第3回のテーマは“セキュリティ”!

 シリアスゲームジャム実行委員会が主催するイベント、“シリアスゲームジャム”。第3回となる今回は、2015年2月21日~22日の2日間にわたり、都内の株式会社ラック内のスペースを会場として開催された。そのイベントの模様を、最終日の作品発表・表彰式をメインにレポートしよう。
 今回のタイトルは、「ゲームの力で世界を救え!第3回シリアスゲームジャム」。テーマは、小中学生向けの“インターネットの安全な使い方を学ぶゲーム”の制作だ。ジャムにはゲーム開発者、学生、アドバイザーのサイバーセキュリティ専門家など、36名が参加。5つのチームに分かれて、2日間という短い期間で、セキュリティを題材としたゲーム制作にチャレンジした。

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▲限られた時間の中で、各チームが真剣にゲーム作りに挑んだ。
▲白版に細かく書かれた、ゲーム完成までの作業フロー表。かなり本格的だ。

 ゲームジャムとは、簡単に言うと、その場に集まったメンバーで即席のチームを組み、限られた日時の中で、ゲームの企画から開発までを行なっていくイベントだ。ただしここでは、頭に“シリアス”という言葉がつく。その意義について、イベント実行委員会の代表である、東京工科大学メディア学部准教授・岸本好弘氏は、以下のように語ってくれた。
 「シリアスゲームとは、単に娯楽としてのゲームではなく、教育など、生活に役に立つゲームを指します。この概念は北米や欧州では広く受け入れられていて、とくにオランダあたりでは盛んなのですが、日本ではまだまだ浸透していないのが現状です。ですので、こうしたイベントを通じて、参加者の方にはシリアスゲームにより興味を持ってもらいたいですし、メディアに取り上げられたりすることで、幅広くアピールできればと思っています」(岸本氏)。
 岸本氏によると、日本にシリアスゲームが浸透していない背景には、いわゆるゲーム先進国であることが要因のひとつにあるという。つまり、ゲーム先進国ゆえに、エンターテインメント性に長けたゲーム制作に優れたぶん、シリアスゲームに関しては遅れを取ったというワケ。また、国全体としての取り組みの姿勢も違うそうだ。
 「海外諸国では、国や自治体が資金を出すケースが多いのですが、日本ではそんな土壌はまだありません。また大手ゲームメーカーも、社会的意義は認めるにせよ、それが実際の利益にすぐつながるかという点では、なかなかこのジャンルにおいては、積極的にご協力いただけない状況です」(岸本氏)。
 そうした現状において、この“シリアスゲームジャム”は、極めて貴重なイベントであると言えよう。そして、開発2日目の午後4時。いよいよタイムアップとなり、イベントは、各チームの作品プレゼンテーション、そして優秀作品表彰式へと移った。

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▲ようやく作業終了のときが。カウントダウンとともにみんなでバンザイ!
▲会場にあった立て看板。これはマスコットキャラの“セリちゃん”だ。

5作品から最優秀賞作品が決定!

 作品のプレゼンテーションは、各チームの持ち時間が5分。短い中で、作品コンセプト、プレイデモなどを、5チームがそれぞれPCで発表するスタイルで進行した。その後は実行委員会メンバーによる選考タイムをはさみ、表彰式となった。

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▲プレゼンタイムでは、5チームそれぞれが、制作したゲームを力強くアピール。

 審査の結果、最優秀賞作品となったのは、『Bit Bite』というゲーム。ワンクリックでの詐欺にポイントを絞った内容で、敵がワラワラと湧いてくる演出により“やってしまった感”をうまく出せたことが、高い評価を得たようだ。
 受賞作品について、岸本氏は、「子どもたちに、“怖い!”という体験をさせることは大事。ネットで変なことをすると怖い目にあうというメッセージが、いちばん伝わっていたのが『Bit Bite』だとする意見が多かったです」とコメント。それを受けて、制作チームのリーダーは「ゲームは疑似体験を通してメッセージを伝えるメディアだと思っています。それを最前面にして作りました。ありがとうございます!」と受賞の喜びを語った。

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▲司会進行も務めた、イベント実行委員会代表の岸本氏。本イベントの主催者だ。
▲最優秀賞に輝き、コメントを語る『Bit Bite』開発チームのメンバーたち。
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▲敵を探して、スポイトで吸い取るような設定のゲーム。失敗すると、敵が大挙襲来してゲームオーバーだ。

今後は効果を検証するステージに!

 表彰式の終わりとともに、イベントもここで終了。続いては、参加者による懇親会となったが、その一角では開発されたゲームの試遊台コーナーも設置され、ほかのチームが作ったゲームをプレイする人々の姿も多く見受けられた。
 大盛況となった今回の“シリアスゲームジャム”だが、岸本氏によると、ここが着地点ではないという。では、その後の展開とは?
 「実際にこうしたゲームが役に立つか、効果があるのか……? それを検証するステージに進みたいですね。たとえば小中学校に赴いて生徒の方々に遊んでいただき、データを取って効果を証明するなど、展開を広げていきたいと思っています」(岸本氏)。
 シリアスゲームは、日本ではまだなじみのないジャンルかもしれないが、その可能性は大きく広がっている。今後もこうしたイベントで、その認知度がさらにアップしていけば、ゲーム業界全体の底上げにも大きく繋がっていくはずだ。

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▲イベントの最後には、参加者全員で記念撮影するシーンも。
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▲試遊台コーナーでは、5チームが制作したゲームが自由にプレイできた。