アットホームな会場に集うトッププレイヤーたち

 『ハースストーン』は、Bliaazrd Entertainmentが手がける基本プレイ無料のスマートフォン&PC向けオンラインカードゲーム。プレイヤーはユニークな能力をもつヒーローをベースに自分だけのカードデッキを構築し、世界中のプレイヤーと対戦を楽しめる。

 2016年9月10日、11日には東京、秋葉原のアキバ・スクエアにて、日本一の座とアジア太平洋夏季選手権の出場権をかけた大会“日本夏季選手権”が開催された。2日間で述べ1200人の観客が見守るなか、オンライン予選を勝ち抜いたベスト16による熱いマッチが展開。本稿では準決勝と決勝が行われた2日目の模様をお伝えしていく。

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 なお、イベント会場ではユーザー交流イベント“炉端の集い”も実施され、ユーザー同士による対戦もさかんに行われていた。フードやドリンクの販売もあり、和気あいあいとした賑わいは夏の縁日さながら。本作を知らない人でも思わずふらっと寄ってしまいそうなアットホームな雰囲気は、そのあとに火蓋を切る決勝大会の熱気といい対比になっていたように感じられた。

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多彩なヒーローとデッキが応酬する大会に復帰組も熱狂!

 特別ゲストとしてステージに登壇した『ハースストーン』プロダクション・ディレクター、ジェイソン・チェイズ氏のオープニングスピーチを皮切りに、ついに決勝大会がスタート。対戦の舞台となるステージは酒樽や暖炉があしらわれた豪華なセットが組まれており、雰囲気もバッチリ!

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 1日目のベスト16から勝ち上がったプレイヤーはGundamFlame選手、Napica選手、uya選手、Yutori選手の4名。まずはここから2名を選出する準決勝が行われる。大会形式は“5Hero1BAN”の“Conquest”と呼ばれるもので、レギュレーションは以下のとおりだ。

・各プレイヤーが5人のヒーローとデッキを選出
・対戦相手に使われたくないヒーローをひとりだけ使用禁止(BAN)にする
・残った4人のヒーローをマッチごとに選んで対戦し、先に4勝すれば勝利
・1度勝利したヒーローは、以降のマッチでは使用できなくなる

 このレギュレーションで重要となるのが、用意したすべてのデッキを駆使して勝たななければならない点。ひとつのヒーローに特化しただけでは勝ち進めないという、日本一を決めるにふさわしい総合力が試されるマッチだと言えるだろう。また、使用禁止ヒーローを指定することで、メタゲームに揺らぎを与えられるのも好印象だ。

 それでは、準決勝で登場したデッキタイプとマッチ結果、ハイライトを順に紹介していこう。

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▲準決勝へ勝ち進んだファイナリストが入場。左からGundamFlame選手、uya選手、Yutori選手、Napica選手。

・準決勝第1試合:yutori選手 VS Napica選手
1戦目:◯ミラクルローグ VS ×ハイブリットハンター
2戦目:×ハイブリットハンター VS ◯テンポメイジ
3戦目:◯ハイブリットハンター VS ×ハイブリットハンター
4戦目:×ドラゴンウォリアー VS ◯ランプトークンドルイド
5戦目:◯トークンマリゴスドルイド VS ×ハイブリットハンター
6戦目:◯ドラゴンウォリアー VS ×ハイブリットハンター
【勝者:Yutori選手】

 3戦目のハイブリットハンター同士による対戦では、場に出したときにデッキからランダムなミニオンのコピーを1/1で召喚する《バーンズ》が大活躍。Napica選手が出したバーンズが破壊時に2体の2/2ミニオンを出現させるデッキ内屈指の強力カード《サバンナ・ハイメイン》を引き当てたのに対し、Yupica選手も同様に《バーンズ》から《サバンナ・ハイメイン》を呼び出して対応するという奇跡的な展開に、会場内がどよめく。
 一時はこう着状態となるものの、最終的にはよりアグレッシブにヒーローを攻めたyutori選手が押し切る形となった。

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・準決勝第2試合:GundamFlame選手 VS uya選手
1戦目:◯テンポメイジ VS ×マリゴスランプドルイド
2戦目:◯ドラゴンウォリアー VS ×マリゴスランプドルイド
3戦目:×ハイブリットハンター VS ◯マリゴスランプドルイド
4戦目:×マリゴストークンドルイド VS ◯ドラゴンウォリアー
5戦目:×ハイブリットハンター VS ◯ミッドレンジハンター
6戦目:◯ハイブリットハンター VS ×ハンドロックウォーロック
7戦目:◯マリゴストークンドルイド VS ×ハンドロックウォーロック
【勝者:GundamFlame選手】

 7戦をフルに使った一進一退の攻防がくり広げられたこの試合で、とくに印象的だったのが初戦の駆け引き。ドルイドの得意なマナ加速により、デッキのフィニッシャーとなる《マリゴス》を素早く登場させたuya選手に対し、GundamFlame選手のメイジが《魔力の矢》や《フレイムウェイカー》といったランダムにダメージを割りふるカードで狙ったかのようにマリゴスを撃墜していく。両デッキのポテンシャルがフルに生かされた一幕だ。
 さらに8/8という巨大なミニオンが2体立ちふさがるドルイドの盤面を、メイジの“対戦中に自分が呪文を使用した回数だけランダムな呪文を使用する”という豪快な効果を持つ《希望の終焉ヨグ=サロン》が怒とうの連続呪文で打破した勝敗を分かつ一手も、観客の心を大いに惹きつけた。

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 じつを言うと、筆者はしばらく本作から離れており、最近プレイを再開した復帰プレイヤーである。故に、最新環境には少し疎く、心配な面もあったのだが、今回の大会はレギュレーションを含めて存分に堪能できた。シンプルなルールやデッキのベースとなるカードが初期から安定していたのもあるが、どの選手も高い実力と引きの強さを兼ね備えた鮮やかなプレイで会場を湧かせていたことが大きな要因となっていただろう。
 また、実況のakuta氏、解説の蒼汁氏、Arusu氏による丁寧かつ熱のこもったナビゲーションも対戦の魅力を高めていたように感じられた。

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▲対戦をいちプレイヤーの視線からアツく語って会場盛りあげた実況陣。左からArusu氏、akuta氏、蒼汁氏。

日本最高峰のハイレベルな激闘が展開された決勝戦

 ひとつひとつがベストマッチといえるほどの熱戦が続いた末、決勝に勝ち進んだyutori選手とGundamFlame選手。大会前は情報収集を重視していたyutori選手と、とにかくプレイして感覚をつかむことに徹したGundamFlame選手という対照的なふたりがぶつかり合い、会場の熱気も最高潮に達していた。ここからは、決勝戦のハイライトを1戦ずつ振り返っていこう。

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【1戦目】
× ミラクルローグ yutori選手
VS
◯ テンポメイジ GundamFlame選手

 初戦は“全一”と豪語する自慢のミラクルローグと、準決勝で目覚ましい活躍をみせたテンポメイジの対決。コンボパーツを早い段階で揃え始めたローグに対し、メイジはミニオンと呪文の波状攻撃で着実に盤面を制していく。呪文ダメージを増やす《ジュア・ドレイク》に、呪文を使うたび強化される《マナ・ワーム》、そして《フレイムウェイカー》という中盤の主力が出揃ったメイジに対し、堪らずコンボパーツを放出して対抗したローグだったが、逆転するまでには至らず泣く泣く投了することに。

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【2戦目】
× ミラクルローグ yutori選手
VS
◯ ドラゴンウォリアー GundamFlame選手

 続く2戦目でもyutori選手はローグを選択。対するGundamFlame選手はドラゴン系カードのシナジーで大暴れするドラゴンウォリアーで立ちはだかった。序盤は、呪文やヒーローパワーの標的にならない《フェアリードラゴン》と、カードを使うたびに強化されていく《クエスト中の冒険者》が睨み合う展開でスタート。お互いのミニオンを掃討し合う攻防が続いたが、大型ミニオンへの対抗策となる《昏倒》を早めに使いきったローグが押されていき、ラストは《グロマッシュ・ヘルスクリーム 》と《キュレーター》の大型ミニオンコンビの前に敗れ去った。

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【3戦目】
◯ ミラクルローグ yutori選手
VS
× ハイブリットハンター GundamFlame選手

 連敗続きでもなおローグを信じるyutori選手に対し、GundamFlame選手はハイブリットハンターを選択。今度はハンターのくり出すミニオンをローグが最小限の消費で対策しつつ、手札に温存した呪文を一気に解放するコンボが炸裂。その影響で超巨大ミニオンと化した《クエスト中の冒険者》と《エドウィン・ヴァンクリーフ》の攻勢により、ローグを勝利へと導いた。ローグが戦いにくいハンターを相手に魅せた逆転劇は、yutori選手の面目躍如といったところだろう。

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【4戦目】
× ハイブリットハンター yutori選手
VS
◯ マリゴストークンドルイド GundamFlame選手

 勝利の流れに乗りたいyutori選手のハイブリットハンターと、連勝阻止を狙うマリゴストークンドルイドがぶつかった第4戦。後手のドルイドが《コイン》と《練気》の組みあわせで1ターン目から4コストの《ファンドラル・スタッグヘルム》を登場させ、会場をどよめかせた。ふたつの効果からひとつを選ぶ“選択”カードを両方の効果を組みあわせたものに変えるスタッグヘルムの能力は、ドルイドを爆発的にパワーアップさせるのだ。
 さらにドルイドは“選択”効果を持つ低コスト呪文《ワタリガラスの偶像》で次々とキーカードを揃えていく。ハンターが全力でスタッグヘルムを撃退するころには、大型の《魔力の巨人》と小型ミニオンを一掃する《なぎ払い》がGundamFlame選手の勝利を確約していた。

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【5戦目】
◯ マリゴストークンドルイド yutori選手
VS
× ハイブリットハンター GundamFlame選手

 偶然にもデッキタイプが4戦目と入れ替わる形となった5戦目。1コストの《炎魔コウモリ》、2コストの《やさしいおばあちゃん》、3コストの《獣の相棒》という、理想的な手札でスタートしたGundamFlame選手のハンターに対し、yutori選手のドルイドはマナ加速により1ターン目から《ヴァイオレット・アイの講師》が登場。呪文を使うたびに1/1のミニオンを増やす場を形成する。
 一方、ハンターは3ターン目に3体からランダムにミニオンを呼びだす《獣の相棒》で、唯一ヴァイオレット・アイに即応できる《ハファー》を引き当て、盤面を拮抗させていく。
 しかし、ドルイドが満を持して登場させた《マリゴス》への対抗手段がハンターにはなく、“呪文ダメージ+5”という猛烈な効果の前に敗北を喫した。

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【6戦目】
× ドラゴンウォリアー yutori選手
VS
◯ ハイブリットハンター GundamFlame選手

 大詰めとなる6戦目は、ウォリアーを選んだyutori選手を、引き続きハンターのGundamFlame選手が迎え撃つことに。ハンターの初期手札には《猟犬を放て》が2枚あったが、ミニオンが大きめなドラゴンウォリアーに対し、1/1のミニオンを並べる効果は不利と判断したのか、引き直しを選択。その結果、中盤の主力である《獣の相棒》を2枚確保するラッキーな展開となった。
 一方、ウォリアーは終盤に活躍する大型ミニオンが手札に来てしまい、序盤の時間稼ぎが勝敗を分かつカギとなった。しかし、《獣の相棒》でミニオン全体を強化する《レオック》が2連続で出現し、パワーアップした小型ミニオンの群れがウォリアーのライフをまたたく間に削ってしまう。
 中盤でマナを確保できたウォリアーもすかさず小型ミニオンを葬る《ブック・ワーム》で対応するが、時すでに遅し。デッキから戻ってきた《猟犬の群れ》がさらにハンターの打点を引き上げ、ウォリアーをライフ0ピッタリで撃破した。

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栄光の座をつかんだのはGundamFlame選手!

 長きに渡る死闘の軍配はGundamFlame選手に挙がり、ジェイソン・チェイズ氏より優勝トロフィーが授与された。優勝選手インタビューで、GundamFlame選手は今回のマッチを振り返り、「決勝戦ではまるで導いてくれるかのようにカードの引きに恵まれた」とコメント。観客視点でも、トップレベルの戦いは高度なプレイスキルはもちろん、土壇場の勝負運も勝敗を大きく分かつことが強く感じられた。
 また、同選手は「日本選手権優勝がゴールではない。アジア太平洋夏季選手権と、その先に待つBlizzConの世界選手権での優勝も目指す」と意気込みを表明し、会場は大きな声援に包まれた。

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 記者向けに行われたインタビューでは今回の大会を振り返り、「デッキは最新環境で強いと評価されているものと、それのメタとなるものを用意しました。いちばん得意なシャーマンが全試合でBANされてしまったのは残念」、「決勝のyutori選手はローグが強い選手であることは知っていましたが、対抗できる自信はあったのでBANせずに正面から挑みました」、「準決勝、決勝含めて最大のハイライトは準決勝初戦のメイジで《希望の終焉ヨグ=サロン》の連続呪文が決まったとき。MVPのカードを挙げるとしたら《フレイムウェイカー》です。」などと回答した。どのコメントも大会を象徴する感慨深いものとなっていただろう。

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 こうして幕を閉じた『ハースストーン』日本夏季選手権。筆者は本作に復帰したばかりではあるが、会場の熱気とトッププレイヤーたちの激闘を目の当たりにした結果、ますますモチベーションを取り戻す結果となった。世界の舞台へ羽ばたくGundamFlame選手や惜しくも敗退したプレイヤーたちへエールを送りつつ、いちプレイヤーとしても本作を堪能していきたいと思う。
 現在、『ハースストーン』のゲーム内ストアでは本作を始めたばかりのプレイヤー向けに、トップレアのレジェンダリーカードが必ず1枚手に入るカードパックセット“歓迎バンドル”も販売中なので、本記事で興味を持った方は、これを期にシンプルながらも奥深いバトルの世界へ飛びこんでほしい。

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