2015年3月18日に正式稼動を開始した、アーケード用対戦格闘ゲーム『鉄拳7』。正式稼動を記念して、バンダイナムコゲームスの原田勝弘勝弘氏にインタビューを試みた。

●対戦格闘ゲームのさらなる普及を目指して

 2015年3月18日に正式稼動を開始した、バンダイナムコゲームスの対戦格闘ゲーム『鉄拳7』。アーケード用の対戦格闘ゲームとして初めてオンライン対戦に対応しており、先行稼動の時点で多くのファンがプレイを楽しんでいる。今回は正式稼動を記念して、バンダイナムコゲームスの原田勝弘氏にインタビューを試みた。キャラクターの追加を始め、注目の内容が満載となっているので、ぜひチェックしてほしい。
(※本インタビューは、週刊ファミ通2015年4月2・9日合併号(2015年3月19発売)に掲載された内容を加筆・再編集したものです。)

バンダイナムコゲームス
鉄拳シリーズ プロジェクトディレクター
原田勝弘氏
 ゲームディレクター、プロデューサーから営業、広報的役割まで担うプロジェクトディレクター。各種イベントも積極的に展開し、ファンに親しまれている。また、話題作の『サマーレッスン』や『ポッ拳 POKKEN TOURNAMENT』も開発中。(文中は原田)

――原田さんのTwiter(@Harada_TEKKEN)などを拝見しますと、先行稼動はたいへん好評だそうですね。実感としてはいかがですか?(※本インタビューは正式稼動前に実施された)
原田 ユーザーの数だけ評価もさまざまなので、ひと言ではまとめきれないけど、店舗間通信対戦に関してはおおむね好評をいただいているよ。インカム(ゲーム機に投入された金額)が計れるので、そこから年間の収益も予想できるんだけど、今回の先行稼動でとくに意外だったのが、平日と土日でインカムにほとんど差がなかったこと。つまり、平日でも土日並みにプレイされているということで、しかも『鉄拳7』の場合、これまでのシリーズの中でも最高のインカムを記録し、先行稼動の期間中、数値が右肩上がりで伸び続けた点も印象的だったね。

――それは大成功ですね! やはり、オンライン対戦に対応したからなのでしょうか?
原田 それは大きいと思う。通常、インカムの最高記録は東京になることが多いけど、『鉄拳7』は地方で出たことに驚かされたよ。いままでは、対戦がしたくてゲームセンターに行っても、相手がいなくてできないということがあったけど、『鉄拳7』ではいつ行っても、全国のプレイヤーと対戦できるようになっている。そこがファンの皆さんの満足度につながったんだろうね。

――私は田舎育ちなので、ゲームセンターに行っても対戦相手がいないことが多く、かなり難儀しましたが、オンラインだと対戦相手に不足することがないのはうれしいです。
原田 平日の朝や、仕事帰りの時間帯に通う人も増えて、ゲームセンターそのものの活性化にも結びつくし、そう言ってくれるとうれしい。地方のゲームセンターには、まだまだ伸び代があると思っているので、そこを『鉄拳7』で盛り上げていきたいね。

――ただ、対戦格闘ゲームでのオンライン対戦は、難しいところもあったのではないでしょうか? 家庭用ではスタンダードになっているとはいえ、通信ラグの問題などもありますし。
原田 店舗間通信対戦に関しては、じつは『鉄拳5』のころから案としてはあったんだよ。

――そうなんですか! 『鉄拳5』は2004年稼動ですから、かなり前から構想があったんですね。
原田 そうなんだよ。ただ、当時はインフラがまだ不十分で、インターネットに対応している店舗が少なかった。『鉄拳』のためだけに投資を強いることはできないし、何よりも、地域ごとのネットワークの速度に差があったので、スムーズに対戦できる環境が作れなかったんだ。

――光通信がそこまで普及していなかったですものね。
原田 それともうひとつ、開発チームの中では「ユーザーがゲームセンターに来るのは、直接いろんな人と交流したいから。そこにあるコミュニティを求めてやって来るのだから、無理やりオンラインの要素を入れる必要はないんじゃないか?」という考えが主流だったことも、実施が先延ばしになってしまった理由のひとつなんだよ。

――それが、このタイミングで実現に至ったことには、どのような理由があるのでしょう?
原田 時代の変化に気づいたんだよ。あれは『鉄拳6』の展開がひと段落ついたころかな。もともと、地方のゲームセンターを盛り上げたいという思いがあって、定期的にイベントを開催したり、店舗ごとにライブモニターを設置して、各地域のNo.1プレイヤーを選出したりしていた。そうして全国的にゲームセンターを活性化させないと、対戦格闘ゲームは盛り上がらないからね。その甲斐あって、『鉄拳5』や『鉄拳6』のころにはようやく、『鉄拳』の知名度を上げることができたと思っているんだけど、それと同時に限界も感じていて。設置台数は対戦格闘ゲームというカテゴリーではどのタイトルよりも圧倒的に多かったのもあって、これ以上の盛り上がりを作るにはインターネットにつなげるしかないと、改めて考えるようになったんだよ。

──なるほど。行き詰まりのようなものもあったと。
原田 ただ、そのころはもうインターネットも普及していて、全国のどこにいてもラグなくスムーズにデータのやり取りができるようになっていた。それで満を持して、『鉄拳7』で店舗間通信対戦を実装したんだよ。

――インフラの普及と、盛り上げにインターネットを活用したいという原田 さんの思いが募ったタイミングが合致したわけですね。
原田 そうだね。あと、プレイヤー層の変化も大きかったね。『鉄拳』は20年続いているシリーズなので、メインでプレイする層も時代とともに変わっているんだよ。いま、もっともプレイしてくれている10代~20代前半の子らは“第4世代”と言われているんだけど、この世代の子は「目の前の人に乱入はするのもされるのもちょっと嫌」と言うんだよね。俺たちの世代は乱入なんて当たり前だったけど、いまは、「強い人に乱入されたくない」というだけでなく、「自分が乱入することで目の前の相手がどう反応するのか?」と思ってしまう人がいる、というのがわかったんだよ。

――それはなかなかのジェネレーションギャップですね。でも、乱入した相手が、怖い人だったらどうしよう、みたいなことを考えるっていうのは、確かにわかります。

原田 でも、その点オンライン対戦なら気兼ねなくプレイできると。自分の腕前と同じくらいの相手をコンピュータがマッチングしてくれるし、何より相手の顔を見ずにプレイできるのが、若い世代には心地いいみたいだな。

――そのオンライン対戦に関して、具体的にお伺いしたいのですが、通信ラグ軽減のための工夫などはされたのでしょうか? よく「ネットコード(インターネット通信の部分を司るプログラム)の書きかたが悪いせいだ」なんて言われますが……。
原田 いやいや、ネットコードの書きかたをちょっと変えたらラグがなくなるなんて、そんな単純なことじゃないよ。鉄拳は格闘ゲームの中でもっともキーデータの量が多いタイトルだし、そんな魔法みたいなコードなんてないんだよ。表向きは何でもネットコードのせいにすれば楽だし、わかりやすいキーワードだから、よくわかってない人ほど使いたがるけどね。それよりも、ゲームそのものの構造をオンライン対戦向きにデザインするほうがよっぽど重要だね。たとえば、ボタンの入力から1フレーム(格闘ゲームの時間の単位。『鉄拳7』の場合は60分の1秒)で成立する技があるとするじゃない? でも、オンラインを介した場合は、必ず数フレームのラグは生まれるんだよ。

――そりゃそうですよね。物理的に遠い距離にデータを送っているんですから、時間はかかります。
原田 だから、開始1フレームで成立する技は、オンライン対戦は絶対にラグの影響を受けちゃうんだ。これは極端な例だけど、オンライン対戦に対応するということは、そういうことも含めてゲームをデザインしなきゃならない。このあたりはほかの格闘ゲームタイトルの開発者からも最近よく相談されるようになったんだけど、やっぱり皆同じ悩みを抱えてる。

――では、『鉄拳7』ではどういった工夫を?
原田 たとえば、パンチを打つときなど各アクションの前に、ほんのわずかな溜めを用意して、ラグを感じさせない工夫とかもあるね。それで、ラグがあったら、さらにパンチのモーションの中間を飛ばすという理論も持っている。つまり、ボタンを入力して技が成立するまでの時間は同じにするために、そのあいだのモーションで調整をかけているわけだな。だが、それ以上にシステム上工夫しているところは多い。ちなみに、『鉄拳タッグ2』と『鉄拳7』は基本同じような工夫をしている、レスポンス面ではじつは前作と変わらないから、毎回新作が出るたびに「もっさりした」という人は残念ながら間違いだね、データで示せるよ。むしろ改善された部分が多いぐらい。