ガンプラ生誕35周年記念企画、動くぞっ!

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▲彩色パーツや可動部などに最新技術が詰め込まれて作られているにも関わらず、14年前にリリースされた前モデルと同じ定価というのもうれしい。

 1980年7月に初めてガンプラが発売されてから今年で35周年。そして来年は“ガンプラ工場”の俗称で呼ばれることもあるバンダイホビーセンターの稼働から10年を迎える。また、今年の7月には、1/144スケールの代表モデルとして14年間発売されてきた『HGUC 1/144 スケール RX-78-2 ガンダム』が最新技術を導入し、よりベストなプロポーションと可動範囲の向上などを実現させ、「REVIVE」して生まれ変わっている。

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■商品仕様
◆商品名:HGUC 1/144 スケール RX-78-2 ガンダム
◆希望価格:1080円[税込]
◆発売日:2015年7月25日
◆サイズ:組み立て時の全高は約125㎜

 そんなガンプラ35周年の総決算として、今回から4回にわたって国内のガンプラ製造拠点でもあるバンダイホビーセンターを徹底取材! まずは工場見学のリポートをお届けしていく!! 

バンダイホビーセンター工場見学! ……その前に!?

  『機動戦士ガンダム』とは切っても切り離せないアイテムといえば……ガンダムに登場するさまざまなモビルスーツなどをプラモデル化したガンプラ! 今回取材を行った静岡県・静岡市にあるバンダイホビーセンターは、そんなガンプラの企画開発や生産などを行う、ガンプラ製造拠点だ。集中連載の第1回となる今回は、まず抽選倍率30倍程度とされる“バンダイホビーセンター工場見学”のリポートを行っていくぞ。案内してくれるのは、工場見学でもガイドを担当する、広報担当の鈴木さん。要所で鈴木さんへのインタビューを挟みつつ、なかなか体験できない工場見学の流れを追っていく!

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▲これがバンダイホビーセンターの外観。取材時には、社用車として活躍している“シャア専用オーリス”が駐車場に停められている姿も発見できた!
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▲今回工場を案内してくれるのは、『機動戦士ガンダム』に登場する地球連邦軍の制服をモチーフにしたユニフォームを着ている、広報の鈴木智子さん。バンダイホビーセンターで働いているスタッフは、基本的にこのコスチュームが制服になっているのだ。

 ここで注目したいのが、バンダイホビーセンターで使われる制服に付いている階級章だ。これは、バンダイでの役職に完全対応しているぞ。工場見学に運よく当選した人は、すれ違うホビーセンターの人々の階級章をさりげなくチェックするのも楽しいかもしれない。

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▲階級章は11の階級が設定されているが、このうちバンダイホビーセンターで実際に使われているのは上の6種類となっている。左上が一般、中央上がサブリーダー、右上がリーダー、左下がマネージャー、中央下がデビュティゼネラルマネージャー、右下がゼネラルマネージャーの役職に対応。また、階級とは異なるものとして、マイスターのワッペンも3種類用意されている。

――階級は役職ということですぐにわかるのですが、マイスターとはいったいどんなものなのでしょう?

鈴木智子さん(以下、鈴木) ガンプラというのは工業生産品ですから、その生産には高度な技術が必要になってきます。マイスター制度というのは、各部門で優れた技術や経験を持っている者から選考して、若いスタッフにその技術を伝えていく制度のことなんです。

――なるほど! 言うなれば先生ですね!

鈴木 そうですね。たとえば設計の場合だと、3DCADのソフトを使う技術や経験がマイスターに選ばれる基準になります。設計の担当者は、最初は武器や付属品などの設計からスタートするんです。そして徐々にいろいろな部位のパーツを勉強し、一人前になったら商品全体の設計を担当するようになります。

――ほほう。武器などは若手の方が作っているんですね。それを知ってランナーを見ると……ちょっとおもしろいかも!

ここがバンダイホビーセンターの心臓部!

 工場見学が始まると、最初に案内されるのが、3階フロアだ。ここにはガンプラの開発から生産に至るまでに携わる、多くのスタッフが働いている。まだ公開されていない秘密のプロジェクトなども進行しているため、工場見学ではガラス越しにしか見ることができないが、ここがガンプラの心臓部だと思うと胸アツだ!! なお、ここでの生産の準備が行われた後は、1階の工場で実際にパーツが生産されていく。

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▲部署ごとに分かれて仕事をしているのだが、各部署を分ける仕切りはなく、オープンな雰囲気になっている。これなら意見交換もスムーズに進められそう!

 ちなみに、バンダイホビーセンターで各部署に配属された方々がどのような仕事を行っているかは、下の表を参考にしてほしい。

・バンダイホビーセンターにあるおもな部署とその役割

企画開発
ガンプラの場合はアニメ会社からもらう設定画をもとに、ガンプラ完成時のギミックなどまで検討。商品としての魅力を詰め込んでいく
デザイン
パッケージや取扱説明書の製作を担当する
開発設計
3DCADというソフトを使い、各パーツの設計・試作を行う。また、製品に使う素材やプランニングなどもこの部署が担当する
金型設計
設計でパーツの設計が行われた後、組み立て順序を考慮しつつ、どのように配置していくかなどを決める。また、複数の色で構成されるランナーの場合は、色配置も決める
金型
金型設計で作り上げた金型の制作を担当する。また、熟練職人(社員では数名しかいない)による既存の金型のメンテナンス作業も行う
生産
原料の調達を始め、成形工場やセット工場の生産スケジュール管理などを担当する。また、実際にテスト生産した成形品の色合いの微調整も行う

 ――このバンダイホビーセンターが本格的に稼働したのは2006年ですが、それまでは、どこでガンプラが作られていたのでしょう?

鈴木 静岡市(旧清水市)袖師町にあった工場でガンプラを生産していました。バンダイホビーセンターへの移転後は、その生産量の大半を担う形になっています。厳密に言うと、単色のみの成形品はいまでも近隣の協力メーカーさんで生産している場合がありますので……最大4種類のプラスチックで作る成形品(ランナー・枠につながった状態のパーツのこと)が、この工場での主要な生産品になりますね。また、包装や箱の印刷、セット工程なども別の工場で行ったりしています。

――つまり、「箱詰めされた状態でバンダイホビーセンターから出荷されているという訳ではないですよ」ということですね。

鈴木 そうですね。皆さんがイメージされている形と少し違うかもしれませんが(笑)。あと、この工場ではガンプラだけでなく、そのほかのキャラクターのプラモデルも生産しています。

ガンプラ開発のために最新鋭の光造型機も導入!

 続いて見学できるのは、光造型機という機械。この機械は、量産には必需品の金型を作る前に試作版を作り出せる、言わば3Dプリンターのようなもの。この機械のおかげで、3DCADを使って設計したガンプラを、およそ1日で試作品の状態まで進められるのだそう。なお、この光造型機がなかったころは……職人さんが2~3週間の時間をかけて木型を作っていたので、技術の進歩のおかげで圧倒的な時間短縮を実現できたってこと! なお、取材時は新旧2種類の光造型機が設置されており、新型の光造型機では複数色の設定ができ、パーツごとに色を付けることができるのだ。

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▲光造型機で作られた試作品のランナー。カタチだけなら、ほとんど製品版と変わらない。これを実際に組み立ててみて、不具合があるかどうかなどをチェックする。
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▲ちなみにこれが光造型機のなかったころに作られた試作用の木型。時代を感じさせる!

――野暮な質問かもしれませんが、この光造型機って……お高いんですよね?

鈴木 そうですね。ものにもよりますが、旧型で家1軒ぶんくらいのお値段になるんじゃないでしょうか。当然、複数の色でランナーを構成できる新型はさらに値が張ります。新型のほうは素材の色が変えられるぶん、プリンターで言うところのトナー代も高額になってしまいますね。どちらの光造型機もかなり製品に近い試作品ができるので、よく順番待ちになっていますよ(笑)。

これがガンプラを生み出す射出成形機だ!

 つぎに案内されたのは、工場の2階部分にある見学ゾーン。ここでは、合計17台の成形機によって、ガンプラの主要部分であるランナーを製作している工程を見ることができる。さらに、この成形機に組み込まれる金型が、設計の段階からどのように制作されるかの見本もここで確認できるのだ。なお、この生産工程を見たところで、通常の工場見学は終了となるぞ。今回は、取材ということもあり、特別に成形機に極限まで近寄り、その工程を見せていただいた! 

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▲金型ができるまでの過程も詳しく解説。展示されている金型を見れば、ランナーに配置されているひとつひとつの金型パーツが先に作られ、それを土台にはめこんで、ひとつのランナーの金型になる……という流れがよくわかる。
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▲これが生産時に使われている金型。これをセットした成形機に材料となるペレットが流し込まれると、ランナーがどんどん生み出されていく。
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▲ガンダムカラーに塗装された成形機。この1台だけは最新型で、できたランナーをカメラで自動的に検品し、ラッピングまでできるスグレモノだ。右は材料のペレットと呼ばれる材料で、1台につき最大4色を組み合わせ、4色が組み合わさったランナーを作ることができる。

――素朴な疑問なのですが、もしこの工場が本気を出した場合、1日の最大生産量はどのくらいになるのでしょう?

鈴木 ざっくりとした数字になりますが、弊社の成形機で4色の成形品を1枚作るのにはおよそ20秒かかります。工場は基本的に24時間稼働していて、成形機は17台あるので……フル稼働すれば、1日に最大7万枚の成形品が完成します。モノにもよりますが、製品にすると、およそ1万個の商品を生産できる計算になりますね。

――たった1日で約1万個! これまでの総生産数が“億”という単位になるのもうなずけます!

最後に気になるポイントを聞いてみた!

 ガンダムファンにとっては、聖地巡礼レベルで一度は訪れてみたいバンダイホビーセンターの工場見学はこれにてひと通り終了。最後にいくつかの気になる疑問を鈴木さんに直接ぶつけてみたぞ!

――まずお伺いしたいのは……鈴木さんが「バンダイホビーセンターで働いてよかった」と思うことはどこでしょう? この制服ですか?(笑)

鈴木 制服よりも、広報・見学担当という仕事ですね(笑)。団体見学では学生さんがいらっしゃることも多々あるのですが、そんなガンプラファンの方々とお話するのはとても楽しいです。

――将来「バンダイホビーセンターで働きたい!」と思った場合、どんな勉強をしておくといいのでしょう?

鈴木 見学のときにもよく聞かれる質問ですね。部署によっても違いはあるのですが、基本的にはもの作りに携わる職種ですので、工業系や技術系の勉強をしていただくといいかもしれません。ほかには、デザインや設計などの専門学校を卒業している者もいます。

――鈴木さんも工業系のスキルをお持ちなんですか?

鈴木 私自身は、事務系なんですよ。ですので、必ずしも工業系じゃないとダメということはありません。ただ、働いている人数の比率で言えば、工業・技術系や専門的な分野
のほうが多くはなります。

――ちなみに、工場見学時に、鈴木さんがちょっと困ってしまうような質問をされることはありますか?

鈴木 たまにあって困るのは……専門知識をベースにした質問をされることですね。あまりにも専門すぎるとすぐにはお答えできませんし。「同業の方かな?」と思うのですが、聞くわけにもいかず(笑)。あと学生さんなどで多いのは、「このプラモを作って!」というご意見をいただく場合ですね。その場でお約束はできないので、これもちょっと困ってしまいます(苦笑)。ただ、そういったご意見は企画開発の担当者に伝えています。また、見学時にお配りするアンケート用紙に記入される方もいらっしゃいます。いずれもホビーセンター内で共有していますので、もしかしたら……ということはあるかもしれません。

――なるほど。「これを作ってほしい!」という希望があるのに工場見学の抽選に当たらない場合は、バンダイホビーセンターにお手紙を送ったりしてもいいのですか?

鈴木 いまもお手紙を頂くことはありますが、ホビーショーなどのイベントで直接スタッフに伝えていただく場合や、キャンペーンなどのアンケートへ記入いただく場合もあります。そういったご意見は、商品開発の参考にさせていただいています。

――わかりました! 

 『ガンダム』ファンの聖地とも言えるバンダイホビーセンターがどんな場所なのか、ざっくり掴んでいただけただろうか? 「自分の目で見たい!」という方は、ぜひとも下のバンダイホビーセンターの公式サイトで、工場見学の応募をしていただきたい! なお、次回からは、ガンプラ製作に関わるさまざまな部署の方に直接お話を伺い、ガンプラの制作秘話を明らかにしていく! こちらも要注目ですよ!!

バンダイホビーセンター公式サイト
※見学は上記サイトから申し込みが必須です。また、抽選制となりますのでご注意ください。電話での受付はしておりません。