いまでもUBIソフト モントリオールスタジオは我々のライバルだと思っています

 バンダイナムコゲームスから2015年発売予定のプレイステーション4用ソフト『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム4』(以下、『ナルティメットストーム4』)。“忍道対戦アクション”というジャンルの同シリーズは日本のみならず欧米でも人気を博し、全世界でのシリーズ累計出荷本数は1200万本を突破している。最新作となる『ナルティメットストーム4』の制作は、シリーズ作でおなじみのサイバーコネクトツーが担当。……と、堅苦しい説明はこのあたりにして、まずは下にある『ナルティメットストーム4』のPVをご覧いただきたい。

PS4『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム4』第1弾プロモーション映像

 2014年12月に公開された本PV。正直に言えば、筆者はタイトルの存在が発表された際、PVを観るまでは「『ナルティメットストーム』シリーズの最新作が発表されたのか」というありきたりの反応をしただけだった。しかし、その反応はPVを観た瞬間に激変する。PVでキャッチコピーとして使われている“神次元の超アニメ表現”は、決して誇張でも虚構ではなかったからだ。キャラクターの表情の豊かさや演出の妙に目を奪われた筆者は、すぐにバンダイナムコゲームスへと連絡を取り、開発者のインタビューを打診。サイバーコネクトツー代表にして本作の製作総指揮を務める松山洋氏と、バンダイナムコゲームス プロデューサー戸井田健一氏にインタビューを行わせていただいた。本インタビューでは、超アニメ表現の詳細に迫る!

サイバーコネクトツー松山洋氏が語る『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム4』の“超アニメ表現”とは?_05
サイバーコネクトツー松山洋氏が語る『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム4』の“超アニメ表現”とは?_06
サイバーコネクトツー松山洋氏が語る『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム4』の“超アニメ表現”とは?_09
▲サイバーコネクトツー
松山 洋氏(文中は松山)
▲バンダイナムコゲームス
戸井田 健一氏(文中は戸井田)

――いろいろとおうかがいしたい気持ちを抑え、まずは『ナルティメットストーム4』でのおふたりの役割を教えていただけますか。

戸井田 バンダイナムコゲームスの第2プロダクションに所属している戸井田と申します。『ナルティメットストーム4』ではバンダイナムコゲームス側のプロデューサーを担当しています。

――松山さんの関わりかたはこれまでのシリーズ作と同じなのですか……?

松山 そうです。結果的にシリーズを手掛けてから13年……14年目になります。マンガ連載そのものが2014年に完結しましたが、ずーっと作り続けて13タイトル、『ナルティメットストーム4』で14タイトル目。『NARUTO -ナルト-』のおかげでサイバーコネクトツーも大きくなったのではないかと。この13年やってきた役割分担は変わらず、『NARUTO -ナルト-』というIPをお借りして、キャラクターゲームのお手本のゲームを作らせていただいております。改めまして、サイバーコネクトツーで製作総指揮、陣頭指揮をやらせてもらっています松山です。よろしくお願いいたします。

――今回インタビューをお願いしたのは、誤解を恐れずにお伝えすると『ナルティメットストーム4』が発表された際、「『ナルティメットストーム』の最新作が発表された」という、ナンバリングタイトル最新作の発表という部分だけへの反応だったんですね。文字ベースだけの情報を目にしたときのリアクションだったわけですが。その後、PVを観たときに、表現や演出に衝撃を受けて……。興奮が収まらず、すぐにバンダイナムコゲームスさんへ取材の申し込みをさせていただき、本日それが実現したというわけです。

松山 正直にそう言っていただいたことと、そのような反応はうれしい限りです。

――今日は、改めてシリーズへの情熱やこだわりをおうかがいしつつ、本作の“超アニメ表現”の詳細をお聞かせいただければと思います。シリーズのこだわりとして“キャラクターゲームのお手本となるように”という部分を大切にされているというのは、常日頃から松山さんがよく口にされていましたが、まずはサイバーコネクトツー、バンダイナムコゲームスの両社が『ナルティメットストーム』シリーズでどういった部分を大事にしているのかをお聞かせいただけますか。

戸井田 マンガ、アニメの『NARUTO -ナルト-』は世界各国で非常に人気があります。『ナルティメットストーム レボリューション』は10ヵ国語で対応しており、販売されている国は120ヵ国を超えています。Steamの配信もありますので、遊んでくださっているお客様は本当にたくさんいるという状況です。もちろん国内のお客様を大切にしながらも、多くの方々、世界中の方々に遊んでいただける、そして皆様が共通して楽しめるという内容、クオリティーを重要視しています。

松山 世界というのはいまとなっては大前提です。サイバーコネクトツーはもともと“キャラクターゲームが得意な会社”と言われますけれど、2013年に『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』を制作するまでは『NARUTO -ナルト-』しか作っていませんでした。『NARUTO -ナルト-』は13年、14年のあいだ手掛け続けたということに加え、サイバーコネクトツーが初めてIPをお預かりしたゲームでもありますので特別な気持ちもあり、その想いはいまも変わってはいません。サイバーコネクトツーの基本的な考えかたとして、制作会社ですから我々が作るものはどうであれ死力を尽くして作る、というところなんですね。作ったものはひとりでも多くの人に遊んでほしい。それこそ国境を越えて。アニメやマンガ、映画はストーリーがわからないとおもしろさが伝わらないですよね。でも、ゲームは極論を言うとストーリーがわからなくても、おもしろいゲームはおもしろいと伝わる。だからこそゲームはほかのコンテンツよりも国境を越える可能性が高いと思っているんです。

――近年は欧州だけに留まらず、世界各国で販売されるケースが非常に多いですもんね。

松山 もともと『NARUTO -ナルト-』は日本で先行展開していたんですね。最初にマンガがあり、続いてアニメーションの製作が決まり、さらにゲーム化へとつながる。『NARUTO -ナルト-』のアニメに関して言えば、アメリカやヨーロッパで展開されたのは日本から遅れること3年。それに合わせてゲームの『NARUTO -ナルト-』が展開されたので、『ナルティメットヒーロー』がアメリカで発売されたのも3年後でした。プレイステーション2のころはゲームのテクノロジーが日進月歩だったこともあり、3年前のゲームとなると、いまでは考えられないぐらい時代遅れに見えてしまう危険があったんですね。正直、当初は『NARUTO -ナルト-』のIPのパワーが世界できっちり受け入れられない限り、市場には投入できないという判断もありました。流行っていればなんでも売れるという時代もありましたが、けっきょく我々が『NARUTO -ナルト-』を初めて作ったときに決めたように、キャラクターにおんぶにだっこだけで作ってはいけないし、ゲームとして選ばれる1本にならなければいけない。そうでなければファンの人をガッカリさせてしまうというのがあるので……。いま思ったんですけど、この記事めっちゃおもしろいですね(笑)。

――(笑)。どうしたんですかいきなり。

松山 いまの話をいろいろなことに当てはめて読んでくれる人もいるだろうなあ、と感じて。ぜひ行間も読んでください(笑)。

――(笑)。

松山 話を戻しますと、『NARUTO -ナルト-』に関してはそういうこともあって最初から世界を狙っていました。原作の『NARUTO -ナルト-』が世界で売れているから売れたのではなくて……。『NARUTO -ナルト-』のゲームが世界に認められたのはプレイステーション3で『ナルティメットストーム』シリーズになってからなんです。それまでも商売にはなっていたし、売れてはいたんですが、タイトルとして、1本のゲームとして評価されたのは『ナルティメットストーム』シリーズになってから。

サイバーコネクトツー松山洋氏が語る『NARUTO-ナルト- 疾風伝 ナルティメットストーム4』の“超アニメ表現”とは?_01

 そのときに「我々もうかうかしていられない」と思ったのがUBIソフトさん。日本では発売されていないので知らない方も多いかも知れませんが、2007年にUBIソフトさんからXbox 360用ソフト『Naruto: Rise of a Ninja』というタイトルが発売されているんですね。欧米で発売された作品ですが、ゲームのおもしろさはもちろん、日本語ボイスへの対応など、ファンをしっかりと意識された内容で、いまでもUBIソフト モントリオールスタジオは我々のライバルだと思っています。当時、彼らが欧米の『NARUTO -ナルト-』ファンに向けてゲームを作ってくれるならそれでいい……と思っていたのですが、正直あのUBIソフトのモントリオールスタジオが『NARUTO -ナルト-』のゲームを作るっていうのは心穏やかではなかったです。そのとき、はっきりと「我々がつぎのステージで戦わないといけないのはこのレベルの相手なんだ」と認識しました。同時に『ナルティメットストーム』で我々は世界を相手に戦わなければならない、というスイッチを入れてくれたんですね。もともとバンダイナムコゲームスと話しを進める中で、これからの『ナルティメット』シリーズは世界を相手に売らなければならないタイトルだから世界を意識しようという話が出ていたんです。『ナルティメットヒーロー』3部作、『ナルティメットアクセル』までは日本国内のお客様がいちばん。だからこそ、アニメの展開に合わせて作っていました。アニメの展開に合わせずに作ったのが『ナルティメットストーム』シリーズ。ターゲットを本当の意味で世界に置いたのは『ナルティメットストーム』からなんです。日本では2008年発売でしたが、欧米はサンクスギビング(感謝祭)に合わせて、日本より4ヶ月前の2007年の秋に発売されたんですね。そこから一気に評価が上がって。なんでもそうなんですけれど、人から褒められるとクリエイターって調子に乗るんですよ(笑)。「俺ら間違ってないじゃん! 合ってたじゃん!」となったときのサイバーコネクトツーは強いんです(笑)。
 でも、調子に乗るというのはクリエイターとしては大事で。「あってたじゃん、正しいじゃん」となったときに心のタガがいい方向に外れましたね。そういった経緯を経て『ナルティメットストーム』は初めての世界市場タイトルということを意識し、オープンワールドを作ったわけです。木ノ葉の里はオープンワールドで、自由に動き回れるアクションを用意しつつ、欧米の方たちはストーリーにあまり興味がないというところも考慮し、バトルに特化した内容にしたんですね。正味な話、日本では売らないって言われたこともあって。でも、蓋を開けてみたら超アニメ表現が評価され、欧米でものすごく話題になった。人間というのは単純で「これは日本でも売れるのでは?」となり、4ヵ月後に日本に逆輸入という形で販売されることになったんです。でも『ナルティメットストーム2』のときのプロモーションは謝罪から入ったんですよ。なぜかというと、『ナルティメットストーム』のプロモーションで世界中を回ったときに、現地のファンから怒られたんですね。「僕らの大好きな『NARUTO -ナルト-』のストーリーはどのように表現されているんですか?」とファンから尋ねられた際、「ストーリーを楽しみたければアニメやマンガを見ますよね。ゲームシステムの質問をしなくていいんですか」と返したら、「『NARUTO -ナルト-』の魅力的な世界観、破天荒ですごいストーリーを体感したいんだ」と言われたんです。このファンからの意見を大切にして、『ナルティメットストーム2』では考えを切り替えて開発を行いました。我々が考えている『NARUTO -ナルト-』の魅力は、やっぱりキャラクター。プレイアブルキャラクターの表現に軸足を置いているんです。もうひとつは、『ナルティメット』シリーズでやってきたことなのですが、我々は『NARUTO -ナルト-』の物語も大好きなんです! 超おもしろいんです!! あのドラマが、あの戦いが、我々は大好きなんですね。その部分をゲームで表現すべきだということをファンから教えられたわけです。『NARUTO -ナルト-』のアクションと物語、どっちも楽しめるのが『ナルティメット』だったので、『ナルティメットストーム2』ではその方向でいこうと。そこで先ほどの『ナルティメットストーム2』のプロモーションが謝罪ツアーだったという話に戻るのですが、「みんなのこと勘違いしてた、ごめん!」と。物語、ドラマを大切にしながら、ひとりでも多いプレイアブルキャラクターを用意し、ボスバトルを含めた超アニメ表現をすべてやる。これらを実現したことで、世界で150万本以上売れたわけです。

――そういった経緯があったんですね。マンガではマンガの表現、アニメではアニメの表現があり、だからこそゲームではゲームでしかできない表現を追求されてきたのだと思っていました。

松山 もちろんそういった部分もあります。考えかたとしてはもちろんそうなんですけれど、流行に乗っていると、いつかブームは終わるんですよ。そうなったときに、流行っていないから『NARUTO -ナルト-』のゲームをやらない、ではなくて、ゲームがおもしろいから『NARUTO -ナルト-』のゲームをやる、と言ってもらわないと意味がないんです。極論を言えば『NARUTO -ナルト-』じゃなくても選んでもらえる1本にする、という考えが必要なんです。そうすることで『NARUTO -ナルト-』ファンはもっと喜んでくれるわけです。