すべてにおいて進化を遂げた傑作

 2015年7月16日、ワーナー エンターテイメント ジャパンよりプレイステーション4向けに発売されるオープンワールドアクションゲーム『バットマン:アーカム・ナイト』。プラットフォームがプレイステーション4のみとなり、すべての面において進化を遂げた本作のプレイインプレッションをお届けする。

『バットマン:アーカム・ナイト』インプレッション 闇の騎士になって夜を駆ける! すべてのゲーマーにオススメしたい逸品_01
『バットマン:アーカム・ナイト』インプレッション 闇の騎士になって夜を駆ける! すべてのゲーマーにオススメしたい逸品_02
▲オープンワールドとして表現される雨の降りしきる夜の街は、次世代の到来を感じさせてくれるほどきめ細かく、美しい。

 本作について、まず最初に言っておきたいのは、“絶賛できるほどおもしろい”ということだ。
 本作はアメリカの大手出版社DCコミックスから出版されている漫画シリーズ『バットマン』を原作とするアクションゲームで、Rocksteady Studiosが開発した『アーカム・アサイラム』、『アーカム・シティ』に続く3作目だ(あいだに同じく『バットマン』を原作とする『アーカム・ビギンズ』、『アーカム・ビギンズ ブラックゲート』が発売されているが、本稿ではRocksteady Studios3部作とし、『アーカム・シティ』を前作として扱いたい。)

 近年、いわゆる“アメコミ”を原作としたハリウッド映画が続々と公開され、この7月も人気ヒーローが一堂に会する『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』が大ヒットを記録し、その知名度は大いに高まっている。『バットマン』映画も、それまで勧善懲悪のイメージが強かったヒーローものの認識を一気に覆した『ダークナイト』や、その続編『ダークナイト ライジング』が話題となっていて、それらをきっかけにこの世界に入り込んだファンも少なからずいるのではないだろうか。

 もちろん、本作は“バットマン愛”がこれでもかと敷き詰められた贅沢すぎる“キャラゲー”の側面もあるのだが、それ以上に、一本のアクションゲームとしてのクオリティーが非常に高い。ジャンルも“アクション”と銘打たれてはいるものの、オープンワールドで表現された広大な街の中で、プレイヤーはバットマンができることすべてをバットマンとして体験できると言っても過言ではないほど、取れるアクションの自由度や謎解きのパターンが豊富なのだ。マントを広げて夜の空を飛び回る。鍛えた拳や、技術の粋を凝らしたハイテクガジェットの数々を駆使して、悪漢どもを懲らしめる。イカした改造車で無法の坩堝(るつぼ)と化した街を駆け巡る。銃で武装した敵を、闇にまぎれて恐怖を与えながら仕留める。そして、ひと癖もふた癖もあるヴィラン(悪役)との対決――さまざまなシチュエーションがプレイヤーを待ち受け、楽しませてくれる。完成度の高い1本のゲームとして遊べる本作から、“バットマン”ワールドへの入口に足を踏み入れてもいいだろう。

 ……とはいえ、本作はストーリーが続いている3作目であるため、最低限の知識はあったほうが混乱せずに楽しめるはず。そこで、本作のインプレッションと絡めて“バットマン”の簡単な紹介もしていきたいと思う。大丈夫、本当に“最低限”だから。

バットマンって何者?

『バットマン:アーカム・ナイト』インプレッション 闇の騎士になって夜を駆ける! すべてのゲーマーにオススメしたい逸品_03
『バットマン:アーカム・ナイト』インプレッション 闇の騎士になって夜を駆ける! すべてのゲーマーにオススメしたい逸品_04

 コウモリ姿のコスプレ男、バットマンの正体は、とある大企業の御曹司、ブルース・ウェインだ。幼いころに強盗に両親を殺された彼は、犯罪者を撲滅するために格闘技を学ぶ。だが、ただ相手を素手で殴り倒すだけでは効果が薄かったため、コウモリのコスチュームに身を包んで活動し、自分自身が“恐怖”の象徴となることで、犯罪を抑制しようとしている。銃器には頼らず、殺人は犯さない。そのせいで投獄した悪党が脱獄をくり返し、その度に犯罪が起こるという負の循環を起こしてしまっている。同じDCコミックスのヒーローであるスーパーマンらとは違い、“特殊能力を持たないただの一般人”であることが、その最大の特徴だ。

 バットマンが活動するのは、ゴッサム・シティという名の大都市。“ゴッサム”というのは元々ニューヨークの呼び名で、バットマンのゴッサム・シティも設定上はニューヨークとほぼ同じ場所に位置している。大都市であるがゆえに犯罪も多く、バットマンは日がな悪党との戦いをくり広げている。

『バットマン:アーカム・ナイト』インプレッション 闇の騎士になって夜を駆ける! すべてのゲーマーにオススメしたい逸品_05
『バットマン:アーカム・ナイト』インプレッション 闇の騎士になって夜を駆ける! すべてのゲーマーにオススメしたい逸品_06
▲本作では広大なゴッサム・シティが舞台となる。全部で3つのエリアに分かれていて、至る所に悪党がはびこり、犯罪が発生している。

バットマンを取り巻く人々

 『バットマン』は刊行が始まってから現在まで70年以上の歴史がある。その中に登場したさまざまなキャラクターが、協力者や、敵対する悪役(ヴィラン)として物語を盛り上げてくれる。

・ジェームス・ゴードン
ゴッサム市警に籍を置く、バットマンのよき理解者。バットマンの活動が警察に受け入れられる以前から手を組んでいた。バットマンを呼び出すために空にコウモリのライトを照らすのはだいたいこの人。

『バットマン:アーカム・ナイト』インプレッション 闇の騎士になって夜を駆ける! すべてのゲーマーにオススメしたい逸品_07

・ジョーカー
バットマンの最大にして因縁の宿敵と言える、つねに笑顔をはり付けた狂気とカリスマ性に満ちた悪役(ヴィラン)。コミック版では、かつて悪事を働いた際、バットマンから逃げようとして化学薬品の溶液に落ちたことが原因となり、現在の外見になってしまう。ゲーム版では、前作『アーカム・シティ』で死亡しているはずだが……。

『バットマン:アーカム・ナイト』インプレッション 闇の騎士になって夜を駆ける! すべてのゲーマーにオススメしたい逸品_08

・ロビン
バットマンの相棒(サイドキック)として活動する少年。これまでにロビンを襲名した人間は数人いて、『アーカム・ナイト』では3代目ティム・ドレイクがロビンとして登場する。初代ディック・グレイソンは“ナイトウイング”と名前を変え、独立したヒーローとして活躍中。2代目だったジェイソン・トッドは、ジョーカーによって殺害されている。この痛ましい事件はバットマンの心に深い影を落とした。ちなみに、コミック版ではバットマンの息子ダミアンが5代目ロビンとして登場している。

『バットマン:アーカム・ナイト』インプレッション 闇の騎士になって夜を駆ける! すべてのゲーマーにオススメしたい逸品_09
『バットマン:アーカム・ナイト』インプレッション 闇の騎士になって夜を駆ける! すべてのゲーマーにオススメしたい逸品_10
▲ときにはロビンとタッグを組んで強敵に立ち向かう場面もある。
『バットマン:アーカム・ナイト』インプレッション 闇の騎士になって夜を駆ける! すべてのゲーマーにオススメしたい逸品_11
▲元サーカス団員だった初代ロビン“ナイトウイング”は本作でも登場し、かつてのようにバットマンと協力して戦うことも。

・アーカム・ナイト
謎に包まれた、本作のオリジナルキャラクター。近未来的なアーマーを身にまとった姿はバットマンに似ているが、その正体は原作ファンにもわからない。

『バットマン:アーカム・ナイト』インプレッション 闇の騎士になって夜を駆ける! すべてのゲーマーにオススメしたい逸品_12
『バットマン:アーカム・ナイト』インプレッション 闇の騎士になって夜を駆ける! すべてのゲーマーにオススメしたい逸品_13

 これだけ知っておけば、準備は万端だ。知らないキャラクターが出てきたとしても、ゲームの中でキャラクターの設定を確認できるので心配は無用。それでは、前置きはこのくらいにして、ここからはゲーム本編の魅力について語っていこう!