“その選択が命取りになる”を具現化したホラーアドベンチャー
ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアより、2015年8月27日に発売されたプレイステーション4専用ソフトウェア『Until Dawn(アンティル・ドーン) -惨劇の山荘-』。本作は、雪深い山荘に集まった8人の若者たちの身に巻き起こる惨劇の一夜を描いたホラーアドベンチャーゲームとして、多くのホラーファンから注目されている話題のタイトルである。
この作品を端的に言い表すと、インタラクティブシネマ(=体験できる映画)と言うのが、もっとも適切な表現になるのではなかろうか。ただ、体験できる映画と言うと、ゲームの世界ではある種使い古された表現になってしまうが、本作においては映画やドラマで活躍するプロの俳優による迫真の演技、脚本家の演出による練り込まれたシナリオ等によって正真正銘、映画的なストーリーを追体験できるのだ。また、本作全体が海外TVドラマのように構成されていることで、物語に山場がいくつも用意されている。そのため、一度プレイし始めると、止め時を見失ってしまうほど。毎話終わるたびに続きが気になるといった話の引っ張り方は、海外TVドラマを好んで見ている御仁には周知のことだろう。場面ごとに違う人物の視点で物語が展開することで、単一のキャラクター視点で物語に没入せず、全体の構成をドラマのように楽しめる点も、本作の雰囲気作りにひと役買っているはずだ。
“バタフライエフェクト”システムで先の読めない展開を体験する
本作は、ホラーアドベンチャーと銘打ってはいるものの、従来のアドベンチャー作品のように正解の行動や道筋があらかじめ決まっておらず、その時々で取ったプレイヤーの行動が次の展開を決めていくという、“バタフライエフェクト”システムが採用されている。これは、プレイヤーの選択によって、次に起きる事象やキャラクターの性格、対人関係が変化していき、結果的に導き出される答えが変わってくるというわけである。ちなみに“バタフライエフェクト”とは、「北京で蝶が羽ばたくと、アメリカにハリケーンをもたらす」といったように、ひとつの因子が影響を与えたことにより起こる、予測し得ない結果との因果関係を表す言葉である。
この“バタフライエフェクト”システムによる本作の肝はプレイヤーの行動に伴う結果として、キャラクターの生死が決まってくるという先の読めなさにある。そのため、本作にはゲームオーバーという概念がない。さらに言うとバッドエンドもグッドエンドというものも存在しない。プレイヤーの受け取り方によってバッドエンドやグッドエンドに思える終わり方をするかもしれないが、それは一連の行動によって伴った結果を見ているだけに過ぎないのだ。
友情、恋愛、そして嫌悪……
山荘で一夜をともにする若者たち
本作にはホラー作品に欠かせぬ感のある元カレ・元カノなどの複雑な人間模様も用意されている。助け合うのか、それとも足を引っ張るのか……。本当に怖いのは仲間の存在ということにもなりそうだ。誰が死に、誰が生き残るのか? すべてはプレイヤーの決断に委ねられている。