予想を超えたコラボから、想像を超えるRPGが生まれる!
『ペルソナ』シリーズや『真・女神転生』シリーズなど数多くのRPGを手がけるアトラスと、人気シミュレーションRPG『ファイアーエムブレム』が夢のコラボレーション。誰も見たことがない、完全新作RPG『幻影異聞録♯FE』が、Wii Uで2015年冬に登場する。
本稿では、本作の秘密に迫るべく、開発者インタビューを敢行! 気になるアレコレについて、たっぷり語ってもらった。
※本記事は、週刊ファミ通2015年7月23日号(2015年7月9日発売)に掲載されたものです。
【写真左から】
山上 仁志氏(文中は山上) 任天堂 プロデューサー
髙田 慎二郎氏(文中は髙田) アトラス プロデューサー
安藤 佳織氏(文中は安藤) 任天堂 ディレクター
石田 栄司氏(文中は石田) アトラス ディレクター
平田 弥氏(文中は平田) アトラス チーフディレクター
矢野 文崇氏(文中は矢野) アトラス アートディレクター
夢のコラボとアトラスが作る意味
――まずは、この夢の企画が成立するに至った経緯を教えていただけますか?
山上 我々とアトラスさんの接点としては、2009年に『いつでもプリクラ☆キラデコプレミアム』 を制作したころに遡ります。その後に安藤から、「『ファイアーエムブレム』と『真・女神転生』を組み合わせたゲームを作りたいんです」と提案があり、アトラスさんにプレゼンに行ったんです。そのときには髙田さんもいらっしゃって、上の方も交えてお話しをさせてもらったのですが、そこでは「ちょっと検討させてください」となり、その後振られてしまいました。
――それはなぜだったのですか?
山上 「いまは忙しいから無理です」ということでした。とてもガッカリしましたが、企画そのものにノーと言われたわけではなかったので、安藤には、「きっとまたご縁があるかもしれないから」と話していました。そうしたら、それからまた1年以上が経ったときに、アトラスの平岡さん(平岡直人氏。アトラス コンシューマ局 局長)からメールが来まして、「あの話、まだ生きていますか?」と。読んだ瞬間に大喜びで、すぐに「生きています、やりたいです!」と返答しました。そこから、髙田さんを含めたいまのメンバーに近い構成で、企画を練り始めたんです。
――アトラスさん側としては、最初にお話が来たときに、どのように思われましたか?
髙田 本当に光栄に思いました。というのも私は、メガドライブで『ラングリッサー』を作っていたころから、『ファイアーエムブレム』を勝手にライバル的なタイトルだと目標にしていましたので。 その作品と携われるということ、そしてそもそも任天堂さんがこれほど大きいタイトルとのコラボを持ちかけてくださること自体が光栄だったので、やりたいという気持ちはとても強くあったんです。
――ということは本当に、制作できる余裕さえあれば……ということだったのですね。
髙田 はい。そのころはちょうど『デビルサバイバー2』を作っていたころだったんです。でもその後、『デビルサバイバー2』の開発が終わり、つぎに何をするか考えていたときに、平岡に「あの話って、まだ生きていますか?」と聞いたら、すぐに動いてくれて。そこからすんなりと話が進んでいきました。
――その最初の時点から、どんなゲームを作るのか、構想はあったのでしょうか?
山上 安藤の最初の提案は、現代劇の世界観の中で、ターン制シミュレーションをやったらおもしろいのではないか、というものでした。僕もそこで、“渋谷の街にペガサスナイトが飛んできて、スクランブル交差点に降りる”という絵を思い浮かべて興奮したんです(笑)。これは絵になるし、いいかもしれないな、と。そこから話が始まったのですが……“渋谷の街に降りてくる”というところは似ていますが、それ以外に似ても似つかないゲームになりましたね(笑)。
髙田 最初に出した企画書では、シミュレーションゲームでしたよね。そこで山上さんから、「もっとチャレンジしてほしい」という意見をいただいて。
――でも山上さんも、企画の出発点ではシミュレーションを想定していたんですよね?
山上 ええ。でも実際にシミュレーションとして進めてもらったものを見たら、なんだか『ファイアーエムブレム』の亜流のような印象を感じてしまって。これではアトラスさんの持ち味が活きないだろうと思い、それで思い切って一度お戻ししたんです。
髙田 結果的には、アトラスが得意とするものでいこうと考えました。『ファイアーエムブレム』という題材で同じシミュレーションRPGなのであれば、やはりインテリジェントシステムズさんが作るものが本家です。アトラスが作る以上、アトラスが得意なものを作るべきだろうと考えました。それがアトラスの”本家”と言えるのだと思います。
――なるほど。アトラスが作る“本家”と言えば、やはりRPGが真っ先に浮かびますね。
髙田 はい。結果的に、現代劇のRPGで、等身大の若者たちが葛藤を乗り越えて成長していく物語にしていこう、となりました。
“芸能界”と“音楽”が物語のカギを握る!?
――今回は“芸能界”という要素が強くフィーチャーされていますね。
髙田 日本の芸能は、起源が“神降ろし”、つまり舞などで神を“降ろす”ことに源流があったという説があります。今作の主人公たちは、異世界のミラージュという存在をみずからに“降ろす”ようにして戦います。そんな彼らの力は、古に言う神降ろしのようであり、その力の源は “芸能”に通じている……というのが設定の背景です。彼らは、さまざまな出来事を通してミラージュマスターとしての力を極めていきますが、それは“芸能”の力を極めていくことでもあります。“芸能界”でのさまざまな出来事も彼らの成長に深くかかわりますし、同時に今回は日常部分を多くして、ふだんの若者たちの姿を見せたいという考えもありました。
安藤 私も、かなりいろいろなことを考えた末に、最後に行き着いたところでしたし、何かそこにスッと落ちるものがあって、これはいいんじゃないかな、と思いました。
――華やかで、インパクトもありますよね。設定的にも、音楽が重要になりそうですが。
山上 楽曲は、エイベックスさんにお願いしています。多くの人気アーティストを担当されているプロデューサーさんから、いま流行の曲を作られている現役の作詞作曲家さんを起用していただいて。そこに安藤が、歌うキャラクターのイメージに合うように、「この曲は○○さん風に」というように、具体的なアーティスト名を挙げたり、「戦隊ものっぽく」などのオーダーをして作ってもらいました。
――エイベックスさんと言えば、実際に流行歌をたくさん作られていますからね。
安藤 そうですね、本当にトップアーティストに提供するのと同じやりかたで、楽曲を作ってくださいました。
髙田 そして、実際にすべての歌を、キャラクターを担当している声優さんに歌っていただいているんですよ。
安藤 そう、そこはかなりこだわりましたね。
髙田 だから、なかなか声優さんが決まらなかったんですよ(苦笑)。
安藤 イメージに合うだけではなく、歌える方を探しましたからね。
平田 曲もいろいろで、昭和歌謡みたいなのもありますしね。
安藤 戦隊ものや、VOCALOID的な曲など、それぞれが明確なテーマで作られています。
――それはキャラクターによってテイストが変わる、ということでしょうか?
髙田 そのキャラクターがどういうタイミングで歌う歌なのか、というのに合わせて決まっていますね。
――ということは、ストーリー上で意味がある歌が揃っているということですね。
髙田 はい。メインストーリーだけではなく、各キャラクターごとのサイドストーリーもあるのですが、そこでは主人公が各キャラクターのサクセスストーリーを手伝って、目的を達成することで、ムービーや歌のご褒美があったり、それがバトルで必殺技として使えたり……といった感じになっています。
平田 サイドストーリーで、ふたりのキャラがコラボする曲が手に入ったりしますね。
――つまり、メインストーリー以外の部分は、キャラクターの側面が見られるだけではなく、遊んでおくといいことがある、と。
髙田 そうですね、メインストーリー以外にも、ぜひそういった部分も楽しんでいただければと思います。