既視感のよい点&悪い点とは?
2015年8月26日~28日の3日間、パシフィコ横浜にて開催された日本最大級のゲーム開発者向けカンファレンスCEDEC 2015。最終日の8月28日、“ゲームにおける既視感で、どうユーザーの気持ちを掴むか?”というテーマのセッションが開かれた。その模様をリポートする。
セッションの講師は、ディー・エヌ・エーのJapan リージョンゲーム事業本部プロデューサーである馬場保仁氏、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの梁瀬洋平氏、東京工芸大学 芸術学部ゲーム学科教授の遠藤雅伸氏という3名だ。まずはトップバッターとして、馬場氏が登壇。セガ在籍時より多数のゲーム開発に従事してきた経験から、“既視感を感じさせることのメリット・デメリット”について講演した。
“既視感”とは、未体験であるはずなのに、どこかで体験したことがあるように感じること。いわゆる、デジャヴと呼ばれる現象だ。まず最初に語られたテーマは、その“既視感”は、ゲームにとって悪なのか? ということ。馬場氏によると、ゲームの企画を立ててアイデアを考える中で、既視感が入り込むケースは多いという。その結果、企画書を出しても、「これは○○みたいなゲームだね」、「ありがちじゃない?」と言われてしまうことになる。
「既視感は、企画やアイデアを潰す、格好の材料になることは事実です。ただその感覚が、必ずしもマイナスなのか? プラスの部分はないのか? ということが論点になるわけですね」(馬場氏)。
馬場氏は続いて、既視感を感じるいくつかのパターンを紹介した。たとえば『三国志』などのモチーフを知っている、パズルのルールを知っているなど、ゲームの世界観やユーザーインターフェイスが、既視感につながる大きな要素となるそうだ。ただ、そこを修正した結果、逆に「わかりづらい」と言われることもあり、うまくバランスを取ることが大事だと馬場氏は言う。
たとえばルール、遊び、操作性などで、どれかひとつでもオリジナリティーを打ち出すことができ、インパクトを与えられれば、既視感はある程度打ち消すことができる。ただもちろん、それは簡単ではない。ならばどうするか? という部分に関して馬場氏が提唱するのが、“既視感をプラスに感じられるものにする”という手法だ。
ここで馬場氏は、手掛けた作品から、失敗例として『ガブ×2 アドベンチャー』を、成功例として『マジック&カノン』を挙げた。『ガブ×2 アドベンチャー』は、新しいことを入れ込みすぎてわかりづらくなったことが敗因。対して『マジック&カノン』は、3Dフィールドが舞台のRPGで、「なんとなく懐かしい」と感じてもらえたことが高い評価につながったと、馬場氏は分析を語った。
最後に馬場氏はまとめとして、「既視感は必要」とあらためて強調。多すぎても少なすぎても問題となる側面はあるが、少なすぎて「わからない」と言われたときも、逆にチャンスになると馬場氏は言う。
「でしたらそれを、既視感を含めて「わかる」レベルまで落とし込んでいけば、そこに市場の可能性はあるわけですから。既視感は使いかたしだいですし、いかにユーザーが安心してそのゲームに入っていける要素を盛り込めるかが、大事だと思っています」(馬場氏)。