おもにグラフィッカーに向けたゲームジャムというのはめずらしい

 2014年10月25日(土)~26日(日)、東京・渋谷ヒカリエにあるNHN PlayArtのオフィスにて、ゲーム開発イベント“PlayArt ゲームジャム”が開催された。ゲームジャムとは、会場に集まった参加者でその場限りのチームを作り、限られた時間でひとつの作品を作り上げるゲームイベント。2013年10月に開催された第1回が好評を博したため、第2回が開催される運びとなった。

 2013年は、世界で一般的に行われているゲームジャムにならって、1泊2日で作品を制作するスタイルがとられたが、今回は1日の終わりに一度解散し、2日間で合わせて30時間で1作品を開発するという制限が設けられるスタイルで執り行われた。イベントのコンセプトが、おもにグラフィッカーに向けたものということで、作品のジャンルはビジュアルノベルゲームに限定された。

 事前の募集により、プロアマ問わず約50名が参加。大半がゲームを学ぶ専門学生だが、年齢層は最年少が19歳、最年長が50代という幅広い顔ぶれとなった。一般的なゲームジャムは、どちらかというとプログラマーに向けたイベントになりがち。ところが、今回はゲームエンジン“Unity”上で動くアドベンチャーゲーム開発用ツール“宴”を使って、プログラミングの知識があまりない人でも比較的簡単にゲームが作れるということもあり、プログラマーとデザイナーが半々の割合で参加するというめずらしいゲームジャムとなった。

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▲記者が訪れたのは、締め切り直前。完成してもしなくても、参加者全員に作品をプレゼンし、試遊会へ提出しなくてはならないため、開発用の部屋では緊迫した空気が漂っていた。

1等賞はどこ? とか、そういうのはナシ! みんなが作った作品をみんなで称える

 制限時間である30時間が過ぎ、各々のチームが手掛けた作品を発表するプレゼンタイムがスタート。テンプレートシナリオとして『竹取物語』などの昔話や太宰治の『走れメロス』などが言い渡されていたが、ふたを開けてみれば完全オリジナルの作品が大半を占めた。なお、ここで紹介する作品はGoogle playなどで実際に遊ぶことができるものもあるので、気になった人はぜひ探してみてほしい。

■Aチーム(2人組) 『Melos』■
 『走れメロス』のストーリーをわりとそのままに、乙女ゲームに仕立てた。ふだん声優をしているというふたり組の男性が手掛けたため、全編ボイスつきの演出が実現した。聞けば、登場人物全員の声をひとりで演じ分けたという。

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▲入魂のトップ画面。「ここでペース配分を間違えて、あとはガタガタです。“表紙サギ”というわけではないですが……」という開発者の発言に、会場から笑いが。

■Bチーム(3人組) 『人狼 ザ・サスペンスノベルゲーム』■
 『人狼』をテーマにしたサスペンス。雪山の館を舞台に、そこに閉じ込められた7人が殺人事件の犯人を捜していく。主人公自身も容疑者のひとりであるため、さまざまな疑いがかけられる。重要だと思われる会話で“パッション”ボタンを押し込み、みんなの信頼を得ることができれば疑いは晴れるが、使いどきを間違うと犯人とされ、ゲームオーバーになるシステムだ。

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▲パッションは1日が経過すれば回復する。ちゃんと話を進めることができれば、3日間のシナリオが楽しめるという。

■Cチーム(3人) 『ときめき☆妖怪学園』■
 妖怪の世界に連れていかれた男の子が、そこで出会うJK妖怪たちとのイチャイチャを楽しむ。チームメンバー3人のうち、ゲームジャム初参加という紅一点が、「自分のエロゲーの趣味が炸裂した。ゲームとしては『クラ○ド』っぽいものを目指した」とぶっちゃけ、チームメンバーの男性に「せめてギャルゲーと言って!」とツッコまれるひと幕も。ツッコんだ彼はゲームジャムは過去に5~6回参加している経験者。「“宴”が使えるから簡単だとなめていた。正直いままででいちばんキツかった。けれど、みんなで協力していいものが作れて楽しかった」と締めくくった。

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▲この作品のために徹夜で書き上げたテキストは20000字以上。「自分たちの本能のおもむくままに作れたが、その反面、ぶち込みすぎた」とのこと。

■Dチーム(5人組) 『Siri+』■
 iPhoneに搭載されている秘書機能アプリケーションソフトウェア“Siri”と、“アプール社”に支配された近未来の世界でイチャイチャできるというコンセプト。作中に登場する美少女Siriのボイスは、開発したKさんが昨夜ひと晩ひたすらSiriに話しかけ続けて収録した実際のもの。そのリソース数は50個を超えるという、地道な努力が光っている。

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▲アプール社の最高傑作、人型デバイスSiriちゃん登場! という肝心のシーン。が、ご覧のありさま。「……レイアウトをミスしました」とのフォローに会場はドッと沸いた。ちなみに主人公の名前は、“ジョーブズ・小林”。

■Fチーム(6人組) 『殴れ!メロス』■
 開発者いわく、ジャンルは“近代文学ビジュアルノベルバトルロワイヤル”。人質になった親友を助けるクライマックスを含む、『走れメロス』のラスト2000文字部分を抽出してゲームに仕立てている。メロスと親友が「自分のことを殴ってくれ」と言うシーンをゲームに落とし込んでいるため、ストーリーが「殴る」か「殴らない」かで分岐していく。メロス以外は全員殴れる設定になっており、自分のハート(HP)が削り切られる前に、ほかの全員を殴り倒すとハッピーエンドになるのだ。また、原作では最後の3行にだけに登場する“少女”が、本作のヒロインとして大抜擢されているのも興味をそそる。

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▲“宴”を使わず、UI、BGM、SEなどはすべてゼロから作成したとのこと。チームの中にサウンド担当者がいるのは、このチームと後に紹介するIチームのみ。

■Hチーム(?人組) 『です・まあち ~主人公子のねむれない1日~』■
 プレゼン冒頭で「タイトル画面にタイトル名を組み入れる暇もないほど激しい労働を強いられた」、「デバッグ機能がつけられなかった」と語られた本作は、架空のゲームを開発するゲーム。納期までにひたすら進捗をためる“地獄の開発パート”をクリアした後には“地獄のデバッグパート”が待ち受け、失敗すると即ゲームオーバーになるシビアさは、実際のゲーム開発のなんたるかを物語っているようだ。チームメンバーが個別に作り込んだものを、プレゼン時間ギリギリでお互い空気を読みながら組み込んでいったとのことで、ちゃんと動いたのを見て安堵の声をもらしていた。

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▲このチームも“宴”を使わず、イチから開発。室内なのに木の葉が舞うなど、悲壮感が漂う演出も。作品が描いているテーマに共感する(恐怖におののく?)参加者が多かった。

■Iチーム(6人組) 『オタ・サー国の姫君』■
 “オタサーの姫が男の友情を壊すような話”にしようと、発案当初はギャルゲーのノリで作る予定だったが、必要な要素を紐づけていくうちにシリアスな作品になったという。特筆すべき点は、ビジュアルノベルゲームなのに、王位継承のアイテムを求めて3Dダンジョンを探索するアクションパートがあることだ。

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▲シナリオは3部構成。入り組んだ3Dダンジョンをさまようアクションパートは、あくまでシナリオ分岐のひとつにすぎないという。

■Jチーム(6人組) 『災厄のユヴォール』■
 中世ヨーロッパがモチーフ。“ユヴォール”という小国家に新しく就任した王・セイビアが、1年周期で訪れるさまざまな試練を乗り越えながら国家の秘密に立ち向かっていく姿が描かれる。制限時間の関係でシナリオ分岐までは盛り込めなかったが、シナリオを読ませる内容になっているそうだ。登場キャラクターの表情も豊かに描かれていて、堅実な作りだ。また、19歳から50代までの幅広い年代で結成されていたのはこのチームだ。

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▲「一時はキャラクターの腰までしか画面に入らない状態だったこともあった」と、苦労話を披露。

■Kチーム(7人組) 『時間逆転 御伽草紙』■
 とあるおとぎ話をラストの「めでたし めでたし」からスタートさせ、時間をさかのぼって物語をたどりながら、本当に「めでたし めでたし」でよかったのかを考える。イラストレーターが3名、プロのライターがひとりいたため、限られた時間の中であってもきちんと物語を構成し、背景や立ち絵、素材のすべてを手作りできたという。

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▲総プレイ時間は5分とコンパクト。ファイナライズが一般的な製品のクオリティーに近いと評価を受けていた。

PlayArt ゲームジャムの仕掛け人たち

 プレゼンタイムの司会進行を務めたのは、NHN PlayArtでゲームの開発に勤しむ溝口達洋氏とUnity Technologies Japanのコミュニティエンジニア、鎌田泰行氏のふたり。そして、会場の片隅からイベントの進行を見守っていたマッドネスラボ代表の時村良平氏。この3人が、PlayArt ビジュアルノベルゲームジャムの仕掛け人だ。

 大学や専門学校でゲーム開発を勉強していたり、趣味で絵を描いている人が、ゲーム開発に興味はあってもゲームジャムとなるとなかなか参加しづらいところがある。そういう方のために、今回のゲームジャムは“絵が描ければ誰でもゲームにできる”というコンセプトで企画したと語る皆さんに、少しだけお話をうかがった。

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▲左から時平氏、鎌田氏、溝口氏。

――NHN PlayArt ゲームジャムはもともと、新しい才能を発掘する主旨があったんでしょうか。

溝口達洋氏(以下、溝口) そういう方と出会えれば……という気持ちもありますが、いちばんの動機は、ゲーム作りの楽しさを経験してもらいたいというところにあります。自分も10年ほどゲーム開発に携わっていますが、ゲーム開発は本当に楽しいので。

――ビジュアルノベルゲームというジャンルに限定するなど、開発に関するハードルを下げておられましたね。

溝口 ウィンドウズでもMacでも動くUnityというゲームエンジンの、時村さんが作られた“宴”というアドベンチャーゲーム開発用ツールを使えば、簡単でリーズナブルに作れるんですよ。

時村良平氏(以下、時村) “宴”は会話シーンを作るためのツールです。ビジュアルノベルゲームに必要なシステムが入れてあるんですが、3Dアクションゲームの会話シーンだけに利用するなど、さまざまな使いかたができます。

溝口 ゲームを作る際にはさまざまなプログラムをひとつずつ書いていかなくてはいけないんですが、時村さんの“宴”ならエクセルを使って会話のシーンを指定して、セリフを流す場所を決めていけば、プログラムが書けなくてもゲームが作れるんです。

時村 “宴”のコンセプトが、誰でもゲームを作れることだったので。

溝口 ゲームジャムの知識に長けた鎌田さんにもご協力をいただいて、今回はたいへんおもしろい結果になったと思っています。

鎌田泰行氏(以下、鎌田) 僕はふだんWebのディレクションやプログラマーをやっているんですが、土日になるとこういったイベントを主催したりもしています。

――今回の結果をご覧になっていかがでしたか?

鎌田 一般的なゲームジャムで扱うジャンルとまったく違って、ビジュアルノベルゲームを扱うのは、もしかして日本では初めてなんじゃないでしょうか? だから、やってみるまでは本当にどうなるのかわからなかったんです。でも、ここまでゲームらしいゲームを作り上げてくださったので、参加者の皆さんはすごいなあと思います。

「また参加しますか?」の問いかけに、ほとんどが「またやりたい」と返答

 チームで、または個人で。そして、当日即席のチーム編成を希望する人など、自由な参加形式でこの場に集った参加者の皆さん。プレゼンが終了して緊張もほぐれ、食事や談笑をしながらお互いの作品を試遊しているところにコメントを求めた。

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▲プレゼンを見て気になった作品に触れ、開発のノウハウを語り合う参加者の皆さん。主催者側からは2日間の努力をねぎらうように、豪華な食事がふるまわれた。

■Jチーム 『災厄のユヴォール』のチームリーダー■

――参加してみていかがでしたか?

Jリーダー とてもいい経験になりました。徹夜をして朝10時にシナリオを書き終えて……。“宴”を使ったので、シナリオさえ書いてしまえば、あとはどこにBGMやSEを挟むかとかを考えればいいだけだったので、作るのは簡単でしたが、いろいろたいへんでした。2日間ではグラフィッカーさんの作業に限度があったり、シナリオもある程度は端折らなくてはいけなかったりしましたね。でも、僕らのチームはグラフィッカーさんが本当に優秀で、ハイクオリティのCGを描いてくれたのがありがたかったです。

――これからもゲームを作り続けていきますか?

Jリーダー 自分は専門学校に通っているので、こういうゲーム作りのプロジェクトに参加するのは初めてではないんですが、これからも積極的に参加していきたいです。

――印象深かった出来事はありますか?

Jリーダー 自分が書いたシナリオを、チームのみんなが認めてくれたことですね。すごくやる気が出ました。あと、みんなに見られちゃうのはうれしいんですけど、恥ずかしかったです。自分では直視できません(笑)。

■Fチーム『殴れ!メロス』のチームリーダー■

――小説のラスト2000文字だけに焦点を置いてゲームを作ろうと思ったきっかけは?

Fリーダー ビジュアルノベルゲームは、どんな作品でもだいたい同じような画面になってしまいます。差別化を図るならビジュアルかシナリオかのどちらかしかないと考え、埋もれないために、ビジュアルノベルゲームっぽくないものを作ればいいんじゃないかと思いました。抽出したテーマが「殴る」か「殴らないか」というところなので、ストーリーをあまり考えず、妙な分岐もせずに、ひたすら「殴る」か「殴らない」かを選んで進めるようにしたんです。このゲームは登場人物の中で王様だけがかなり強く設定してあるので、殴り返されてしまうと必ずゲームオーバーになりますね。倒す順番をよく考えていかないと、ハッピーエンドにならないという。

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▲会場で注目を集めていた『殴れ!メロス』。なるべく睡眠をとることを目標に、がんばって開発をしたという。

――チームの役割分担を教えてください。

Fリーダー 自分はシナリオとディレクションを担当しました。スクリプターがひとり、プログラマーがふたりいます。また、サウンドを作れる方にBGMとSEをお願いしたら、この30時間で完全オリジナルの楽曲を作っていただいて……。あとは立ち絵が描ける方がいて、その方は不眠不休でがんばってくれました。音楽についてはフリー素材を使おうと考えていたのですが。本職の方ということもあって、1曲1時間程度で作ってくださいました。もともと3曲くらいでいいと考えていたんですが、最終的には5~6曲仕上がっていましたし。僕らもびっくりしました。

――なぜ“宴”を使わずに開発したんですか?

Fリーダー 最初は使うつもりだったんですが、既成のものからUIを変えたり、独自の演出をつけていきたかったので、プログラマーがほぼフルスクラッチでやってくれました。

――ゲームジャムへの参加は初めてですか?

Fリーダー 初めてです。なんとか30時間に間に合うように、ミニマムなものにしようと考えました。「『走れメロス』で殴り合いのゲームにしよう」と提案したら、わかりやすかったようでみんなすぐに理解してくれました。そうやって、最初にイメージの共有をすることはすごく大事だと思いました。オリジナルのシナリオ作る選択肢もあったんですが、そういう意味で『走れメロス』を選んでよかったなと。進捗の管理は、最後の最後までわからなかったですね(笑)。

――参加してみていかがでしたか?

Fリーダー 初対面でお互いの技量がわからないまま、何とか背景を共有しあって最後まで作ろうというのが刺激的というか。最初は「そんなことができるのかな?」って思ってたんですけど(笑)。チームに恵まれたのか、ゲームジャムがそうさせたのかはわからないんですが、いい作品ができてよかったです。

■Kチーム『時間逆転 御伽草紙』のチームリーダー■

――チームメンバーはどのように集まったんですか?

Kリーダー 昨日会った、知らない人と組んだ感じです。グループのうちのいくつかは、あらかじめ複数人で参加しているところもあるんですけど、僕らは全員初対面です。7人いますが、ちゃんとゲームを作ったことがある人はひとりもいない状態でした。

――メンバーの年齢もバラバラのようですね。

Kリーダー 最年少から最年長まで10歳くらいの開きがありますよ。イラストレーターの3人は専門学生だそうです。

――初対面の方とのゲーム作りはいかがでしたか?

Kリーダー あまり大きすぎない目標にしたら、うまくまとまりました。ラッキーだったのは、イラストレーターさんが3人いて、絵や素材をたくさん作ってもらえたことですね。でも反対にシナリオをライティングする人がいなかったので、ふだんライター業をしている自分が担当しました。創作で文章を書くのは趣味の範囲だけで、仕事ではあまりやらないんですが……。シナリオを考える流れで、僕がイラストレーターさんにイラストを発注していきました。そういうなりゆきで、ディレクションもした感じになりました。

――開発には“宴”を使ったそうですね。

Kリーダー はい。制約があっていくつかのアイデアは断念せざるを得ないものもありましたが、実現できる範疇でまとめました。そのあたりはUnityを勉強したいという人や、UI担当の人にうまくやってもらいました。仕事でゲームの記事を書くたびに、「いつか自分でもゲームを作りたい」と思っていたんです。今回は初心者歓迎で……僕のようなド素人とかね(笑)。ゲームジャムの中でもとくにハードルが低そうだったので飛びつきました。

――ハードルは低かったんですか?

Kリーダー そうです。絵を描ける人は絵だけ描けばいい、音楽を作れる人もそう。自分はシナリオぐらいなら書けるだろうと思って参加したんですが、なんだかんだ言ってビジュアルノベルはシナリオを作るのがけっこう辛いものですね(笑)。

――それは、みんなにダメ出しをされたということですか?

Kリーダー いや、その逆で、好き勝手やらせてもらえました。みんなそれぞれの担当に専念していたところもあるので、自分がダメ出しされないぶん、ひとりで悩まなくちゃいけなかったですね。

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▲3人のイラストレーターのうち、犬や飛脚のキャラクターを描いた女性は、「おもしろかったです。自分にできることが限られていても、ほかの方が補ってくれました。自分でもやれるんだという気持ちになりました」と語る。開発途中のキャラクター案も見せてくれました。

 仕掛け人のひとりであるNHN PlayArtの溝口氏が訴えたかった“ゲーム作りの楽しさ”をしっかりと体験した参加者たち。ゲーム開発者を目指す場合、自分でどれだけたくさんの作品を手掛けたかが就職の際にモノをいう場合もある。PlayArt ゲームジャムにて完成した作品は、アプリとしてリリースするのも自由。貴重で有意義な体験をするために、今後ぜひ一度参加してみてはどうだろう。