“『ゼルダ』の当たり前を見直す”という新たな挑戦に溢れた意欲作『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』。その開発秘話やキャラクターのヒミツに迫る、主要スタッフ5名のインタビューをお届け。

●開発者5名が語る『神トラ2』の秘話

 2013年12月26日に発売された、ニンテンドー3DS用ソフト『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』。壁画になるというリンクの新たな能力を中心に、アイテムのレンタル制の採用や、ダンジョンに挑む順番を自由に選べるようにするなど、 “『ゼルダ』の当たり前を見直す”という新たな挑戦に溢れた意欲作となっている。本作の誕生秘話や開発コンセプトなどは、プロデューサーの青沼英二氏へのインタビューでうかがっているので、こちらをチェックしてほしい。今回は、プロデューサーの青沼氏に加え、ディレクター陣などの主要スタッフ5名にお話をうかがうロングインタビュー。開発秘話はもちろんのこと、キャラクターのヒミツ、開発スタッフが明かすトリビアなど、いろいろな話題が満載になっている。すでに本作をクリアーした人も、これから遊ぶ人も、ぜひ最後までじっくり読んでほしい。
(本インタビューは、週刊ファミ通2014年1月9・16日合併号、2014年1月23日号に掲載したものに、加筆修正を行ったものになります。インタビューの収録は2013年12月に行っています)

Profile

写真左から
プロデューサー:青沼英二氏(文中は青沼)
ディレクター:四方宏昌氏(文中は四方)
サブディレクター/プログラムリーダー:毛利志朗氏(文中は毛利)
サブディレクター/プランナーリーダー:冨永健太郎氏(文中は冨永)
デザインリーダー:高橋幸嗣氏(文中は高橋)

●22年前の思い出と現在の立場は……

――本作は、『神々のトライフォース』の22年越しの続編ですが、発売当時の皆さんの思い出からおうかがいできますか。
青沼 22年前には、すでに任天堂で働いていたんですが、当時はデザイナーで『マリオオープンゴルフ』のドット絵を描いていましたね。『神々のトライフォース』は、研究というよりはユーザー感覚で、社内で遊んでいました。

――四方さんはいかがですか?
四方 当時は学生で、兄が『神々のトライフォース』を買ってきたので、それを遊んでいました。ただ、クリアーまではやっていなくて。

――では、まだ1度もクリアーされていない?
四方 いえ、今回の開発が始まるときに、チーム全員が1度はクリアーしようという話になりまして、そこで僕もクリアーまで遊びました。22年越しのクリアーでしたが、いまのゲームよりも骨があるというか、難しかったですね。

――歯応えがありますよね。毛利さんは?
毛利 『神々のトライフォース』が発売されたとき、私は高校生だったんですが、スーパーファミコンを持っていなかったんですね。だから、数年後に、大学生になってからスーパーファミコンを買って、値下がりしたソフトを買ってクリアーしました。最後の神殿が難しかったものの、その値段ではありえないくらい楽しませてもらいました(笑)。
青沼 定価じゃないからね(笑)。

――(笑)。冨永さんの思い出は?
冨永 発売当時は、私は中学生でした。ただ、お恥ずかしい話ですが、じつは今回の開発に携わるまで、『神々のトライフォース』に触れたことがなくて。『夢をみる島』や『時のオカリナ』などのシリーズ作は遊んでいたので、ちょうど抜けていたんですね。今回が初体験でした。

――なるほど。最後に、高橋さんは?
高橋 僕も中学生でしたが、『神々のトライフォース』の存在も知らなかったんです。ただ、任天堂に入ってから、『ゼルダ』シリーズに関わるタイミングで遊んでいたので、今回のプロジェクトの前にはプレイしていました。

――当時遊ばれた方も、そうでない方もいらっしゃるという感じですね。それで、皆さんが本作でどんなお仕事をされているのかを、青沼さんの口からご紹介いただきたいのですが……。
青沼 ええ、僕から!?

――お願いします!
青沼 まいったなあ(苦笑)。ええと、まず、ディレクターの四方ですが、彼とは『時のオカリナ』を作り始めたときから、ずっといっしょに『ゼルダ』を作ってきました。彼は、元デザイナーで、地形のデザインなどをやってきたんですね。『ゼルダ』のことをよくわかっているし、本人から立候補もあって、今回、ディレクターを任せています。壁画になるというアイデアも彼の発案ですね。

――続いて、毛利さんは?
青沼 毛利は、DSで『ゼルダ』を作ったときからずっとプログラムを担当してくれて、今回はプログラマーの立場でのディレクションをお願いしました。彼のプログラムは、とにかくきびしいんです(苦笑)。
毛利 それ、褒められてるんですか……?(笑)
青沼 隙のないプログラムというか、褒めすぎるのもよくないんですが、ゲームでここまでのプログラムができる人はなかなかいないですね。今回、全編60フレームで動かすことを実現してくれました。……あー、僕、実際の上司なので、なんか本当に評価してるみたいになってきたな(笑)。

――査定みたいで、すみません(苦笑)。
青沼 いえいえ(笑)。冨永は、『風のタクト』から、あいだの作品で抜けながら『ゼルダ』に関わってきて。静かな男なんですが、やるべきことをやるというか、今回のヘラの塔で、ジャンプして階層が切り換わるというアイデアを形にしてくれた。ここぞというときにいいものを出す、言わばうちの切り札ですね。

――では、最後に高橋さんを。
青沼 高橋も、『風のタクト』や携帯機の『ゼルダ』で長く関わっているデザイナーで、たとえば携帯機の『ゼルダ』で、どうすればキャラクターが生きてくるかといった表現を、自主的に考えてくれます。今回は、壁画になったリンクの表現を苦しみながら形にしてくれましたね。いつも困ったときにいい答えを出してくれる、デザイン面での切り札です。
高橋 また、切り札ですか!?(笑)

●壁画は『スーパーマリオ64』並の衝撃!?

――本作の最大の特徴は壁画化だと思うのですが、これが生まれたきっかけを教えてください。
四方 平面の絵になったリンクが動いたらおもしろいだろうなと、急に浮かんだんですね。ただ、平面になっただけだったら、横スクロールのゲームと違いがないと思って、そのまま壁を曲がれれば、よくなるかもしれないと、みんなで相談しながら詰めていきました。

――実際に動く形になってからは、いろいろな謎解きのアイデアが浮かんだのでしょうか?
四方 はい。鉄格子の隙間を通って外に出るときにピンと来て。僕、『スーパーマリオ64』を遊んだときに、お城の前の橋でジャンプして、お堀に落ちたことで、すごいショックを受けたんです。というのも、横から見た2Dの『マリオ』だったら、奥に落ちるなんてことはありませんよね。それが、橋を飛び越えて落ちるという部分に3Dのおもしろさを感じて、今回の鉄格子をすり抜けたときに、同じような衝撃を感じたんです。

――確かに壁画化で謎を解いたときも大きな衝撃がありました。壁画を使った謎解きのアイデアは、皆さんから出されたのでしょうか?
毛利 そうですね。ネタバレになるので、あまり詳しくは言えませんが、壁の中でとあるアイテムを使うものや、突進してくる敵を壁画になってかわすといったアイデアを出しました。

――壁画と言えば、リンクの絵柄などがかなり特徴的でしたが、高橋さんは苦労されましたか?
高橋 デザイナー何人かで、いろいろな表現を試してみて。最初に描いたやつが、かなりアバンギャルドな絵柄だったので、チーム内でも反発が強かったんです。

――たとえば、ピカソみたいな?
高橋 そうです、そうです。
青沼 それに、毛利がすごく反発して(笑)。
毛利 壁画になったときに絵柄が変わるのは想像していたんですが、予想以上で(苦笑)。あと、絵柄だけでなく、壁画になったときに、リンクがずっと手足を動かしていたんですね。それを見たときに、「これはプレイヤーとの一体感がないよな」と思って、強く反発したんです。でも、結果的に高橋がまとめてくれてよかったです。

――ヒントメガネをかけた状態で壁画になると、壁画のリンクもメガネをかけていたりしますが、ああいった仕掛けも高橋さんのアイデアなのでしょうか?
高橋 はい。こういう仕掛けは、やっておくと楽しんでもらえるかなと思って、自主的に入れています。とはいえデータ量の問題などもあるので、事前に確認は取っていますけど。

青沼 そういう隙を狙って、自分のやりたいことをちょっとずつ入れてくるよね(笑)。
高橋 ほかにも、壁画状態で、家の中に飾ってある額縁つきの絵画に入ると、顔の部分だけ別のキャラクターになったり、キスマークのついた壁を移動すると、リンクの顔にキスマークがついたりとか。そういったデザイナーなりのこだわりを、ところどころに入れさせてもらっています。
青沼 ディレクターの四方は知ってた?
四方 いえ、全部は知らなかったです。
青沼 僕とかまったく知らないから、後で「何だこれ!」ってビックリすることばかりなんです(苦笑)。

――チーム内にもサプライズですね(笑)。アートで言うと、ゼルダの衣装が『神々のトライフォース』と同じだったりしますが、そういった踏襲は意識されたのでしょうか?
高橋 はい。とくに、ゼルダなどの主要キャラクターは、前作のイラストを見ながら描いたりしました。

――そんな中、ラヴィオはすごく奇抜なデザインでしたが、あのイメージはどこから?
高橋 今回、ゼルダとヒルダのように対比のデザインを意識していまして。ラヴィオの場合は、『神々のトライフォース』での“闇の世界”にまつわるデザインをイメージしています。もっと詳しく言いたいんですが、これ以上はネタバレになってしまうので……。

――あとは、推測させていただきます! キャラクターと言えば、シリーズのキャラクターがゲスト出演していますよね。
四方 あの辺は、各担当者が好き勝手に入れているんですよね。デバッグ用にプレイしているときに気づくことも多いです。
高橋 でも、リンクの家にあるムジュラの仮面は、青沼さんのリクエストですよね?
青沼 そうですね。あれは、僕から。

――それは、何か意味があるんでしょうか?
青沼 皆さんのご想像にお任せします(笑)。

●ネタバレも防ぐがんばりゲージ

――今回、バクダンや弓矢などのアイテムが個数で管理されず、すべてがんばりゲージに統一されましたが、このシステムになった経緯は?
毛利 それは、僕が強く押しました。これまでの『ゼルダ』であまりよくないと思っていたことで、たとえばダンジョンでツボを割ったときに大量の弓矢が出ると、「ここで弓矢を使うんだな」というネタバレになっていたと思うんですね。

――ああ、確かに。
毛利 もともとは、壁画になったときにどこまでも進めてしまうと、ゲームが破綻してしまうので、それを防ぐためにゲージを作っていて。ゲージを作るなら、アイテムもゲージで管理するようになれば、前述の問題も解決できる、ということで採用しました。
青沼 ツボの話は、謎解きに詰まったときのヒントとしてはよかったんですが、自分で発見する喜びを味わってほしかったので。あと、たとえば弓矢をボスに当てるとき、まだ慣れていない人には、本数制限があるとプレッシャーになりますよね。その救助策にもなり得るということで、ゲージの管理にしています。ただ、調子に乗って使いすぎると、大事なときにゲージがゼロいうこともありますので、いいバランスではないかと。

――そんながんばりゲージ同様、本作ではアイテムのレンタル制も大きな特徴だと思います。ゲームを進めると、アイテムを買い取りできるようになりますが、皆さんの買い取りでオススメのアイテムを教えてもらえますか?
四方 ちょっとせこい話ですが、最初に買い取るアイテムは、定価の半額で買い取りができるんですね。しかも、買い取り価格はアイテムごとに違うので、まずはもっとも定価が高いアイテムを選べば、半額の恩恵も大きくなります(笑)。ということで選ぶと、ファイアロッドかアイスロッドになりますが、個人的にはアイスロッドが好きですね。アイスロッドは、パワーアップすると4つの氷の塊が落ちてきて敵を攻撃できるので、すごく気持ちいいんですよ。溶岩を固めて移動可能な範囲を広げることもできるので、ダンジョン攻略でも役立ちます。
毛利 私のオススメはブーメランです。ブーメランのいいところは草を刈れることと、遠くにあるアイテムを引き寄せられること。投げた後に自分が移動すれば軌道調整ができるので、敵に当てやすいというのも魅力ですね。装備枠のどちらかには、必ずブーメランをセットしていました。
高橋 僕はフックショットが好きですね。パワーアップしたフックショットなら敵にもダメージを与えられるので、真っ先にパワーアップして、冒険していました。
冨永 開発の冒頭で“高低差を活かすダンジョンを作ろう”となったときに、ファイアロッドで火の玉ではなく、高い火の柱を出すようにしたら、宮本(宮本茂氏。『ゼルダ』の生みの親)からの評判がよくて。そのときの思い出とカッコよさで、ファイアロッドがいちばんのお気に入りです。
青沼 まず、バクダンですね。ヒビの入った怪しい壁に穴を開ければ、その奥に隠された妖精の泉などを見つけられますし。従来作では、こんなに早い段階でバクダンが手に入ることはないので、レンタル可能になり次第、怪しい場所を片っ端から穴を開けて、冒険に出ます。この感覚は、シリーズ作をやり込んでこられた人ほど新鮮なのではないでしょうか。

●前作を遊んだ人ほど陥りやすい罠

――先ほど、スタッフの皆さん全員が前作をプレイしたというお話がありましたが、今回のダンジョンで前作を踏襲した謎解きが随所に見られるのは、やはり前作を細かく研究されたのでしょうか?
四方 前作をプレイしたのは、プランナーのあいだで「前作にこういうネタがあったよね」と知識を共有するためのもので、仕掛けを踏襲しようといった意識はありませんでした。ただ、やはり続編ですので、担当者が印象的だと思ったもの、たとえば僕の場合は、東の神殿で玉がゴロゴロ転がってくるような仕掛けなどは、本作でもちょっとアレンジして使ったりしています。
冨永 前作から踏襲するときも、より楽しくしようという意識がありましたね。ヘラの塔は、前作にも登場した塔で、赤と青のスイッチを攻撃すると、ブロックが出たり引っ込んだりする仕掛けがあったんですが、今回はそのブロックを長くして、壁画になって進んだり、ブロックそのものに乗ったりできるようにと、ただ踏襲するだけでなく、アレンジを加えています。

――やはり、高低差を意識したアレンジをされているんですね。
冨永 そうですね。あと、ダンジョンだけでなく、前作にも登場した槍を投げる敵兵士などは、投げた槍がちゃんと放物線を描いて落下するようにしています。

――今回のダンジョンは、そういった高低差を活かした仕掛けが多く、2Dと3Dのあいだを取ったような構造になっていますが、設計を考えるには、独特の苦労があったのでしょうか?
冨永 私の場合は、『スカイウォードソード』などの3D『ゼルダ』にも関わっていたので、立体的なものを考えるのは、そこまで難しくありませんでした。むしろ、階層を重ねた立体的な作りにしておきながら、見た目は2Dになるので、どこまで階下を見せるか、そして見せてはいけない階層はどう隠すかといった、2Dならではの苦労があって。そこはプログラマーやデザイナーといっしょになって考えていきました。

――発想としては、3Dで考えたダンジョンを2Dに落とし込むイメージでしょうか?
冨永 そのイメージですね。ただ、3Dで考えると、2Dの見下ろし視点で見たときに、まったくイメージの違うものになったりして、実際にやってみないとわからない苦労も多かったです。

――懐かしさと新しさを同居させるバランスは難しいと思うのですが、前作を踏襲した仕掛けの割合などは、どういった感覚でバランスを取られていたのでしょうか?
四方 “前作で使っていたから入れよう”というのはなしで、そのネタがおもしろいかどうか、3DSに向いているかという判断で入れていたので、バランスよりも“いま遊んでおもしろいかどうか”といった点にこだわっています。

――では、踏襲されて残っているものは、おもしろいから残っていると。
四方 そうですね。

――でも、前作と同じ仕掛けだと思って挑むと、違う解きかたになっていたりしますよね。
四方 引っ掛けではないんですが、壁画になったほうが簡単に解けるといったものは多いかもしれません。プレイをしていると、なぜか壁画化を忘れてしまうことがあるので、壁にルピーを置いたりして、ヒントにしています。

――謎が解けないときや、やけに苦労するときは、壁画化を思い出したほうがいいですね(笑)。
毛利 ちなみに、床が剥がれて飛んでくる仕掛けも、前作のように剣や盾で防ぐ方が多いんですが、壁画になれば安全なんですよ。

――あーーー! 入り口のあたりで剣を振ったり、ガードしたりしていましたよ……。
青沼 前作を遊んだ人ほど、やりますよね(笑)。

●すれちがい通信は、まさに腕試しの場

――本作にはさまざまなダンジョンが用意されていますが、皆さんのお気に入りのダンジョンはどこですか?
四方 ドクロの森の仕掛けが気に入っています。時間が経つと、上からフォールマスターが落ちてくるんですけど、その感覚が3DSならではで、いいですね。それと、制作者の視点で言わせていただくなら、必須アイテムがカンテラだけでうまくまとめられたのもよかったです。

毛利 私ははぐれ者のアジトですね。そんなに広いダンジョンではないのですが、行きと帰りで別のネタを作ることで、バリエーションを出せたのがよかったですね。あと単純に、仲間を引き連れていくのがおもしろいと思います。

冨永 先ほど話題にも上がりましたが、唯一自分で担当したということもあるので、ヘラの塔には思い入れがありますね。そのほかだと、ネタバレですが、最後の●●●●●も気に入っています。知識と戦闘の技術をフル活用して、難度の高い仕掛けを解いてからボス戦に突入する……という構成が非常にうまくできていて、『ゼルダ』好きな方にぴったりのダンジョンだと思います。

高橋 僕は砂漠の神殿が思い出深いというか、楽しかったですね。ネタのテンポもよかったですし、デザイナーとしては、砂がダーッと流れるところもキレイにできたので、そういった部分も見どころです。

青沼 氷の神殿が印象深いですね。とにかく高所恐怖症なんで、攻略する際は“キュー”という気持ちになりながら挑んでいました。ツルツル滑る仕掛けで行動が制限されるうえ、迷いやすい構造になってますし。でも、そこで何回も迷っているうちに、だんだん心地よくなってくるんですよね。僕、けっこうMなんで(笑)。

――(笑)。本作は『スカイウォードソード』のように、ダンジョンに到達するまでの道のりにも謎解きが用意されていますが、この構成は意識的に入れたのでしょうか?
四方 意識したポイントとしては、ダンジョンの規模が小さくなった点ですね。携帯機ですので、ダンジョン攻略に何時間もかかる構成にはしないでおこうと考えました。また、今回はやはり、アイテムを借りて、持った状態で入れるので、従来のアイテムを見つけるまでの前半と、そのアイテムを駆使する後半といった構成がなくなっています。そのぶん、ダンジョンの規模が小さくなっているので、フィールドに謎解きを持ってこようと考えていました。

――ダンジョンを見つける過程も、謎解きをともなう冒険になっていると。
四方 前作では、ダンジョン自体を探す遊びになっていましたが、今回はマップに目指すべき場所の印がついているので、“場所はわかっているけど、どうやって到達すればいいのか”という遊びになるようにしています。

――なるほど。ダンジョンの中に、隠し宝箱が多くあり、それでリンクがパワーアップしていくという流れは、初代『ゼルダ』を思い出しましたが、あれはやり込み要素を意識されて入れたものなのでしょうか?
四方 やり込み要素でもありますが、今回、後半の7つのダンジョンは、どの順序でもクリアーできるようにしているぶん、どこかのダンジョンが難しくて諦めてしまったときに、別のダンジョンでパワーアップしてから再びチャレンジすれば、クリアーできるようにしたかったんです。ですので、どこのダンジョンに行っても、リンクの基礎能力を上げられるものを、隠し要素として用意しています。

――本作には、すれちがい通信による、シャドウリンクとの対戦がありますが、有利な戦法やアイテムなどがありましたら、ぜひ教えてください!
毛利 うーん。あまり、ないかなあ。

――あれ……(苦笑)。どのアイテムでも、互角の勝負になるということでしょうか?
毛利 そうですね。「これ!」という必勝パターンがなく、スタッフでも意見が分かれるんです。

――皆さんは、どのアイテムを使われますか?
四方 僕は、ナイストルネードロッドですね。相手を巻き込んで、一時的に行動不能にできるので、その隙に攻撃します。
毛利 ナイスブーメランかナイスフックショットのどちらかを装備しています。ブーメランで相手を引き寄せるか、フックショットで一気に間合いを詰めるか。その間合いの感覚がおもしろいので、必ず使っていますね。
冨永 僕もブーメランかな。相手を引き寄せた瞬間に、ズバッと斬るのが気持ちいい。
高橋 僕はフックショットです。

――皆さん、ブーメランかフックショットが多いですね。青沼さんは、いかがですか?
青沼 僕の席、スタッフのみんなとは少し離れているので、開発中はあんまりすれちがい通信を試せてないんですよ(苦笑)。ですから、発売されてから皆さんといっしょに楽しみます。

――では、青沼さんと勝負できるわけですね!
青沼 はい。ぜひお願いします!

――ちなみに、ユーザー名は……?
青沼 それは、ナイショです(笑)。

●開発者が明かす本作のトリビア

――世界観で、少し質問をさせてください。前作では、ゼルダ姫を含めて七賢者でしたが、今回のゼルダ姫は七賢者に含まれていませんよね? ということは、前作のゼルダ姫の血縁のキャラクターが、7人の中にいるということなのでしょうか?
四方 いえ、前作のゼルダの子孫は、そのまま今回のゼルダ姫になります。ただ、七賢者というのは、血縁でつながっているわけではなくて、それぞれの素質を持った人が選ばれる……というイメージになっています。
青沼 末裔という言葉だと、血縁のように思われますが、そうではないということですね。

――では、七賢者はみんな血統が受け継がれているわけではない、と。
四方 はい。……ということに、させていただければと。
青沼 『ゼルダ』シリーズは、毎回設定から考えているわけではなく、後づけのものも多いのですが、今回もそのひとつです(苦笑)。七賢者はありきで、その7人とは別にゼルダが存在している必要があり、ゼルダを七賢者から外しています。

――答えづらい質問にお答えいただき、ありがとうございます! 続いて、皆さんが“自分だけが知っている”と思われる、トリビア情報がありましたら、教えてください。
高橋 ちょっと開発スタッフに聞いてきたので、僕のほうから発表させていただきますね。各ダンジョンでボスを倒して七賢者を救うと、彼らが集まるちょっと特別な場所に行けるようになります。この場所では救出した賢者たちが、それぞれ定位置となる台座の上に立っているんですが、じつはこの台座にはアルファベットが1文字ずつ書かれているんです。この7文字を組み合わせると、勇気という単語になるんです。

――“勇気”と言うと、BRAVEなどが浮かびますが……。
高橋 COURAGEですね。

――へーーー!
高橋 “へー”出ましたね!(笑)

――先ほど、壁画のデザインに関するお話も聞かせていただきましたが、そういった遊び心的な要素は、個々の裁量に任されているのでしょうか?
青沼 デザインに関してはその通りですね。ゲームの本筋に大きな影響がなく、クスッと笑える要素であれば、概ねオーケーにしています。
高橋 あと、ゲームには直接関係ないんですけど、リンクが50メートルを走るのにかかる時間は、7.6秒です。
青沼 えっ。それ、実測なの?
高橋 ゲーム内の移動速度と距離で換算した結果ですね。開発チーム内でも、「意外とふつう」って話題になりました(笑)。ちなみに、ペガサスの靴を履いた状態だと2.4秒になります。

――一気に早くなった!(笑)。そのほかには、ありますか?
毛利 これは私だけでなく、開発チームの多くが関わっていることなんですけど、リンクなど主要キャラクター以外の声は、すべてスタッフが担当しているんです。スタッフが地下にあるサウンドスタジオに行って、マイクに向かってしゃべって、いろいろなキャラクターに声が当てはまりそうだったら採用……というオーディションのような感じですね。

――では、皆さんの声が入っているんですか?
毛利 僕は、すれちがいじいさんの声をやらせていただきました。でも、すれちがいじいさんの声を聞くには、すれちがい通信の記録リストを50個達成しないといけないんですが……。
青沼 四方たちは?
四方 僕はやってないです。
高橋 僕もですね。
冨永 僕は、やったんだけど採用されなかったという悲しいパターンです(苦笑)。

――採用の基準はあるんでしょうか?
毛利 演技力……かな。

――勝者の余裕ですね!
毛利 いやいやいや(笑)。あとは、バクダン屋がラップのような感じでしゃべるんですが、あれがいい味を出していますよね。実際は、プログラマーなんですが。
青沼 飲み会のときのテンションに近いよね(笑)。
四方 バトル道場の観客の声もみんなでやったよね。
冨永 あれは、結構な人数でやりましたね。

――にぎやかな歓声が入っていますよね。トリビアは、まだありますか?
高橋 野球のバッティングのような内容のオクタ球場というミニゲームがありまして、ふだんは木の枝をバット代わりにしますが、ファイアロッド、アイスロッドなどの、ロッド系のアイテムを装備した状態だと、それらを使ってミニゲームに挑戦できるんです。性能は木の枝と変わりませんが、振ると各ロッドを使用したときと同じ効果音が聞けます。
毛利 ちなみにオクタ球場は、あるプログラマーが遊びのように作っていたプログラムがベースになっているんです。“どんなミニゲームを盛り込むか”を決める会議の席で、いきなり「もう作ってきました」って提出されて(笑)。最初は、みんな「なんで野球?」と思って、誰か「野球は世界観に合わない」と言うかと思っていたんですが、非常によくできていたので、その場で採用されました。

――すごいですね! いつの間に作っているんだって話ですよね(笑)。
青沼 本当ですよ。プログラマーは、本当におもしろい人が多くて。彼らは、仕事のプログラムで疲れたら、ちょっとサブ的なプログラムをして癒されるという。すばらしい変態だなと思いました(笑)。

――(笑)。続いて、皆さんの好きなキャラクターを教えてください。
高橋 じつは開発内部でキャラクターの人気投票をしたんですよ。(編注:人気投票の結果は、週刊ファミ通2014年1月23日号をチェック!)

――人気投票!? それは、シリーズ作で毎回やっているんですか?
高橋 いえ、今回たまたまです(笑)。その投票で、僕は道具屋のお姉さんに1票入れました。どことなく漂ってくる哀愁が、何も語らずとも伝わってくるキャラクターだなと思って。

――冨永さんは?
冨永 おしゃれ姉さんです。

――家に入ると、ハートをくれて、体力を回復してくれるキャラクターですね。
冨永 はい。そもそも、このキャラクターの元ネタを考えたのは僕なんですが、想定していたのは、キレイなお姉さんだったんです。

――それが、なぜこのような姿に!?
冨永 僕は、やっぱり男目線で考えていたんですが、ノンプレイヤーキャラクターの担当者が女性で、その担当者から「キレイなお姉さんより、こういう特徴のある人のほうがおもしろいんじゃない?」というアイデアが出て、ああいう姿になったんです。あと、男性のキャラクターでは、酒場の吟遊詩人が好きです。

――10ルピーで曲を弾いてくれますよね。
冨永 「酒場に楽器を弾いてくれる人がいたらいいよね」と話をして、けっこう軽いノリで、「せっかくだからBGMも聴けるようにしたい」というアイデアが出て、サウンドスタッフに相談に行ったんです。そうしたら、まさかのものすごい数の曲を聴けるようにしてくれて。しかも原曲じゃなく、酒場にいるふたりが演奏しているような専用のアレンジになっているんですよ。ちなみに、ゲームの進行度に合わせて、聴ける曲が増えていきます。

――おお、これもトリビアですね。ありがとうございます。毛利さんの好きなキャラクターは?
毛利 私は、すれちがいじいさんです。

――やはり、ご自身のボイスが影響しているのでしょうか?
毛利 ボイスもありますが、今回のすれちがい通信は、私が企画全般を担当していて、すれちがい通信の窓口になるキャラクターが必要だなと思っていたんです。それで、じつは、すれちがいじいさんというのは、ニンテンドーDSの『夢幻の砂時計』のときから考えていたキャラクターで……。
青沼 えっ! そんなころから!?
毛利 考えていたんです。でも、『夢幻の砂時計』では、なぜか別のキャラクターになっていて、今回ようやく出せたので、思い入れもたっぷりあるキャラクターになりました。

――では、四方さんは。
四方 僕は、魔法使いのアイリンです。いままで、ツンデレのよさがわからなくて、「なんで、みんなツンデレに騒いでいるんだろう」と思っていたんですね。でも、それまで見てきたツンデレは、自分に向かって言っているものではなかったと、気づいたんです。というのも、アイリンが“デレる”タイミングがあるんですが、それ以降は自分というか、リンクに向かってお礼を言ったりしながらデレてくれるので、思わずドキッとしてしまって(笑)。世の中で言われているツンデレのよさが実感できて、それから好きになりました。

――最後に青沼さんは、いかがでしょう?
青沼 開発の最後の仕上げで、僕が自分でいろいろとキャラクターの台詞を書いたんですが、その中で印象に残ったのが、ヒルダ姫との最初の出会いと、シリーズにとっては大きな存在であるインパとの会話なんです。ヒルダ姫は、「この子は人気が出るだろうな」と思っているので、ここで推すのはインパですね。

――インパ! ちょっと意外ですね。
青沼 最初はインパの気持ちなどがわからなかったんですが、終盤でインパがリンクに向かって話しかけるシーンは、渾身のスクリプトが書けました。登場回数が少ないながらも、印象的になったと思います。

――では最後に、本作をこれから遊ぶファンの方々にメッセージをお願いします。
高橋 敵との戦闘の気持ちよさに加え、リンクが何か行動をしたときのリアクションなど、アクションの小気味よさにこだわっていますので、隅々まで楽しんでください。
冨永 “懐かしさと新しさ”という言葉が出てきましたが、前作を遊んでいない方はもちろん、前作のファンの方も、壁画になって壁を進むという体験は初めてのことですので、いろいろと新しい謎解きが楽しめます。とくに、22年前に前作を遊んでくださった方は、いろいろと驚きがあると思いますので、ぜひ遊んでほしいですね。
毛利 今回、3D『ゼルダ』初の秒間60フレームを実現しましたので、その気持ちよさや画面の見やすさを経験していただきたいです。あと、すれちがい通信には、いろいろな条件で勝利すると達成されるリストがあって、50個の項目をコンプリートすると、特別なことが起こります。皆さん、すれちがい通信をオンにして街に出て、コンプリートを目指してください!
四方 毎回、皆さんがクリアーできるようにしたいと思って開発しているんですが、今回は、開発中の段階で、クリアーできた人が多かったんですね。それを振り返ってみると、“みんながクリアーできる=簡単にする”ということではなく、どこからでも挑戦できる、選択肢を増やしたことがよかったのかなと思っています。『ゼルダ』の歯応えを残しつつ、みんながクリアーできるものになっていますし、アイテムレンタルの順番などを変えて2周目も楽しめますので、お正月にじっくり遊んでもらいたいなと思います。
青沼 『ゼルダ』というのは、世界に隠されている“何か”を求めて、いろいろと挑戦していく遊びであって、ただエンディングを目指すものではないと思っています。ですから、「何をレンタルしようかな」とか、「どのダンジョンに行こうかな」と、いろいろ迷うことを楽しみながら、ゆっくり遊んでほしいですね。そのうえで、自分なりの最良の解きかたを見つけてください。