取材中はことあるごとにみんなで笑い、盛り上がった

 2016年11月8日、ガンホー・オンライン・エンターテイメントはPC用MMORPG『ラグナロクオンライン』(以下、RO)において、大型アップデート“Episode:Banquet For Heroes~七王家とユミルの心臓~”を実施する。

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▲アップデートのイメージイラストは日本での描き下ろし。ルーンミッドガッツ王国の王位継承問題がストーリーのメインテーマということもあり、重々しい雰囲気。

 メインストーリーが大幅に進展するほか、ダンジョンとメモリアルダンジョン(いわゆるインスタンスダンジョン)がふたつずつ実装。さらに、新装備とカード、エンチャントに関する新要素も追加される。

 これまでにも『RO』の大型アップデート前には運営チームのみなさんに話を聞いてきている。いつもはだいたい60~90分くらいで収まるのだが、今回は120分を過ぎても終わらなかった。大ボリュームである。世間話の時間が長過ぎた可能性もあるが。

 記事自体もかなりの長さになった。読み始める前にいったんコーヒーでも入れに行こう。

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▲左から、伊藤健氏、白川昌平氏、中村聡伸氏、長澤誠吾氏。

8年前の続きが楽しめるアップデート

 今回のアップデートでは、8年前に実装された“Episode 6.0 Beginnings and Upheavals【名もなき島】”の続きのストーリーが語られる。本題に入る前に、簡単にストーリーのおさらいを。

 前述の名もなき島アップデートで、ルーンミッドガッツ王国の国王であるトリスタン3世がさらわれ、“名もなき島”に幽閉される事件が起きた。そして、悲劇は重なる。トリスタン3世は偶然にも復活してしまった悪魔ヴェルゼブブの手にかかり、変わり果てた姿になってしまったのである。不運にもほどがある。

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 突然の国王の崩御。ルーンミッドガッツ王国を統治する七王家は、国民には真実を伏せたまま次期国王を決めることにした。有力候補はふたり。バルター家のアイゼン・アルムとゲオルグ家のエルンストだ。ふたりは親友でありライバル。お互いにいい王を目指して切磋琢磨していたが、アイゼン・アルムはバルター家によるエルンスト暗殺計画を知ってしまう。

 自分が死ねばバルター家は王位継承権を失い、エルンストを暗殺する意味がなくなる――そう思い至ったアイゼン・アルムは、乱心を装って自害。王として申し分ない人格を持つ若者が大人たちの思惑に翻弄され、悲しい結末を迎える。切ない話だ。

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▲ストーリーを知るとイメージイラストの見えかたが違ってくる。中央の女性は前国王の王妃。左側で頭を抱えているのがエルンスト、右側で倒れているのがアイゼン・アルムだ。

※ストーリーの詳細はこちら
ルーンミッドガッツ王家(ストーリーガイド)

 こうなると王位継承を急ぐわけにはいかない。魔王モロクが復活したり異世界での戦いがあったりなど、王位継承問題を後回しにせざるを得ない状況が長く続いたが、冒険者(プレイヤー)によってモロクが討伐され、世界はようやく平和を取り戻した。

 そこで、モロク討伐の祝宴をプロンテラ城内で催し、華やかな宴の影で王位継承の儀も済ませてしまおうというのが、今回のストーリーの発端だ。プレイヤーはモロク討伐の功労者として、国賓のような扱いで祝宴に出席。王位継承の立ち合いを頼まれたことから、深入りしていくことになる。

 大々的には言えないが、完全に秘密にしておくわけにはいかない。だから、世間が盛り上がっている隙にこっそりことを進める。リアルでもたまに聞く話である。

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 メインストーリー“七王家とユミルの心臓”は、異世界クエストをクリアしていればどのレベル帯でも進行可能。説明してくれた長澤氏は「とにかく“七王家とユミルの心臓”をやればオーケー、という作りになっています」と熱く語る。道中に難しい要素はあまりなく、始めたばかりの人でもクリアできるようになっているという。

 “七王家とユミルの心臓”は女性中心のネリウス家と強大な魔力を秘めたハイネン家を中心に展開する物語で、進めるうちに4つの新ダンジョンに挑戦できるようになる。メインストーリーを追えば戦闘関連のコンテンツにひととおり挑戦できるようになり、レアな装備も入手可能というわけだ。

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▲プロンテラを統べる七王家の家紋。

 話を聞きながら、導入部を体験させてもらった。プロンテラの街中で王室急使NPCに呼び止められるのがスタートの合図。祝宴の話を聞いてプロンテラ城に転送してもらう。新しく作られた祝宴会場マップにはこれまでのエピソードで共闘したNPCたちの姿も見られた。懐かしさを感じさせる演出が心にくい。

 祝宴には王族たちも数多く参加。彼らと話をすることでメインストーリーが進行していく。王族たちには宮殿内の一室があてがわれており、そこではサブクエストも受注可能。メインストーリーを進めたり、サブクエストで王家にまつわる問題を解決すると、報酬として装備・アイテムと交換できたりエンチャントができる“王家貢献の証(詳細は後述)”を入手できる。なお、サブクエストは7つあり、そのうちひとつはデイリーの討伐クエストだ。

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▲王族のおもなキャラクターにはイラストが追加された。イラストはこのほかにも多数。
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▲異世界でいっしょに冒険したマークイシャはバーテンダーのバイト中(?)。長澤氏に時給を聞いたら「700zenyくらいですかね」という適当な回答をもらった。

 僕は物語の背景を知って「へぇ~」と感心するのが好きなので、七王家のサブクエストがとても気になる(取材時にはここまでチェックする時間がなかった)。やや重めの内容もあるが、いまの歪んだ関係性を正そうとする前向きな話が語られるそうだ。

 この方向性はメインストーリー“七王家とユミルの心臓”のほうも同様。どうも七王家の若い世代の中には、旧体制の人たちと違って善人もいるみたいなのだ。ああ、権力者は全員いやなやつだと思っている僕の心が浄化されていく。

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フィールドタイプのダンジョンを実装した理由とは

 今回のアップデートで実装されるダンジョンは全部で4つ。過去に好評だったコンテンツの上位版的な作りになっているそうだ。

【新ダンジョン】
◇侵攻されたプロンテラ
コンロンダンジョンの上位版のようなイメージ。BaseLv100以上で入場可能。

◇プロンテラ地下監獄
名もなき島の修道院ダンジョン(通称、名無し)の上位版(でも、不死ではない)。BaseLv150以上で入場可能。

【新メモリアルダンジョン】
◇空中要塞
パーティーで経験値を稼ぎやすいビオスの島やモルスの洞窟の上位版のようなイメージ。BaseLv150以上で入場可能。

◇過去の儀式の間
“Episode:Memory Record ~ジュピロスと眠る都市~”のT_W_Oよりも強力なボスが登場。BaseLv160以上で入場可能。

 個人的には通常のフィールドタイプのダンジョンに注目したい。いまは多くのMMORPGでインスタンスタイプのコンテンツが主流になっている。アイテム集めなどを効率的にするためだ。ここしばらくの『RO』もその流れに乗っていたが、いまどうして遊び応えのあるフィールドタイプを入れるのか。

 それは、「狩りが楽しかったころの遊びかたに、もう一度ふれてほしいから」だそうだ。目から鱗だった。そうだ、MMORPGって狩りが楽しいのだ。その楽しさを味わうため、BaseLv100から入場可能な“侵攻されたプロンテラ”に行ってみた。

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▲王位継承の儀式の際に事件が発生。プレイヤーはその原因を調べるため、過去のプロンテラに転移する。転移先から新ダンジョン“侵攻されたプロンテラ”に入場可能。
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▲どうやら街にアンデッドモンスターが発生したらしい。戦力が足りないようなので殲滅作戦に協力することに。
▲レアモンスターに遭遇。その名もゾンビガード。名前と服装から、プロンテラ兵士がゾンビに変えられた姿だとわかる。設定が怖いだけでなく、けっこう強い。

 多数のプレイヤーが闊歩する一般フィールドに意外と強いモンスターがいて、気軽に挑んだら思いのほかピンチになって、「うおー、何だこいつ、やられる!」みたいなヒリヒリする感覚とともに、ようやく撃破する。当時の狩りのおもしろさを追求し、似たようなドキドキ感を味わえる仕組みを用意しているという。

 2015年5月実装の“Episode:Memory Record ~ジュピロスと眠る都市~”ではアイテムの集めやすさを重視するため、あえて狩場の難度は抑えていた。今回はぎりぎりのラインを攻めていて、そのぶん報酬もおいしくなっている。

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▲不死の軍団兵は倒すと増殖する特性を持つ。1~2匹だから楽勝だろうと思って攻撃すると、ひどい目に遭うぞ。
▲「5~6匹集めて範囲攻撃で倒せば効率的だぜ!」なんて調子に乗るとこんなことに。わー!

 テストプレイで久しぶりにトレイン(ピンチになって逃げたら、ほかのモンスターがリンクして追いかけられている状態)してしまい、みんなで笑った。ああ、これだ。この懐かしい感覚がたまらないのだ。

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▲不死の軍団兵は倒しても倒しても出てきて、最終的に4匹になる。ダメージが持続するスキルが有効だ。一発で倒す、いわゆる“一確狩り”タイプはやや不利か。
▲不死属性なのでプリーストのマグヌスエクソシズムが有効。7×7セルの範囲攻撃なので、増え過ぎる危険も。

 この流れで、もうひとつのフィールドタイプダンジョン“プロンテラ地下監獄”も見学。現代のプロンテラの地下に位置しており、中には凶悪な囚人が多数収監されている。囚人が脱獄しないようにクルセイダーたちが見張っているのだが、入場レベルを考えると2次職より囚人たちのほうが強いのではないか。プロンテラ騎士団はすごいな。

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▲牢屋の中にはMVPモンスターと同じ外見の囚人がいる。たまに鍵を開けて脱走するらしい。
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▲脱走した囚人を倒すと、同じ外見のMVPモンスターのカードをドロップすることも。

メモリアルダンジョンで最強クラスのボスに出会う

 アップデートに合わせて久しぶりに復帰するプレイヤーもいるだろう。そういう人にも違和感なく楽しんでもらうため、前に流行っていた要素にいま風のアレンジを加えている。逆に、いまの『RO』やMMORPGが好きな現役プレイヤーは新メモリアルダンジョンに注目してほしい。

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▲攻略法を考えて突破する楽しさが味わえる。

 “侵攻されたプロンテラ”入場NPCの警備隊長シュピーゲルに話しかけたとき、“巨大要塞に乗り込む”を選択すると、メモリアルダンジョン“空中要塞”の入り口に移動できる。徒歩でも行けるのだが、隊長が転送してくれるのでお言葉に甘える。

 不死の軍団は空中要塞の中から続々と出てきているらしい。プレイヤーは根元を断つために乗り込むというわけだ。

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▲プロンテラ南東の上空に空中要塞(UFO?)が襲来。右の写真はテストサーバー用の特殊な視点操作で極端にカメラを引いたところ。でかい。

 空中要塞の内部は行く先々がバリケードで塞がれていた。周囲のモンスターを全滅させると進めるようになる。道中には6つの小部屋が設けられており、室内のモンスターを倒すとクリア時の報酬経験値が増加。パーティーで二手に分かれて戦うと効率がいい。

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▲襲撃されたプロンテラの街中と同じく、アンデッドモンスターがうじゃうじゃ。
▲部屋ごとにギミックが異なる。ここでは卵に近づくとモンスターが出現。不死の軍団は卵で増えるらしい。
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▲とにかく敵の数が多い。リベリオンの範囲攻撃スキル・ラウンドトリップを撃ちまくっていたら、弾切れを起こしてピンチに。ホラー映画っぽい。
▲倒れている兵士に近づいたら足をつかまれる。正体はゾンビガードだった。ぎゃー!
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▲調子に乗って突っ込んだらバリケードで仲間と分断された。「あれほど前に行っちゃいけないって言ったのにー!」と声を上げる白川氏。言われてねえ!
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▲「宝箱を開けたいけど、取材しに来たユースケさんに譲らないとなー。残念だなー」とか言いつつ防御スキルのセイフティウォールを自分にかけている。コントか。

 ダンジョン内では新たなカードや装備もドロップする。たとえば、ゾンビガードは鎧に挿せるカードをドロップし、MVPボス・ドラキュラのカードと同じSP%回復効果を持つ。なかなか強力だ。ランダムオプションを備えた“邪念の○○”などの武器も手に入るので、後で鑑定する楽しさもある。

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▲何とかボスフロアに到達。中央に魔方陣がある以外は、それほど特徴のない広い空間だ。
▲いきなり横から登場するボス“S・J・アーネストウルフ”。魔方陣から出てくるんじゃないのかよ!
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▲S・J・アーネストウルフは命中率は低いが攻撃力が高い。1発で8万くらいダメージを受けた。
▲HPが減ると攻撃パターンが変化。ダメージを与えつつ転倒状態にする攻撃が厄介だ。ほかにも、長い詠唱の後に超強力な攻撃を放ってくる。

 S・J・アーネストウルフが戦闘時に発したメッセージを見るかぎり、“ビジョウ様”という人物の要塞を守るためにプレイヤーの前に立ちはだかったらしい。ビジョウは今回のエピソードのボス。せっかくなのでビジョウとの戦闘も体験させてもらうことに。

 決戦の場は、過去のプロンテラ城内にある“過去の儀式の間”。ボスのビジョウはめちゃくちゃ強いのだが、ストーリー1周目は誰でも進められるようにボス戦がない。2周目からが本番である。

 ビジョウ戦は3段階で構成されている。ビジョウが召喚するパワフルスケルトン、パワフルアムダライスを倒すと、いよいよビジョウとの戦いが待っている。

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▲大きく肥大化した片腕ととんがり帽子がビジョウのトレードマーク。
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▲パワフルスケルトン軍団からはカードのドロップも狙える。
▲グラストヘイム メモリアルに出てきたアムダライスの強化版。ビジョウが3年かけて作ったらしい。こちらもカードを落とす。

 部下は前座みたいなもの。ややタフだったが、それほど強くは感じなかった。ここまで到達できるプレイヤーなら、危なげなく倒せるだろう。

 しかし、ビジョウはすごかった。戦闘が始まった瞬間に大技を食らって戦闘不能になったのだ。え、いま何したの? バトルマンガとかでよくある“攻撃が見えない”ってこういうことだろうか。

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▲復活させてもらった後、せめてスクリーンショットを撮ろうと思っても、すぐにやられる。
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▲離れれば安全だろうと思ったら、超広範囲の攻撃がどーん!

 何がすごいって、指をスキルのショートカットキーからプリントスクリーンキーに移動させる間に戦闘不能になっているのである。これではうまく画面写真が撮れない。ははぁーん、ビジョウのやつ、おれに取材をさせる気がないな(この後、取材用キャラクターを無敵にしてもらって事なきを得た)。

 ビジョウの攻撃は完全に理不尽というわけでない。きちんと対策を練って装備を整えれば十分に耐えられる。何度もやられたり、ほかのプレイヤーのレポートや動画を調べたりして、有効な戦いかたを積み上げていく楽しさってあると思う。カードゲームでデッキを組む楽しさに近いというか。そういう、いかにも最近のインスタンスダンジョン周回的な楽しみも用意されているのだ。

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▲ビジョウを倒したと思ったら第2段階に突入。アムダライスの失敗作を大量に召喚してきた。
▲順番に倒すかーと思ったら自爆した。部下を自爆させるとか、悪役丸出しである。こんなのたくさん作ってたら3年もかかるのは理解できる。