遊べるというのは、至高の贅沢だと思う。
ストーリー面も、「落ちこぼれが勇気を出して仲間とともに皆を救う」という基本の流れ自体は見慣れたものだが、喜びのダンスがキモいが正義感にあふれたメガネの友人Geddyをはじめ、主役級からマイナーキャラまで、個性あふれる面々が登場。とくに一緒に冒険する仲間はキャラの掘り下げもしっかりしているので、彼らの喜びや悲しみがひしひしと伝わってくる。
現状の対応言語は英語のみであるものの、時にコミカルで、時に真剣で、気がつくと泣かされている自在な流れは、(普段こういう言い方は好きではないが)昔の日本のゲームを思わせる温かい豊かさがある。
奇抜なアイデアでも懐古趣味でもなく、とてつもなく天才的なゲームデザインや最先端の技術があるわけでもない。それでもただひたすらに「こういうゲームを作りたいんだ」という強い思いのもとですべてが地道に積み上げられ、ハイレベルに粒が揃ったひとつの世界として結実している。今年の海外インディーゲームでも間違いなくトップ5に入るだろう傑作ではないだろうか。できるだけ多くの人に触れてもらい、できれば日本語ローカライズや、PC版以降に予定されている他プラットフォーム版のリリースへとつながってもらいたい作品だ。