一部のネタバレも辞することなくお届け!

 あなたが選ぶのは絆か、皆殺しか。そんな極限の葛藤と背徳感をともなうゲームプレイが話題を呼んだRPG、『真・女神転生IV FINAL』(以下、『真4F』)。当記事では、週刊ファミ通2016年3月10日発売号で掲載した“ネタバレあり”の開発者インタビューに、さらなる加筆をした完全版をお届けする。※最後のページにて壁紙の配布もアリ!

いまだから言える『真・女神転生IV FINAL』の深層に迫る、ネタバレ“あり”の開発者インタビュー完全版!_01
写真中央右:プロデューサー・山井一千氏
写真中央左:ディレクター・大山智氏
写真左:キャラクターデザイナー・土居政之氏
写真右:サウンドコンポーザー・小塚良太氏
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『真・女神転生IV FINAL』
アトラス/ニンテンドー3DS/2016年2月10日発売

作り手どうしの信頼関係と、積年のノウハウが結実

──ゲームが発売され、すでに堪能しているプレイヤーも多いということで、今回はぜひ突っ込んだお話しを聞きたいと思います。

山井一千氏(以下、山井) はい。おかげさまで『真4F』はご好評の声を多くいただけており、非常にありがたく思っています。なかには、前作『真・女神転生IV』(以下、『真4』)より俄然おもしろいというご意見もあり、前作にも心血を注いだ身としては複雑ですが(笑)。

大山智氏(以下、大山) 前作には前作の、本作には本作のよさがあって、ふたつの作品が並び立ったときに双方の価値が強まるようなものを作りたいと思っていたから、人によって感じるおもしろさに差が出るのは、狙っていた通りですね。俺も『真4F』を開発中に何度もテストプレイして、散々ダメ出しもしたけれど、クリアーしたときには前作をまた遊びたくなってきたから。

──大山さんは、インタビューでご登場いただくのは今回が初めてですね。ディレクターとして携わった本作はいかがでしたか?

大山 開発チームでの立ち位置は、「『メガテン』へのリスペクトが足りない!」とか、「このシステムと演出が噛み合ってなくて意味不明だ!」とか、遠慮なく意見を出しまくる人でした。

山井 大山さんがインタビューに出るというのは、僕たちからすると獣を野に放つような心地もしつつ(笑)、開発現場でもプレイヤーに近い目線でズバズバと物を言ってくれるので、逐一相談したくなるんですよね。

大山 山井さんとかは俺のことを、許容範囲を判別するリトマス試験紙みたいに扱ってくるんだよなぁ(笑)。そういう意味では、ディレクターの肩書きになっても、これまで通りみんなと意見をぶつけ合いながら作れました。

いまだから言える『真・女神転生IV FINAL』の深層に迫る、ネタバレ“あり”の開発者インタビュー完全版!_22
▲プロデューサー・山井一千氏……これまでに、『真・女神転生III -NOCTURNE(ノクターン)マニアクス』や、『デビルサマナー 葛葉ライドウ』シリーズ、ニンテンドー3DS版『デビルサマナー ソウルハッカーズ』、『真4』のディレクターを歴任。

 
──『真4』よりも前、『キャサリン』(注1)のころから、大山さんの武勇伝は関係者より伝え聞いておりました。

大山 それは仕事関連の? それともプライベートのですか?

山井 ある意味、両方かも?

大山 そうか(笑)。『キャサリン』のときは、自分の生活習慣やお酒の知識をここぞとばかりに活かして、バーのシーンなんかは与えられた仕様書をほぼ無視する勢いで作っちゃいました。当時のアトラスには、習慣としてバーに入り浸っていた人間が自分以外にいなかったので、俺がやるしかないな、と。

山井 僕も大山さんとはよくいっしょに飲むんですけれど、“ルーム5”で交わした忌憚なき意見やアイデアが、その後のゲーム作りに活きることも多々あります。

──“ルーム5”とは?

大山 会社の会議室の欠番です。要するに、社外のお店で飲みながら、温めているアイデアや夢を語りましょうという合言葉です。

──なるほど(笑)。皆さんは、いっしょに仕事をするようになって何年くらい経つのですか?

大山 自分はプログラマーとしてアトラスに入り、当時まだ世に出ていなかったプレイステーション2の研究開発に加わったり、『ペルソナ2罪』、『罰』(注2)の開発ツールを作る手伝いなどをしていました。企画チームにいた山井さんとは『罰』からの付き合いです。

山井 もう20年近く前ですねぇ……

土居政之氏(以下、土居) そして『真・女神転生III』(注3)で、山井さん、大山さん、僕の3人は背景制作班のメンバーとして、数々のダンジョンをいっしょに作りましたね。山井さんが企画の、大山さんがプログラムのリーダーで、僕は背景のデザインを担当していました。

山井 当時の土居さんは、背景の美術設定や3Dモデルなども作っていたよね。大山さんがチームに加わったときは、長らく解決できていなかったプログラム上の問題がすぐに片付いたりもして。ふたりともスゴいんですよ(笑)。

土居 『III』の後、僕は別のシリーズ作品などに参加したのですが、山井さんとは「またいっしょに『メガテン』を作りたいね」と夢を語らうような雑談をすることもあって。それがひさびさに叶ったのが『真4』でした。

(次ページに続く)

注1:『キャサリン』……2011年発売のプレイステーション3&Xbox 360用ソフト。
注2:『ペルソナ2 罪』は1999年発売、『罰』は2000年発売のプレイステーション用ソフト。
注3:正式タイトルは『真・女神転生III -NOCTURNE(ノクターン)』。2003年発売のプレイステーション2用ソフト。

いまだから言える『真・女神転生IV FINAL』の深層に迫る、ネタバレ“あり”の開発者インタビュー完全版!_20
▲ディレクター・大山智氏……これまでに、『真・女神転生III -NOCTURNE(ノクターン)』、『キャサリン』、『真4』などの作品で、プログラマーとして手腕を発揮。本作『真4F』では自身初のディレクターを務め、開発現場を指揮した。