『妖怪ウォッチ』で“大人しかわからないネタ”を入れる目的とは?

 2015年6月3日に、第34回イエローリボン賞(ベスト・ファーザー)発表・授賞式が行われた。ここでは、式の模様をお届けしよう。

レベルファイブの日野晃博氏がベスト・ファーザー イエローリボン賞経済部門賞に決定 『妖怪ウォッチ』で“妖怪のせい”にする理由を語る_01
レベルファイブの日野晃博氏がベスト・ファーザー イエローリボン賞経済部門賞に決定 『妖怪ウォッチ』で“妖怪のせい”にする理由を語る_02

 ベスト・ファーザー イエローリボン賞とは、日本メンズファッション協会と日本ファーザーズ・デイ委員会が主催する、毎年もっとも素敵なお父さんに贈られる賞。イエローリボンの黄色には“うれしさ”や“希望”などの意味があるほか、本キャンペーンの目的である“平和な家庭生活”と“円満な人格”をシンボライズしているとのことだ。各賞はマスコミ各社や過去のイエローリボン受賞者などにより決定されている。選考基準は以下の通り。

<ベスト・ファーザー イエローリボン賞 選考基準>
・明るい家庭作りをしている父親
・父親学の実践者
・厳格なしつけをしている父親
・子どもたちのよき理解者、よき教育者
・お母さんと、子どもから見た素敵なお父さん
・社会福祉に貢献し、素敵な父親像をアピールしている人
・ユニークな子育てをしている父親
(さまざまな意味で、「素敵なお父さん」と呼べる人を選び、表彰します)

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▲日本メンズファッション協会理事長の八木原保氏

 日本メンズファッション協会理事長の八木原保氏は、「今年は6月21日となる父の日が、お父さんに感謝をする日となり、家族のコミュニケーションがより深まってくれることを望んでいます。一方で、不幸にして親を亡くしたこどもや、親と生活できない子どももいますので、その子どもたちのための活動を続けてきました。今回、素晴らしいベストファーザーをお迎えすることができたことをうれしく思います」と挨拶をした。

■第1部“似顔絵作文コンクール表彰式・チャリティ

 第1部では父親を題材とした、似顔絵および作文での文部科学大臣賞受賞の表彰式が行われた。

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▲文部科学大臣賞の似顔絵の部を受賞した園田心海さん(中央)。絵に描かれているお父さんのことは「怒ると怖いけど、いっぱい遊んでくれる、いいお父さんです」とコメントした。
▲文部科学大臣賞の作文の部を受賞した狩野智子さん(中央)。作文では反抗期のころに父にひどいことを言ってしまった思い出などが綴られていた。作文の読み上げの後、狩野さんは「父に悲しい想いをさせてしまった、自分の気持ちを伝えることができた」と語った。

 また、親を亡くしたり、理由があって親と住むことができない子どもを支援する非営利団体“あしなが育英会”の奨学生である、現在大学2年生の横田麻由さんのスピーチが行われた。横田さんは4歳のときに父を亡くされて、経済的に困難なときもあったが、あしなが育英会の奨学金のおかげで部活動に打ち込むことができたそうだ。いまは海外への仕事の目標に向けて、日々英語の勉強をしているとのこと。

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▲横田麻由さん

■第2部 ベスト・ファーザー発表・授賞式

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▲レベルファイブ 代表取締役社長/CEOの日野晃博氏(中央)

 ベスト・ファーザー賞・経済部門には、レベルファイブ 代表取締役社長/CEOの日野晃博氏が選ばれた。選考理由は、「『妖怪ウォッチ』の生みの親として、日本中の子どもを楽しませ、夢と元気を与えたその取り組みは、まさにベスト・ファーザーの理念にふさわしいものです」とのこと。

 日野氏は『妖怪ウォッチ』が支持される理由について、“子どもたちの味方になっていたこと”にあったと語る。『妖怪ウォッチ』のプランニングをしていた2012年に、その昔に親しんだ『ドラえもん』のように元気がもらえるうえ、家族で楽しめる作品をどう作ればよいかを考え、いまの子どもたちを徹底的に調査したところ、いまの子どもたちは日野氏が子どもだったころとは違う悩みを抱えていることがわかったそうだ。その悩みとは、大人の社会のような、シリアスな人間関係のストレスだったのだという。

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▲受賞時はジバニャンも登場した。
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 『妖怪ウォッチ』における、学校で起こっているすべてのことを“妖怪のせい”にするというコンセプトは、“いまの子どもたちとつながった世界を作る”、“子どもたちの味方である”という信念に基づくものなのだそうだ。たとえば作中に、トイレの“大”に行くのは格好悪いためにからかわれてしまったり、友だちの家に泊まりにいったときにちょっとエッチな深夜番組を観たり、ゲームの発売日にどうやってズル休みをするかを考えるといった描写があるのは、いまの子どもの目線で物語を作った結果なのだという。なお、こうした教育上よくない要素については苦情が寄せられることもあり、日野氏はやりすぎたと反省することもあるのだとか。

 また、アニメの『妖怪ウォッチ』には「僕は死にましぇん!」というどこかで聞いたようなセリフや、“太陽にほえるズラ”シリーズの展開など、過去の名作のオマージュがある。日野氏はこのような“大人にしかわからないネタ”があるおかげで、子どもが「お父さん、なんで笑ったの?」と聞くといった家族の会話につながることが、ほかの作品にはない、家族みんなで楽しめるコンテンツとしての魅力であると語った。