3年分のノスタルジーを感じたい
ゲームオンが運営するPC用MMORPG『ArcheAge』が2016年7月23日に正式サービス3周年を迎えた。めでたい。
『ArcheAge』は僕も初期からちょくちょく関わってきたタイトルなので、感慨深いものがある。そんな折、ゲームオンサイドから「ノスタルジーを呼び起こすような企画をやってもらえませんか?」と持ちかけられた。ほほう。ノスタルジーとな。
『ArcheAge』は生活系MMORPGと呼ばれるタイプのゲームだ。ストーリーもしっかり用意されているものの、わき道に逸れてからが本番である。むしろ、わき道のほうが太いし数も多い。ノスタルジーの種類も人それぞれだろう。
そこで、『ArcheAge』のGMや関係者に簡単なアンケートを実施し、印象に残っていることを教えてもらうことにした。「あー、わかるわかるー」みたいな気分に浸っていただけたら幸いである。
記事のラストには特別な称号のプレゼントも用意している。すごく長いけど、気合を入れて最後まで読んでほしい。
心に残る大型アップデートを聞いたら企画が根幹から崩れそうに
アンケートには12人の『ArcheAge』関係者に協力してもらった。現役GM陣だけでなく、人事異動で別タイトル担当になった人からもアンケートを回収。ありがたいことである。
アンケート内容ではだいたいこんなことを質問した。
(1)プレイスタイル
(2)『ArcheAge』内でハマっていること
(3)好きなアバターや景色など、『ArcheAge』で好きなものを教えてください
(4)印象深いアップデートは何ですか?(その理由も)
(5)ArcheAgeを運営(もしくはプレイ)してきた中で、印象に残っていることを教えてください
メインで聞きたいのは(4)と(5)。ほかの質問はその人の性格などを知るために用意した。それでは(4)の“印象に残っているアップデート”から見てみよう。
<<アンケート結果>>
ノアルタの建国 (2016年4月27日) ★★★
エアナード (2014年4月24日) ★★★
饗宴の園 (2015年12月16日)★★
3rd Anniversary (2016年7月23日) ★
ブリキの風 (2015年3月25日) ★
躍動の協奏曲 (2013年12月19日)★
オープンサービス(2013年7月11日) ★
いちばん票を集めたのは“ノアルタの建国”と“エアナード”だった。“エアナード”はともかく、記事テーマはノスタルジーだというのに、かなり直近の“ノアルタの建国”が人気。
4ヵ月前のことを懐かしがるって、どれだけ生き急いでいるのだ。セミか。いきなり企画が根幹から揺さぶられるほどのピンチが訪れたが、強い気持ちで書き進めたい。
新たな勢力が誕生したアップデート“ノアルタの建国”
“ノアルタの建国”はその名の通り“国家の樹立”をテーマにしたアップデートだ。プレイヤー自身が国王となり、東大陸・西大陸・海賊に続く4つ目の勢力を立ち上げることができる。独立宣言を読み上げた日こそが新たな建国記念日。赤飯を炊いてお祝いしよう!
<<<GM陣のコメント>>>
【[GM]Aranzebia】
『ArcheAge』運営チームに加わって初めて経験した大型アップデートということもあり、アップデート準備に追われながら、領地の発展が可能になり、国家という新しい勢力が生まれることでゲームにどのような変化をもたらしていくのだろうかと、とても気になりました。
【[GM]Orchidna】
初めて顔出ししたのが、ノアルタの建国の先行体験会だからです。まだまだ殻の取れない顔出し1年生ですが、今後もわかりやすい情報をお届けできるように努力していきます。
【[GM]Haje】
途中でチームから異動となったため、全部に関われなかったのですが、最後の仕事として印象が強く残っています。
[GM]Aranzebiaさんはニコ生番組“ゼビアのわくわく冒険記”に音声で出演している新人GM。初めて仕事として関わった大型アップデートがノアルタの建国か。重みがすごい。野球選手としての初仕事が逆転がかかった代打みたいなものだ(※)。そりゃ忘れられないだろう。
(※[GM]Aranzebiaさんと違って僕はおっさんなので、たいていの物事を野球でたとえる)
初めての大仕事か。僕は初めてひとりでインタビューしたのがNTTドコモの技術系の偉い人だった。気の利いたことを聞けなかった無力感が甦る。ああ。
さて、気を取り直して。[GM]Orchidnaさんの理由も[GM]Aranzebiaさんと少し似ていて、こちらは“初めてプレイヤーの前に顔を出したから”。プレイヤーに顔を認識されたことで身が引き締まり、責任をよりいっそう強く感じるようになったに違いない。
[GM]Hajeさんは実装を待たずして異動になり、心残りだったため“ノアルタの建国”をピックアップ。悔しさと切なさと心残りと。誰かこの心境を歌にしておくれよ。
月額からアイテム課金へ“エアナード”
“ノアルタの建国”と同率1位だったのが“エアナード”。月額1750円だった本作が、このアップデートを機に基本プレイ無料になった。
そもそものアイテム流通量や価値が大きく変わるため、大幅なバランス調整を実施。貿易の仕様が見直され、製作レシピもガラリと変化した。2回目の正式サービス開始日みたいなものである。
それ以上に大きく変化したのはプレイヤーの動向だろう。一般的に、月額タイプのゲームは“新規プレイヤーは増えにくいが、離脱者が少ない”という傾向がある。基本無料タイプの場合はその逆で、“新規プレイヤーは増えやすいが、離脱率が高い”。運営の仕組みや意識そのものを変える必要があったはずだ。
エアナードを挙げた人は石元P、[GM]Eannaさん、[GM]Kyriosさん。3人とも運営の初期メンバーだ。長く関わっている人ほど、エアナードで生じた変化に大きく翻弄されたんだと思う。
<<<GM陣のコメント>>>
【石元P([GM]Lucius)】
よくも悪くも大きな改変で、GMとして伝えるということがいかに大事で難しいかを痛感したアップデートでした。
【[GM]Eanna】
経済活動の根本が変わったため、お客様がたいへん困っていたことをいまでも覚えています。でも、いまのほうがリアルな経済状況となったので、おもしろいですよ。
【[GM]Kyrios】
定額制からアイテム課金制のゲームになったことでゲーム設計が大きく変更され、いい意味でも悪い意味でも反響の大きいアップデートでした。月額時代は敬遠していたけど、これをきっかけに始めたという方も多かったですね。
“よくも悪くも”というのがポイントだろうか。3人とも似たようなことを言っている。ある日を境に物資や貨幣の価値が変化し、ゲーム内経済は大きなうねりを伴うようになった。リアルで起きたらリーマンショックどころの騒ぎじゃない。世界恐慌として社会の教科書に載るやつだ。
こういう改革も「たいへんだったね」と言えるから、MMORPGってすばらしいですね(適当なことを言いました)。
でかい歌姫がインパクト大“饗宴の園”
ふたりから挙がったのが“饗宴の園”。PvPコンテンツ“真グラディエーター”や“貿易船サルベージ”などのシステムが実装されたが、やはり目玉はボスキャラクター“アリア”だろう。
アリアは『ArcheAge』の世界に突如として現れたベアトップ&ミニスカワンピースの歌姫だ。キャラクターボイスは声優・久保ユリカさんが担当し、戦闘中はBGMとして歌が流れるのだから、そうとう気合を入れて作られたはず。
ArcheAge公式:UPDATE「饗宴の園」PV_アリア編
アリアは最大5人で戦うことを想定したボスキャラクターということもあって、でかいのだ。世間には巨大な女子が好きな人もいるので(そういう嗜好の人をジャイアンテスと言う)、そっち方面へのアピールもばっちりだな、と思った。
<<<GM陣のコメント>>>
【[GM]Melisara】
あんな歌って踊れるアイドルがあんなことやそんなこと・・・。
(これまでの『ArcheAge』とは)まったく路線が異なるものが来たため、「本当に大丈夫なのか?」と不安でしたが、上手くまとまってて逆にびっくりしました。
【[GM]Tahyang】
アリアでかっ! って思いました。
あ、シカコさん(※)かわいいです。
(※久保ユリカさんの愛称)
GMふたりもアリアのことしか言ってない。それだけインパクトがあったということか。饗宴の園自体は古代中国のイメージのマップだが、完全にアイドル方面に振ったことで、よりインパクトが強まっている。一応言っておくと、もうひとりの女子ボスの白蛇娘もかわいいと思う。
印象深いアップデートいろいろ
続いて、1票ずつ入ったものを新しいものから見ていく。
■3rd Anniversary
3ヵ月前から『ArcheAge』運営チームに加わった[GM]Kyprosaさんは“3rd Anniversary”を挙げた。プレイを始めたのがGMに就任してからということなので、これからじっくりと思い出を作ってほしい。
【[GM]Kyprosa】
節目ということもあり、思い出話に花が咲いているゲーム内外の環境がとても好きです。
■ブリキの風
『ArcheAge』の世界には車や戦車、船、トラクターなど、多数の乗りものが存在し、スケボーもそのひとつ。スケボーを使うおもなメリットは“トリックをキメると気持ちいい”や“乗りこなすとかっこいい”など。実用品とは少し違う。趣味のアイテムがある(しかもけっこうレア)のも『ArcheAge』のいいところである。
【[GM]Nui】
意外とスケボーの操作が難しくてゲーム内で転倒事故が多発しました。
メンテナンス終了直後、製作材料で必要なアイテム“落雷した木”の価格が高騰したのを覚えています。
スケボーには僕も思い出がある。小規模なオフラインイベントを見学に行ったら、石元Pがいきなり「今度これ入れます」とか言ってスケボーの情報を公開したのだ。新情報を出すときはメディアを呼ぶのが一般的だが、このときはまったく聞いていなくて、たしか僕以外のメディアはいなかった。できれば新情報を出すかどうかくらいは事前に教えてください。
『ArcheAge』スケボー動画【まいにちがβテスト】
■躍動の協奏曲
[GM]Hajeさんはノアルタの建国のほかに“躍動の協奏曲”も挙げてくれた。このアップデートで“作曲機能”が実装され、楽器と譜面があれば演奏できるようになったのだ。オリジナル譜面も作成可能なので、ストリートミュージシャンとして生きていくことも可能。『ArcheAge』でなら「音楽で食っていこうと思うんだ」と胸を張って言えるぞ。
■オープンサービス
初代日本運営プロデューサーの野田真央氏は“オープンサービス”がいちばん印象に残っているという。その理由は「生活系MMORPGを多くのプレイヤーの皆様にプレイしてもらう準備が整ったから」。
“ゲームの中でもうひとつの生活を送る”のはMMORPGの理想形だ。ゲーム内で自由に生き、遊びかたすらプレイヤー自身が決める。ゲーマーの夢である。
だが、生活系MMORPGは開発・運営するのがすごく難しい。管理するデータ量は膨大だし、何でもできるようにシステムを設計するのは至難の業。1997年に登場した『ウルティマオンライン』を初め、完成度の高い生活系MMORPGはあるが、3年前の時点ですでに長くサービスされていたものばかりだった。
“生活系MMORPGの新作”という言葉が多くのMMORPGファンにわくわくをもたらしたのは間違いない。