タイトル横断的にCG映像制作の過程がわかる展示
2016年3月26日から8月31日まで、静岡・三島市の大岡信ことば館にて、“Works of VISUAL WORKS ─デジタルアートの最先端─”展が催されている。これはスクウェア・エニックスが誇る映像制作部門、ヴィジュアルワークス部が手掛けた作品を紹介するとともに、CG制作の過程をひとつひとつ紐解き、CGを用いた映像が作られているさまを示す展覧会だ。
公開に先駆けて3月25日に行われた内覧会での様子をリポートするとともに、ヴィジュアルワークス部のチーフクリエイティブディレクターである生守一行氏に伺った話をお届けしよう。
エントランスから見馴れた顔がお出迎え
大岡信ことば館は、詩人・評論家である大岡信氏の業績を紹介する文学館だ。氏出身の静岡県・三島市のJR三島駅前にある。地元を本部としている教育事業会社のZ会(増進会出版社)によって運営されている。このような経歴からもわかるお堅い文学館で、なぜヴィジュアルワークスの展覧会が行われるのか? という疑問が浮かぶが、これは取材するにつれ、氷解していくこととなった。
エントランスはミュージアムショップなども併設されており、美術館のように、静謐で美しい佇まい。ふと目をやると、『ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII』のライトニングや『ファイナルファンタジーXIV』のヒューランなど見馴れたキャラクターたちをあしらった大きなポスターが見える。チケット売り場を越えて展覧会場に入ると、今度はフィギュアーツのクラウドやティファたちがお出迎え。そして奥にはひときわ大きな等身大『ファイナルファンタジーXII』ジャッジ・ガブラスの姿も見られた。
ここからいよいよヴィジュアルワークスの仕事がどう進んでいくかという展示の本編に入るのだが、来館する皆さんの楽しみを取っておくためにも、ここでは概要に留めよう。
ヴィジュアルワークスのCG制作工程は、A工程~C工程の大きく3つに分けられる。
A工程には、0を1にするアイデア出しの段階や、企画を目に見える形にしてみるプリビズと呼ばれる段階、そしてルックデブと呼ばれる「どんな見た目にするか」を試作する段階などが含まれる。その後、ブレイクダウンという、この先の工程に必要な要素を洗い出す作業が待っている。ここからプロジェクト全体に必要な人員や日数などのコストが設定され、プロジェクトが本格的に動き出すのだ。
このころ工程とは別にモーションキャプチャーが行われる。ヴィジュアルワークスは、光学式のモーションキャプチャーシステムを採用しており、モデルはマーカーを装着した衣装を着て、360度に設置された100台あまりのカメラが各マーカーの座標を取得、再構築するのだ。今回の展示では、モーションキャプチャースタジオを模した部屋も用意され、部屋とは別のエリアから部屋での様子をモニターすることもできた。
B工程では、キャラクターや背景などアセットと呼ばれる素材群が作られていく。ポリゴンキャラクターのフレームにはリグと呼ばれる骨組みが入れられる。実在の生物のような動きが与えられるのも、風や重力などの環境によって変化する動きが与えられるのも、群衆シーンの動きがシミュレートされるのも、この工程だ。
こうして基礎ができあがったCG映像に、エフェクトやライティングを施し、演出力を高めるのがC工程だ。これらが重なりあった映像がレンダリング(書き出し)され、音楽やセリフなどが乗り、プレイヤーが観る映像となっていく。
また、ヴィジュアルワークスでは、パッケージやポスター、メディア記事に掲載される静止画の作成も行っている。データの確認に始まり、ライティングやレンダリングなど、映像と同じような工程を経ながら、高解像度が要求される紙メディアに対応できるイラストが制作されていくのだ。