インタラクティブアートとしても良質な作品が揃った

 2014年9月18日~21日、千葉県・幕張メッセにて東京ゲームショウ 2014が開催。見た瞬間、コンセプトを聞いた瞬間に自分の世界が変わるような感覚を引き起こすようなゲームのアイデアを発掘する目的のイベント“センスオブワンダーナイト2014”が、東京ゲームショウ 2014会場のイベントステージにて行われた。

▲“センスオブワンダーナイト2014”の司会を務める新氏(左)とイザベル・マサボさん(右)。

 今年で7回目となる“センスオブワンダーナイト”。これまでは開催の時間帯が夜で会場の規模も小さめだったが、今回はSCEのスペシャルスポンサードなどもあり、日中のメインステージ開催といなった。選考委員であり、毎年司会進行を務めてきたジャーナリスト・新清士氏も感慨深げだった。

 今回は27の国と地域から過去最多の136作品の応募がよせられたとのこと。その中から選考委員によって選ばれた10作品の檀上プレゼンテーションが、作者自身によってによって行われた。

【プレゼンテーション作品リスト】

■“新しい対戦ゲームの可能性”パート
SpeedRunners (tinyBuild Games・米国)
Push Me Pull You (House House・オーストラリア)
PICOLECITTA (TECO・日本)
8BitMMO (Archive Entertainment・米国)

■“音を探るインタラクション”パート
FILL (YO1 KOMORI GAMES・日本)
DUB WARS (MURA Interactive Inc・米国)
LURKING (DIGIPEN INSTITUTE OF TECHNOLOGY SINGAPOLE・シンガポール)

■“パズルと生み出す物語”パート
Chained (Digipen Team Those Guys・米国)
Expand (Chris Johnson and Chris Larkin・オーストラリア)
Miegakure (mtb design work,Inc.・米国)

 ゲーム内容、プレゼンテーションを加味した選考委員の投票によって決定した、各アワードの受賞作は以下の通り。

■Best Technological Game Award
8BitMMO

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 登録ユーザー数60万人を擁する、シンプルなグラフィックが特徴のMMOゲーム。作者のRobby Zinchak氏は10代の頃『ウルティマオンライン』をプレイして世界中の見知らぬプレイヤーと世界を共有できることに驚き、ひとりでMMOゲームを制作することを決意。周囲からは「クレイジー」と言われたが、高校卒業時にはシンプルな試作品が完成。その後開発を進め、現在の形になったという。運営開始時は地域の人に実際に会ってプレイしてもらいフィードバックを得るなど、地道に草の根レベルの活動をしたという。フィールドはユーザーとの共同作業によって随時拡張され、現在は、実サイズに換算するとイギリスの国土より広くなっているとのこと。「すべてのクリエイターに夢を追ってくださいと言いたいです」(Robby氏)

■Best Game Design Award
Push Me Pull You
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 2対2でボールを奪い合う、4人プレイ専用のアクションゲーム。いっしょにゲームを遊ぶのが好きな仲よし4人組が初めて作った本格的なゲームで、“相棒と協力して戦う”、“草野球レベルの牧歌的なスポーツ要素を採り入れる”をコンセプトに制作されたという。チームメイトで共有する、チームメイトが共有する伸縮変形自在な身体のアイデアは、プレイステーション3用ゲーム『のびのびBOY』を意識したとのこと。

■Best Arts Award
Chained
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 プレイヤーキャラの身体に鎖でつながれた鉄球を駆使してフィールドを進む、パズル要素のあるアクションゲーム。作者たちが大学4年生の時、12人で8ヵ月間かけて制作したとのこと。「環境と(鉄球の)メカニクスを使ってひとつのストーリーを伝える」というコンセプトで、「自分のためにならない負の依存関係を選択し続けるとどのような心理に陥り、どのような人生を歩むことになるか?」といった哲学的なストーリーを表現している。

■Best Presentation Award
PICOLECITTA

 プレイヤーひとりがひとつの画面を見て遊ぶネットワークマルチプレイではなく、子供の頃に夢見た「大勢のプレイヤーがひとつの画面の前に集まって遊ぶ多人数プレイ」を実現させたゲーム。全プレイヤーキャラがゴール地点にたどり着けたらステージクリアーという協力型で、組体操の要領で踏み台を作って高い場所にあるアイテムを取る……などさまざまなタイプの協力プレイが要求される。プレゼンテーション時に実機起動したのは10人同時プレイバージョンだが、実際には100人用ステージも制作可能とのこと。

▲『PICOLECITTA』の作者・TECO氏。10人同時プレイを実証するためにゲーミングパッドを10個接続した外付けUSBハブを持参し、会場を沸かせた。

■Best Experimental Game Award

Miegakure
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 四次元フィールドを舞台にした、シンプルな脱出ゲーム。三次元の知覚では乗り越えられない障壁も、四次元世界からアプローチすれば解法が見つかる……ということを、次元をひとつ落とした例(二次元世界の障壁の三次元的アプローチによる解法)にして丁寧に説明した。本作の開発にはすでに5年が費やされていて、完成時期については「できた時が終わりです」(作者のMark ten Bosch氏)とのこと。

 プレゼンテーション時の観客の盛り上がり(会場入場時に配られた、振るとファニーな音が鳴るおもちゃの総音量)によって受賞が決まるAudience Awardは、『Push Me Pull You』と『PICOLECITTA』の一騎打ちに。観客の決戦投票や選考委員の多数決でも五分五分という“センスオブワンダーナイト”初の事態となったが、最終的には新氏の独断で『Push Me Pull You』に決定した。

▲Audience Awardを受賞したStuart Gillespie-Cook氏は、受賞を喜びつつ「『PICOLECITTA』のほうがおもしろいゲームなので、皆さん是非遊んでください」と謙虚なエールを送っていた。

 今回の総評として、選考委員からは「小さな頃のゲーム体験がもとになっている作品群に新しい流れを感じた」「゛(表面上)見えていないものは何か?゛というテーマが今回のトレンドだった」といった意見が挙げられた。また、「過去はアイデアがいいけどゲームとして未完成なのものが多かったが、今回はじっくり遊んでみたいもが多かった」というコメントから、応募作のクオリティーやそれに伴う選考基準が高くなっていることがうかがえた。実際、Award受賞を逃した作品も、ビジュアライズされた音の波によって周囲の状況を把握する゛エコロケーション゛を頼りに3Dフィールドを探索するサバイバルホラー『LURKIING』や、シンプルかつエモーショナルなピアノ音楽、無段階的に変化するフィールドアニメーション、時おり現れる啓示的な文章によって瞑想的なプレイ体験を得られる『EXPAND』など、インタラクティブアートとしても良質な作品揃い。ゲーム業界のメインストリームのあり方に一石を投じる……という本イベントの役割を説得力ある形で果たせているとの印象を受けた。

 “センスオブワンダーナイト2014”の各アワード受賞作および最終ノミネート作品は、東京ゲームショウ2014のインディーゲームブースにて試遊可能なので、気になる方はお出かけになってみては?