FacebookやSkype登場以前、どこにでもあった光景。
Kyle Seeley氏による『Emily is Away』を紹介する。本作はitch.ioでPC/Mac/Linux版がPWYW(Pay What You Wantの略。任意の額を支払える)方式で配信中。
本作はAIM(AOLインスタントメッセンジャー)を模したメッセンジャープログラム上で展開されるテキストアドベンチャーゲーム。高校時代に仲が良かった女の子エミリーと、高校卒業直前の2002年から5年間にわたって、時折それぞれの大学生活などをチャットし合う様子を描いていく。
というわけで、2002年から2006年までの平均的なPC事情を反映しまくっており、起動画面やメッセンジャープログラムの背景はモロWindows XP(アイコンや起動音を多分無断でコピってるのはどうかと思うが、表現上必要な引用ということで理解したい)。
また、1年1エピソードの合計5エピソードを収録しているのだが、年度が変わると、エミリーが話題に出してくるバンドをはじめ、メッセンジャーのプロフィールに使えるアイコン画像(当時の大学生が聞きそうなバンドや映画ネタ)なども変わっていくというのが芸が細かい。ちなみに無駄にフォントや背景カラーを変えることも可能。なぜなら大学生は、そういう他人と違うつもりのちょっと気の利いた(実際にはいたって平凡で大して意味もない)機能が好きだからだ。
ストーリーは、メッセンジャー上の会話の返答内容を3択で選択することにより多少の分岐が発生する程度で、1エピソードも短く、合計40分前後で終わる小品。しかし高校卒業からカレッジを卒業して大人になるまでという、一気にくっついたり離れたり微妙な距離が伸び縮みする期間ならではの会話劇が面白い。
何気ない会話から「実は彼氏と喧嘩して……」と聞いて「チャンス!」と思いつつ、「彼氏糾弾すればいいのか? それはやりすぎか? 友達として寄り添う的なアプローチがいいのか?」と悩んだりするプレイヤーを見透かしたかのように、返事の入力中に「You're my best friend」って一回書いてから「one of my best friends」とマイルドに書き直す描写がわざわざ入ったりして、もう本当にスイマセン。下心隠そうとしてそういうことやってました。
まぁそんな感じに、2000年代前半のインターネットに切ない思い出がある人はやってみてはいかがだろうか。多分、悶絶するハズ。