“短い”ではなく“密度の濃い”アニメに
ミクシィは、スマートフォン用アプリ『モンスターストライク』について、本日2015年7月21日にアニメ版の新たな情報を公開した。ここでは、イシイジロウ氏をはじめとしたスタッフや、小林裕介さんなどの声優陣も出演した発表会の模様をお届けしよう。
■アニメ『モンスターストライク』を配信するのは“自然な流れ”
俳優の金子昇さんからは、本アニメがYouTubeにて10月10日より世界同時に配信開始予定であることなど、プロジェクトの概要が説明された。
『モンスターストライク』プロデューサーであり、エックスフラッグスタジオ総監督の木村弘毅氏は、「昔に観ていた『ドラゴンボール』のように、アニメが会話の中心にあってほしいと考えていました。しかし、現代ではお茶の間に座って、19時にみんなでテレビを観るというのはだんだん難しくなっているように感じます。そのため、時間や場所を選ばずに観られるYouTubeを『モンスターストライク』のアニメのプラットフォームにしました」と語った。
木村氏は『モンスターストライク』は攻略動画が盛り上がりを見せているので、アニメを動画サイトで配信していくというのは自然な流れであるとも語った。また、1話の長さを7分間としたのは、YouTubeの平均視聴時間は10分前後と、電車などで気軽に観られる長さが適切と考えたことによるものだそうだ。
なお、木村氏は本アニメを“運営型のアニメ”と位置付けており、今後はゲームとアニメでの連動企画も用意しているという。
ここで、グーグル 執行役員 YouTube パートナーシップ日本代表 水野有平氏が登壇。水野氏によると、YouTubeの中で上位トップ100がゲーム関連であり、ゲーム動画の視聴時間は1年間で75%の伸びを見せているという。水野氏はそのゲーム動画において大人気となっている『モンスターストライク』のアニメ化ということで、大きな期待を寄せているそうだ。
さらに、本アニメのプロモーションビデオ(PV)が公開。その後に登壇したYouTuberのマックスむらい氏は「すごいクオリティですね! 渋谷の見慣れた場所で、スマホを持った主人公が活躍する姿に震えました。もっと観たいです!」とPVを大絶賛した。
アニメ モンスターストライク PV
同じくYouTuberのHIKAKIN氏は、本編の時間が7分間であることについて「この時間であると見やすいですし、このPVのようにテンポよく場面が変わっていけば、みんなが観てくれると思います」とコメントした。また、「アニメに登場するならどんな役をやってみたいですか」という質問に、マックスむらい氏は「助っ人として戦いたいですね。でも吹っ飛ばされる役でもいいですよ」と答えていた。
■スタッフが“モンスターを主人公にしない”理由を語る
イベントでは、本アニメでストーリー・プロジェクト構成を務めるイシイジロウ氏が登壇した。イシイ氏は「大ヒットしているライバルの子ども向けアニメと、そのまま真っ向勝負をしても勝てない」と語り、そのうえで『モンスターハンター』の普及率が高い中学生をターゲットに、YouTubeでアニメを展開することに可能性があると感じていたそうだ。
イシイ氏は今回のアニメプロジェクトで重要なことに“中学生の心にささるキャラクター”、“スマートフォンアプリと連動するアニメ”、“1年の間に立ち上げられるスタジオ”の3つを挙げて、ひとつでも妥協をすれば成功できないと考えていたとのこと。イシイ氏は結果的に最高のメンバーが集められことに、満足していたという。
ここからはスタッフによるトークセッションが行われた。登壇したのは、イシイジロウ氏と、シリーズ構成・脚本の加藤陽一氏、キャラクターデザイン原案の岩元辰郎氏、アニメ企画プロデューサーの平澤直氏、そして監督の市川量也氏だ。
◆主人公はモンスターじゃないの?
トークセッションの冒頭では、“『モンスターストライク』というタイトルであるのに、なぜモンスターではなく、スマートフォンを操作する人間が主人公なのか”がトークテーマに。
イシイ氏は本アニメについて、“学校などの日常の場所で、モンスターをひっぱってぶつけられる、『モンスターストライク』が現実になったような世界”を目指していたという。加藤氏はこの意見に賛成していたそうで、「『モンスターストライク』には3000万人のユーザーがいて、コアな方からライトな方まで幅広い方に遊んでいただいています。老若男女のみなさんに気軽に観ていただくためには、プレイヤーの皆さんと、主人公の立ち位置が近いほうがよいと考えました」と語った。
また、イシイ氏によると、“スマートフォンにアプリが入っていて、目の前にモンスターが召喚される”という小中学生の夢をストレートに実現したことも、本アニメのポイントだという。
◆YouTube用7分アニメの作りかた
加藤氏は、いままで手掛けてきた30分のアニメとはまったく別のやりかたで、7分用のベストの脚本はどういったものか、7分という区切りだけで一定の満足を得るためにはどうしたらいいか、ということを考え、脚本の執筆をスタートしたそうだ
イシイ氏は、加藤氏による脚本の初稿を読んで「いける」と確信したという。また、イシイ氏は「7分のアニメと言っても、30分のアニメを7分ずつに区切ればいいというわけではないんです。7分という時間に30分のアニメのボリューム、YouTuberたちが届けているようなギャグやバラエティーの豊かさを、どう押し込めていけばいいか、ということを一生懸命考えて作っています」と語った。
なお、市川監督も脚本を読んで、ギャグからシリアスまでバラエティー豊かに揃えた作風であり、“短い”ではなく“密度の濃い”作品だという印象を持ったそうだ。
平澤氏は、時間が短くなることと、ドラマが薄くなるということは必ずしもイコールではないと感じていたそうだ。たとえばアニメの1話は、週刊マンガ雑誌における3~4話ぶんに相当するというのが業界の相場だが、加藤氏の脚本を読むとマンガの1話ぶんのボリュームだけだけで盛り上げることが可能ということを思い起こしたという。
◆原作『モンスターストライク』との関わり
イシイ氏は、『モンスターストライク』のゲームスタッフが、イチからゲームを作りあげる勢いでアニメとの連動企画に着手したことに驚いたという。また、加藤氏によると、シナリオ会議にはアニメチームとゲームチームの両方が参加しており、誰かが少しでもおもしろいことを言ったらそのアイディアを拾うというやりかたが、とてもうまくいっていると語った。
平澤氏は、アニメと異業種が関わることにおいては、“時間感覚を合わせること”が大切であるという。今回は時間が短いアニメということで、さらに時間感覚を早くしたチームを作るように意識したそうだ。
◆モンスターデザインについて
岩元氏は「ゲームそのままのタッチではなく、日常的な場所にモンスターが来ると考えてラフを作成しました」と語った。また、スタッフ内ではモンスターデザインについて意見がぶつかりあうことが多く、岩元氏はいまだに正解を探し続けているのだという。
イシイ氏によると、スタッフ一同はアニメのモンスターの制作において、ユーザーが持っている印象を損なわないように、それでいてアニメに出ても違和感がないようにと気を遣っているそうだ。イシイ氏は「単純にファンタジーにしてしまうと簡単ですが、人気のモンスターをどうやってアニメに落とすかということを、スタッフみんなが一生懸命考えています。そこも楽しみにしてください」と語った。
◆ニンテンドー3DS版『モンスターストライク』について
イシイ氏によると、3DS版のストーリーはアニメ版をなぞったものになっており、アニメの展開が気になった場合は、3DS版で先を知ることができるようになっているそうだ。また、岩元氏は「かわいいキャラクターを早く見せたいです!」と、キャラに対する愛情を語っていた。