受賞スピーチには荒木飛呂彦氏が登場!

 2013年12月5日、東京・六本木の国立新美術館にて、“第17回文化庁メディア芸術祭”の記者発表会が開催、受賞作品が発表された。
 “文化庁メディア芸術祭”は、アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門においてすぐれた作品を顕彰するとともに、受賞作品の鑑賞機会を提供するメディア芸術の総合フェスティバルだ。本年度は、過去最多となる海外83ヵ国と地域から2347作品の応募があり、日本国内からの応募も合わせると4347作品にもおよぶ、膨大な数の作品が集まった。なお、今回初めて、海外からの応募数が日本国内からの応募数を上回ったとのこと。海外でも本フェスティバルが高い知名度を誇っていることを、垣間見える結果となった。
 なお、2014年2月5日から2月16日まで、国立新美術館を中心に、今回発表された受賞作品などを紹介する作品展が開催されるので、気になる方は足を運んでみてはいかが?
 以下、各部門の大賞に選ばれた作品を紹介する。

第17回文化庁メディア芸術祭の受賞作品が決定 応募総数4347作品の頂点に輝いたのは?_01

■アート部門 大賞
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メディアインスタレーション
カールステン・ニコライ(ドイツ)
 本作は、テレビのモニターに映るイメージが、磁力の力を受けて変化する様子を“見る”こと、そして電磁波の作用によって発生した音を“聴く”ことを観客に促す摩訶不思議な作品だ。仕掛けだけを見れば物理現象のデモのようにも見えるが、実際には単なる科学実験だけにとどまらず、象徴的かつ暗示的な作品にでき上がっているとして、今回見事大賞に輝いた。

第17回文化庁メディア芸術祭の受賞作品が決定 応募総数4347作品の頂点に輝いたのは?_02

 
■エンターテインメント部門 大賞
Sound of Honda - Ayrton Senna 1989
映像、ウェブサイト、メディアインスタレーション、サウンド
菅野薫/保持壮太郎/大来優/キリーロバ・ナージャ/米澤香子/関根光才/澤井妙治/真鍋大度(日本/ロシア)
 1989年のF1日本グランプリ予選でアイルトン・セナが樹立した、世界最速ラップの走行データを用い、彼の走りを音と光でよみがえらせた作品。走行データをグラフ化した紙1枚からセナのエンジン音を再現しようとした発想そのものがおもしろく、素朴なデータひとつを作品に昇華させたことが評価された。この作品を、どのように展示するのかが気になるところだ。作品展に注目したい。

第17回文化庁メディア芸術祭の受賞作品が決定 応募総数4347作品の頂点に輝いたのは?_03

 
■アニメーション部門 大賞
はちみつ色のユン
ドキュメンタリー・アニメーション
ユン/ローラン・ボアロー(ベルギー/フランス)
 韓国系ベルギー人のユン監督がみずからの半生を描いたマンガをもとに、ドキュメンタリー映画監督のローラン・ボアロー氏と共同監督したアニメーション。1970年当時のユン監督の姿が映された8ミリフィルムや記録映像による実写と、手描きやCGによる3Dアニメーションといった多彩な手法でシーンを描き分け、アニメーションの表現の可能性を切り開く意欲作。肌の色が違っても、あるいは血のつながりがなくても、愛に満ちている“家族”のありかたを本作は伝えている。

第17回文化庁メディア芸術祭の受賞作品が決定 応募総数4347作品の頂点に輝いたのは?_04

 
■マンガ部門 大賞
ジョジョリオン-ジョジョの奇妙な冒険Part8-
荒木飛呂彦(日本)
 連載28周年を迎えた『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ第8部。本作は、長年に渡り築き上げてきた壮大な物語世界に東日本大震災を取り込んでいる。荒唐無稽に見える虚構を介することによって到達しうる水準があることを示し、改めてマンガ表現の持つ“力”を認識させた作品であるとして、大賞を受賞した。
 ちなみに、本作の作者である荒木飛呂彦氏は“第17回文化庁メディア芸術祭”の会場に駆けつけ、受賞スピーチで喜びを語ってくれた。「この度は大賞をいただきまして、誠にありがとうございます。この作品が、直接的にではないにせよ、世の中の皆様のお役に立てるようなことがあれば、本当に幸せだなと思います。これからもますます読者の皆様に楽しんでもらえるような作品を描いていけるよう努力したいと思います」

第17回文化庁メディア芸術祭の受賞作品が決定 応募総数4347作品の頂点に輝いたのは?_05

■気になるゲーム作品の結果は?
 今回、大賞にこそ選ばれなかったものの、エンターテインメント部門の新人賞に『TorqueL prototype 2013.03 @ E3』が選ばれた。着眼点が素晴らしく、ゲームルールもシンプルに構成されているためすぐに楽しめる作品だ。感覚的に操作でき、適度に考えて進める要素とのバランスも優れており、ゲームのおもしろさの原点を改めて考えさせられたという理由から、新人賞を受賞した。
 また、ゲーム関連の審査委員会推薦作品として、セガの『龍が如く5 夢、叶えし者』、iOSタイトル『BADLAND』、福島ゲームジャム(イベント)、プレイステーション3用ソフト『rain』、『Snake the Planet!』、『STEAM RAGE』といったゲーム・イベントが選出されている。

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