一般招待はたったの100名! 『FFXIV』ロックバンド“THE PRIMALS”シークレットライブリポート

 去る2016年9月6日、『ファイナルファンタジーXIV』の楽曲を演奏する公式バンド“THE PRIMALS”がシークレットライブを開催した。これは10月に開催を控えたラスベガスでのファンフェスティバルに向けての公開ゲネプロと推測されていたが、水面下で制作が進められていた新作アレンジBDMへの映像収録が目的のひとつだったのだ!

●久しぶりのライブは、最大限のDPS(火力)で最高の一夜に!

 去る9月6日、東京都内のライブハウスMARSにて、『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)のサウンドディレクター・祖堅正慶氏を中心に結成されたロックバンド、“THE PRIMALS”がシークレットライブを開催した。彼らがこうした試みをするのは、昨年10月に続き2度目(記事はこちら)。当日は、祖堅氏曰く「クリタワのロットよりきびしい」、じつに30倍超えの抽選を引き当てた100名の一般招待客に加え、『FFXIV』スタッフ約50名が会場に集結した。当日のセットリストは、『FFXIV』プレイヤーがゲーム中でくり返し耳にし、全身の節々にまで染み渡ったなじみの曲はもちろん、『蒼天のイシュガルド』以降に追加されたものをバンドアレンジした新曲も堪能できるラインアップ。参加した誰しもが同じ気持ちでライブに臨んでいたようで、最初の1曲目からクライマックスを迎えたような、最高のテンションだった。

▲コミュニティチームの“モルボル”こと室内俊夫氏が、ライブ会場前でお出迎え。

 なおこのシークレットライブは、10月14日・15日、北米・ラスベガス皮切りに、日本(東京・東京ビックサイト/12月24日・25日)、ドイツ・フランクフルト(2017年2月予定)と世界3都市で開催される『FFXIV ファンフェスティバル2016』でTHE PRIMALSが出演する折の公開ゲネプロだと推測されていたが、じつはもうひとつ重大な目的があった。それは、すでに開設された特設サイトや東京ゲームショウ 2016会場から放送されたプロデューサーレターLIVEで告知があったように、2014年12月に発売された『From Astral to Umbral 〜FINAL FANTASY XIV: BAND & PIANO Arrangement Album〜』から2年ぶりとなる新たなアレンジBDMに収録する、新曲用のライブ映像を収録することだったのだ。

 アレンジBDMでは蛮神バトルのプレイを編集した映像が楽しめるのだが、今回も週刊ファミ通のスタッフが協力している。極ニーズヘッグ征竜戦など7つのバトルで一切のUI表示をオフにしてプレイしたエピソードなどは、また別の機会に詳しくお届けする予定だ。

■セットリスト■
1)混沌の渦動 〜蛮神リヴァイアサン討滅戦〜
2)忘却の彼方 〜蛮神シヴァ討滅戦〜
3)アンブレーカブル 〜博物戦艦 フラクタル・コンティニアム〜
4)ニーズヘッグ
5)曲がらぬ刃 〜蛮神ラーヴァナ討滅戦〜
6)イマジネーション 〜蒼天聖戦 魔科学研究所〜
7)英傑 〜ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦〜
8)魔神 〜魔神セフィロト討滅戦〜
9)過重圧殺! 〜蛮神タイタン討伐戦〜
en.)ローカス 〜機工城アレキサンダー:起動編〜

▲フードを目深にかぶったアシエン姿で『蛮神リヴァイアサン』を爆音で演奏。「カッケー!」、「サイコー!」、「パン屋さん!(編注:“リヴァイアサン”の空耳)」など、観客も出だしからノリノリ。

▲女性ヴォーカリスト(『FFXIV』ローカライズ部の村田あゆみさん)を招いての曲と言えばいくつかあるが……。この日は『蛮神シヴァ』! 「オイ! オイ!」と拳がふり上がる。

▲「こんにちはー」とあいさつし、「翌々日にパッチ3.4の締切を抱えて、こんなことしてる場合じゃない」などとサラリーマンの悲哀をネタにする祖堅氏。熱く激しいギターと、おっとりMCのギャップがたまらない!

▲会場の片隅でライブに参加していた『FFXIV』プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏がステージに上がり、「よしだああああ」コールを浴びるひと幕も。「今日あったことはSNSで書いてもらって大丈夫だが、新しいアレンジBDMが発売されることだけは公式に発表するまでは秘密にしてほしい」とお願いに上がったのだ。「は〜い」と揃って返事をした会場の皆さん、ナイス ヒカセンです。

▲エフェクトのかかったベースのフレーズからスタートし、特徴的なメロディーがギターアレンジで速弾きされる『フラクタル・コンティニアム』。途中の解放感あるパートで、観客たちは誰彼ともなく頭上高く指さす。

▲パッチ3.4で追加される新曲で、スタッフ間で通称『ニーズヘッグ』と呼ばれている曲を初披露。「聴けばわかる」と祖堅氏が言うとおり、『蒼天のイシュガルド』を象徴するフレーズがアレンジされており、すぐにノレる曲だった。

▲『蛮神ラーヴァナ』ではマイケル・クリストファー・コージ・フォックス氏が登場。バリバリにエフェクトがかかったボコーダーボイスで「地声です」と発し、会場を沸かせた。

▲「原曲はワルツだけど、ゴリゴリに重たくしといたから!」と祖堅氏。拳を上げるノリかたよりは、ゆらりゆらりと首をふったほうがいいというアドバイス通りのアレンジなので、後々のご参考に。

▲『魔科学研究所』。コーラスなどで奏でられるメロディーがギターの音色に代わり、ズッシリと身体の芯まで響き渡る。演奏終了後に観客から飛んだ「ニーソ!」の声に祖堅氏が「今日は履いてないよ」と応えると、「履いてこい!」と返され、笑いが起きた。

▲紹介されたときに、もっとも歓声が大きかったのが『ナイツ・オブ・ラウンド』だ。この曲は、秋田F.A.T.E.に来場したユーザーから、「つぎのTHE PRIMALSのライブで『ナイツ』をやらないと『FFXIV』やめます」と言われ、それでは困るということで作ったということだ。

▲コージ氏がふたたびステージに介入し、『魔神セフィロト』と『蛮神タイタン』を演奏。「ちょっとDPS低いかな? もうちょっと火力出していくか?」という祖堅氏の焚き付けに、「うおおおお」という雄たけびや「まかせろ!」という声が上がり、この日最高の盛り上がりを見せた。

 演奏が終わって空となったステージに「ニーソ!」コールが響く。会場の空気が高揚感で満たされてきたころ、THE PRIMALSのメンバーがふたたび姿を現した。アンコール曲に選ばれたのは、『ローカス 〜機工城アレキサンダー:起動編〜』。起動編3層の通称“ペプシマン”で流れる曲であったり、最近ではNHK夜11時からのニュース番組のテーマ曲としてもおなじみだと祖堅氏は笑う。「サビはかなりノリのいいアレンジをしたので踊っていってください」という祖堅氏の言葉通り、爆音で響くギターとベース、裏打ちのリズム。そこに打ち込みのデジロックサウンドが加わり、独特の浮遊感をともなって気持ちよさが半端ない。手を上げてゆらゆらと音楽に身をゆだねたり、ジャンプで跳ねたりしたくなる1曲で、ライブの定番曲になること間違いなしだ。

 気づけば、あっという間の10曲。熱狂と感慨のTHE PRIMALSのライブは、一度その身で体験するべき。まずはラスベガスのファンフェスで“予習”し、東京での開催に備えよう。もちろん、アレンジBDMは“最大DPS”を出すためにも必聴のアイテムになるだろう。

●THE PRIMALSインタビュー

 ライブ終了後、メンバーに集まっていただきインタビューを実施。新曲を披露した手応えと、ファンフェスへの意気込みを聞いた。

▲左から)ギター・ヴォーカル:祖堅正慶氏、ギター:GUNN氏、ベース:イワイエイキチ氏、ドラムス:たちばな哲也氏(SPARKS GO GO / ultraUB)。

──THE PRIMALSとしては久々に観客を前にしたライブになりますか。

祖堅 会場の候補はたくさんあったのですが、やっぱり「THE PRIMALSは小さなハコでドカンとやりたい」とわがままを言って、ここでやらせていただきました。そのぶんご招待の人数が少なくなってしまったのが申し訳ないのですが……。

──皆さんの感想を聞かせてください。

たちばな 自分がふだんやっているバンドのお客さんとはちょっと違って、皆さんピュアといいますか、今日はすごく楽しくやらせていただきました。

イワイ なんかこう、お客さんがグイグイと求めてくる感じがして、ほかのライブではなかなか体験できない感じがしましたね。

GUNN 演奏した曲は、もう皆さんご存知の曲なわけで。それをバンド用にアレンジしていますから、やってみるまで「受け入れてもらえるのかな?」と、けっこうドキドキしていたんです。でも、結果的にすごく喜んでもらえて。ライブ自体、お客さんといっしょに作っている感じがして楽しかったです。

祖堅 THE PRIMALSのこともそうですが、僕の頭の中は2日後に迫ったパッチ3.4の締切のことばかりなのでね(笑)。まあ考えてみれば、昨年のシークレットライブは、パッチ2.4の締切の4日前とかでしたし。東京のファンフェスティバルにいたっては、何千人ものお客さんの前で演奏した翌日、パッチ2.5の締切だったんですよ……。ギターを弾きながら、頭では「どうしよう、どうしよう」って考えていましたね。

──ほかの皆さんはやりきったようでしたが、祖堅さんだけは違っていたわけですね(苦笑)。

祖堅 いや、そんなことないですよ! やりきりました!

(一同笑)

祖堅 ……そんな感じで僕の時間がなかなかとれなくて。リハーサルも前日にほぼ一発合わせになってしまって、メンバーの皆さんに申し訳なかったなと。今日ライブに来てくださったお客さんの反応をもとに再調整して、まずはラスベガスのファンフェスに臨みたいですね。

──確か、去年のラスベガスはオリジナルメンバーではなかったですよね?

GUNN みんなロックスターなので、なかなかスケジュールが合わなくて(笑)。でも、今年はちゃんとこの4人でいきます。

──つまり、ワールドツアーということじゃないですか!

祖堅 デビューしてまだ1年ちょっとなのにいいのかなぁ。だけど、やるべきことは、小さなハコでも大きなハコでも変わりませんので。

──では、ラスベガスに向けての意気込みをお願いします。

GUNN 今年は負けないようにしたいですね!

祖堅 それ、ギャンブルのことでしょ?

(一同笑)

GUNN いやいや、前回ラスベガスのファンの勢いにびっくりしたんですよ。その勢いに負けないようにするのが楽しみでもあるんですけど。一生懸命ギター弾きますので、よろしくお願いします!

──なるほど。……でも、その後もうひと勝負ありますしね?

GUNN ……負けたんですよね! ルーレットでね!(笑)

──そっちも含めて完全勝利をお祈りします(笑)。イワイさんとたちばなさんはいかがですか?

イワイ 前回の話を聞くと、いろいろとたいへんなこともありそうだなと。でも、それも含めて楽しみです。いろいろと体験してこようと思います。

たちばな 僕はラスベガスへ行くのが初めてなんですよね。だから、ぜひ、ラスベガスまんじゅうを買って帰りたいですね。

GUNN そんなものないよ!(笑)

たちばな (笑)。ほかのメンバーと同じく、ファンの皆さんに楽しんでもらえるようにがんばってきます。

▲ゲストヴォーカル:マイケル・クリストファー・コージ・フォックス氏。

祖堅 (近くを通りかかったコージ氏を招いて)コージ! ラスベガスの意気込みについてひと言。

──コージさんも参加されるんですね?

コージ はい、行きます! 

──英語は大丈夫ですか?(編注:氏はアメリカ出身だが、日本に住んでいる期間が長いため、英語力についてイジられることがある)

コージ あっ、がんばります(笑)! この1ヵ月で英語教室に通って、TOEICのスコアアップを目指します。今日のライブでも英語の歌詞をがんばりました!

──とっさのムチャぶりに応えていただき、ありがとうございます(笑)。ファンフェスでも『蛮神ラーヴァナ』と『魔神セフィロト』を歌う予定ですか?

コージ まだセットリストが決まっていないのでわからないですけど、たぶん歌います。

祖堅 そうですね。セットリストは今日の反応を考慮して決めようと思ってます。でも、おそらくやるでしょうね。

──『ローカス』もすごくよかったです。最高でした!

コージ やっている僕も楽しかったです!

──新曲の練習はどのくらいされたんでしょうか?

コージ 練習は皆さんと同じで昨日1日だけです。でも、歌詞は僕が書いていますし、会社のスタジオでレコーディングにも参加していますので。

祖堅 ライブになるといろいろなスタッフが何十人と関わってきますが、ふだんは歌を録るぞとなっても、コージとふたりで細々とやっていますからね。

コージ 祖堅さんがひとりで曲を作って、僕がひとりで歌詞を考えて。ふたりでスタジオに入って収録して、またひとりずつに戻る。1曲だいたい2〜3日くらいかけて作っています。

──なるほど。あえてお聞きしますが、今回のセットリストの選考理由は何だったのでしょう?

祖堅 深い理由はあまりないです。ただ、これまでのイベントでお客さんと接した際に、ライブを望んでくれているお客さんには、どんな曲を聴きたいのかお聞きしていました。今回はそこで挙がった曲をメインにしましたね。「蛮神の曲以外も聴きたい」というお客さんがたくさんいらっしゃったので、試しに取り入れてみました。

──『フラクタル・コンティニアム』は人気曲ですよね。メインの速いパッセージもギターで弾いていましたが(笑)。

祖堅 あれはキーボード(オルガン)のフレーズなので、ギターで弾くようなものじゃないんですよ。そういうところは全部GUNNさんに押し付けました(笑)。

GUNN だから今日は6打数4安打くらいしか弾けてないです(笑)。アレンジするときに、ピアノやオーケストラだったものをギターに置き換えていくのは、楽しくもけっこうたいへんでした。……もっと練習します!

──ぜんぜんそんな感じはしませんでしたが、プロは自己評価もきびしい! ベースも、ベースシンセを使っているような曲がありましたね。

イワイ そうですね。エフェクターでチューニングを下げるようなことはしています。

──今回のライブでは、同期(打ち込み)を使っていましたが、今後も同期を取り入れていくのでしょうか?

祖堅 半分半分でしょうか。『ローカス』などはどうしてもピアノを入れなくてはいけないんですが、弾く手が足りないので同期を使うしかないですね。だから、前回のライブに比べたら音の幅は広がりました。前回のライブでは、GUNNさんにテーマを伝えるときに「バンドの持つ、熱の勢いだ!」と説明していたんですが、今回は「トーンだ!」と説明しています。

GUNN そうですね。今回は勢いだけでなく、音の幅のことも考えました。同じギターでもひとつひとつの音についてふたりであれこれとツマミ(エレキギターの音色などをコントロールするツマミ)をいじって音作りをしましたので。

──今回撮影した映像は、いくつかアレンジBDMに入りますか?

祖堅 全部入りますよ。音はスタジオで録ったものが入ります。

──いやー、でも、今日はかなり盛り上がりました。最高です!

祖堅 さっきまでお客さんをお見送りしていたんですが、もれなく全員汗でビチョビチョでした(笑)。仕事帰りでスーツ姿の方もいらっしゃったんですが、「そのまま帰るのか?」と心配していたら、「楽しかったっす! アレンジBDM買います!」と握手してくださって。……夜風に吹かれて風邪をひかないといいんですけど。


取材を終えて……
 『FFXIV』の音楽は、王道のオーケストラからゴリゴリのロックまで、じつに幅広い。祖堅氏のTHE PRIMALSの活動は、そのロックの部分をとことん突き詰めたものだ。爆音でかき鳴らされるギター、全身を震わせるベース、PA越しではない生の音でビートを支配するドラムス。圧倒的な音圧でくり広げられる『FFXIV』サウンドは、祖堅氏が提供するもうひとつの“ユーザー体験”なのかもしれない。その感動の一端を、アレンジBDMで体験してみてはどうだろうか。もし叶うのなら、ぜひファンフェスに足を運んで、実際にその耳と体で極上のロックサウンドを味わってほしい。(編集部・オポネ菊池)