イベントプランナーの役割
2015年8月26日~28日の3日間、パシフィコ横浜にて開催されている、日本最大級のゲーム開発者向けカンファレンスCEDEC 2015。初日の8月26日には、“MMORPGで感動のストーリーテリングを! ~ドラゴンクエストXのクエスト制作のツボ~”と題したセッションが開かれた。『ドラゴンクエストX』(以下、『DQX』)のクエスト制作の過程が語られた、注目のセッション内容をお届けする。
セッションの講師を務めたのは、スクウェア・エニックスでイベントプランナーチーフとして、『DQX』のイベントを取り仕切る田中瑞枝氏。彼女は『ファイナルファンタジーXII』、『ファイナルファンタジーXIII』などを担当したのち、『DQX』のイベント全般を担当することとなった経歴を持つ。現在はどのようなチーム、スタッフ構成で進めているのか? また具体的な作成過程、工夫や試みなどは? など、現場のトップならではのリアルなコメントが語られた。
最初に説明されたのは、そもそもイベントプランナーとは何か、そしていまどういった開発チームで動いているのかということ。全体図としては、ゼネラルディレクターの堀井雄二氏をトップに、プロデューサー、ディレクターが軸となり、その下にある開発チームのひとつとしてクエスト制作チームがあり、イベントプランナーはそこでイベントを作ることになる。ひと言で制作チームといっても、その役割は多岐にわたるようだ。
『DQX』に関しては、イベント制作スタッフはイベントプランナーを筆頭に、ざっくりと6つに分類されるとのこと。クエストを組むイベントプランナー、フィールドや乗り物を作るワールドプランナー、ボス戦やモンスター配置を調整するバトルプランナー、ショップなど施設を考えるライフプランナー、メニューまわりを担うメニュープランナー、季節イベントなどの運営に携わるサーバーコンテンツプランナー、この6つだ。イベントプランナーを担当する田中氏は、クエストやメインストーリーの実装業務、NPCの登録や管理・発注、NPC配置、テキストデータの管理などの業務をこなす。
「『DQ』ユーザーの大半は、MMORPGを未体験なんですよ。そういう方たちにも、これまでの『DQ』と変わらない感覚で遊んでもらいたいと思って、クエストを作っています」(田中氏)。
仕事内容の説明に続き、田中さんが語ったのは、クエスト制作に関する4つのポイントだ。大きく分けて“スケジュール”、“コスト”、“クオリティー”、そして“全体的な安全性”が重要だという。安全性はMMOならではの要素で、将来の拡張性を見越した快適な設計が必要になるわけだ。
「いろいろな人が同時に遊ぶMMOですから、何が起きても対処できることが大切になってきます」(田中氏)。
9つの制作ステップ
続いては、シナリオが公開されてからクエストが配信されるまでの、実際の開発ステップが解説された。『DQX』の場合、ステップは“シナリオ公開”→“精査・発注”→“仮組み”→“Temp”→“ディレクター確認会”→“要望対応”→“PreFIX”→“QAチェック”→“クエスト配信”の、全部で9つ。各ステップとも、実務内容と併せ、ときには『DQX』の具体例も交えながら、仕事の流れが解説された。その詳細については、画面を参照してほしい。
なお、メインストーリーのようにすごく重要なシナリオの場合は、ディレクター確認会のほか、“遊ぼう会”というものを開催することもあるそうだ。これはプロジェクトメンバーみんなが実際にクエストをプレイして感想を言い合う会。ちなみに先日公開された、バージョン3.1のメインストーリーに関する遊ぼう会では、なんと977件の意見が集まったとのこと。こうした意見交換が、クエストのブラッシュアップにつながっていくわけだ。
クオリティーアップのツボ
セッションの最後は、まとめとして、クエストの制作段階ごとの、クオリティーアップのツボが紹介された。各段階とツボは、以下のとおりだ。
1.シナリオ公開~精査時のツボ
・クエストのシナリオを読む。
・完成したクエストをイメージする。
・実装上の問題点を見つける。
2.クエスト仮組み時のツボ
・お客さま視点で改善点を見つける。
・改善点を開発スタッフ間で調整する。
・ディレクター確認会に持ち込む案件をピックアップしておく。
3.ディレクター確認会のツボ
・人のプレイを見て、改善点に気づく。
・ディレクター要望の意図を理解する。
・開発スタッフと完成形イメージと残りタスク、コストを共有する。
4.要望対応~PreFIXまでのツボ
・全ての要素を組込み、完成させる。
・ディレクターや関係者に提案、説得しながら、お客さまへ、自信を持ってお届けできるクオリティまで作りこむ。
講演を終えて、田中氏は「私たちは、これからも『DQX』の世界に引き込まれるようなゲーム体験をお届けしていきますので、どうぞよろしくお願いします!」とあいさつ。セッションを締めくくった。