ファミ通ドットコム内にある、ゲーム業界専門の求人サイト“ファミキャリ!”。その“ファミキャリ!”が、ゲーム業界の最前線で活躍している、各ゲームメーカーの経営陣やクリエイターの方々からお話をうかがうこのコーナー。第10回となる今回は、キテラス。

●“ファミキャリ!会社探訪”第10回はキテラス

 ファミ通ドットコム内にある、ゲーム業界専門の求人サイト“ファミキャリ!”。その“ファミキャリ!”が、ゲーム業界の最前線で活躍している、各ゲームメーカーの経営陣やクリエイターの方々からお話をうかがうこのコーナー。第10回となる今回は、キテラス。
 キテラスは、ドワンゴグループの一員として、2012年2月に設立されたばかりの若い会社。今後のマルチデバイス時代に向け、“ニコニコ”を家庭用ゲーム機やさまざまなデバイスに向け、独創的なアイデアで発信するべく設立された同社。今回は、代表取締役社長の鈴木慎之介氏と、おふたりのエンジニアにお話をうかがった。


●ドワンゴから“奇をてらっている”ように見えたら

代表取締役
鈴木慎之介氏

--キテラス設立までの経緯について教えてください。
鈴木慎之介氏(以下、鈴木) かつてドワンゴ内に、“ニコニコ”のマルチデバイスを推進する“コンシューマーエレクトロニクス事業部”という事業部門があったのですが、マルチデバイス事業の自律的な推進やエンジニアマネジメントを加速させる目的で、私が部長をしていたその部門ごと、キテラスとして分社化することになりました。
--設立の狙いは何ですか?
鈴木 私はドワンゴに2000年に入社して、14年ほど在籍しているのですが、ドワンゴとは違う文化で、ゲーム機やテレビ向けに違ったものを作るために、違ったマネジメント環境でエンジニアの能力を尖らせるために、環境をわけたほうが組織のスループット(処理能力)が上がるのではないかと考えました。また、“ニコニコ”というプロジェクトも、いまや巨大化しており、意思決定を迅速化させるためにも、私以下、会社組織で自律的に動いたほうがいいという話になり、会社として独立してやるということになったわけです。
--社名に込められた意味を教えてください。
鈴木 日本語で「奇を衒(てら)う」という言葉からつけました。そもそもドワンゴの成り立ち自体もおもしろくて、創業時は家庭用ゲーム機のネットワークライブラリを作っていました。その後、iモードのブラウザゲームを作ったと思ったら、着信メロディを作ったり、つぎには動画のうえにコメントを重ねたり……と、いい意味で、「奇をてらっている」会社だと思っていました。私自身、ニコニコ動画の立ち上げに携わっていたのですが、当時から“ニコニコ”に関わっているエンジニアは優秀で個性的なスタッフが多く、そうした方々を集めておもしろいものを作りたいという思いがありました。“ニコニコ”自体が奇をてらっているのですが、その中でも別の進化を遂げたいと思っています。ドワンゴから“奇をてらっている”ように見えたらいいですね。
--渡辺さんと安田さんはどういった経緯でキテラスに?
渡辺吉史氏(以下、渡辺) もともとゲーム業界にいて、エンジニアとして仕事をしていましたが、ネットゲームが盛り上がってきて、私もサーバーサイドの仕事がおもしろいと感じるようになりました。それで、そういった仕事はないだろうかと探していて、キテラスにたどり着きました。家庭用ゲーム機をターゲットにして、さらに“ニコニコ”という“プラットフォーム”を使ったインターネットサービスを展開しているというところに魅力を感じました。
安田祐司氏(以下、安田) 僕もゲーム業界で働いていたのですが、ゲームの開発はスタートしてから終わるまで、2,3年と長いですよね。もっと早いサイクルの仕事をしたかったというのが理由のひとつです。また、前の会社を辞めたあとに、大学院に行ってUI(ユーザーインターフェース)の研究をしたりしました。それで、ゲーム機でいままでのスキルも活かせるし、また、スピード感のある仕事ができると感じたことも、当時のドワンゴを志望した理由です。
--他社と比べての魅力や強みは?
鈴木 キテラスは、アルファベットで“Qteras”と書きます。最初の“Q”は“Quarity”の“Q”。いかに品質を高めるかといった方法を、日々スタッフで話し合ったり、ほかの会社よりも品質にこだわっていることが挙げられると思います。
渡辺 ふつうのゲーム系の会社から来た人と、もともとドワンゴが強いウェブ系の仕事をしていた人たちが融合していて、共存しているのが特徴的で、他社にはない魅力だと思います。
安田 キテラスはまだ小規模な会社ですが、それでもいろいろなタイプの人がいます。そこがおもしろいところだと思います。
--動画配信ビジネスについての可能性や魅力について、どう感じていますか?
鈴木 動画ビジネスに関して言うと、YouTubeやニコニコ動画が始まって10年近くが経過しようとしており、ネットにおけるマーケットとして成熟するような時間が経っていると思いますが、再生するプラットフォームと、何を再生するかというコンテンツにわけて考えると、まだできることがたくさんあると考えています。また、デバイスでいうと、スマートフォンやタブレット、ネットが繋がっている大画面等、さまざまなものが存在しますが、決め手となる共通フォーマットのようなもの、これさえあれば動画や生放送が確実にできるというものは、まだないんですよ。しばらくは、デバイスごとにひとつひとつ丁寧に作業をする必要があると考えています。そういう意味で、動画配信におけるマルチデバイスというのは、日本のみならず、ワールドワイドで見ても、骨の折れる作業だと感じています。でも、逆に言うとチャンスでもあるわけです。デバイスの特性を活かした新しいものを、ひとつでも体験してもらいたい。おもしろい機能を作るという意味ではやりがいがあります。
--2014年は、いわゆる新世代機が発売になり、動画配信も身近に感じられる年になるのではないかと思います。
鈴木 ドワンゴとしては、ニコニコ生放送がプレイステーション4に対応することを発表しています。動画を配信する文化というのは、今年さらに発展・進化していくと思っていますが、ただ配信して終わりではなく、いかにインタラクティブに、配信者と視聴者が楽しむことができるかが、つぎのステップです。たとえばゲームシステムに組みこんで、ゲームの進行に視聴者が介入するとか、実況者が食べていけるエコシステムを生むだとか、そういったものの先に、“e-sports”と呼ばれるプロスポーツ等に進化する基盤になってくれればいいなと思っています。

●ニンテンドー3DS用“ニコニコ”配信

セクションマネージャ/渡辺吉史氏(左)
エンジニア/安田祐司氏(右)

--ところで、ニンテンドー3DSでも対応ソフトを出すそうですね。(※取材日は、2014年1月21日)
鈴木 はい。いままで、プレイステーション VitaとWii U、テレビに対応ソフトを出していましたが、今度はニンテンドー3DSにも“ニコニコ”を出すことになりました。ニンテンドー3DSで動画が視聴でき、ニコニコ生放送にもアップデートで対応します。また、ニンテンドー3DSならではといえば“すれちがい通信”ですよね。今回の“ニコニコ”では、自分がオススメしたい動画やコミュニティを設定しておくと、“すれちがい通信”の機能を使って、相手に宣伝できます。題して“すれちがいマーケティング”です。少々長いので、我々としては、“スレマ”と呼んでほしいです(笑)。もうひとつが、その“スレマ”のために歩いた努力を評価したいという思いがありまして、ニンテンドー3DSを持ってどのくらい歩いてがんばったかを評価するランキングシステム、“スレマ努力ランキング”を導入しました。
 それから動画ですが、ニンテンドー3DSのハードスペックでは、動画の再生や生放送はできなかったのですが、独自フォーマットを開発して対応できるようにしました。それは新しいチャレンジでした。2月14日のNintendo Direct(ニンテンドー・ダイレクト)で発表して、即日配信となりました。
--3DS用“ニコニコ”の開発は、どんな点が苦労しましたか?
渡辺 最初にこの話を聞いたのは、2013年春くらいです。対応ハードを聞いて、まず動画が再生できるのかを検証しました。当初のフォーマットだと、動画再生はきびしかったので、動画を使わない別の何かを、と考えましたが、やはり動画を再生させたいということになり、再生フォーマットを新たに開発することになりました。試行錯誤して、独自フォーマットと既存のフォーマットを組み合わせて最適なものを作り上げた、という感じです。
安田 僕はUI担当なのですが、ふつうのゲーム会社ですと、ニンテンドー3DSのUIを表示するライブラリを持っているわけですが、弊社はそういったものがありませんでした。ですから、任天堂さんが準備している環境と、我々が独自で開発した独自ライブラリを組み合わせて作りました。
--魅力はどんなところですか?
鈴木 使い勝手というものをとくに重視しているので、これまで“ニコニコ”のマルチデバイス対応で培ったノウハウを駆使して、快適なアプリケーションになっていると思います。“スレマ”に関しては、ネット上で自分の好きなものを、リアルの世界で広めていくという、ある種“ネットとリアルの融合”のひとつの形だと思います。
渡辺 基本は動画プレイヤーですが、“スレマ”のような機能もあり、ひとつのアプリケーションでいろいろな使いかたができます。ニンテンドー3DSでの動画再生ソフトもいくつかありますが、いちばんだと思っています。
鈴木 言い切ったね(笑)。
安田 タッチ入力とボタン入力のどちらにも対応していて、どちらの操作でも快適に操作できると思います。もちろん、私もいちばんだと思っています(笑)。

●“思考停止をしないこと”が何より重要

--会社でのやりがいやキテラスだからこそ体験できた成功体験はありますか?
渡辺 キテラスに所属しているエンジニアは、みな尖った感性の持ち主で意識も高いです。何か提案しても、想像以上のパフォーマンスで動いてくれます。私はいまマネージメントのほうをやっていますが、そういった皆のがんばりを見ているので、やりがいを感じますね。
安田 “ニコニコ”は、家庭用ゲーム機を使うソフトとしては、非常にユーザー数が多いサービスです。1000万単位ですから、すごくやりがいを感じると同時に、フィードバックが多くて耳が痛くなることもあります(笑)。
--採用時に求める人物像はありますか?
鈴木 エンジニアとしてというより、社員として求める総論として、“思考停止をしないこと”。何か壁にぶち当たっても絶対にあきらめない。まずは自分自身が身につけたエンジニアリングで解決を目指し、それでもダメだったら周囲に相談する。たとえ無理難題でも“やらない”というのは許されません。もうひとつは、アンテナが高い人物。日々情報収集をしたり、スキルを身につけていくのも大事です。ある分野だけ得意で尖っていることも重要ですが、できれば幅広くいろいろなジャンルを見てほしいですね。エンジニアとして当たり前のことですが、情報を得るだけで終わってしまう人が多いように感じます。
 また、これは僕の主観になりますが、ゲーム開発で“組み込み屋”とか、“ゲーム屋”というのは、いまのエンジニアリング業界からみると、メインストリームではないですよね。ウェブではなく、スマホなどのアプリでもない。しかし、そういう職人気質の人たちなりのプライドがあるわけで、そういったプライドを持って弊社に来ると活躍できると思いますよ。
渡辺 家庭用ゲーム機の開発環境とそれほど大きく変わらないと思います。ですから、ゲーム業界出身のエンジニアなら、即戦力として動けるのではないかと思います。
安田 個人的な意見ですが、ゲームが大好きで、ずっとゲームを作っている人でも、ちょっと別の業界も見てみればいいのになと思います。もちろん、我々キテラスでも、ここで学んだことを他社で活かす、という風土があると思っています。
--個人として、または会社として今後のビジョンは何かありますか?
鈴木 これまで通り、“ニコニコ”事業はマルチデバイスで進めていき、裾野を広げるということですね。幅広い層に対して、“ニコニコ”をアピールしていくというのは、変わらずやっていきます。プラスして、各デバイスならではの要素を作って、ユーザーを楽しませたり、驚かせる仕掛けを作っていきたいです。
 テーマは、“ネットとリアルをどう融合させるか”ですね。3DS用“ニコニコ”で言うと、人間が体を使って、がんばってネットのコンテンツと連動するというものですが、そういったものをほかの携帯デバイスや大きな画面でどのように打ち出していくのかが、キテラスとしてのテーマだと思います。
渡辺 エンジニアマネージャーとしては、すでに自分の仕事を持っている人には、自分のスキルを活かして、周囲にいい影響を与えるようにしてもらい、新卒者や新しく入った人は、キャリアアップや自分の得意分野を見つけていってほしいと思います。
安田 個人的な目標になりますが、UIをもっとよくしたいという思いがあって、社内のスタッフにも協力してもらって、ユーザー中心のモノづくりを進めていきたいと思っています。
鈴木 2014年1月にPS Vita用の“niconico”を香港と台湾での提供を開始しました。海外での展開も重要な戦略になっていて、PCでのサービスはやっているのですが、コアなゲームユーザーに向けてリリースをしました。そうした海外での展開もいろいろと考えています。


●キテラスってどんな会社?

 2012年2月に、ドワンゴのマルチデバイスを送信する事業部門、コンシューマーエレクトロニクス事業部が独立し、設立されたのがキテラス。“ニコニコ”事業において、テレビや家庭用ゲーム機などに向けて行ってきたそれらのサービスを、よりスピーディーに、より多様に展開するため設立された。これまでに、家庭用ゲーム機用に“ニコニコ”を楽しめる、PS Vita/PS Vita TV用、Wii U用ソフトを配信してきたが、2月14日にニンテンドー3DS用ソフト“3DS ニコニコ”を新たに配信した。
 社名は、予想外を狙うという意味の“奇をてらう”からきており、“ニコニコ”らしい、奇をてらった独創的なサービス提供を目指している。
<会社概要>
株式会社キテラス
●代表取締役社長:鈴木慎之介
●設立年月日:2012年2月24日 ●従業員数:32名(2014年1月31日現在)
●事業内容:コンシューマーエレクトロニクス向けネットワークサービスの企画・開発・運営

▲昨年、ドワンゴグループが歌舞伎座タワーに移転するのに伴い、恵比寿から移転。
▲広々としたカフェテリアスペース。奥には、リラクゼーションスペースやミーティングルームも設置されている。
▲2月14日に配信された、ニンテンドー3DS用“ニコニコ”。