【ファミキャリ!会社探訪(14)】実力派プログラマー集団からパブリッシャーへ! ヘキサドライブを訪問!_08

“ファミキャリ!会社探訪”第14回はヘキサドライブ!

 ファミ通ドットコム内にある、ゲーム業界専門の求人サイト“ファミキャリ!”。その“ファミキャリ!”が、ゲーム業界の最前線で活躍している、各ゲームメーカーの経営陣やクリエイターの方々からお話をうかがうこのコーナーの第14回は、ヘキサドライブ。
 ヘキサドライブは、カプコンでメインプログラマーとして活躍していた松下正和氏が2007年に起業。創立メンバーが全員プログラマーという、バリバリの即戦力デベロッパーとしてスタートした。現在は、東京と大阪に事務所を持ち、家庭用ゲーム機向けから、スマートフォン・モバイル向けまで、クオリティの高い作品をリリースし続けている同社の松下氏にお話を聞いた。


カプコンでの経験を活かして起業へ

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ヘキサドライブ 代表取締役兼CEO
松下正和氏

--まず、松下さんの略歴から簡単に教えてください。
松下正和氏(以下、松下) 1994年にカプコンに入社しました。最初に携わったゲームは、アーケードゲームの『ストリートファイターZERO』で、“アドン”などを作りました。
--20年前というと、まだプレイステーションやセガサターンが発売される前ですね。
松下 そうですね。アーケードゲームのプログラマーとして配属され、その後ずっとプログラマーをしていました。
--カプコンさんを志望した理由は?
松下 もともとゲームが大好きだったのですが、親も理解があって(笑)、ゲームセンターに行きまくっていました。カプコンの第一弾タイトルである『バルガス』から全部プレイしていたくらいでした。それで、好きなメーカーだったカプコンを受けて、入社に至りました。
--最初からゲーム業界を志望していたわけですね。
松下 そうですね。ゲーム業界に入りたくて、カプコンが第一志望でした。入社後は格闘ゲームを作っていましたが、その後、アーケードから家庭用ゲーム機のほうに移ることになりました。ドリームキャストで発売した『パワーストーン2』からメインプログラマーとなり、ほかにメジャーなタイトルだと『デビル メイ クライ3』があります。カプコンを退社する前に担当した最後のタイトルが、Xbox 360で発売された『ロスト プラネット エクストリーム コンディション』です。
 カプコンでは、いろいろな経験をさせていただきました。プログラマーとして大きなプロジェクトに関わっているうちに、「いいゲームを作るのにはどうしたらいいか」と考えるようになりました。当然最初はプログラムの効率をよくすることを考えましたが、メインプログラマーになってからは、プログラマー以外のチーム全体の効率を上げるにはどうしたらいいのか、といったことも考えるようになりました。また、ゲームはプログラマーだけで作っているわけではありません。プランナーやデザイナーなど、ほかの部署の人とうまく連携していくほうが、もっと効率がよくなります。やがて、プロジェクトのマネージメントもするようになり、チームのスケジュールも僕が管理するようになりました。いいゲームを作るには、トライ&エラーの時間をたくさん取る必要がありますし、最終的にズルズルと時間がかかったり、バタバタしてしまうとやはりいいゲームになりませんから、そういったマネージメントはすごく大事だなと思いました。
 さらに上の効率として、今度は人にフォーカスした考えになりました。メインプログラマーを経て、プロジェクトマネージャーとして全体を見るようになってから、現場の意見や不満を聞く中で、よりよい効率で仕事をするためには、待遇や評価、将来進む道について、考えるようになりました。しかし、さすがにいちメインプログラマーでは難しい。だったら、自分でできるようにそうした組織を作ればいいと思ったわけです。カプコンではメインプログラマーとして“やりたい放題”やらせてもらいましたが、さらに自分の理想を追求したいと感じて、2007年にヘキサドライブを設立しました。
--何か具体的なきっかけはあったのですか?
松下 いえ、とくにありませんでした。ただ、いろいろなことをやりきった先に、イメージとして会社を作るという考えだけはありました。“機が熟した”といった感じでしょうか。また、会社の立ち上げメンバーから、「そうした思いがあるならいっしょにやろうよ」と言ってくれたからこそ、会社を作ることができました。その立ち上げのスタッフは、もともとカプコンで僕といっしょにゲームを作ってきたプログラマーたちです。
--起業当初の目標は?
松下 ゆくゆくはパブリッシャーとして、自分たちが理想とする組織を作って、その中で自分たちの作りたいゲームを作る。そういう意味でも、もっともっと大きい会社にしたいと考えています。
--ちなみに、社名の由来は?
松下 “ヘキサ”というのはギリシャ語で“6”を表しています。人間の持つ五感に“心”を加えた“六感”(ヘキサ)を駆動(ドライブ)させる、という意味があります。プログラマー的にも“ヘキサ”、“ヘックス”という単語にはなじみがあったので、“ヘキサドライブ”と名づけました。

プログラムのスペシャリスト集団から、パブリッシャーへの発展

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--起業して7年になりますね。
松下 最初は、起業時に元カプコンの岡本吉起さんに相談した縁で、当時のゲームリパブリックさんの一部に間借りさせていただきました。その後、両社も人が増えてきたので、別の場所で事務所を立ち上げることになりました。当時はプログラマーしかいなかったので、最初はゲームエンジンを作り、ゲームの土台部分を支えるような仕事をしていましたね。その後、スタッフが30人くらいになるまでは、プログラマー集団でした。それは僕も含め、初期のメンバー全員がプログラマーで、新卒を採ってもプログラムしか教えられないということもありました(笑)。ただ、プロジェクトによっては「プログラマーだけが必要」ということもあるので、これまでにやってきた移植案件などでは、プログラマーが多いということは僕たちにとってのメリットでした。
--当初から家庭用ゲーム機の開発をやっていたのですか?
松下 そうですね。Xbox 360やプレイステーション3での開発ノウハウがあったので、ゲームエンジンも最新ハードに対応できるものを作りました。それで最初にヘキサドライブとして受けた仕事がXbox 360版『Rez HD』でした。会社を起こしてから1年以内に発売することができたタイトルなので、僕たちにとっても記念すべきタイトルになりました。それがきっかけかどうかわかりませんが、その後『○○ HD』というようなお話をたくさんいただくようになりました(笑)。
 2010年12月にスクウェア・エニックスさんから発売された、PSP『ザ・サード バースデイ』ですが、これは企画とグラフィックスをスクウェア・エニックスさん、プログラムを弊社が担当しました。これを機に、東京に事務所を開設したのですが、人を集めるという意味からも、東京と大阪に拠点があるというのは、とてもメリットがあると感じています。『ザ・サード バースデイ』も評価していただいて、徐々に僕たちの名前を知っていただけるようになりました。
 つぎにニンテンドー3DSの『メタルギア ソリッド スネークイーター 3D』の移植作業を手掛けました。PS2版『メタルギア ソリッド3 スネークイーター』をニンテンドー3DS用に移植したタイトルですが、PS2用にバリバリにチューニングされたものをニンテンドー3DSに持っていくのは本当に難しくて、たいへんでした(笑)。しかし現在でも、PS2のゲームがニンテンドー3DSできちんと動いているのはこのゲームくらいではないかと思っていますし、グラフィックの出来は、ニンテンドー3DSのゲームの中でもいちばんいい部類のひとつだと思っています。
 そうして、HD版や移植に対するノウハウが溜まってきた中で、カプコンさんから『大神 絶景版』のお話をいただきました。カプコンさんが「ここまででいいよ」と言ってくれたところから、「どれだけ積み増すの?」と言われるくらい、僕たちもチャレンジしたタイトルで、最終的にはカプコンさんから「ここまでやってくれてありがたい」といった言葉もいただきました。ユーザーさんからも好評でした。もちろん、もとのゲームの出来がいいからなのですが、僕たちとしてもがんばったタイトルです。このころは「HD版ならヘキサドライブ」と言っていただいたりもしたのですが、それはうれしくもあり、ちょっと複雑な気分でもありました。
--当初目指したパブリッシャーとは少し違った評価のされかたですね。
松下 自分たちの携わったゲームが、ユーザーさんから評価してもらえるのはとてもうれしいことですし、開発メンバーもテンションが上がります。ただ、決して移植だけをする会社ではなく、自分たちのゲームを作りたいという思いがある中でやっていましたから。それで、次第にプログラマーだけではどうしても限界があると感じてきて、2、3年ほど前から、プランナーやCGデザイナーの採用も始めました。今年からは、新卒でもデザイナーやプランナーとして採用しています。
--自社エンジンについて教えてください。
松下 社内では“ヘキサエンジン”と呼んでいるのですが、会社設立当時から作っていたものです。現在はプレイステーション4やXbox One用の“ヘキサエンジン2.0”を作っています。新世代ハードに対する備えも、着々と進めています。
--家庭用ゲーム機の開発をしつつ、最近ではソーシャル系も手掛けていますね。
松下 はい。開発を始めたのは一昨年くらいからです。GREEの『メタルギア ソリッド ソーシャルオプス』において、開発、運営として関わりました。残念ながらサービスは終了してしまいましたが、僕たちにとってはとてもいい経験になりました。そうした経験も活かして、現在オリジナルでスマートフォンのゲームを作っています。

満を持してオリジナルタイトルの開発へ

--現在は東京と大阪に事務所がありますが、それぞれどういった役割なのですか?
松下 たとえば、どちらかが家庭用ゲーム機部隊で、もう一方がスマートフォン用というふうに分けてはいません。ケースバイケースで、家庭用ゲーム機向けだったり、スマホ向けだったり……という感じですね。もちろんいっしょに開発することもあります。東京と大阪ですので、確かにコミュニケーションロスはゼロではないのですが、PS3のAVチャットで拠点間を中継しコミュニケーションをとったり、各自Skypeでやりとりしたりしています。
--社員数は60名ほどだと聞いていますが、だいたい半々なのですか?
松下 はい。ほぼ30人ずつです。自分は基本的に大阪のほうを見ていて、月に2,3度東京にも来ます。
--60人というと、ギリギリ全員を把握できる印象ですが?
松下 僕的には十分把握できているので、「もう少し人が増えても大丈夫」と思っています。と言っても、僕が全部管理するのではなく、少しずつ別の者にまかせ始めている状況です。
--東京と大阪で何か違う部分はありますか?
松下 基本的には、なるべく差がないようにしているつもりです。たまたまですが、大阪のほうが少し女性比率が高いかな?(笑)
--御社の特徴はどういったところにありますか?
松下 もともとがプログラマー集団ですので、技術やテクノロジーになります。ただ、いいものを作るためには“ネタ”と“技術”が必要です。ネタ=コンテンツ、技術=テクノロジーですが、“いいコンテンツとテクノロジーがいいエンターテインメントを生む”と考えていて、とくに技術に関しては自信を持っている部分です。プランナーやデザイナーを増やして、コンテンツも強化している最中ですが、まだまだ足りないと感じています。
 社内は、仕事に対する意識は高いのですが、和気あいあいとした雰囲気ですし、仲がいいと思います。現在、中途の方を対象に会社見学もやっていますので、遊びに来る感覚で気軽に見学に来てほしいですね。
--いまのゲーム業界について、どのような印象ですか?
松下 すごくおもしろいし、我々にとってはチャンスだと思っています。今後は、ゲームの垣根が徐々になくなっていき、ハードウェアの性能がどんどん上がっていくことを考えると、現在家庭用ゲーム機のハイエンドを開発している我々の技術は、今後スマホでも有利に働くと思います。一方、PS4やXbox Oneといった新世代機の開発は、どの会社でもできるわけではありません。家庭用ゲーム機でもスマホでも、どちらでも戦えるのが我々の強みであり、そういった中で我々にお声掛けいただくことを非常にうれしく思っています。
--現在、転職を考えているクリエイターにひと言お願いします。
松下 家庭用ゲーム機からスマホまで、興味を幅広く持っている人のほうが弊社には向いていると思います。今後、いままでの実績や培った技術をもとに、オリジナルタイトルを作っていこうと考えています。会社も大きくしていこうと思っているので、自分の成長とともに、会社が成長していく実感が味わえると思います。そうしたことに興味がある人に来てもらいたいです。それから、ゲームに対する熱意がある人ですね。この職種が何人欲しいというよりも、もしいい方がいれば、仮に全員同じ職種でも採用したいと思っています。
--ヘキサドライブの将来的なビジョンを教えてください。
松下 いままでは受託開発をメインにしてきたので、“移植やHDのヘキサドライブ”と思われる人も多いと思います。今後はヘキサドライブとしてのブランドを確立して、プレイヤーから映像表現や技術的にも「すごい」と思ってもらえるようなオリジナルゲームを作って、「あのゲームはヘキサドライブが作ったのか」と言われるような会社になりたいと思っています。“いいゲームを作るゲーム会社”というブランドを作りたいので、これからはオリジナルゲームの開発にまい進していきます。
 ゲーム会社にとっては、ゲームがいちばんのコンテンツです。『マリオ』や『パックマン』、『ストII』といったように、歴史や人々の心に残るようなゲームを作りたいし、そういう会社にしていきたいと思います。新世代ハードやスマホなど、機が熟してきたので、これからは攻めに転じていきたいですね。

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ヘキサドライブってどんな会社?

 2007年、カプコンでメインプログラマーを務めていた松下氏以下、5人のプログラマーが、大阪にて起業。以降、『Rez HD』や『ザ・サード バースデイ』、『大神 絶景版』などの開発で注目を集める。とくに評価の高い“HD版”などの家庭用ゲーム機向けソフトをはじめ、iOS/Android用タイトルなど、幅広く開発を手掛けている。
 社名の由来は、“人間の持つ五感に心を加えた六感(HEXA)を躍動(DRIVE)させるようなコンテンツをリリースする”ところから。現在は、東京にも開発拠点を設け、起業時の目標だった、パブリッシャーへのステップアップを目指して、順調に会社も成長している。
<会社概要>
ヘキサドライブ株式会社
●代表取締役社長兼CEO:松下正和
●設立年月日:2007年2月26日 ●従業員数:59名(2014年6月1日現在)
●事業内容:コンピュータゲームの企画・開発・販売、デジタルコンテンツの企画・開発

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▲打ち合わせスペースの机も“ヘキサ”。
▲東京開発室もすでにかなりの大所帯に。
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▲『Rez HD』
▲『モンスターハンターポータブル 2nd G for iOS』