LIVEパート:オールドファン感涙の名曲も!

 
 2014年1月25日、日本ファルコムによるトーク&ライブイベント“Falcom Acoustic Live & Talk Show ~近藤社長に聞く!『閃の軌跡』続編と謎の大型タイトル~”が、キャラアニの主催で新宿ロフトプラスワンにて行われた。このイベントは3部構成となっており、第1部ではjdkBANDによるアコースティックライブ、第2部、第3部ではネタバレだらけのトークショウが展開し、既報のように『英雄伝説 閃の軌跡』の続編のタイトル名も発表された。ここでは、その詳細をお届けしよう。

 イベントの第1部では、jdkBANDによるアコースティックライブが行われた。今回はアコースティックライブということで、ベース、キーボードのリズム隊を置かずにアコースティックギターふたりを含む4人という変則編成でのパフォーマンスとなった。

 いつものロック全開ではなく、『軌跡』シリーズのバラードナンバー『星の在り処』などしっとり大人なテイストの選曲がされており、『ドラゴンスレイヤー英雄伝説』や『ぽっぷるメイル』など、過去の名曲も演奏されて会場のファンを喜ばせていた。

 しかし、“大阪のオバチャン”とファンからは親しみを込めて呼ばれている小寺可南子さんを始めとしたjdkBANDのメンバーがずっと大人しくしているわけもなく、1曲目が終わった後のMCで早くもステージ上からビールを注文! 会場のファンとともに乾杯が行われることになった。

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▲jdkBANDメンバー。左から、宮崎大介(G)、小寺可南子(Vo)、岡島俊治(Per)、井上央一(G)。このイベントではおなじみの、“初ジョッキ”と語呂をかけた“はつじょうき!”(漢字はご想像におまかせします)の掛け声で乾杯が行われた。

 
 そしてひとりぐいぐい飲みだす小寺可南子さんに、リーダー格のオカジ(岡島俊治)さんが「メンバー紹介いいかな?」とツッコむなど、しっとりとした曲と笑いの絶えないMCが交互に織り交ぜられ、会場の熱気もだんだん上がっていく。しかし、盛り上がりすぎてMCが長引き、3曲目終了時点で早くも運営側から“巻き”の指示が出されてしまうことに……。

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▲ファルコムのDIVA(歌姫)であり、ラジオ『ティオのファルコムラジオ めんどくさいです…でもがんばります』ではMCがも務めている小寺可南子さん。トークではオバチャンキャラが炸裂!
▲ドラムセットではなく、ウドゥ(壷)という楽器で演奏を行っていたオカジさん。往年のファルコムファンでもある彼は、イベントの盛り上がりに「歌舞伎町が代々木ファルコムショップに見える……!」と“らしい”感動をしていた。

 
 そして、ライブの定番曲でもある『PANDRA』をファンとともに手拍子&大合唱で歌い上げ、第1部は幕を閉じることとなった。

アコースティックライブ・セットリスト
1.もっと近くで<英雄伝説 空の軌跡FC~リベールの歩き方>(『フィールドざんまい』より)
2.寮に帰ろう(『英雄伝説 閃の軌跡』より)
3.星の在り処(『英雄伝説 空の軌跡FC』より)
4.波音のレクイエム~船~<ドラゴンスレイヤー英雄伝説>(『DIVA 小寺可南子SINGS1』より)
5.誰かがあなたを愛してる(『ぽっぷるメイル』より)
6.PANDRA<イース6 ナピシュテムの匣>(『DIVA 小寺可南子SINGS1』より)

制作中の大型タイトルとは!? 広報真っ青のトークショウ

 
 第2部では、日本ファルコム近藤季洋社長とjdkBANDのオカジさんによるトークショウが行われた。当初の予定では“軌跡シリーズ10周年振り返りトーク”とされていたが、いきなり『英雄伝説 閃の軌跡』続編タイトル名の発表が行われることに。

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▲再度の乾杯の後、近藤社長(右)による恐るべきぶっちゃけトークが展開する。ふたりの前に置いてあるソフトは、2014年3月に発売20周年を迎え、近藤社長、オカジさんも愛してやまない『英雄伝説III 白き魔女』。

 
 既報のように、『英雄伝説 閃の軌跡』の続編のタイトル名は『英雄伝説 閃の軌跡II』。このネーミングについて、近藤社長は「(『空の軌跡』シリーズのように)『SC』とつくと予想された方もいらっしゃったようですが、『閃の軌跡』というタイトルへの思い入れの強さがあるので『II』という“どストレート”なネーミングにさせてもらいました」とコメント。会場がざわつく中、ファンの気持ちを代弁してオカジさんが「どのくらい開発が進んでいるんですか?」と質問すると、「先週、シナリオが完成しました」(近藤社長)とのこと。

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▲雨男として有名な近藤社長だが、当日は晴天に恵まれ、本来なら喜ぶべき状況なのにスタッフからは不満がられていた。『閃の軌跡』ではユーシスがお気に入りのキャラクターらしい。ちなみに、全体的にはアリサが一番人気で、続いてフィーやラウラが人気を集めているようだ。

 
 また、システム的な進化も数多く行われており、とくにキャラクターのモーションについては全部作り直されているようだ。前作でやり切れなかったことや、ユーザーからのリクエストがあった要素には、極力手を入れているとのこと。続く「『閃の軌跡II』の見どころは何ですか?」という質問に対しては、「全部です!」と言い切る。中でも、注目してほしいのはやはりシナリオ展開だそうで、『英雄伝説 碧の軌跡』のエンディングで描かれた動乱の時代の詳細が、いよいよ描かれることになる。ほかにも、リィンの武器に刀以外のものが登場することや、前作の最終決戦で採用された新要素が引き続き楽しめることも明かされた。

 続いて、『閃の軌跡II』とともに制作が公表されていた“謎の超大型タイトル”の話題に。「新作については「発表しないで」と社内で釘を差されていたのですが、サイトの告知を見たら発表することになっていたんですよね」と苦笑する近藤社長に、「発表しろっていう“フリ”じゃないですか?」とけしかけるオカジさん。「じゃあ」ということで近藤社長が取り出したのは、なんと社長が仕事で使っている個人ファイル! 制作中のタイトルの世界観やキャラクターの設定がてんこ盛りの、まさに“極秘資料”が、公開されることになった。

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▲思わぬ資料の登場に、ファルコムの広報さんからの追及を恐れたのか「こんなものを出していいんですか?」と及び腰になるオカジさん。

 
 新作タイトルについては、驚くべきコメントが近藤社長の口から飛び出した。「皆さんが予想している“Y(ワイ)s(エス)”は、我が社の柱ですし、新作が動いていないわけはありませんよね(笑)。でも、基本的にファルコムでは企画段階のものもふくめてつねに3~5のラインが動いているので、それ以外のプロジェクトもあるんですよ」と、みずから極秘情報を明らかに。

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▲世界設定や人物紹介など、企画段階の貴重な資料が惜しげもなく公開された。人物紹介に、『イース』シリーズに登場する地名“アルタゴ”の文字を見つけたファンは大騒ぎ!

 
 日本ファルコムのゲーム開発は、企画段階では3~4名くらいの少人数でチームを組み、開発が進んでいくにしたがって増員、追い込みの時期には総力を挙げて臨むというスタイルだとのこと。また、企画の立ち上げに関わるのはベテラン社員だけではなく、新人が入ることもあるようだ。そのいい例が『ツヴァイ!!』で、「入社1~2年目くらいの若手が中心となって作りました。そのせいか、ファルコムとしてはいい意味で異色の作品になってくれたと思っています。教えるよりも、実際に作ってみたほうが早いということもあるんですよね」と、日本ファルコムならではのユニークな逸話も公開された。

 そして話は“Ys(ワイエス)”に戻る。近藤社長の資料をパラパラとめくりながら、衝撃の設定を見つけたオカジさん。「あの著名な冒険家の方がバイトをしているんですが……」と、恐る恐る尋ねると、「そりゃあ、冒険者だって冒険するための資金を稼がないといけませんからね」との回答。そして、「たとえばの話ですが」といちおう前置きしつつ、「『イース』の続編を作るとしたら、完全新作にするのか、これまで出してきた作品のリメイクにするのかという選択肢があると思います。アルバイトも、その中に盛り込む可能性がある要素のひとつとして考えているということです」と近藤社長は語る。『イース』シリーズでは、『イースI』の説明書に書かれていた冒険はすべてゲーム化されており、これからはすべて自分たちで作っていかなければならないというプレッシャーがあるのだという。そのため、現在はさまざまな可能性を探っている段階であるようだ。

『軌跡』シリーズ誕生秘話が、10年以上の時を経て明らかに!

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▲第2部と第3部のあいだの休憩時には、『イース』シリーズなど日本ファルコムの数々の作品の音楽を手掛けてきた神藤由東大氏からの応援VTRが流れた。「『白き魔女』の話題はホドホドにね」など、マニアックな方向に暴走しがちな近藤社長、オカジさんに釘を刺すなど、ネタ満載な内容に会場中が大爆笑。目が離せず、トイレに行きそびれたファンも……。

 
 休憩を挟んで行われた第3部では、『軌跡』シリーズの振り返りがテーマに。そもそも、『軌跡』シリーズは近藤社長が日本ファルコムに入社後、初めて企画から参加して制作したオリジナルタイトルだったという。「あのときは、とにかく『ガガーブトリロジー』(※)を越えようと必死になっていましたね。『零の軌跡』のロイドの言葉を借りれば、“越えるべき壁”でした。『ガガーブ』の続編を作るという選択肢もあったと思うのですが、それでは壁を越えることはできない。これまでにやっていないことをやりつつ、ファルコムっぽい作品にする。そんなテーマを掲げてプロジェクトはスタートしました」(近藤社長)。

※『ガガーブトリロジー』……『英雄伝説』シリーズの第3~5作となる『白き魔女』、『朱紅い雫』、『海の檻歌』の三部作のこと。

 企画で、最初に出てきたキーワードが“産業革命”だった。ちょうど“機械式時計”が好きなスタッフがいたことから、「機械式時計で魔法を使ってみたら?」と、“オーブメント”のシステムが生まれることに。そして舞台の“リベール王国”は、“風光明媚”な雰囲気を目指して、スイスやオーストリアをイメージ。ちなみに、リベール王国の形は、近藤社長が昔住んでいたタイがベースになっている。タイはリベール王国の設定にも影響があり、エレボニア帝国とカルバード共和国という2大国に挟まれた“緩衝国”という設定も、第2次世界対戦で独立を保った同国を参考にしたものだという。また、シリーズ全体の舞台となっている“ゼムリア大陸”については、一度全部設定を作り、ヒマを見つけてはアップデートしているものの、完全に決定できているのは全体の半分もないとのこと。

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▲企画当初のプレゼン用資料。近藤社長が手書きで作った、リベール王国の地図も。南部の半島など、実際に比べてみると、タイと似ているのがよくわかる。

 
 続いて、シリーズの特徴であるたくさんの登場人物についての話題に。近藤社長によると、まずは主人公を決めるところから始めるのだそうだ。『空の軌跡』の場合、“ガガーブっぽく”するために、男女の主人公(ヨシュア、エステル)を作り、さらに“これまでやってこなかった”ことをするため、もともと男の子として作っていたエステルの設定や名前を女の子にしてメインに据えることになったようだ。

 そして、彼女たちを軸に人間関係を考えていくことになる。彼女たちの成長を促すための“先輩キャラクター”が必要になり、シェラザードが誕生。先輩にはいい人だけではなく、ちょっと嫌な人もいるだろう……ということで対になる存在としてアガット(後にシェラザード以上にいい人になったが)が登場することになった。また、基本的にキャラクターは、対になる人物とセットで考えられていて、シェラザードはオリビエ(『閃の軌跡』のオリヴァルト皇子)、アガットはティータがセットで作られたのだそうだ。

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▲企画当初は“シド”という名前だったジン。その名前は「飛空艇に乗っていそう」ということでボツになり、その後“カズマ”を経ていまの名前に落ち着いたようだ。

 
 ほかにも、“エステルの父カシウスは、当初オープニングで死ぬはずだった”、“オーブメントの最初の名称は“プリズム”だった”など、さまざまな開発裏話が飛び出していく。とくにシリーズでも最強クラスのキャラクターとして設定されているカシウスは、「強すぎて全部ひとりで解決できてしまうから、エステルたちといっしょにいられると困るんですよ」(近藤社長)と、開発側の事情でつねに出張中にされているという裏設定が暴露されることに。また、同時に帝国や共和国の設定も考えられていて、クロウの設定もこの時点ですでにできていたとのこと。これだけたくさんの設定を作っていたことから「1作で終わらせるのはもったいないですよね? だから、最初から続編を作るつもりでいました」(近藤社長)と、第1作発売前からシリーズ化の構想があったことも明らかにされた。ちなみに、クロスベル編(『零の軌跡』、『碧の軌跡』)については『空の軌跡 the 3rd』の制作中に構想が練られており、構想の順番としてはもっとも新しいものであったらしい。

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▲ファルコムのいちファンであるオカジさんも、思わず「深ぇなぁ……」つぶやいてしまう濃いトークが展開された。その横で、小寺さんはツイッター用の写真を自撮りするなど、やりたい放題!

 
 まだまだ話は尽きないが、残念ながらここでタイムリミット。しかし、この続きは『英雄伝説III 白き魔女』の発売20周年を記念した、2014年3月29日昼に開催予定のイベントで行うことを約束。現在TOKYO MXほかで放送中のアニメ『みんな集まれ!ファルコム学園』の主題歌でおなじみのフレーズ、「ゴーファイ!」のコール4連発とともに、イベントは終幕を迎えることとなった。

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▲最後まで熱く盛り上がった会場。しかし、往年のファルコムファンであるオカジさんは、PC-8800時代の“知る人ぞ知る”タイトルであった『スタートレーダー』のネタが、25年の時を経てこのように昇華されたことに微妙な表情を浮かべていた。