“動き”や“現実感”にこだわった『レジェンド オブ レガシー』のキャラクターデザイン――平尾リョウ氏インタビュー【完全版】

ニンテンドー3DS用ソフト『レジェンド オブ レガシー』(2015年1月22日発売予定)。週刊ファミ通2014年12月11・18日合併号に掲載された、平尾リョウ氏のインタビュー完全版。

●ゲーム性も加味して作り上げられたキャラクターデザイン

 ニンテンドー3DS用ソフト『レジェンド オブ レガシー』(2015年1月22日発売予定)。週刊ファミ通2014年12月11・18日合併号では、同作でキャラクターデザインを務める平尾リョウ氏にインタビューを敢行。そのデザインに関するこだわりや、キャラクターデザインを担当することに至った経緯を掲載した。しかし、誌面に掲載しきれなかった数々のエピソードがまだ残っている……! そこで、ファミ通.comにて平尾リョウ氏のインタビュー完全版を掲載。どのようにして、『レジェンド オブ レガシー』(以下、『LL』)のキャラクターデザインが完成していったのかを、このインタビューを通してお届けしていく。

■歴史をベースにした衣装デザイン

■平尾リョウ氏
スクウェア・エニックスにてデザインや絵コンテ制作に従事。フリーになってからは、マンガ『放課後カタストロフィ』を連載中。

──平尾さんは、いつごろから『LL』に関わっていらっしゃるのですか?
平尾リョウ(以下、平尾) 2013年の5月からですね。企画がスタートしてすぐに、“キャラクターデザインが決まっていたほうが、みんなの意識がまとまりやすい”ということで、早めの段階で最初のデザインを用意しました。

──その時点ではどこまで描き込まれていたのでしょうか?
平尾 ひとまず、ミュルスとビアンカをさまざまな頭身で描き、デフォルメの基準を割り出しました。装飾の細かさなども、このときのデザインが基準になっています。それと、フィールドやダンジョンを探索するゲームだとお聞きしていたので、引いた視点でもキャラクターがどこにいるかわかるように、ワンポイントを付け加えることを心掛けました。ミュルスなら“アホ毛”と呼ばれるトサカのような髪、ビアンカなら髪飾りの向きで、どちらを向いているかわかるようにしています。

――360度、どの面から見ても大丈夫なようにデザインされているんですね。
平尾 もともと、キャラクターのモーションを考えたり、作ったりする仕事をしていたので、キャラクターデザインは3Dモデル化を前提に行いました。関節の位置や装飾品の揺れかたを明記しておくだけでも、モデルに起こすときの作業がだいぶ楽になると思ったもので。

――それは制作側も楽だったでしょうね。
平尾 実際に、開発会社からは「非常にやりやすかった」との声が届いたと聞いています。ちなみに揺れものに関しては、最初の打ち合わせで「キャラクターの衣装にマントはアリですか?」と相談させてもらいました。ガーネットは騎士なので、どうしてもマントを着せたかったんです。あと、エロイーズは地べたにつくような長いスカートを履かせたかったので、これも相談しましたね。最初は武器だけでなく、衣装も自由に交換できるシステムにする案もあったのですが、そうなると衣装と武器がお互いに干渉してしまい、見た目のバランスがどうも悪くなってしまって……。カスタマイズ要素を“武器を持ち換えて遊ぶ楽しさ”だけに絞り込むことで、各キャラクターの衣装は現状のデザインに落ち着きました。

──キャラクターの衣装は、現実の歴史をベースにデザインされているそうですが、そこにはどんなこだわりがあるのでしょう?
平尾 デフォルメだからこそ、地に足のついた現実感のあるデザインにしないと、作品の世界設定から浮いてしまうと思ったんです。ゲームデザインの小泉今日治さんとも相談して、東ローマ帝国のビザンチン様式をベースに衣装デザインをすることにしました。

──硬派な世界設定を維持しつつ、デフォルメするのは難しいのでは?
平尾 どこまで表現するべきかは、ディレクターの松浦正尭さんと打ち合わせをしつつ、決めていきました。たとえば武器の場合、現実の剣には柄頭に“ポメル”という重りがついていて、これがあるから刀身の重さに振り回されずに剣を振るうことができるんです。このポメルのように、“それがあるからこそ本物っぽく見える”部分は、デフォルメした後もしっかりと残すようにしています。

──キャラクターデザインのほかに、関わられた部分というのはありますか?
平尾 モーションの素案も提案させていただきました。立ち絵だけだと、キャラクターの性格やしゃべりかたまでは伝わりませんから。そこでモーションの一覧を作ったんです。剣を構えるにしても、ビアンカならスッと立つのに対し、ガーネットなら腰を落として、基本に忠実な構えかたをする……といったように、一覧があれば、それぞれの個性がスタッフ間で共有しやすいと思ったので。

──なるほど。実際に動いているキャラクターは、もうご覧になられましたか?
平尾 かわいいなと思いながら拝見させていただきました(笑)。じつは3Dモデルの作成中から、何度か確認はさせてもらっていて、その都度、「シルエットをなで肩に設定する」などのすり合わせをしていきました。その甲斐あって、開発を担当するキャトルコールさんの技術力もあり、もとのデザインが再現された3Dモデルができ上がりました。

――いろいろな部分で平尾さんの個性が発揮されているのですね。
平尾 ほかにも、フィールド上の敵のシンボルなんかもデザインしました。NPCを考えるついでに。主人公を追い掛けてくるときのアクションなど、モーションも併せて考えましたね。鳥や獣、昆虫など、いろんなパターンがありますが、いずれもワンポイントを目立たせることを強く意識したデザインになっています。人型の敵なら上半身が発達したマッチョなシルエット、鳥型の敵なら翼を大きく描いて、遠くからでも羽ばたいている動きがわかるようなシルエット、といった具合です。

――ワンポイントを目立たせることには、どのような意味があるのでしょう?
平尾 スクウェア・エニックスに所属していたころ、モンスターデザインを担当されていた先輩から、“モンスターはひとり一芸”だと教えていただきまして。つまり、防御力の高いモンスターなら鎧を着ている、素早いモンスターなら流線型の体をしている、というように、その特性に合ったデザインにしたほうがモンスターの個性は際立つ、ということです。力の強い敵ならとにかくマッチョに描いて、それ以外の要素は徹底して省く。モンスターのシンボルに関しては、このスタイルで対応させていただきました。

■至上命令は全員が主人公であること

──7人のキャラクターのデザインには、どのようなコンセプトがあるのでしょう?
平尾 とにかく“全員が主人公”に見えることを意識しました。一般的なゲームなら、最初に決定したミュルスを基準に、振り幅の広いキャラクターを作っていくのですが、それだと見た目が“仲間キャラ”になってしまい、主人公に見えなくなってしまうんです。振り幅は最小限に留めつつ、キャラクターにバリエーションを作るという作業はたいへんでしたが、いい勉強になりました。

――こういった形でのオーダーは珍しいのでは?
平尾 めったにないですね。ただ、コンシューマーゲームのRPGの場合、いざ遊ぶとなると、その世界に入り込んで、ひとりで黙々とプレイされる方が多いと思うんです。そこで選べるキャラクターが7人もいれば、自分に合った主人公がきっと見つかるでしょうし、没入感も大幅にアップするのではないでしょうか。寡黙なミュルスに対し、リベルやフィルミアを主人公にした場合は、終始にぎやかな雰囲気でストーリーが展開するので、キャラクターごとの細かいセリフの違いや、多彩なパーティーの組み合わせなどを楽しんでいただけるとうれしいですね。

――基準になったキャラクターという意味でも、いちばん描きやすかったのはミュルスですか?
平尾 ミュルスは、もっとも束縛がなく描けたキャラクターですが、そのぶん、冒険した点も多かったです。精霊使いということで、“精霊の存在を感じる=大気に触れる肌の面積を増やす”といった方向性にして、素足を大きく露出したデザインにしてみたところ、これが意外と高評価をいただきまして。後は衣装も、隙間のある風通しのいい素材で統一し、風になびくようにバンダナも巻きつけました。

――各キャラクターのデザインで、こだわりの光るポイントを教えてください。
平尾 ビアンカは“記憶喪失の少女”ということで、全体的に透明感のある衣装にしました。一見すると地味に見えますが、じつはさまざまな色を散りばめた、おもしろい配色になっています。ガーネットは、中世ヨーロッパの“王女編み”という髪型にしてみました。騎士であることや頑固な性格を表すように、全体的に古風なデザインに仕上がっています。エロイーズは、初期のころは“怪しげな魔女”といった風貌だったのですが、打ち合わせを重ねていくうちに、かわいらしさも取り入れたデザインに変わっていきました。女性キャラクターの中では年長ですが、お姉さんキャラにはしたくなかったので、“かわいらしさ”を意識的に取り入れました。セクシーさとかわいらしさが融合した、キャッチーなデザインというのを目指してみました。片目を隠したミステリアスな雰囲気は、初期デザインの名残です。

■ミュルス

■ビアンカ

■ガーネット

■エロイーズ

――男性キャラクターはいかがですか?
平尾 オーウェンは、松浦さんから“清潔感のあるオヤジ”というオーダーがありまして。ファッション誌を参考にしながら、鎖帷子の下に着るシャツの襟を立てて、現代風にアレンジしてみました。リベルは、もともとは水をイメージした青色の衣装を着た、大人しい性格の青年だったのですが、その設定ではミュルスと被るため、急きょ路線を変更。10代のユーザーさんを意識して、明るく活発な雰囲気にしたキャラクターです。個人的にも“リバティ=自由”をもじった名前や、太陽を感じさせる配色は気に入っています。フィルミアは、スタッフにカエル好きが多かったことから生まれたキャラクターです。最初は、もう少しシンプルなデザインだったのですが、描き直すうちに装飾がどんどん増えていって。“カエルの王様”ではなく“王子様”なので、まだ尻尾が残っているところがこだわりです(笑)。

■オーウェン

■リベル

■フィルミア

──小林智美さんにより、まったく異なるテイストのキャラクターイラストが描かれていますが、ご自身のデザインされたキャラクターがこうしてアレンジされた姿を見て、どう思われましたか?
平尾 光栄ですね。僕自身、小林さんがキャラクターデザインを手掛けられた作品が大好きで、それがきっかけでゲーム業界に入ったくらいですから。そんな、僕にとってレジェンドな方とコラボレーションできたことが、本当に夢のようで。とにかく「光栄です」としか言いようがないですね。

──とくに気になるポイントはありますか?
平尾 キャラクターの個性を大事にしつつも、デザインで遊ばれている点が印象的ですね。僕が描いたデザイン以上に装飾も豪華で、アレンジや別の解釈も大量に盛り込んでくださって。見ているだけで楽しい気分になる、アート作品になっていますね。

――それでは最後に、読者の皆さんに向けてメッセージをお願いします。
平尾 個性的なキャラクターたちが、イラストそのままの姿で動き回る、本当に技術力の高い、おもしろいゲームに仕上がっています。RPGとしてのおもしろさはもちろん、“絵を動かすことができる感覚”も、存分に楽しんでいただきたいですね。ちょっと難度は高めですが、やられポーズにもさまざまなバリエーションがあるので、そちらも楽しんでいただきつつ、トライ&エラーで何度もチャレンジしてもらえるとうれしいです。隅々までキャラクターの魅力が詰まった作品ですので、発売を楽しみにしていてください!


レジェンド オブ レガシー
メーカー フリュー
対応機種 3DSニンテンドー3DS
発売日 2015年1月22日発売予定
価格 5980円[税抜](6458円[税込])
ジャンル RPG
備考 ダウンロード版は5980円[税抜](6459円[税込])、ディレクター:松浦正尭、イメージイラスト:小林智美、ゲームデザイン:小泉今日治、キャラクターデザイン:平尾リョウ、背景美術:筒井美佐子、モンスターデザイン:小島雄一郎、下釜陵志、コンポーザー:浜渦正志、サウンドエディター:齊藤賢一、テキストディレクション:加藤正人、ナレーション:白鳥英美子、タイトルロゴデザイン:川口忠彦、ムービーデザイン:山形周平

(C)FURYU CORPORATION 2015 All Rights Reserved. ※画面は開発中のものです。※ニンテンドー3DSの3D映像は、同本体でしか見ることができません。画面写真は2D表示のものです。